日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Vol.44, 2020-6

工場の計画にあたって,労働安全衛生上,目標とすべき作業場内の騒音,床の振動についてご教示ください。また,関連して配慮すべき事項などがありましたら教えてください。

( 独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 高橋幸雄 )

「工場の計画にあたって」ということなので,以下では屋内作業場を対象とします。

まず,騒音に関する労働安全衛生上の指針としては,騒音性難聴の予防を目的として厚生労働省(当時は労働省)が1992年に示した「騒音障害防止のためのガイドライン」(以下「ガイドライン」)があります。ガイドラインでは,騒音測定値に基づいて作業場を第Ⅰ(85 dB未満),第Ⅱ(85 dB以上90 dB未満)または第Ⅲ(90 dB以上)管理区分に分類し,各管理区分で必要な措置を規定しています。このうち,その作業環境の継続的維持に努めればよいと規定されている第Ⅰ管理区分が望ましい環境なので(第Ⅱ,第Ⅲ管理区分については,環境改善のための措置が規定されています),聴力保護の観点からの目標値は85 dB未満ということになります。

ここで,管理区分の分類に利用する騒音は「作業環境測定基準」に則って測定するという点に注意が必要です。ここでは概要だけを記しますが,対象となる作業場の床面上に縦,横に等間隔で引いた線(間隔は6 m以下。縦と横の間隔は異なってもよい)の交点上,1.21.5 mの高さを測定点とし,各測定点で10分間以上の等価騒音レベルを測定します(「A測定」と呼びます)。そして,それらの算術平均値,つまり対象作業場の平均的な等価騒音レベルで分類します。しかし,音源に近接して作業が行われる作業場などの騒音はA測定では適切に評価できない可能性があるので,そのような場合は,音源に近接して作業を行う作業者の位置での測定を補完的に利用します(近似的な個人曝露量測定で,「B測定」と呼びます)。詳しくは,ガイドライン及び作業環境測定基準を参照してください。

騒音が85 dB以上の第Ⅱ,第Ⅲ管理区分となる作業場では騒音低減対策が必要ですが,一般的に後付けの対策は業務への支障が大きい上に,コストも大きくなります。従って,機器の導入時にできるだけ発生騒音の小さい機種を選定することを第一歩として,工場の計画段階から,音源対策(遮音材での囲い込み,防振台の利用,適切なメンテナンスなど),伝搬経路対策(吸音材による反射音の低減,作業者用の防音室の設置など),受音者側での対策(作業工程・スケジュールの調整による騒音曝露時間の低減,防音保護具(耳栓,イヤーマフ)の着用など)を想定し,盛り込んでおくことが必要です。

次に床の振動に関してですが,現在,労働安全衛生の観点からの国の指針はありません。2011年までは,日本産業衛生学会が,立位の作業者に生理機能障害や著しい作業能率の低下をきたさないことが期待されるという意味での「全身振動の許容基準」を示していたのですが,根拠となっていたISO規格(現在のISO 2631シリーズ)の改訂に伴い,現在では主に運転士・ドライバーを対象とした,腰痛リスク低減のための基準に変わっています。

労働安全衛生上の指針ではありませんが,日本建築学会が,2018年に「建築物の振動に関する居住性能評価規準」を示しています。これは,一般住宅や事務所の居住快適性評価を目的としたもので,床面での鉛直振動(330 Hz)及び水平振動(0.130 Hz)の1/3オクターブ分析結果を評価用曲線と比較することにより,居住者の不快度を評価することができます。大型機器が多数設置されているような作業場には適用できませんが,工場内事務所の床の振動による影響を検討する場合などでは,参考になるかもしれません。

また,騒音の場合と同じく,計画段階から,必要になった場合の対策を想定しておくと良いでしょう。

 

 

 

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