日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Vol.45, 2021-3

振動が家屋によって増幅され,苦情が発生する場合があると聞きました。こうした増幅現象を調べるには,どのような調査が行われるのか教えてください。(Vol.45No.3)
Vol.45 No.3

(埼玉県環境科学国際センター 白石英孝)

 重さ(質量)とかたさ(剛性)をもつ物体は固有振動数をもち,それに近い周波数の加振力が作用すると振動が増幅されます。これが共振による振動の増幅現象です。ご質問をいただいた,家屋による振動の増幅とは,この共振に由来するものと考えられます。屋内の振動が,家屋によって増幅されているかを推定するには,いくつかの調査方法がありますが,ここでは 2 つの事例をご紹介します。

◇振動測定マニュアルに基づく調査事例
 振動測定マニュアルによる家屋振動特性の測定では,家屋近傍の地盤振動と家屋内の居住空間(振動を最も不快に感じるところ)で上下・水平 2 方向の振動加速度レベルを同時測定し,1/3 オクターブバンド分析を行います1)。調査事例では2), 3),この方法で得た道路交通振動等に由来する振動の分析結果を用いて,地盤振動と屋内のレベル差を求め,家屋の振動増幅特性を推定しています。この場合,レベル差が大きい帯域が共振による増幅が発生している周波数と推定されています。2003 年から 2010 年に建築された 120 棟の工業化住宅を対象に調査が行わ
れ,その結果として,家屋の構造によってやや異なりますが,2 階,3 階の床の水平振動に 4∼6.3 Hz の共振によるピークが現れ,数倍程度に増幅されていることが報告されています。

◇伝達関数測定に基づく調査事例 
 この事例では,地盤の微振動(微動)とそれによって生じている家屋振動(水平 2 方向)の加速度を同時測定し,家屋の振動特性(伝達関数)を求めています。微動は人体に感じない微弱な振動であるため,交通振動等の影響を避けて測定を行い,また,伝達関数を求めるには 2 チャンネル以上の同時分析が可能な FFT 分析器を使用します。伝達関数に現れる卓越成分の周波数が,家屋の固有振動数に相当し,その振幅は地盤振動の増幅割合に相当します。また,伝達関数から家屋の減衰定数を推定することができます。この調査事例では,1980 年代後半に66 棟の 2 階建て工業化住宅を対象に調査が行われ,良好な伝達関数が得られた 41 棟分の中央値は,固有振動数が 6.8 Hz,増幅度が 7.3,減衰が 4.5% という結果が報告されています。

 ここでご紹介した 2 つの事例は,建築年代が異なる戸建て住宅を対象としていますが,ともに 10 Hz以下に固有振動数をもち,屋内の水平振動については地盤に対して数倍程度の増幅が発生しうるものと推定されています。

参考文献
1 )https://www.ince-j.or.jp/subcommittee/kankyoshindo
hyoka(2021/3/29 閲覧)
2 )国松直:家屋の振動増幅特性の把握,騒音制御,vol.
42,no. 3,pp. 113-116(2018).
3 )平尾善裕,国松直,東田豊彦:地盤振動に起因する木
質系・鉄骨系戸建て住宅の振動増幅特性,日本建築学
会技術報告集,vol. 19,no. 42,pp. 631-634(2013).
4 )松岡達郎,白石英孝,毎熊輝記:物理探査,vol. 40,no.
2,pp. 117-128(1987)

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