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- 防音壁による回折減衰に関して、 前川曲線と日本音響学会の道路交通騒音予測式のαd との違いについてその理由を教えて下さい。
(計量証明事業会社 社員) -
((財)小林理学研究所 松本敏雄)
防音壁の回折減衰については、実験を基に作成された簡易図表から回折理論 に基づいてより精密な計算を行う方法まで、いろいろな条件に対して多くの計 算方法がこれまでに提案されています。
この中でも前川チャート(前川曲線)は、厳密な計算をしなくても回折効果 を容易に求められるという簡便性と特定の条件を除いて実験値によく合うとい う信頼性から、環境アセスメントを始め、種々の騒音防止設計に広く利用され ています。このチャートは前川が自由空間において、無指向性の点音源から放 射される音に対して厚みのない半無限に広がった障壁を想定して実験的に求め たもので、減音量を一本の直線で表現しています。このチャートの縦軸は減音 量で、障壁の有無による音圧レベルの差を表し、横軸はフレネル数という障壁 の有無による伝搬経路の差(行路差)を音の半波長で割った数で表されていま す。
一方、昭和50年に発表された日本音響学会の道路交通騒音予測式、いわゆる 音響学会式における回折補正値αdのチャートは、道路交通騒音に対する回折 による補正値を求めるための計算図表です。このチャートは、山下らが、自由 空間において、非干渉性の線音源から放射される音に対して厚みのない半無限 に広がった障壁を想定して実験的に求めた道路交通騒音に対する回折による補 正量です。このチャートの縦軸は回折補正量で、横軸は行路差です。
以上のように、前川チャートと音響学会式のαdのチャートは、ともに防音 壁の回折による減音量を求めるための計算図表ですが、前者は点音源を前提と して、入力には周波数と行路差が情報として必要となります。後者は道路交通 騒音を対象とした線音源を前提として、交通量と速度が予測式の適用範囲内の 場合において、行路差のみで回折による減音量を求めることができます。この ように、両者は対象とする音源の性状により使い分ける必要があります。