日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Vol.43, 2019-6

屋内の設備機器などにより発生した騒音が透過音なのか固体伝搬音なのかの見分け方と,それぞれの対策の考え方や検討手順を教えてください。(Vol.43No.6)
Vol.43 No.6

(京都大学高野靖)

透過音は空気伝搬音とも呼ばれ,音源から放射された音により壁面が音響的に加振されて隣接する部屋に透過したり,壁の開口部やダクトなどを伝搬したりする音です。空気伝搬音は音源から遠くなればなるほど騒音レベルが小さくなる,また壁面を透
過する音は周波数が低い方が透過しやすいといった特徴があります。一方固体伝搬音は,音源の振動が建物の躯体を伝搬し音が放射されるものです。固体伝搬音が問題となる機器は,あらかじめ建物に対して防振支持することが一般的ですが,本体が適切に防振支持されていても,接続された配管などが壁や床や天井を加振して固体伝搬音が発生することがあります。固体伝搬音は音源から遠く離れた部屋にまで伝搬することもあり,音を放射する躯体の両側の部屋での騒音レベルの差が少ないなどの傾向もあります。
一般に屋内の設備機器などからの騒音は,空気伝搬音と,固体伝搬音が同時に発生していることが多いため,これらの分離が必要となります。規模の大きな建物の場合,がむしゃらに測定をしても時間がかかります。まず,最初に実施すべきことは,音源(加振源)から音や振動が伝搬する可能性のある経路をすべて書き出してみることです。設備機器がど
のように設置されているか,接続される配管やダクトがどのように支持されているかなどを図面などで確認した上で,音が伝搬する可能性のある複数の伝搬経路の図を作成します。その上で実際の音の伝搬経路を実測などにより確認することが有効です。
現場で,空気伝搬音と固体伝搬音を分離するためよく実施されるのはスピーカ試験です。この試験では,まず,音源の稼働時に音源機器のある部屋(音源室)と隣接する部屋(受音室)の平均騒音レベルを測定します。空気伝搬音と固体伝搬音は周波数によりその割合が異なるので,測定では1/3オクターブ分析を行うことを強くお勧めします。次に音源室内の音源付近に設置したスピーカから音を出した時の各部屋の平均騒音レベルを同様に測定します。音源稼働時とスピーカ試験時の音源室と受音室の騒音レベルの差がほぼ等しい1/3オクターブ帯域では,空気伝搬音が支配的であると推定できます。一方,稼働時の騒音レベルの差がスピーカ試験のときよりも小さい帯域では,固体伝搬音が支配的であると推定できます。逆に,スピーカ試験のときより大きな場合は,想定と異なる場所に音源がある可能性を検討する必要があります。
固体伝搬音が支配的と推定された周波数帯域の騒音対策を行う場合は,さらに確認が必要となります。このとき,伝搬経路図において,配管などから建物の躯体に振動が伝達される可能性のある部位の振動を,聴診棒などで聞いてみることをお勧めします。配管と躯体の振動がよく似た音に聞こえる場合は,その部分で振動が伝達されている可能性が高くなります。さらに精度を上げて検討する場合は,加速度ピックアップを振動伝達部の前後に設置し,インパルスハンマーなどを用いて伝達率を測定し,振動伝達率が高い部位を探して対策することが必要となります。
具体的な騒音対策ですが,空気伝搬音が対策としては,音源となる機器への防音カバーやサイレンサの設置,音源室内の壁面の吸音処理音,また開口部やダクトを経由して伝搬する場合は開口部塞ぎやダクトの吸音処理などがあります。固体伝搬音の対策としては,加振力が躯体に伝達される部位の防振支持,フレキシブルジョイントを用いた配管の振動絶縁などさまざまな対策があります。この際注意することは,音源近傍の騒音レベルではなく,隣接する部屋などで問題となっている周波数帯域の音や振動の低減に有効な対策を実施することです。対策法は周波数によっても異なるので,それぞれの製品の専門家に相談するとよいでしょう。
なお現場での対策は,できるだけ音源に近いところで対策を行う方が騒音低減の効果が高く,トータルの費用も安くなることが多いです。伝搬経路が複数ある場合は,まずは問題となる騒音への寄与が大きい方を優先して対策することも必要です。また,音源からの発生音自身を下がるように,運転方法などを見直すことが可能かどうかも重要な検討項目です。

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