日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

「 音声コミュニケーション 」の関連記事一覧

新型コロナ感染症の感染対策のために,ビニールシートや透明樹脂製の仕切り板が設置されていますが,会話のしづらさを感じます。音をどれくらい遮蔽しているのでしょうか。また,会話をしやすくする方法はありますか。(Vol.45No.6)
Vol.45 No.6

(小林理学研究所 杉江 聡)

 文献 1)によると,新型コロナウイルスの感染経路は,接触伝播,飛沫伝播及びエアロゾル伝播だそうです。WHO では,粒径が 5∼10 μm の呼吸器系由来のエアロゾル(吸入性エアロゾル)を「飛沫」,乾いた 5 μm 以下の吸入性エアロゾルを「飛沫核」として,飛沫で感染する経路を飛沫伝播,エアロゾルで感染する経路を飛沫核伝播と定義しています2)。接触伝播には消毒等の対策が,エアロゾル伝播には換気等の対策がとられると思います。一方,飛沫伝播においては,マスク着用,ソーシャルディスタンシングやご質問のような透明樹脂性仕切り板やビニールシートの対策がとられると考えられます。
 そこで,それらの遮蔽効果の実測の一例を図−13)と図−24)に破線で示します。縦軸は,各条件から仕切り無しを引いた結果で,負の値が大きいほど遮蔽効果が大きいことを意味します。ただし,この両図において,音源と受音点の距離は異なり,各々から仕切りまでが図−1 は 600 mm,図−2 は 300 mmです。
 図−1 は商店のレジ周りを想定して,天井から0.3 mm の塩化ビニールシートを,カウンターとの空間 250 mm を空けて垂れ下げた条件です。薄いビニールシートであっても 1000 Hz で 3 dB の遮蔽効果はあることがわかります。一方,図−2 は,厚さ3 mm のアクリル板(W900×H600 mm)を対象とした実測例です。ピークディップの激しい結果になっていますが,これは仕切りが立っている面(机の天板相当)からの反射音による干渉等が影響していると考えられます。さらに,高橋氏らは,マウスやフェイスシールド等を含めて音声伝搬への影響を検討していますので,そちらも参照してください5)。
 対策としては,暗騒音を下げることや,適切な吸音対策を行うことよって,会話のしやすさは向上すると考えられます。吸音の検討例として,草鹿らが仕切り板の両面に直接 MPP を設置する検討を行っており,比較的大きな吸音性能を示しています6)。
 また,スピーカ等を用いた拡声もひとつの方法と考えられますが,ここでは仕切りの音響的な透過性能を向上する方法を示します。有孔板を,空気層を介し仕切りの両面に設置し,Mass-air-mass の共鳴透過現象を利用して,透過音を向上する手法です。その実測例を図−1 と図−2 に実線で示しました。両条件とも共鳴周波数付近で大きく透過音が向上していることがわかります。詳細は参考文献をご覧下さい。

図−1 レジ周りのビニールシートの遮蔽効果の実測

図−2 樹脂性仕切り板の遮蔽効果の実測例

参考文献
1 )これからの感染症対策と環境工学∼2020-21 年・COVID-19 から何を学ぶべきか∼,
  2021 年度日本建築学会大会 環境工学部門 研究協議会資料,p. 4.
2 )World Health Organization (WHO):Infection prevention and control of epidemic- and pandemic-prone
acute respiratory infections in health care (World Health Organization, Geneva, 2014).
3 )杉江,鈴木,新田:飛沫防止用仕切り板の音響透過性能の向上 その 3 ─軽量軟質シートへの応用─,
  日本音響学会講演論文集,pp. 563-564(2021.9).
4 )新田,鈴木,杉江:飛沫防止用仕切り板の音響透過性能の向上 その 2 ─実用化の検討─
  日本音響学会講演論文集,pp. 1249-1250(2021.3).
5 )高橋,中家,山名:感染症対策が音声の伝達特性に与える影響の測定
日本音響学会講演論文集,pp. 247-250(2020.9).
6 )草鹿,阪上,奥園,山口,城戸:アクリルパーティションへの MPP の応用
  日本音響学会講演論文集,pp.1251-1252(2021.3)

閉じる

分野

キーワード

フリーワード

PAGE TOP