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公益社団法人 日本騒音制御工学会

Vol.39, 2015-3

騒音計の検定ではどのようなことが行われているのか?(Vol.39 No.3)
Vol.39 No.3

産総研 高橋弘宣

計量法では,取引・証明行為に用いる計量器のうち,適正な計量の実施を確保するために計量器の構造(性能や材料の性質を含む)や器差を定める必要があるものを「特定計量器」として定めており,騒音計も特定計量器の一つです(法2条第4項,令第2条).特定計量器の「検定」とは,特定計量器に要求される構造と器差の試験を行い,計量法の定める基準に適合するかを検査することです.

 検定の内容は2つに大別できます.1つは構造が技術上の基準に適合するかの検定(構造検定,法第71条第1項第1号),もう1つは器差検定(同第2号)です.構造検定では,騒音計本体に記すべき事項(騒音計の種類,騒音レベルの計量範囲や使用周波数範囲など)の確認,性能(環境に対する安定性,周波数特性,指向特性,動特性,自己雑音,目盛標識誤差,レンジ切替器など)を試験します.器差検定では,騒音計の器差が検定公差以下に収まっているかを試験します.騒音計だけでなくすべての特定計量器に共通する検定の項目は特定計量器検査規則(検則)の第7条から第16条に,騒音計特有の項目は同第20章(第814条から第849条)に規定されていますので詳細は検則をご覧ください.

図1は騒音計の検定の流れを表しており,製造事業者による製造・販売の企画段階からユーザの手に渡るまでを順に示しています.本来は騒音計1台ごとに上述した検定の項目すべてを検査する必要がありますが,騒音計の構造検定では高湿度や振動にさらすなど耐久性に関する項目も検査されます.また,騒音計製造事業者の技術力が高いことをふまえると,全数を検定するのは非効率です.そこで,構造検定の大部分の項目を省略し合理化するために型式承認制度(法第76条から第89条)が導入されています.型式承認のための試験(型式試験)では,同一型式の騒音計3台を提出して構造に関する試験を行います.騒音計の型式試験は指定検定機関である一般財団法人 日本品質保証機構(以下JQAと称します)が行っています.型式試験に合格した騒音計の型式には国立研究開発法人 産業技術総合研究所が承認を与えています.

 型式承認を得た騒音計は,1台ごとに検査が必要な項目についてのみJQAが検定(毎個検定)を行います.具体的には目盛標識誤差とレンジ切替器についての構造検定,ならびに器差検定です.目盛標識誤差では,騒音計のマイクロホン端子から音の代わりに電気信号を入力し,振幅を変化させたとき,この電気信号と表示値との対応関係を試験します.すなわち,入力する電気信号を騒音レベルに換算した値と騒音計表示値が,電気信号の振幅を変化させた範囲において許容範囲内で一致しているかを試験します.レンジ切替器では,レンジを切替えても騒音計の表示値が許容範囲内で一致しているかを試験します.検定に合格した騒音計には検定証印が付されます.

 一方,騒音計の品質管理の方法が一定の基準を満たしている事業者は,申請により「指定製造事業者」の指定を受けることができます(法第90条から第101条).指定製造事業者

は一定水準の製造技術と品質管理能力を持っているので,型式承認を受けた騒音計を製造する時に検定と同様の基準で自主検査を行えば,JQAによる毎個検定に代えることができます.自主検査に合格した騒音計には検定証印と同等の効力を有する基準適合証印が付されます.

 検定証印または規準適合証印の付いた騒音計はユーザの手に渡り取引・証明行為に使用されますが,以後は騒音計の検定の有効期限である5年ごとに(法第72条第2項,令第18条別表3) JQAによって検定に付されます.

 なお,検則は計量器の技術革新に迅速かつ柔軟に対応するとともに国際規格との整合性を可能な限り図っていく観点から,検則の技術基準をJIS化して引用する形に改正が進んでいます.騒音計のJIS規格としてはIEC 61672-1, IEC 61672-2を翻訳したJIS C 1509-1, JIS C 1509-2があります.これらのJISは取引・証明行為以外に用いる一般の騒音計に対するJISであり,そのまま取引・証明に使用される騒音計へ適用するには過度な要求事項も含まれています.そこで,検則から引用できるようにJIS C 1509-1, JIS C 1509-2を修正・統合した「JIS C 1516 騒音計 取引又は証明用」が2014年に制定されました.

JIS C 1516では精密騒音計を「クラス1」,普通騒音計を「クラス2」と置き換えて規定しています.使用周波数範囲はクラス2では従来どおり20 Hzから8 kHzですが,クラス1では16 Hzから16 kHzに拡張されました.JIS化に伴い騒音計に要求される性能や試験方法は厳密になっています.環境に対する安定性の項目として,静圧や静電気放電などの規定も追加されています.また音響校正器によるレベル指示値の調整だけが認められることとなりました.

 毎個検定の項目のうち,目盛標識誤差とレンジ切替器はレベル直進性に統合されました.また器差検定を行う周波数が 125 Hz,1 kHz,4 kHz,8 kHzに変わり,かつ周波数ごとに器差を検定公差と比較する方法へ変わりました.改正検則ならびに関連法令は,平成27年4月1日に公布されており,同年11月1日に施行される予定です.

(注)「法」は計量法,「令」は計量法施行令を指します.

1: 取引・証明行為に使用する騒音計の製造販売の企画段階からユーザが使用するまでのフローチャート ()制度上は点線部のルートも存在するが,検定に合格している騒音計はすべて型式承認を取得しているため運用実績は無い.

 

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