日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

「 ●あ行 」の関連記事一覧

新型コロナ感染症の感染対策のために,ビニールシートや透明樹脂製の仕切り板が設置されていますが,会話のしづらさを感じます。音をどれくらい遮蔽しているのでしょうか。また,会話をしやすくする方法はありますか。(Vol.45No.6)
Vol.45 No.6

(小林理学研究所 杉江 聡)

 文献 1)によると,新型コロナウイルスの感染経路は,接触伝播,飛沫伝播及びエアロゾル伝播だそうです。WHO では,粒径が 5∼10 μm の呼吸器系由来のエアロゾル(吸入性エアロゾル)を「飛沫」,乾いた 5 μm 以下の吸入性エアロゾルを「飛沫核」として,飛沫で感染する経路を飛沫伝播,エアロゾルで感染する経路を飛沫核伝播と定義しています2)。接触伝播には消毒等の対策が,エアロゾル伝播には換気等の対策がとられると思います。一方,飛沫伝播においては,マスク着用,ソーシャルディスタンシングやご質問のような透明樹脂性仕切り板やビニールシートの対策がとられると考えられます。
 そこで,それらの遮蔽効果の実測の一例を図−13)と図−24)に破線で示します。縦軸は,各条件から仕切り無しを引いた結果で,負の値が大きいほど遮蔽効果が大きいことを意味します。ただし,この両図において,音源と受音点の距離は異なり,各々から仕切りまでが図−1 は 600 mm,図−2 は 300 mmです。
 図−1 は商店のレジ周りを想定して,天井から0.3 mm の塩化ビニールシートを,カウンターとの空間 250 mm を空けて垂れ下げた条件です。薄いビニールシートであっても 1000 Hz で 3 dB の遮蔽効果はあることがわかります。一方,図−2 は,厚さ3 mm のアクリル板(W900×H600 mm)を対象とした実測例です。ピークディップの激しい結果になっていますが,これは仕切りが立っている面(机の天板相当)からの反射音による干渉等が影響していると考えられます。さらに,高橋氏らは,マウスやフェイスシールド等を含めて音声伝搬への影響を検討していますので,そちらも参照してください5)。
 対策としては,暗騒音を下げることや,適切な吸音対策を行うことよって,会話のしやすさは向上すると考えられます。吸音の検討例として,草鹿らが仕切り板の両面に直接 MPP を設置する検討を行っており,比較的大きな吸音性能を示しています6)。
 また,スピーカ等を用いた拡声もひとつの方法と考えられますが,ここでは仕切りの音響的な透過性能を向上する方法を示します。有孔板を,空気層を介し仕切りの両面に設置し,Mass-air-mass の共鳴透過現象を利用して,透過音を向上する手法です。その実測例を図−1 と図−2 に実線で示しました。両条件とも共鳴周波数付近で大きく透過音が向上していることがわかります。詳細は参考文献をご覧下さい。

図−1 レジ周りのビニールシートの遮蔽効果の実測

図−2 樹脂性仕切り板の遮蔽効果の実測例

参考文献
1 )これからの感染症対策と環境工学∼2020-21 年・COVID-19 から何を学ぶべきか∼,
  2021 年度日本建築学会大会 環境工学部門 研究協議会資料,p. 4.
2 )World Health Organization (WHO):Infection prevention and control of epidemic- and pandemic-prone
acute respiratory infections in health care (World Health Organization, Geneva, 2014).
3 )杉江,鈴木,新田:飛沫防止用仕切り板の音響透過性能の向上 その 3 ─軽量軟質シートへの応用─,
  日本音響学会講演論文集,pp. 563-564(2021.9).
4 )新田,鈴木,杉江:飛沫防止用仕切り板の音響透過性能の向上 その 2 ─実用化の検討─
  日本音響学会講演論文集,pp. 1249-1250(2021.3).
5 )高橋,中家,山名:感染症対策が音声の伝達特性に与える影響の測定
日本音響学会講演論文集,pp. 247-250(2020.9).
6 )草鹿,阪上,奥園,山口,城戸:アクリルパーティションへの MPP の応用
  日本音響学会講演論文集,pp.1251-1252(2021.3)

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洋上風力発電施設の建設に伴い水中音の問題がクローズアップされているように感じていますが,昔から水中音問題はあったのでしょうか。あるいは近年になって水中音問題が認知されるような背景があるのでしょうか。(Vol.45No.5)
Vol.45 No.5

((公財)笹川平和財団 海洋政策研究所 赤松友成)

 水中の音は長く軍事機密のベールに包まれていました。米ソ冷戦時代には大西洋での潜水艦探知のため,水中音の観測システム(SOSUS)が構築されましたが,データはおろか存在すら公表されていませんでした。1989 年末にアメリカ合衆国のブッシュ大統領とソ連のゴルバチョフ共産党書記長がマルタで冷戦の終結を宣言しました。潜水艦探知システムのデータがコーネル大学で解析されたのを皮切りに,水中生物音響の研究が本格的に始まりました。
 最初は潜水艦が発する音と同じような周波数で鳴く大型のヒゲクジラの声を調べる研究が進展しました。すでにザトウクジラについては 1970 年代から歌を歌うと知られていましたが,太平洋や大西洋の広い水域での音響探査ができるようになったのは90 年代に入ってからです。衛星ではなく海中音響を利用したリモートセンシングと言えましょう。同時に,海中に存在する様々な音源が明らかになりました。クジラだけでなく魚やエビなど生物由来のBiophoney。降雨や波浪,地殻変動にともなって発生する Geophoney。そして船舶や海中工事にともなうAnthrophoney です。ただし海中騒音の場合には影響を受けるのが人間ではなく海洋生物でしたので,しばらくの間はこの問題の広がりは見られませんでした。
 ところが水中音響技術が民間に開放されてしばらく経った 2000 年代以降,水中音の実際の影響事例が多く示されるようになりました。ヒトを含む陸上の動物と同じように,海洋生物も騒音の暴露によって回遊行動の変化や聴覚感度の悪化や,場合によっては器官損傷に至ります。長期間の音響計測データの解析から,1960 年代以降に北米の西海岸沖で水中騒音レベルが上昇していたことや,2000 年代に入ってもインド洋で背景音レベルが徐々に上がっている様子が確認されました。
 これまでにない騒音が発生すれば,音声によるコミュニケーションに頼るイルカやクジラのような種類の回遊や繁殖に支障が生じるおそれがあります。海産哺乳類に関心の高い欧州ではネズミイルカを中心に大きなプロジェクトを組んで騒音の影響評価が行われるようになりました。日本は少し視点が異なります。漁業が盛んで,海の幸の魚介類をたくさん食べます。音波は,水中で遠距離まで届くので,それによって魚の行動が変わると,漁に影響が出るのではないかとの懸念があります。漁師さんは海の重要なステークホルダーですので,その意見は無視できません。
 海洋の利用と開発は,近年の技術的な進歩に助けられ活発になってきました。洋上風力発電はその最たるものですが,深海底の鉱物資源開発や地質構造の把握のための音響探査も多数行われるようになり,海中への人工音の放出が顕著になっています。世界の物流も活況を呈しており,高速なコンテナ船が世界中を行き来しています。こうした人工音の主成分は 1 kHz 以下に多く,この領域で感度がよいのはヒゲクジラ類と魚類です。水産資源としても海洋環境の指標生物としても重要な生物群です。
 持続可能な開発目標いわゆる SDGs は,いまや誰でも知っているキーワードになりました。私たちはこれまで大気や海洋に多くの負荷をかけてきました。それがいよいよ限界に達し,急速に地球環境が変化し始めています。子や孫の世代,さらに先々まで人類が持続的に幸せに生きるために社会構造を変えていかなければなりません。再生可能エネルギー開発も物流も,日本にとって重要です。一方で,漁業も海の生態系もしっかり守っていかなければなりません。海を持続的に利用するための一つの重要な課題として,水中の騒音に目が向けられるようになりました。

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1.違法建築の事業所から発生する騒音に対する苦情についての対応方法について教えてください。
2.騒音は基準値以内であるが,低周波音に関して苦情があった場合の対応方法について教えてください。
3.民家から発生する騒音に対して苦情があった場合の対応方法について教えてください。(Vol.42No.2)
Vol.42 No.2

(松戸市 桑原厚)

 1.建築物に関する法令と騒音に関する法令は別の法令であることから違法建築であるか否かに関わらず,騒音に関する法令を適用することができます。しかし,建築部門と環境部門が当該事業所に対して異なる指導等を行うことは事業所側からすると対応に困惑しますので,建築部門と環境部門で事前に情報共有し,合同で現地調査などをしていくことが必要です。また,違法建築を容認するような行為はできませんが,現に騒音で苦慮している住民がいることを考え,建築部門と環境部門で暫定的な方法でどこまでの対策が可能であるか等を確認しながら対応していくこととなります。

2.一般に,騒音が基準値以内であっても低周波音に関する苦情があった場合は環境省が公表している「低周波音問題対応の手引書(平成16 年6 月)1)」に基づき対応していくことになります。同手引書には苦情申し立てから解決までの流れも記載されており,苦情対応の参考となります。なお,法令による規制はないので行政指導への対応は任意ですので解決には発生源側の協力が必要になること等は事前に説明しておいた方が良いでしょう。

3.民家から発生するいわゆる近隣(生活)騒音については法令による規制がないのが現状です。これは,近隣(生活)騒音は日常生活を送るうえで一定程度の発生が見込まれることや被害者が原因者になりうることが一因であると考えられます。一方で,地方公共団体によっては近隣騒音防止指導要綱等を定め対応している団体もあります。ただし,この場合においても測定・評価方法等の定めはあっても行政指導には強制力はなく,解決には発生源側の協力が必要になること等は事前に説明しておいた方が良いでしょう。また,町会長さん等の方に間に入って相談にのっていただいたりすることも解決方法の一助となるでしょう。

 

参考文献

1)環境省環境管理局大気生活環境室: 低周波音問題対応の手引書,http://www.env.go.jp/air/teishuha/tebiki/index.html

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航空機騒音のうち,エンジンテストなど地上から発生する騒音の低減方法,測定評価上の課題について教えてください。(Vol.42No.4)
Vol.42 No.4

(アイ・エヌ・シー・エンジニアリング 井上保雄)

航空機騒音に係る環境基準の改正(平成2541日 施行)により,航空機騒音の評価量がWECPNLからエネルギー積分を行うLdenに変わりました。また,これまで対象にしていた飛行騒音に地上音も含めた航空機関連騒音について総合的に評価することになりました。飛行騒音については空港毎に離発着時間の制限や騒音軽減の運行方式(飛行ルートや高度など)などについて検討,実施され,一定の効果を上げてきました。また,旅客機はその型式証明においてICAO1)の騒音基準に基づく騒音レベル以下であることが求められ,2017年以降(小型機は2020年)の新しい機体に要求される新基準Chapter143点の合計値がChapter3よりも,それぞれ10dB減,17dB減)に対応し着実に低騒音化が進んでいます。

 一方,地上騒音についても,CO2削減などとも相まって取組が進められています。

主な航空機関連の地上騒音は下記の通りです。

・着陸直後のリバース騒音(旧環境基準でも考慮)

・地上走行(タクシーイング)騒音

・補助動力装置(APU2)の稼働騒音

・エンジン試運転時(エンジンテスト)の騒音

・その他の騒音(車輌等の騒音は含みません)

以下に主な地上騒音である航空機あるいはエンジン試運転時の騒音低減施設について説明します。

1. 施設に要求される性能

性質上,音響性能は基より,施設内でエンジンが正常に運転できる空力性能など細かい設計上の配慮が必要になります。

1.1 音響性能

・試運転時に発生する騒音が所定の位置で所定の騒音レベルを満たす。

1.2 空力性能

・エンジン前方で所定の気流条件を満たす。

1.3 その他の配慮事項

・機体あるいはエンジンに音響疲労等の影響を及ぼ

さない。

・空力的Recirculation(エンジン排気ガスを再び

吸込むこと)がない。

・グランドボルテックス等の渦がエンジンに吸い込

まれない。

・排気ガス温度が構成材料の許容温度以下になる。

FODForeign Object Damage)を発生しない。

・室内負圧が所定圧力に納まる。

・構造的に十分な強度を有する等。

2. 騒音低減施設の種類

2.1 航空機地上試運転騒音低減施設

航空機の点検,整備の一環としてジェットエンジンを機体に装着した状態 で試運転する時の騒音低減施設です。これは下記の種類に大別できます。

(1) フェンス(防音壁)型

機体の廻りを防音壁で囲うもの

(2)ダクト&フェンス型

ジェットエンジンの排気音低減のため,排気口に吸音ダクトを設置,エンジンとダクト間から漏れる音を低減するため防音壁を併用するもの

(3)セミハンガ型

機体の後方(ジェットエンジン排気側)のみを防音建屋に入れるもの

(4)ハンガ(ハッシュハウス)型

機体全体を防音建屋に入れるもの

このような施設が無い空港では,エプロン等で試運転が行われることもあります。

2.2 ジェットエンジン運転用騒音低減施設

オーバーホールの後,エンジン単体で性能確認運転する時の騒音低減施設です。通常,エンジンテストセルともいわれます。

 なお,戦闘機用エンジンの場合,高温の排気ジェットを冷却するため,空冷型と水冷型に分けられます。

 地上音の測定・評価上の課題として,タクシーイングを除き准定常騒音とみなされ,時間区分をまたがる,単発騒音等との重畳など評価量に及ぼす影響の処理に手間が掛かる,場合によっては音源の特定が難しい点などが挙げられます。

注釈1) ICAO : 国際民間航空機関

注釈2) APU : 小型ガスタービン補助動力装置

【参考文献】

1) 環境省 航空機騒音測定・評価マニュアル 平成2411

2) 航空機・ジェットエンジン試運転用騒音低減施設 IHI技報

   Vol.50 No.4 (2010)

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騒音測定において観測対象外の騒音が記録されることがありますが,簡易的な騒音の分離方法としてどのような方法がありますか。(Vol.41 No.1)
Vol.41 No.1

(大林組技研 池上雅之)

案件により様々な観測対象があるため,オールマイティな分離方法はありませんが,建築音響分野を対象にいくつかの実施例を上げてみますので,質問者の観測対象に応じて適切な分離方法を探して頂きたいと思います。

騒音規制法等に関連した騒音測定:
騒音規制法では,通常,騒音計を敷地境界に設置して測定します。しかしながら騒音計は一般の騒音に対してほぼ全指向性(無指向性)なので,敷地外の騒音も合成して測定してしまい,敷地外の騒音の影響が大きいと測定結果と規制基準の比較が困難になるという課題があります。そのため以下のような方法で,敷地外の騒音の影響の分離が試みられています。
a)時間で分離する(その1): 騒音レベルの測定と同時に録音や録画を行い,それを視聴して敷地外の騒音の影響のある時間帯だけ分析から除外する方法です。敷地外に時々車が通過する場合などに使われますが,手間が掛かる点と車の往来が途切れないと使えない点が欠点です。建設工事の一部の作業など,敷地内の騒音の影響が卓越して大きい場合は,それらの作業がある時間帯だけ分析することもあります。
b)時間で分離する(その2): 例えば工場の場合,工場稼働中と工場停止中の両方の測定を行い,その差分を敷地内(工場)の騒音の影響とします。敷地内外の騒音の影響とも,ほぼ定常的と仮定できる場合に,間接的に敷地内の騒音の影響を推定する方法です。
c)方向と時間で分離する: 騒音計に到来する音の方向を判定する装置を使い,敷地外の騒音の影響のある時間帯だけ分析から除外する(もしくは敷地内の騒音の影響のある時間帯だけ分析する)方法です。a)の除外作業を自動化しようとする試みであり,複数の全指向性(無指向性)マイクの到達時間差を利用したもの1), 2),複数の指向性マイクの組合せによるインテンシティ計測を利用したもの3)などがあります。
環境騒音の測定:
屋外から室内に伝わる騒音を予測する場合など,屋外の騒音負荷(騒音影響)を確認する目的で騒音測定を行います。
d)周波数とレベルで分離する: 例えば分析対象から緊急車両を除外したいなら,サイレンの音(960Hz と770 Hz が交互に生じる音)を手がかりにできます。コンパレータ出力のある騒音計,ブレーク接点(コイルに電圧が印加されたときだけ切断される)のリレー,ゲートトリガ動作があるレコーダーを使い,コンパレータバンドを1 kHz 帯域に設定することで,サイレン(1kHz帯域)がある一定レベルを下回る間だけ,収録することができます(メーク
接点(コイルに電圧が印加されたときだけ接続される)のリレーに置き換えることで,コンパレータレベルがある一定レベルを上回る間だけ収録することもできます)。
建物で生じる異音の測定:
建物で生じる異音(きしみ音等)の大きさや頻度を確認する等の目的で騒音測定を行います。
e)場所で分離する: 固体音の場合は,建物内の広い範囲に伝わる性質を利用して,PS(パイプシャフト)や倉庫などにマイクロホンを設置して,建物利用者の発生音の影響を受けにくくします。
この他,航空機騒音のモニタリングの分野では,目的外騒音の除外の方法4)がいくつか実用化されており参考になると思われます。

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製品音などの音のクオリティを評価したい場合,騒音レベルだけでなくひとの聴感特性をより子細に考慮した評価尺度が必要となる場合がありますが,どのような尺度があるのでしょうか。(Vol.41 No.4)
Vol.41 No.4

(広島市立大学 石光俊介)

JIS Z 8106によると、音は「音波またはそれによって引き起こされる聴覚的感覚」と定義されています。“聴覚的感覚”というように,これまで音の評価は耳で行ってきました。しかし、評価の客観化のために数値化も必要になってきており、音の物理量と聴覚を通した感覚による心理量を結びつける研究がなされてきました。それらのうち、音の大きさや鋭さ、あらさの評価を行う音質評価指標1)があります。代表的なものに次のようなものがあります。

ラウドネス(loudness)

ラウドネスは人が感じる音の大きさを評価する指標です。人は24kHzあたりがよく聞こえ、低い周波数と高い周波数は聞こえにくい特性を持っています。また、大きな音が小さな音を聞こえにくくするマスキングもあります。これらの特性を考慮し音の大きさを表現しようとしたものです。また、ISO532-1, ISO532-2として今年新たに規格化されました。

シャープネス(sharpness)

シャープネスは人が感じる音の高さを評価する指標です。ラウドネスの周波数特性の重心で評価します。よって高い周波数のラウドネスが大きいとシャープネスは大きくなり、甲高さを感じます。

変動強度(fluctuation strength)

変動強度は音から感じる変動感を評価する指標です。低い周期で変調するときに人は変動感を感じ、その変調が4Hzのときに最大値となります。

ラフネス(roughness)

ラフネスは人が感じる音のあらさを評価する指標です。変動強度において、20Hzの変調周波数を超えると、人はその変動についていけなくなり、あらさを感じるようになります。その変調が70Hzのときにラフネスが最大となります。 

音質評価指標ソフトウエア

以上の音質評価指標を手軽に試せるフリーソフトウエアとして、Psysound3 2)があります。ただしMATLAB版しか公開されていません。校正信号と解析したい騒音を読み込むことで、上に述べた評価指標の他,スペクトログラムなどの簡単な信号解析もできます。

以上の指標ですが、過渡音、エンジン加速音や楽音など非定常な信号を用いる場合、これらの指標と物理量の対応付けに疑問を呈する報告もあります3)。そこで、聴覚の多重解像度も考慮した時変ラウドネス4)という非定常騒音を評価する指標もケンブリッジ大学のWeb上に公開されています。なお、新しいラウドネスの規格では一部非定常騒音にも対応しています(ISO532-1)。

 

一方で、感覚の次元を決定する方法にOsgoodらのSD(semantic differential)5)があります.この方法により,音を聞いたときの感覚空間の次元を見いだして、それぞれの感覚因子と物理量を結びつける研究もなされています. たとえば、ゴルフショット音やボタン押し音などの過渡音では、音質評価指標だけでなく、ウェーブレット解析という時間周波数解析から抽出された特徴量による重回帰分析結果が各因子とよく一致するという報告6)もあります。

 

参 考 文 献

  • Fastl, E. Zwicker : Psychoacoustics Facts and Models, (Springer, Berlin Heidelberg, 2007)
  • http://www.densilcabrera.com/wordpress/psysound3/
  • 例えば、 Kubo, V. Mellert, R. Weber and J. Meschke: Engine sound perception: Apart from so-called engine order analysis, Proc. of CFA/DAGA’04, pp.867-868 (2004)
  • R.Glasberg, and B.C.J. Moore : A Model of Loudness Applicable to Time-Varying Sounds, J. Audio. Eng. Soc. ,50, pp. 331-342, (2002)

http://hearing.psychol.cam.ac.uk/Demos/demos.html

  • E. Osgood, J.G. Suci and P.H. Tannenbaum: The Measurement of Meaning, Illinois Press (1957)

例えば、阪本浩二,石光俊介,荒井貴行,好美敏和,藤本裕一,川崎健一:カーオーディオ・メインユニットのボタン押し音評価に関する検討- 第1 報 ウェーブレットによる特徴分析-日本感性工学会論文誌 Vol.10 No.3 pp.375-

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MRI 騒音対策にはどのようなものがありますか。(Vol.40 No.1)
Vol.40 No.1

(関西大学 梶川嘉延)

MRIは任意の方向の人体の断面画像を撮像可能なため, 医療分野においては欠くことのできない医療機器の一つとなっている。 しかしながら,MRIは撮像のために静磁場中に配置された傾斜磁場コイルに電流の緩急を与えることにより, それに伴うローレンツ力により傾斜磁場コイルが振動し, 高い音圧レベルを有する騒音が発生する。 その音圧レベルは最大で100dBを超えることもあるため, その深刻な騒音暴露に対する対策の必要性も指摘されている。そのため,現状ではMRI検査の際には,耳栓やイヤープロテクタ, 撮像部位によってはヘッドホンの装着が必須となる。

MRI騒音に対する対策は, 受動騒音制御(パッシブノイズコントール) による対策, 撮像シーケンスのコントールによる対策,能動騒音制御(アクティブノイズコントロール), に大きく分類される。パッシブノイズコントロールによる対策の代表例は,耳栓やイヤープロテクタの利用である。この場合, 高い周波数成分の騒音低減には効果的であるが, 原理上低い周波数成分の騒音を低減するのは困難である。 また, 耳栓やイヤープロテクタの装着は耳への圧迫感を与えるとともに,必要な音まで遮ってしまうという問題がある。特に肉声による対話を著しく妨げることは医療現場においては大きな問題点となる。さらに,心理的不安を少なからず与えることも事実である。

他にも, 傾斜磁場コイルを真空中に設置するとともに, 傾斜磁場の振動を免震する構造を取り入れたMRI装置も開発されている。この対策により騒音低減を実現できるが, 設置済みのMRI装置は世界中には多数あるため, コストを考えるとすべてをその装置に置き換えることは現実的ではない。

次に, 撮像シーケンスを制御することで騒音が発生しにくいもしくは騒音が大きくならないようにする試みもなされており, 最大で20dB程度の音圧レベルの低減を達成したという報告もある。 しかしながら, この方法の大きな欠点は撮像方向や解像度などに大きな制限を与えるということである。

最後に,MRI騒音の低減のためにアクティブノイズコントロール(ANC)を利用することも検討されている。 ANCは重ね合わせの原理に基づいた騒音制御法である。 すなわち, 制御対象となる騒音に対して同振幅で逆位相の擬似騒音をスピーカから放射し,騒音と干渉させることでその騒音を低減する。ANCによるMRI騒音の低減の試みは多くなされており, 30dB以上の騒音低減効果が実現されたという報告もあるが, シミュレーションや実験室による模擬実験による成果にのみ留まっているケースが多い。また, ヘッドホンにANCを導入した事例が多いが, ヘッドホンの利用は肉声による対話を阻害するとともに,耳への圧迫感などのため長時間の利用は困難である。 しかしながら, ANCは低い周波数成分の低減に効果的であることから, よりMRI 装置に適したANCシステムの検討が近年なされている。その一例としては, スピーカとマイクロホンを耳介近傍に設置したヘッドマウント型ANCシステムがあり, 500∼2,500Hzの帯域における周期性成分を約30dB低減することに成功している。また, 耳を塞がない構成のため肉声による対話も可能であり, 耳への圧迫感も軽減されている。 別のアプローチとしては,枕にANCシステムを導入することで, より自然な形で騒音低減を享受できるシステムについても近年検討されている。

以上のように,MRI騒音のための対策にはさまざまなものがあるが, まだまだ解決すべき課題が残されているものの, アクティブノイズコントロールによる対策が今後は主流になっていくのではないかと考えられる。

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Q(1) 残響室を使って測定した吸音率と音響管を使って測定した吸音率が異なる結果になるのはなぜですか?
Q(2) 残響室法吸音率が1 を超えることがあるのはなぜですか。(Vol.40 No.6)
Vol.40 No.10

(音環境技術研究所 小白井敏明)

A-(1)

残響室吸音率測定は、音響管に比べて現実に近い測定条件という事がいえます。そして吸音材(吸音体)の種類や構造に制限がありません。

さて、空の残響室(体積の残響時間T(1)Sabineの残響式によって空の残響室法吸音率が計算されます。残響時間はランダムノイズ音の遮断によって1/3オクターブバンドノイズ音圧レベルが60dB減衰する時間です。

次に吸音材(または吸音体)を使用状態と同じ方法で設置し、吸音材の立体的面には音波が様々な角度から入射します。残響室法吸音率は(2)Eyringの残響公式によって求まります。は試料の面積です。


(2)で得られた残響室吸音率は、吸音材への入射音の角度がランダム入射であるために、吸音体の表面積の応答差、残響時間の誤差が生じて、吸音率の数値の再現性、安定性に影響します。

音響管で測定できる吸音材は一般的には多孔質材と呼ばれ、単層、積層状の多孔質材が測定対象となります。吸音材の外径は音響管内径と同じになります。また吸音率は吸音材が剛壁の前面に密着設置された場合の数値です。吸音材に平面音波を入射すると、直接反射波、透過波が剛壁面で全反射して入射面に透過する波、吸音材内部の繰返し反射波が発生して、吸音材表面で再現性の高い干渉波を形成し、(3)で吸音率が計算されます。

Rは反射係数で(4)で計算されます。は吸音材表面から見た音響インピーダンス、ρcは空気抵抗です。

    

垂直入射吸音率の誤差要因は吸音材の設置の安定性です。また、この吸音率は垂直入射条件であるため外径サイズ(大きさ、厚さ)で決まる最大値を示し、再現性、安定性共に優れています。

残響室と音響管で求めた吸音率の違いは、一例として、図-1の多孔質材(孔が連通)の吸音率で示すことができます。この多孔質材は、残響室内では入射角度、入射音速、透過角度、透過音速間でスネルの法則が成立して、音波は吸音材の法線軸と接近した狭い角度範囲で進行します。この吸音率は「ISO 10534付属書Finformative)の局所作用吸音材の拡散音吸音率の決定」の計算式(F.1)で計算されます。

図-1 厚さ40mmのウレタン吸音材の垂直入射吸音率と拡散音場吸音率の違い

A-(2)

残響室法吸音率が1を超える原因は、吸音材の立体面への音波の入反射が複雑で実面積より大きめになる効果によって残響時間が小さくなり、吸音率が1より大きくなるためです。図2に例を示します。

図-2 コンクリート面に密着した厚さ50mmのロックウールの残響室法吸音率

(a)密度40kg/m3,12.7Rayl/cm(b)密度100kg/m3,22Ray/cm

(室内音響学(市ヶ谷出版局)P173より)

 

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複数のマイクロホンを利用して音の到来方向がわかる技術があると聞きましたが、どのような原理に基づいて実現しているのでしょうか。また、実際の適用例があれば教えてください。(Vol.39 No.1)
Vol.39 No.1

(リオン株式会社 廻田恵司)

間隔(d)を持つ一対のマイクロホンを地面に垂直に設置した時,飛行する航空機が発する音波が仰角θ でマイクロホンに進入する場合(図−1),その音波が2 個のマイクロホン(M1, M2)に到達する時間差をτ とすれば,仰角θと時間差τ は音速をC と
して以下の式が成り立ちます。
この時,マイクロホンM1, M2 に入ってくる音圧波形には時間差τ に相当する差を持ってその音源による信号が含まれています。この二つの信号の相互相関を算出すると,時間差τ に相当する位置においてその音源に由来する極大値が現れます。この極大値の位置から時間差τ を求め,⑴式を用いると仰角θを得ることが出来ます。また,3 軸のマイクロホンペアを用いると3 次元での方向ベクトルを求めることができます。3 軸を利用して音速に影響されない仰角を得ることも出来ます。一定時間ごとに音圧波形を区切り相互相関を求め算出することで音の到来方向の時間変化を得ることが可能となります。3 軸を用いて音の到来方向を求めると,図−2 に示すように上空を通過する航空機の音の到来方向の時間変化を単位球面上にプロットした図を得ることも出来ます。

実際の適用例として,リオン製環境騒音観測装置NA-36, NA37 に実装されています。本機は航空機騒音の自動監視に音の到来方向を用いて,上方で移動する音源が存在するか否かを判定しています。

図 1 音の到来方向とマイクロホンM1,M2

          図 2 音の到来方向の時間変化

 

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室間音圧レベル差や床衝撃音レベルなどの測定で、受音側室内の吸音力はどの程度測定値に影響するのか目安といったものはありますか。(Vol.36 No.3)
                             (石膏ボード製造会社 社員)

((株)鹿島建設 技術研究所 安藤 啓)

室間音圧レベル差や重量・軽量床衝撃音レベルの現場における測定方法は,日本では JIS(日本工業規格)に制定されており,それには JIS A 1417(2000)“建築物の空気音遮断性能の測定方法”とJIS A 1418(2000)“建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法”があります。さらに後者は 2 部構成となっており,第一部は標準軽量衝撃源による方法,第二部は標準重量衝撃源による方法となっております。ご質問のように,受音側の等価吸音面積(吸音力)によってこの測定結果は変化します。定常的な音の場合,等価吸音面積が 2 倍になれば,その場の音圧レベルは,理論的には 3 dB の低下となります。室外から入射して来る騒音を低減させる方法としては,この吸音力を増加させることは有効な方法です。

隣室からの騒音や上階からの床衝撃音を聞いている人にとっては,実際の値そのものが,音環境となりますので,上記の JIS においても測定された絶対値で評価する手法がとられています。しかし,壁や床といった建築部位材単体の遮断性能を評価し,他部材と比較する場合には,この吸音力の影響を除く必要があります,そこで,この実測値以外に上記のJIS では,受音室内の残響時間を測定して,そこから計算される吸音力を用いて換算し比較する方法も提示されています。残響時間は 0.5 秒,吸音力は 10m2を基準として換算した値で,吸音力を基準とした場合には規準化,残響時間を基準とした場合には標準化という言葉をつけて区別しています。すなわち,音圧レベル差の場合には規準化音圧レベル差と標準化音圧レベル差,軽量床衝撃音では規準化床衝撃音レベルと標準化床衝撃音レベルとなります。但し,重量床衝撃音のみは,パルス的な衝撃音の最大値を測定するため,吸音力の影響は受け難いためこの考え方を取っていません。

これらを詳しく知りたい方は,関連 JIS を参照してください。

関連 JIS

  • ・JIS A 1416 実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法.
  • ・JIS A 1417 建築物の空気音遮断性能の測定方法.
  • ・JIS A 1418-1 建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法─第一部 : 標準軽量衝撃源による方法.
  • ・JIS A 1418-2 建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法─第二部 : 標準重量衝撃源による方法.
  • ・JIS A 1419-1 建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法─第一部 : 空気音遮断性能.
  • ・JIS A 1419-2 建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法─第二部 : 床衝撃音遮断性能.

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