日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Vol.44, 2020-5

工場・事業場から発生する騒音は、事業活動によって発生するものとして騒音規制法や条例で規制を受けています。しかし個人住宅から発生する日常生活の音に関しては規制されないのでしょうか。(Vol.44No.5)

(元芝浦工業大学 門屋 真希子)

騒音規制法では地域を指定し、指定された地域において事業活動に伴って発生する騒音(工場、事業場、建設作業)を対象としています。一方、深夜営業や拡声器騒音などは、騒音規制法では規制されていませんが、地域の自然環境や社会的な条件から、営業時間などを制限するなどにより地域住民の生活環境を保全するために必要と認められるときは条例で必要な措置を講じるようにと定めています。

人が生活することによって発生する騒音を生活騒音と呼び、例えばテレビ、オーディオ機器からの音、ピアノの音、ペットの鳴き声や子供が飛び跳ねたときに発生する音などが含まれます。

生活騒音に対する苦情の発生頻度等については、総務省公害等調整委員会が毎年まとめている公害苦情調査(平成30年度版)によると、騒音(低周波音を含む)の苦情は15.881件あり、このうち発生原因が家庭生活(ペットを除く)924(6%)でした。この数字は決して少ないものではありません。生活するうえで様々な音を発生させているため、なくすことのできる音ではないからです。そして気が付かないうちに近隣の方にとっては気になる音や迷惑に感じられ、加害者にも被害者にもなりうる可能性があります。苦情にならないようにするには、お互いに近隣に配慮していくことが重要です。

生活騒音は条例により規制される場合がありますが、多くの場合は「生活環境への配慮」や「静穏の保持」やといった文言による規制です。それは数値規制が採用されると近隣関係に悪影響を及ぼす場合もあり、むしろ話し合いによる解決が最良と考えられるからです。例えば〇〇㏈までは音を出してもよいと解釈して問題がさらにこじれてしまう場合や、ささやくような小さな声で人の名前を呼び続けるようなことが許されるのだと誤解を招きかねず、数値規制はなじまないのです。

大阪府条例(大阪府生活環境の保全等に関する条例第102条)によると、「日常生活に伴って発生する騒音により周辺の生活環境を損なうことのないよう配慮しなければならない」とあり、より良い隣人関係をつくり、お互いが相手の立場を理解して防音対策を講じることで、快適な生活環境が実現できるよう工夫することが必要としています。

一方、数値規制を採用しているように見える東京都の「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」(平成1212月施行)は、昭和39年の東京オリンピック終了後に夜間屋外で騒ぐ若者の声が問題となり、それらをやめさせる目的で当時の東京都公害防止条例に盛り込まれたものです。

夜間のコンビニや店舗へ出入りする人の声に対しては、深夜営業(カラオケや飲食店など)の規制として対処している自治体もあります。例えば東京都は売り場面積250平方メートル以上、埼玉県では500平方メートル以上の小売店に対して規制地域ごとに規制しています。また屋外のレジャーとして河川敷や海水浴場でのバーベキューは騒音だけでなく、においやゴミ問題となるため、狛江市では「狛江市多摩川河川敷の環境を保全する条例」(平成244月施行)を制定し、市が指定した環境保全区域でバーベキューを禁止しています。さらに花火などにより発生する騒音に対しては、使用料を徴収する或いは行為自体を制限する条例などにより解決を図ろうとする取り組みがなされています。藤沢市の「藤沢市きれいで住みよい環境づくり条例」(平成19720日施行)により、海岸等の公共の場所における夜10時以降のロケット花火や打ち上げ花火などの騒音(通常の燃焼音以外の音)の出る花火は禁止されています。

 

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