日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Vol.39, 2015-5

騒音の測定には騒音計の周波数重み付け特性A 特性を用いることとなっていますが,他の周波数重み付け特性としてB∼D 特性が定義されていると聞きました。これらの周波数重み付け特性は何に用いられるものなのでしょうか。(Vol.39 No.5)
Vol.39 No.5

(千葉工業大学 矢野博夫)

騒音計の周波数重み付け特性は,現在では音響の測定機器のなかで音圧(レベル)や騒音レベルを測定する機器のJIS規格:JIS C1509(IEC61672)に規定されている.この規定にはA, C, Zの各特性があるが,かつてはこれらの特性の他にB, Dの特性があった.ここでは,まずこれらの特性がいつ頃提案され,規格類に採用されたのかについて過去の資料を調べてみた.その結果を表1に示す.また,ABCDの各特性の1/3oct.に毎の周波数におけるレスポンスを表2に示す.この表はANSI S1.42-1986より抜粋したものであるが,これらの特性は1次および2次のローパス,ハイパスフィルターの組合せで実現する事が出来る.

まず,最初に古くは1936年のアメリカ音響学会で検討された規格(ASA規格Z24.3-1936:暫定規格)でAおよびB特性が提案され,その後1944年にASA Z24.3-3C特性と共に規格化された.ここで表中のC(Z)は現在のC特性とは異なり,weightingをしない平坦な特性(F特性,Lin.特性などと呼ばれていた現在のZ特性)であったことから筆者が勝手にネーミングした表記である.このときのA特性はフレッチャー・マンソンの等ラウドネス曲線の40dBの曲線を,B特性は70dBの曲線の逆特性であるとされている.C特性については,当初は平坦特性として音圧レベルを測定するための特性/機器の試験にも用いられる特性として規定され,そのうちに等ラウドネス曲線のほぼ100dBの逆特性として用いられているようである.

A, B, C特性の違いはラウドネス曲線の違いを反映したものであるためその使用方法は,まずB特性で測定して60dB以下の場合にはA特性,85dB以上の場合にはC特性で測定するという煩雑な方法であった.このようにして測定した結果に使用した特性を付記して40dB(A)65dB(B)のような表記をしていた.その後,各種騒音のスペクトルから音の大きさのレベル(Stevensの方法)と各種の補正特性を比較してA特性音圧レベルが各種の騒音について複合音としての音の大きさと最も相関のよいことが検証された4ことに基づいてB特性は規格から削除され,C特性は音圧レベルの測定に用いられるようになった.3もちろんZ特性を持つ場合には,音圧レベル測定や周波数分析を行うには(現在の)C特性よりも優れていることは言うまでもない.

 D特性は,金属性の高音を含むジェット騒音が問題になった時,Kryterの提案によってPNdBという“Annoyance”を表す尺度が提案され,航空機騒音の評価に使用されていた.国内規格には制定されていないため国産の騒音計でD特性を備えた製品はなく,1960年代から1970年代のB&K社精密騒音計2204型~2209型に内蔵されていたと記憶している.(写真)

現在では,大半の法律・基準等でA特性を用いることになっているが,航空機騒音や砲撃音に対する教育施設等の防音助成の判定指標や,演習場周辺の民家の防音や移転の判定指標にはC特性による測定値が用いられている.

 参考文献:

(1) A. Marsh, 騒音計の歴史:1928年から2012年まで,中村千都世,山田一郎訳,航空環境研究 no.16p.59-752012

(2) H. Fletcher and W. A. Munson, :J.A.S.A., vol.5, pp.82-108, 1933.10

(3) 五十嵐寿一,小林理研ニュース, No.77 (2002)

(4) 守田栄,日本音響学会誌,vol.17, no.1, p.38-43 (1961)

(5) 守田栄,日本音響学会誌,vol.4, no.8, p.1-6 (1943)

(6) 広川愿二,日本音響学会誌,vol.8, no.3, p.117-122 (1952)

(7) 守田栄,日本音響学会誌,vol.13, no.3, p.273-280 (1957)

(8) 服部昭三,日本音響学会誌,vol.23, no.5, p.319-324 (1967)

              表1 規格と周波数重み付け特性の変遷

              表2 A, B, C, D特性のレスポンス

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