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公益社団法人 日本騒音制御工学会

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環境振動の評価における 1/N オクターブバンド分析と FFT 分析の使い分けを教えてください。(Vol.45No.4)
Vol.45 No.4

(一般財団法人小林理学研究所 平尾善裕)

 環境振動の計測および評価においては,時間領域での分析とともに,一歩踏み込んだ周波数領域での分析を行うことも重要です。一般的に環境振動に対しては,1 Hz から 80 Hz までの周波数を対象として分析しています。これは,JIS C 1510-1995「振動レベル計」などにより規定されているからです。ただし,調査や研究の目的に合わせて,より広い範囲の周波数帯域を対象とする場合もあります。環境振動の評価においては,大まかに 1/N オクターブバンド分析は人体への影響,FFT 分析は振動源や振動を伝える物質(地盤や建物など)の特徴を把握するために用いられることが多いようです。
 日本騒音制御工学会環境振動評価分科会が整備した振動測定マニュアル1)では,中心周波数が 1 Hzから 80 Hz までの 1/3 オクターブバンド分析を要求しています。参考資料にある「定常的な振動に対する人の振動知覚閾の目安」と比較するためです。対象となった振動を人が感じる可能性があるか否かを判断することに用いられます。測定事例なども入手できますので,是非,分科会のウェブページにアクセス頂き,活用頂きたいと思います。
 また,日本建築学会では,建築物の振動に関する居住性能評価規準・同解説2)において,水平方向の振動に対しては 1 Hz から 25 Hz,鉛直方向では 3.15 Hzから 25 Hz を中心周波数とする 1/3 オクターブバンド分析を行うことが規定されています。建物内の居住環境に対する振動の影響を評価するためです。性能評価曲線と比較することで人が振動を感じる確率(何パーセントの人が感じるか)がわかります。建物の外部から伝わる振動,建物内部にある設備や歩行に伴う振動,高層ビルなどの風によって引き起こされる揺れに対して適応されます。このように,1/N オクターブバンド分析では,1/3 オクターブバンド分析を用いることが主流であろうと考えます。
 一方,FFT 分析では,建物の振動特性や振動源の周波数特性の把握に役立ちます。図−1 は,6 階建ての建物を水平方向に周波数掃引加振した時の 6 階床 3 点での変位パワースペクトル密度3)です。3.5Hz と 7.6 Hz に共振点が現れています。共振点に近い振動が外部から伝搬した場合,同じ大きさの振動であってもその他の周波数に比べて大きく振動することになります。内部に設置する設備機器の振動にも留意する必要が生じます。

図−1 6 階床の変位パワースペクトル密度

図−2 建設機械の 1/3 オクターブバンド分析結果

図−3 建設機械の FFT 分析結果

 また,図−2 と図−3 は,建設機械の近傍地盤における鉛直振動の分析結果です。1/3 オクターブバンド分析では,16 Hz 成分が卓越しており,それ以外の周波数では広帯域の振動のように見えます。ところが FFT 分析では 15 Hz を基本周波数として,その高調波成分が存在していることがわかります。FFT 分析の優位性とも言え,より詳細な振動特性を知ることに役立つものと考えます。

参考文献
1 )http ://www.ince-j.or.jp/subcommittee/kankyoshindo
hyoka
2 )日本建築学会編:日本建築学会環境基準 AIJES-V0001-
2018 建築物の振動に関する居住性能評価規準・同解
説(2018).
3 )平尾他:枠組壁工法による 6 階建て実大実験棟の振動
特性(その 2),日本建築学会大会学術講演梗概集,D1 分冊,p. 411(2017).

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振動が家屋によって増幅され,苦情が発生する場合があると聞きました。こうした増幅現象を調べるには,どのような調査が行われるのか教えてください。(Vol.45No.3)
Vol.45 No.3

(埼玉県環境科学国際センター 白石英孝)

 重さ(質量)とかたさ(剛性)をもつ物体は固有振動数をもち,それに近い周波数の加振力が作用すると振動が増幅されます。これが共振による振動の増幅現象です。ご質問をいただいた,家屋による振動の増幅とは,この共振に由来するものと考えられます。屋内の振動が,家屋によって増幅されているかを推定するには,いくつかの調査方法がありますが,ここでは 2 つの事例をご紹介します。

◇振動測定マニュアルに基づく調査事例
 振動測定マニュアルによる家屋振動特性の測定では,家屋近傍の地盤振動と家屋内の居住空間(振動を最も不快に感じるところ)で上下・水平 2 方向の振動加速度レベルを同時測定し,1/3 オクターブバンド分析を行います1)。調査事例では2), 3),この方法で得た道路交通振動等に由来する振動の分析結果を用いて,地盤振動と屋内のレベル差を求め,家屋の振動増幅特性を推定しています。この場合,レベル差が大きい帯域が共振による増幅が発生している周波数と推定されています。2003 年から 2010 年に建築された 120 棟の工業化住宅を対象に調査が行わ
れ,その結果として,家屋の構造によってやや異なりますが,2 階,3 階の床の水平振動に 4∼6.3 Hz の共振によるピークが現れ,数倍程度に増幅されていることが報告されています。

◇伝達関数測定に基づく調査事例 
 この事例では,地盤の微振動(微動)とそれによって生じている家屋振動(水平 2 方向)の加速度を同時測定し,家屋の振動特性(伝達関数)を求めています。微動は人体に感じない微弱な振動であるため,交通振動等の影響を避けて測定を行い,また,伝達関数を求めるには 2 チャンネル以上の同時分析が可能な FFT 分析器を使用します。伝達関数に現れる卓越成分の周波数が,家屋の固有振動数に相当し,その振幅は地盤振動の増幅割合に相当します。また,伝達関数から家屋の減衰定数を推定することができます。この調査事例では,1980 年代後半に66 棟の 2 階建て工業化住宅を対象に調査が行われ,良好な伝達関数が得られた 41 棟分の中央値は,固有振動数が 6.8 Hz,増幅度が 7.3,減衰が 4.5% という結果が報告されています。

 ここでご紹介した 2 つの事例は,建築年代が異なる戸建て住宅を対象としていますが,ともに 10 Hz以下に固有振動数をもち,屋内の水平振動については地盤に対して数倍程度の増幅が発生しうるものと推定されています。

参考文献
1 )https://www.ince-j.or.jp/subcommittee/kankyoshindo
hyoka(2021/3/29 閲覧)
2 )国松直:家屋の振動増幅特性の把握,騒音制御,vol.
42,no. 3,pp. 113-116(2018).
3 )平尾善裕,国松直,東田豊彦:地盤振動に起因する木
質系・鉄骨系戸建て住宅の振動増幅特性,日本建築学
会技術報告集,vol. 19,no. 42,pp. 631-634(2013).
4 )松岡達郎,白石英孝,毎熊輝記:物理探査,vol. 40,no.
2,pp. 117-128(1987)

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