Vol.39, 2015-4
- 高周波音とはどのようなものですか。(Vol.39 No.4)
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Vol.39 No.4
(空港環境整備協会航空環境研究センター 上田麻理)
「高周波音とはどのようなものですか。」
周波数帯域など,厳格な定義は定められていません。我々の研究グループは,騒音を対象とした研究の場合,10 kHz〜32 kHz程度のいわゆる可人によって聴こえる可能性がある高い周波数の空気伝搬音を高周波音と定義して使用しています。振動分野や超音波の分野では100 Hzであっても高周波音と呼ぶこともあります。
「超音波との違いは何ですか。」
音響用語辞典※の「超音波」の項目では,「周波数が高く,正常な聴力をもつ人間には聞こえない音波。」と記載されており,その周波数は「20,000 Hz以上の音波を指す」とも書かれています。また,「それ以下の周波数でも,人の耳で聞くことを目的としない場合」を超音波と呼ぶとされています。なので,ある程度高い周波数帯域で「聴こえる,聴こえないか」が高周波音と超音波の大きな違いだと思います。ただし,音響用語辞典に従った場合,「聴くことを目的としない場合」であっても最近では幼児・子ども・若齢者層は20 kHz以上の周波数であっても,「聴こえる」という報告(図1)があるので,聴くことを目的としなくても聴こえてしまう場合の扱いは今後検討が必要かと思います。
「また実際にはどんなところで聴こえるものですか。」
都市の環境騒音としては,走行中の列車から15〜22 kHzに複数の顕著な成分が観測されています。列車の高周波音は特に,曲線軌道の沿線で列車が走っている時に聴こえる確率が高いようです。
産業機器の代表としては19 kHz〜22 kHz程度の高周波音を使ったネズミ撃退機があります。これはビルの出入り口付近に設置されていることが多く,その音圧は100 dB(SPL)を超えていることもあります。最近ではビルだけでなく,スーパーの出入り口などでも多数観測されています。
その他に医療機器として歯科タービン音にも6 kHz~7 kHzに卓越した成分が含まれていますし,音響通信技術としても19 kHz程度の高周波音が使われています。ここに紹介したのはほんの一例ですが,その他にも高周波音を発する機器・装置が多数存在しているようです。騒音制御工学会の高周波分科会では身の回りにある高周波音の調査についても今後力を注いで行く予定です。
図-1 児童の高周波音可聴閾
出典:M.Ueda et al., Proc. 11th International Congress on Noise as a Public Health Problem, 2014.)