日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

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特定工場等から発生する振動の苦情があり,敷地境界線で測定を行ったところ振動規制法の規制基準は満足していました。しかし,家屋内部では,その特定工場からの振動を感じます。家屋内部での測定も含めて,どのように対応すべきでしょうか。(Vol.37 No.1)
                                (地方公共団体職員)

(神奈川県 横島潤紀)

振動規制法(昭和 51 年 6 月 10 日法律第 64 号)では,指定地域内の特定工場等の設置者に対して,規制基準の遵守義務を規定しております。さらに,市町村長が,特定工場等から発生する振動が規制基準に適合しないことにより,周辺の生活環境が損なわれていると認めるときは,当該特定工場等の設置者に対して,振動防止対策等の改善を勧告および命令が可能です。今回の事例では,敷地境界線での測定結果は規制基準値内であったため,事業者に対して,振動規制法に基づく指導はできません。

しかし,地方公共団体職員の公害に関する苦情の処理に関しては,公害紛争処理法(昭和 45年6月1日法律第 108 号)の第 49 条に,「地方公共団体は,関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるものとする。」と規定されています。すなわち,法律等で規定されている規制基準等の超過の有無に関わらず,公害に関する苦情対応は地方公共団体の努力規定です。努力規定のため罰則等はありませんが,本事例では,家屋内部での体感調査から,暴露されている振動が住民の生活環境または健康に影響を及ぼしている可能性も考えられます。振動規制法の主旨等に照らしあわせると,生活環境を保全し,国民の健康を保護するために,振動規制法を施行している市町村が,都道府県の技術支援などを受けて対応する必要があると思います。

対応の第一歩としては,住民が感じている振動の把握,すなわち家屋内部での振動測定が必要になります。木造家屋の板の間と地表面との鉛直振動の関係については,環境庁(当時)が調査した結果があります。家屋内部での振動レベルは,地表面に比べて 5 dB 増幅(中央値)していましたが,これは 30年以上も前の結果であり,現在の木造家屋や工業化住宅に適用できるか不透明です。また,振動規制法は鉛直振動を対象としておりますが,家屋内部では建築物の共振周波数の関係もあり,水平振動の増幅事例が多く報告されています。例えば,平尾ら1)は,並進 3 方向の振動について,1/3 オクターブバンド中心周波数が 5 Hz または 6.3 Hz の帯域で,地表面に比べて家屋内部での振動加速度レベルが,水平方向で 20 dB 程度大きくなることを報告しています。

さらに,家屋内部での測定では,測定位置の選定が重要です。木造家屋における在来鉄道振動を対象とした測定事例2)から,同一の家屋内部でも,測定位置が床面の中央であるか,あるいは柱脚の付近であるかにより,1/3 オクターブバンド振動加速度レベルが大きく異なることが報告されています。

従来,家屋内部での測定は,公式の手法が規定されていなかったため,担当者個々の経験等に基づく独自の手法で行われてきました。このような現状を踏まえ,家屋内部での統一的な測定手法を構築するため,当学会の環境振動評価分科会が,平成 20 年度の環境省請負業務での検討結果を基に,振動測定マニュアル(案)(以下,「マニュアル案」と記す)を整備しました。マニュアル案は,全ての外部振動源を対象としております。また,環境振動評価分科会の HP(https://www.ince-j.or.jp/04/04_page/04_sh.html, 参照 2012 年 12 月)からダウンロード可能です。

以下にマニュアル案の概要を示します。

  • 1.適用範囲
  • 2.測定
    • 2.1 測定量
    • 2.2 測定機器
    • 2.3 測定位置(家屋振動特性の把握)
    • 2.4 測定位置(地盤振動の伝搬特性の把握)
    • 2.5 測定方向
    • 2.6 測定時間帯
    • 2.7 測定方法
  • 3.測定結果の算出方法

マニュアル案では「評価」の項目がなく,生活や健康への影響の有無を判断する基準も記載されていませんが,人間の振動に対する知覚閾値(概ね 55dB)も有用な判断基準の一つであると考えています。しかし近年の判例では,受忍限度の超過が判断基準となっていることから,振動の大きさだけではなく様々な要因を含めた総合的な判断が必要です。最後に,家屋内部での測定結果から,振動により住民の生活環境などが損なわれていると判断される場合でも,事業者の任意の協力によって実現できる行政指導での対応しかないと思います。この場合には,費用面および時間的な問題から,事業者の負担が大きいハード面での対策より,作業時間の短縮や変更などのソフト面での対策が有用であると考えます。

  • 1 )平尾他,振動測定マニュアル(案)に基づいた測定・分析事例,H24 春季騒音制御講論集(2012).
  • 2 )横島他,木造家屋内における鉄道走行時の振動実測結果について,建築学会技術報告集,vol. 24(2006).

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騒音規制法の特定工場で,特定施設を増設する場合に,届出において騒音の予測計算を行い,規制基準の遵守状況を確認します。そのときに,予測評価するのは新たに増設する施設だけか,それとも全ての施設について行うのでしょうか。(Vol.31 No.1)
                               (騒音担当 行政職員)

(千葉市 松島 貢)

騒音規制法の工場事業場の仕組み

騒音規制法の工場・事業場に対する規制は,指定地域内において,工場・事業場が騒音規制法に定められた騒音発生施設(以下,特定施設)を設置すると都道府県知事が定めた規制基準の遵守義務が生じます。その工場・事業場を特定工場等といいます。

特定工場等は敷地境界において,規制基準を遵守しなければなりません。この際に,規制基準は特定施設から発生する騒音だけでなく,特定工場等から発生する全ての騒音が対象となります。

さて,ご質問の主旨を,特定工場等が新たに特定施設を増設する場合,新たに増設する施設だけを対象にして評価するのか,それとも増設施設を含めた特定工場等から発生する全ての騒音を対象にして評価するのか,と理解しまして回答いたします。

騒音規制法による特定工場等の規制の仕組みを踏まえますと,特定工場等に新たに特定施設を増設する場合には,工場から発生している現状の騒音に,増設する施設の騒音を加えて評価しなければなりません。

ちなみに,現状の騒音とは,実測値,若しくは直近の届出以降騒音の発生状況に変化がなければ,その届出時の評価値のどちらを用いてもかまいません。

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