日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

「 ●か行 」の関連記事一覧

洋上風力発電施設の建設に伴い水中音の問題がクローズアップされているように感じていますが,昔から水中音問題はあったのでしょうか。あるいは近年になって水中音問題が認知されるような背景があるのでしょうか。(Vol.45No.5)
Vol.45 No.5

((公財)笹川平和財団 海洋政策研究所 赤松友成)

 水中の音は長く軍事機密のベールに包まれていました。米ソ冷戦時代には大西洋での潜水艦探知のため,水中音の観測システム(SOSUS)が構築されましたが,データはおろか存在すら公表されていませんでした。1989 年末にアメリカ合衆国のブッシュ大統領とソ連のゴルバチョフ共産党書記長がマルタで冷戦の終結を宣言しました。潜水艦探知システムのデータがコーネル大学で解析されたのを皮切りに,水中生物音響の研究が本格的に始まりました。
 最初は潜水艦が発する音と同じような周波数で鳴く大型のヒゲクジラの声を調べる研究が進展しました。すでにザトウクジラについては 1970 年代から歌を歌うと知られていましたが,太平洋や大西洋の広い水域での音響探査ができるようになったのは90 年代に入ってからです。衛星ではなく海中音響を利用したリモートセンシングと言えましょう。同時に,海中に存在する様々な音源が明らかになりました。クジラだけでなく魚やエビなど生物由来のBiophoney。降雨や波浪,地殻変動にともなって発生する Geophoney。そして船舶や海中工事にともなうAnthrophoney です。ただし海中騒音の場合には影響を受けるのが人間ではなく海洋生物でしたので,しばらくの間はこの問題の広がりは見られませんでした。
 ところが水中音響技術が民間に開放されてしばらく経った 2000 年代以降,水中音の実際の影響事例が多く示されるようになりました。ヒトを含む陸上の動物と同じように,海洋生物も騒音の暴露によって回遊行動の変化や聴覚感度の悪化や,場合によっては器官損傷に至ります。長期間の音響計測データの解析から,1960 年代以降に北米の西海岸沖で水中騒音レベルが上昇していたことや,2000 年代に入ってもインド洋で背景音レベルが徐々に上がっている様子が確認されました。
 これまでにない騒音が発生すれば,音声によるコミュニケーションに頼るイルカやクジラのような種類の回遊や繁殖に支障が生じるおそれがあります。海産哺乳類に関心の高い欧州ではネズミイルカを中心に大きなプロジェクトを組んで騒音の影響評価が行われるようになりました。日本は少し視点が異なります。漁業が盛んで,海の幸の魚介類をたくさん食べます。音波は,水中で遠距離まで届くので,それによって魚の行動が変わると,漁に影響が出るのではないかとの懸念があります。漁師さんは海の重要なステークホルダーですので,その意見は無視できません。
 海洋の利用と開発は,近年の技術的な進歩に助けられ活発になってきました。洋上風力発電はその最たるものですが,深海底の鉱物資源開発や地質構造の把握のための音響探査も多数行われるようになり,海中への人工音の放出が顕著になっています。世界の物流も活況を呈しており,高速なコンテナ船が世界中を行き来しています。こうした人工音の主成分は 1 kHz 以下に多く,この領域で感度がよいのはヒゲクジラ類と魚類です。水産資源としても海洋環境の指標生物としても重要な生物群です。
 持続可能な開発目標いわゆる SDGs は,いまや誰でも知っているキーワードになりました。私たちはこれまで大気や海洋に多くの負荷をかけてきました。それがいよいよ限界に達し,急速に地球環境が変化し始めています。子や孫の世代,さらに先々まで人類が持続的に幸せに生きるために社会構造を変えていかなければなりません。再生可能エネルギー開発も物流も,日本にとって重要です。一方で,漁業も海の生態系もしっかり守っていかなければなりません。海を持続的に利用するための一つの重要な課題として,水中の騒音に目が向けられるようになりました。

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環境振動の評価における 1/N オクターブバンド分析と FFT 分析の使い分けを教えてください。(Vol.45No.4)
Vol.45 No.4

(一般財団法人小林理学研究所 平尾善裕)

 環境振動の計測および評価においては,時間領域での分析とともに,一歩踏み込んだ周波数領域での分析を行うことも重要です。一般的に環境振動に対しては,1 Hz から 80 Hz までの周波数を対象として分析しています。これは,JIS C 1510-1995「振動レベル計」などにより規定されているからです。ただし,調査や研究の目的に合わせて,より広い範囲の周波数帯域を対象とする場合もあります。環境振動の評価においては,大まかに 1/N オクターブバンド分析は人体への影響,FFT 分析は振動源や振動を伝える物質(地盤や建物など)の特徴を把握するために用いられることが多いようです。
 日本騒音制御工学会環境振動評価分科会が整備した振動測定マニュアル1)では,中心周波数が 1 Hzから 80 Hz までの 1/3 オクターブバンド分析を要求しています。参考資料にある「定常的な振動に対する人の振動知覚閾の目安」と比較するためです。対象となった振動を人が感じる可能性があるか否かを判断することに用いられます。測定事例なども入手できますので,是非,分科会のウェブページにアクセス頂き,活用頂きたいと思います。
 また,日本建築学会では,建築物の振動に関する居住性能評価規準・同解説2)において,水平方向の振動に対しては 1 Hz から 25 Hz,鉛直方向では 3.15 Hzから 25 Hz を中心周波数とする 1/3 オクターブバンド分析を行うことが規定されています。建物内の居住環境に対する振動の影響を評価するためです。性能評価曲線と比較することで人が振動を感じる確率(何パーセントの人が感じるか)がわかります。建物の外部から伝わる振動,建物内部にある設備や歩行に伴う振動,高層ビルなどの風によって引き起こされる揺れに対して適応されます。このように,1/N オクターブバンド分析では,1/3 オクターブバンド分析を用いることが主流であろうと考えます。
 一方,FFT 分析では,建物の振動特性や振動源の周波数特性の把握に役立ちます。図−1 は,6 階建ての建物を水平方向に周波数掃引加振した時の 6 階床 3 点での変位パワースペクトル密度3)です。3.5Hz と 7.6 Hz に共振点が現れています。共振点に近い振動が外部から伝搬した場合,同じ大きさの振動であってもその他の周波数に比べて大きく振動することになります。内部に設置する設備機器の振動にも留意する必要が生じます。

図−1 6 階床の変位パワースペクトル密度

図−2 建設機械の 1/3 オクターブバンド分析結果

図−3 建設機械の FFT 分析結果

 また,図−2 と図−3 は,建設機械の近傍地盤における鉛直振動の分析結果です。1/3 オクターブバンド分析では,16 Hz 成分が卓越しており,それ以外の周波数では広帯域の振動のように見えます。ところが FFT 分析では 15 Hz を基本周波数として,その高調波成分が存在していることがわかります。FFT 分析の優位性とも言え,より詳細な振動特性を知ることに役立つものと考えます。

参考文献
1 )http ://www.ince-j.or.jp/subcommittee/kankyoshindo
hyoka
2 )日本建築学会編:日本建築学会環境基準 AIJES-V0001-
2018 建築物の振動に関する居住性能評価規準・同解
説(2018).
3 )平尾他:枠組壁工法による 6 階建て実大実験棟の振動
特性(その 2),日本建築学会大会学術講演梗概集,D1 分冊,p. 411(2017).

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振動が家屋によって増幅され,苦情が発生する場合があると聞きました。こうした増幅現象を調べるには,どのような調査が行われるのか教えてください。(Vol.45No.3)
Vol.45 No.3

(埼玉県環境科学国際センター 白石英孝)

 重さ(質量)とかたさ(剛性)をもつ物体は固有振動数をもち,それに近い周波数の加振力が作用すると振動が増幅されます。これが共振による振動の増幅現象です。ご質問をいただいた,家屋による振動の増幅とは,この共振に由来するものと考えられます。屋内の振動が,家屋によって増幅されているかを推定するには,いくつかの調査方法がありますが,ここでは 2 つの事例をご紹介します。

◇振動測定マニュアルに基づく調査事例
 振動測定マニュアルによる家屋振動特性の測定では,家屋近傍の地盤振動と家屋内の居住空間(振動を最も不快に感じるところ)で上下・水平 2 方向の振動加速度レベルを同時測定し,1/3 オクターブバンド分析を行います1)。調査事例では2), 3),この方法で得た道路交通振動等に由来する振動の分析結果を用いて,地盤振動と屋内のレベル差を求め,家屋の振動増幅特性を推定しています。この場合,レベル差が大きい帯域が共振による増幅が発生している周波数と推定されています。2003 年から 2010 年に建築された 120 棟の工業化住宅を対象に調査が行わ
れ,その結果として,家屋の構造によってやや異なりますが,2 階,3 階の床の水平振動に 4∼6.3 Hz の共振によるピークが現れ,数倍程度に増幅されていることが報告されています。

◇伝達関数測定に基づく調査事例 
 この事例では,地盤の微振動(微動)とそれによって生じている家屋振動(水平 2 方向)の加速度を同時測定し,家屋の振動特性(伝達関数)を求めています。微動は人体に感じない微弱な振動であるため,交通振動等の影響を避けて測定を行い,また,伝達関数を求めるには 2 チャンネル以上の同時分析が可能な FFT 分析器を使用します。伝達関数に現れる卓越成分の周波数が,家屋の固有振動数に相当し,その振幅は地盤振動の増幅割合に相当します。また,伝達関数から家屋の減衰定数を推定することができます。この調査事例では,1980 年代後半に66 棟の 2 階建て工業化住宅を対象に調査が行われ,良好な伝達関数が得られた 41 棟分の中央値は,固有振動数が 6.8 Hz,増幅度が 7.3,減衰が 4.5% という結果が報告されています。

 ここでご紹介した 2 つの事例は,建築年代が異なる戸建て住宅を対象としていますが,ともに 10 Hz以下に固有振動数をもち,屋内の水平振動については地盤に対して数倍程度の増幅が発生しうるものと推定されています。

参考文献
1 )https://www.ince-j.or.jp/subcommittee/kankyoshindo
hyoka(2021/3/29 閲覧)
2 )国松直:家屋の振動増幅特性の把握,騒音制御,vol.
42,no. 3,pp. 113-116(2018).
3 )平尾善裕,国松直,東田豊彦:地盤振動に起因する木
質系・鉄骨系戸建て住宅の振動増幅特性,日本建築学
会技術報告集,vol. 19,no. 42,pp. 631-634(2013).
4 )松岡達郎,白石英孝,毎熊輝記:物理探査,vol. 40,no.
2,pp. 117-128(1987)

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騒音振動の規制・苦情に関しては市町村で事務対応しておりますが,それに対する都道府県の技術支援における留意点は何でしょうか。(Vol.45No.2)
Vol.45 No.2

(元千葉県環境研究センター 石橋雅之)

 千葉県では,環境生活部大気保全課と環境研究センターが連携して,騒音・振動を担当する市町村の職員を対象に例年 5∼6 月(年度当初の早い時期)に測定技術講習会を実施しています。
 また,市町村からの問い合わせに応じ,個別の事例に関して,騒音・振動又は低周波音の測定機器の貸出し及び操作方法の説明と測定・評価方法等について,技術的助言を随時実施しています。
 大気保全課と環境研究センターの役割分担は,基本的に,大気保全課が法関係(解釈等),環境研究センターが測定技術(機器の取扱い,測定方法,評価方法)を担当しています。
 ここでは,千葉県で行っている講習会や個別支援1)について紹介しながら,技術支援における留意点について述べたいと思います。

1 講習会
(1)初級(法関係,測定の基礎・3 日間)
 初めて騒音振動業務に携わる市町村職員に,基本的な講義(音の性質,騒音規制法,振動規制法の概要)のほか,騒音計,振動レベル計,レベルレコーダの基本操作に関する実習を行っています。
(2)中級(測定の応用・2 日間)
 初級講習会を受講済みで騒音振動業務を 1 年以上担当している等,ある程度経験を積んだ職員に,周波数分析や低周波音測定等,より高度な測定技術に関する実習を行っています。
 両コースとも,実際に市町村で所有している機材を持参してもらうこととしており,機材を所有していない場合は,県から貸し出しています。
 また,両コースとも,苦情事例の情報交換を設けており,初級では市のベテラン職員に騒音振動の具体的な苦情処理事例を紹介してもらっています。
 ただし,令和 2 年度は新型コロナ対応のため,開催時期を 8 月に延期するとともに講習内容や参加人数を絞り,騒音のみの初級 1 日コースを 2 回開催することとしたため,苦情事例の情報交換ができませんでした。
 参加者の例年のアンケート結果を見ると,次のような声が寄せられています。
(1)良くわかったところ
 持参した機器の操作方法
(2)わかりにくかったところ
 初級;数式やデシベルの計算
 中級;データの取り出し,表計算ソフトの操作
(3)詳しく知りたかったところ
 他自治体の苦情事例

2 個別支援
 実際の苦情現場は,机上の学習と異なり,様々な要因から測定上の制約を受ける等,複雑な環境にあることが多いようです。環境研究センターは,市町村から問い合わせがあった場合には,個別苦情事例に対する技術支援を行っています。内容としては,測定器の使用方法を含めた測定方法に関する助言や測定結果の評価に関する助言が多くなっています。

3 技術支援における留意点
(1)騒音・振動担当者名簿及び保有機器リスト
 市町村の担当職員は 2∼3 年で異動することが多くなっています。そのため,大気保全課が毎年 4 月に騒音振動担当者名簿と保有機器リストを作成していますが,この名簿と機器リストがあると,互いに連絡・相談しやすくなっています。
(2)騒音・振動苦情処理事例の提供
 市町村から苦情相談が寄せられたとき,類似事例を速やかに提供すると喜ばれます。類似事例は,公害等調整委員会事務局が発行している公害苦情処理事例集や過去の講習会で情報交換に用いた苦情事例等を活用しています。また,講習会に参加した市町村の担当者には,困ったときに講習会参加者と自由に情報交換することを勧めています。
(3)騒音制御工学会の技術講習会
 本学会では,毎年,騒音・振動の苦情処理に関する技術講習会が開催されています。有料の講習会ですが,一流の講師陣から苦情処理のノウハウを学ぶには最適と思われます。

参考文献
1 )加藤晶子,石橋雅之,上治純子,大橋英明:騒音・振動の技術支援
─2019 年度分─,千葉県環境研究センター年報(令和元年度).

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騒音計や振動レベル計には CAL の機能がありますが,なぜレベルレンジ値に対して騒音計は−6 dB,振動レベル計は同じ値になるのでしょうか。また,騒音計の内部校正と音響校正器による校正の違いを教えてください。振動レベル計において,機器の動作確認方法があれば合わせてお願いします。(Vol.45No.1)
Vol.45 No.1

(リオン 尾崎徹哉)

サウンドレベルメータ(騒音計)は音圧レベルを測定する機器であり,音圧 1 Pa(パスカル)は 94dB です。その値を基準とし,音響校正器が出力するレベルは 94 dB/114 dB の製品が多く,レベルレンジ値に対して−6 dB となっております。
 騒音計における内部校正とは,騒音計本体の内部で生成される電気信号を用いて校正する方法です。マイクロホン感度が不変であることを前提としておりますので,マイクロホンやプリアンプは校正されません。一方,音響校正とは,その名の通り音響校正器(ピストンホンも含む)を用いて校正する方法で,マイクロホンから騒音計本体全体を校正することができます。
 平成 27 年(2015 年)11 月 1 日以降に型式承認を受けた騒音計は,日本産業規格 JIS C 1516(騒音計─取引又は証明用─)を引用する形で改正された特定計量器検定検査規則に適合し,型式承認番号は普通騒音計では TS ○○○,精密騒音計では TF ○○○と記載されます。これらの騒音計は音響校正器による校正のみが認められており,内部校正は校正用として使用してはなりませんのでご注意ください。

 振動レベル計は,JIS C 1510(振動レベル計)で,「校正装置をもつ構造のものは,校正レベル値又は校正レベルの標識を備えることとする」となっております。必ずしもレベルレンジの値と同じというものではなく,メーカや型式により異なるようです。
 以前の振動レベル計は,騒音計と同様に内部校正方式による校正機能をもつ製品が多かったようですが,近年の振動レベル計は Output Cal が多くなっています。Output Cal とは,振動レベル計と接続する外部機器(例えば,レベルレコーダ,データレコーダ,周波数分析器)のレベル合わせをするためのものであり,分かりやすいように,設定したレベルレンジと同じ値で出力されています。
 振動レベル計における機器の動作確認方法ですが,点検校正用の加振器が音響・振動計測器メーカより市販されています。また加振器を使用しない簡易チェックとしては,振動レベル計を複数並べて設置し,定常的な振動源に対して測定値の比較を行う,というような方法があります。

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Q:騒音規制基準値の適用について下記のような場合どのように考えればよろしいでしょうか。考え方と事例等がありましたらご教示ください。
Q-1:公道を挟んで自社工場があります。公道の東側は夜間規制基準値55dB、西側は45dBです。この場合、被害者はいないのですが、工場の公道側境界(道路境界)で夫々、規制基準値を守らねばならないのでしょうか。
Q-2:規制基準が異なる境界騒音(例えばプラント設置エリアの規制基準値55dB、周辺地域45dBのような場合)、環境アセスメントの目標値はどのように考えれば良いでしょうか。
Q-3:ボイラ安全弁のように非常時しか動作しない機器発生音の敷地境界への影響は騒音規制法上、どのように考えれば良いのでしょうか。(Vol.43No.1)
Vol.43 No.1

(芝浦工業大学 門屋真希子)

A、A-1

 結論から申しますと,騒音規制法で規制される対象であったとしても,執行責任は地方自治体にあり,また条例による規制対象の可能性もあるので詳しくは市あるいは県にお問い合わせください。

一般論として考えますと,規制基準値が公道をはさんで違いがあるため,公道が用途地域の境界であり,工場西側の規制基準値が45 dB から考えても住居の多い地域であろうと推測できます。ご質問では公道面だけに着目されていますが,西側地域の公道に面さない境界には住居があると考えられるので,そのような場合は敷地境界で45 dB 以内に収める方が良いと思います。また現在規制基準を満たしていたとしても,今後設備の老朽化に伴う異音などにより苦情が発生する可能性がありますので注意が必要です。

一方,工場東側の用途地域は規制基準55 dB から考えて,工業地域など住居の多くない地域と推測できます。規制基準の遵守さえ確保できればよしとするなら,公道に面する敷地境界で55 dB 以下にする必要がありますが,公道の幅の分の距離減衰を考慮したとしても,基準値に10 dB 差がある西側の地域(工場西側地域の公道面以外の敷地境界に近い場所)から苦情が発生する可能性があります。騒音苦情は規制基準以下で発生している事例が多いので,工場東側の地域に関しても配慮されたほうが良いでしょう。

A-2

 環境影響評価は,法,条例によって手続きは多少異なりますが,事業による環境への影響を回避,低減,代償することを目的としています。このため事業者は基準値の遵守は当然の責務ですが,環境への負荷をどれだけ低減できるか検討することが求められます。

環境影響評価の手続き(法)では,事業による事業に関する情報(配慮書),事業により発生する環境負荷の程度を予想するための現況及び予測調査方法に関する情報(方法書),調査結果及び影響の程度,事後(評価書発行後)調査や対策内容(準備書)が提出されます。情報提供が行われる度に住民意見の聴取や市町村長や都道府県知事の意見,主務大臣の意見が示されます(環境大臣は配慮書と準備書のみ)。最終的には準備書の訂正や住民意見等を踏まえて環境影響評価書としてまとめられます。このとき環境影響の予測結果が基準以下であれば問題ないと解釈されることも多いのですが,手続きの中で住民等からの環境影響に対する意見が出されているならば,その意見に対して真摯に対応されることが望ましいでしょう。

環境影響評価の目標として規制基準値55 dB の遵守は当然のことですが,住民の意見や環境負荷への低減を十分検討する必要があります。

A-3

騒音規制法(実際の運用は当該市区及び都道府県)では,規制対象地域内にある特定設備を有する特定工場について,特定設備以外の騒音も含めて敷地境界における規制基準が定められています。安全弁のような不定期に稼働する設備から発生する騒音については,自治体によって考え方が異なる可能性があるので,当該市区及び都道府県にお問い合わせください。

なお,どのような判断においても突発的な騒音は,苦情になる可能性もありますので,付近住民に理解を促す説明を十分になされた方がよいでしょう。

また,特定施設を有しない法対象外施設(条例に該当するかもしれないが)についても,上記と同様に,住民に説明しておくほうが良いでしょう。

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超低周波音の問題に当っては被害者側の意見を尊重した対処が必要であるとよく耳にしますが,その具体的な考え方について教えて下さい。(Vol.42No.1)
Vol.42 No.1

(株式会社S・Ⅰ・T 岡田健)

超低周波音による心身への生理的影響は人間の感性に関連するので個人差が大きく現れる。同じ音環境に住む家族でも被害を受けない人と、生理的影響が発症する人が共存するのが普通である。この様な問題を取り扱うにはまず「被害者側の意見を尊重して聞くことから始めるのが順序である。圧迫感、肩こり、眼球疲労、耳鳴り、様々な多症状が現れ、病院へ行くと症状が消え、帰宅すると再発すると言う状況になり、その原因が解明できない事が多い。しかし、被害者の意見を聞かず安易な思い込みや知識で、被害者を説得しようとする方法は決して問題の解決にはならない。騒音対策的発想は通用しない。

超低周波領域の音による心身への生理的影響は存在しないとの意見もあるが安易に否定することは注意すべきで、丁寧に原因を調べると原因解明ができることが多い。

2000年以降の対策には、不十分な調査・評価と不完全な対策技術で適切な処理が行われず被害者が苦しみ続けている事例を多く見る。

問題解決は、

1)原因究明、特に、心身上の症状と音・振動の関係、

2)発生メカニズムの究明、

3)音源機器の対策(発生機構の改修)の手順で行う。

超低周波音は単に周波数が低い音で常に、何処にでも存在しており、特別な音ではない。しかし、超低周波域の特異な発生音・音波が、心身に影響を発症させた事例、かつ、対策を行い改善した事例を1975年頃から多く報告してきた。最近は対策事例の報告が少なく、被害者の声は参照値で被害が否定され、対策に至らないと云う声を聞く。超低周波音は“聞こえないので心身への生理的、心理的影響は発生しない”と主張している根拠は何か? もし、これを”真”とするならば、ここで超低周波音による心身への影響を論ずることは無意味であろう。

1992年Colebatch と Halmagyi両生理学者は音刺激による頸筋,胸鎖乳突筋に 球形嚢―下前庭神経系に由来する筋電位反応を見つけ、鼓膜から入射した音波が蝸牛ばかりでなく、前庭にも伝搬し、前庭神経を通じて運動ニューロンへ信号を送り込んでいることを明らかにした。

〇 心身への被害に対する対策

現社会で騒がれている超低周波音問題は超低周波領域だけではなく、その倍音の数百Hz領域まで広がっており、更に、固体音による低音圧レベルの“気になる音”まで含めた問題となっている。本問題を診断する技術者は、まず、問題を仕分ける事が対策の第一歩である。そのため苦情は“煩い”ではなく、“身体の不調の訴え”である。機器設備から発生する“音、音波、振動の発生状態”、“伝搬特性”、“特徴のある音”(例えば、卓越成分)により異常が発生する場合、卓越成分が存在するが、卓越成分が存在しても異常が発生するとは限らない。“特異な変化”(例えばビート)、“特異な音の響き”そのものが体調不良の原因である。振動と音の伝搬特性に関わる固体音は心理的影響を誘引する原因となっている。発生音を音楽に例えると、楽譜に示されるがごとく、音程の外れた“卓越音を修正”し、“楽譜を編曲”すること、そして非常に小さな固体音“雑音”を防止する事が対策の基本となる。本問題を診断し、対策が出来るのは、実際に対策を行い、症状を治めた経験がある者でなければ、難いであろう。

この問題は食物アレルギー症状に似ている。ある特定の人には重篤な症状を発症させるが、隣の人には全く関係がない。外的物理刺激(音・振動)の存在によって生じる現象で、外的物理刺激が取り除かれれば、症状は消えるのが特徴である。

〇 超低周波音問題の調査・評価を行う前に

本問題は被害者の意見が重要であるが、特に参照値で評価されると音源機器側の協力が得られなくなり、その被害を目の前にしても認めて貰うのが非常に難しくなる。注意が必要である。

1は織物工場に隣接する住宅屋内外の典型的超低周波音問題発生のスペクトルである。25 Hz成分が住民に被害をもたらしていることは確認されている。参照値との比較では心身への影響の有無は判断できないとの評価であったが、参照値はあくまで参考であり、苦情者のことばや低周波音の発生状態を適切に判断して,被害者の意見を尊重した対処を継続することが重要と考える。

図1織機からの超低周波音スペクトル

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航空機騒音のうち,エンジンテストなど地上から発生する騒音の低減方法,測定評価上の課題について教えてください。(Vol.42No.4)
Vol.42 No.4

(アイ・エヌ・シー・エンジニアリング 井上保雄)

航空機騒音に係る環境基準の改正(平成2541日 施行)により,航空機騒音の評価量がWECPNLからエネルギー積分を行うLdenに変わりました。また,これまで対象にしていた飛行騒音に地上音も含めた航空機関連騒音について総合的に評価することになりました。飛行騒音については空港毎に離発着時間の制限や騒音軽減の運行方式(飛行ルートや高度など)などについて検討,実施され,一定の効果を上げてきました。また,旅客機はその型式証明においてICAO1)の騒音基準に基づく騒音レベル以下であることが求められ,2017年以降(小型機は2020年)の新しい機体に要求される新基準Chapter143点の合計値がChapter3よりも,それぞれ10dB減,17dB減)に対応し着実に低騒音化が進んでいます。

 一方,地上騒音についても,CO2削減などとも相まって取組が進められています。

主な航空機関連の地上騒音は下記の通りです。

・着陸直後のリバース騒音(旧環境基準でも考慮)

・地上走行(タクシーイング)騒音

・補助動力装置(APU2)の稼働騒音

・エンジン試運転時(エンジンテスト)の騒音

・その他の騒音(車輌等の騒音は含みません)

以下に主な地上騒音である航空機あるいはエンジン試運転時の騒音低減施設について説明します。

1. 施設に要求される性能

性質上,音響性能は基より,施設内でエンジンが正常に運転できる空力性能など細かい設計上の配慮が必要になります。

1.1 音響性能

・試運転時に発生する騒音が所定の位置で所定の騒音レベルを満たす。

1.2 空力性能

・エンジン前方で所定の気流条件を満たす。

1.3 その他の配慮事項

・機体あるいはエンジンに音響疲労等の影響を及ぼ

さない。

・空力的Recirculation(エンジン排気ガスを再び

吸込むこと)がない。

・グランドボルテックス等の渦がエンジンに吸い込

まれない。

・排気ガス温度が構成材料の許容温度以下になる。

FODForeign Object Damage)を発生しない。

・室内負圧が所定圧力に納まる。

・構造的に十分な強度を有する等。

2. 騒音低減施設の種類

2.1 航空機地上試運転騒音低減施設

航空機の点検,整備の一環としてジェットエンジンを機体に装着した状態 で試運転する時の騒音低減施設です。これは下記の種類に大別できます。

(1) フェンス(防音壁)型

機体の廻りを防音壁で囲うもの

(2)ダクト&フェンス型

ジェットエンジンの排気音低減のため,排気口に吸音ダクトを設置,エンジンとダクト間から漏れる音を低減するため防音壁を併用するもの

(3)セミハンガ型

機体の後方(ジェットエンジン排気側)のみを防音建屋に入れるもの

(4)ハンガ(ハッシュハウス)型

機体全体を防音建屋に入れるもの

このような施設が無い空港では,エプロン等で試運転が行われることもあります。

2.2 ジェットエンジン運転用騒音低減施設

オーバーホールの後,エンジン単体で性能確認運転する時の騒音低減施設です。通常,エンジンテストセルともいわれます。

 なお,戦闘機用エンジンの場合,高温の排気ジェットを冷却するため,空冷型と水冷型に分けられます。

 地上音の測定・評価上の課題として,タクシーイングを除き准定常騒音とみなされ,時間区分をまたがる,単発騒音等との重畳など評価量に及ぼす影響の処理に手間が掛かる,場合によっては音源の特定が難しい点などが挙げられます。

注釈1) ICAO : 国際民間航空機関

注釈2) APU : 小型ガスタービン補助動力装置

【参考文献】

1) 環境省 航空機騒音測定・評価マニュアル 平成2411

2) 航空機・ジェットエンジン試運転用騒音低減施設 IHI技報

   Vol.50 No.4 (2010)

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吸音材料として用いられる多孔質材料の吸音メカニズムと使用上の注意点について教えてください。(Vol.42No.5)
Vol.42 No.5

(エム・ワイ・アクーステク 山口道征)

多孔質材料とは,細かい気孔が無数にあいている材料で,多孔質を構成する素材は硬い物から軟らかい物まで多岐にわたり,構造も連通性から非連通性のものまで種々の材料があり,吸音・遮音材料として用いることができる。

◇多孔質材料の吸音要素
多孔質材料中の吸音要素は音波が細孔中を伝搬する際の粘性減衰,言わば,材料中の空気伝搬路における減衰,多孔質構造体の動的弾性挙動による振動減衰,言わば,固体伝搬路における減衰,空気音と固体音の相互作用,他に熱伝導,熱交換などに起因する減衰により音波は熱として消散され消滅する。
◇吸音性を表す量
通常の多孔質構造体においては,構造体自体も弾性体であるため,吸音性を表す量としては,固体振動要素を加味する必要があるが,吸音のメカニズムが複雑になるため,ここでは,構造体は剛であると仮定し,連通性の空気伝搬路における減衰のみに着目し説明を行う。
多孔質材料に音波が入射するとその表面で音波は入射方向に反射する波と材料中に浸入する波に分かれる。材料中に浸入した音波は減衰しつつ伝搬していくもので,伝搬定数γ および特性インピーダンスZcが材料中での音波の挙動を規定する基礎量となる。ここでは以下,論理的・実証的に扱いやすい条件である平面音波が材料に垂直に入射する場合を想定し話を進めることとする。
γ およびZcは下式で表すことができる。
γ=α+j・β 

γ : 伝搬定数

α : 減衰定数(nepers/m)
(1neper=8.686dB)
β : 位相定数=ω/C(radian/m)

(ω : 角周波数(radian/s),C : 位相速度(m/s))

Zc=ρe・Ce 

Zc : 材料の特性インピーダンス(N・s/m3)

ρe : 実効(等価)複素密度(kg/m3)

Ce : 実効(等価)複素位相速度(m/s)

◇伝搬定数γ および特性インピーダンスZcの計測方法
γ, Zcは多孔質材料に関わる音波の挙動を規定する複素基礎量であるため,これらの未知量を正確に計測できれば,多孔質材料のエネルギー評価値(吸収率・吸音率・透過率・透過損失など)などを容易に求めることができる。その方法は音響管を用いた伝達関数法1)と称する計測方法である。
◇計測上の注意点2)
音響管で測定すべき材料は連通性の多孔質材料が基本となるが,骨格構造が剛でないグラスウールなどの繊維系材料や軟質ポリウレタンフォームのような一般の材料においては,測定結果の中に骨格構造の振動の影響が加味された結果となるため注意が必要となる。第一に注意すべき点は,試料を管内にセットした際の拘束条件の影響により生じる曲げ振動であり,これは不要共振として取り除くべきもので,測定結果に影響を与える。
二番目も振動の問題であり,これは不要振動ではないが大いに認識すべき点である。第一の場合と同様,剛でない骨格構造をもつ試料は,不要共振とは別に,嵩高構造体としての縦振動の影響が測定値に必然的に加味される。そのため,同種の試料であっても,試料厚,平面寸法の差異により縦弾性率が違うため,測定結果に違いが生じることがある。

 

参考文献

1 )H. Utsuno, T. Tanaka, T. Fujiwara : Transfer function
method for measuring characteristics impedance and
propagation constant of porous materials, J.A.S.A., vol.
86, pp. 637-643 (1989).
2 )山口道征,豊田政弘: 小特集「音響管による垂直入射
吸音率測定」にあたって,日本音響学会誌,vol. 68,
no. 9,pp. 461-462(2012).

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「特定工場に該当しない工場からの騒音や特定建設作業に該当しない建設作業からの騒音の苦情が増加しているとのことですが,規制の変更や特定施設や特定建設作業の追加を検討されていますでしょうか。もし,既に検討されているのであれば,今後の予定を教えて下さい。これらの工場や建設作業を規制の対象に加えることで行政指導がしやすくなると思います。また,このような場合にはどのように対応すればよろしいのでしょうか。」(地方公共団体職員)。(Vol.41 No.2)
Vol.41 No.2

(日本騒音制御工学会事務局 堀江侑史)

ご質問のように最近では,必ずしも騒音レベルが規制値を超えていない場合や騒音規制法の対象とならない施設や建設作業からの騒音についての苦情相談も増えています。このように法規制の対象となっていない工場等からの相談については,環境行政職員が発生源や苦情者への対応に苦慮している現状もあるようです。また環境省では現在,規制の変更や追加について具体的な作業は行われていないと聞いています。
この場合に対応する根拠の一つとして「公害紛争処理法」があります。「公害」は環境基本法により,事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる①大気の汚染,②水質の汚濁,③土壌の汚染,④騒音,⑤振動,⑥地盤の沈下及び⑦悪臭によって,人の健康又は生活環境に係る被害が生ずること,と定義されており,この①から⑦までの7種類は,“典型7 公害”と呼ばれています。これら典型7 公害に関係する紛争であれば,公害紛争処理法により発生源や苦情者に対して対応が可能と考えられます。また「相当範囲にわたる」については,ある程度の広がりがあれば,被害者が一人であっても対象となります。最近苦情が多くなってきた低周波音についても,騒音・振動に関係する事案としてとらえられる場合は,この制度の対象と考えられます。
苦情対応には,騒音,低周波音,振動などの測定が必要であり,先ずは当事者が自ら測定を行う事が求められますが,管轄の地方公共団体も,苦情が寄せられた場合には可能な限り騒音,低周波音,振動の測定を行う事が期待されています。事業活動に伴い機器から発生する継続的な騒音等についても同様に対応を行う必要があります。
建設工事等の際に発生する騒音や振動についての被害に伴う苦情は,その期間中に騒音や振動の測定を行う必要があります。一般的な建設工事等の際に発生する振動に伴う建物被害の場合には,一般的な建物の経年劣化によるものなのか,地震等による被害なのかを適切に評価/判断しなければならず,専門的な知識が必要となる事案も多々見られます。工事開始の前,工事後に双方で被害の状況を確認することが望ましいです。
以上のように騒音規制法(または振動規制法)で対応が難しい被害の苦情があった場合には,公害紛争処理法を適用して住民対応が可能であるので環境行政担当職員も,いろいろな面から住民の生活環境を守るための対応が求められています。

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