日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Vol.38, 2014-6

多孔質材料の吸音特性は,どの周波数帯域においても,背後空気層の厚さが大きいほど吸音率は高くなるのでしょうか。それとも,これは,特定の周波数において観察される現象なのでしょうか。また,吸音材表面から躯体までの厚さと吸音材背後の空気層の厚さとどちらを波長に対してどのような比率にすればよいでしょうか。(Vol.38 No.6)
Vol.38 No.6

(鹿島技研 古賀貴士)

一般に,吸音性能は,吸音材料単体の特性だけではなく,背後の空気層や剛壁の有無を含めた吸音機構として考える必要があります。多孔質材の場合も背後に剛壁があることが,吸音機構として効果的に機能するための前提条件となります。

多孔質材料の吸音は,空気の振動が細かい繊維などとの間での摩擦や粘性抵抗などによって主として熱エネルギーに変換される現象です。摩擦にしても粘性抵抗にしても,その効果は,空気の振動の速度に比例します。すなわち,音波の粒子速度の大きい位置に多孔質材料を設置することで,吸音率を大きくすることができます。したがって,吸音性能は,波長に応じて変化するので,必ずしも,背後空気層の厚さが大きければどの周波数帯域においても吸音率が高くなるという訳ではありません。

まず,吸音材料が薄い場合に波長λの音波が部材に垂直に入射する場合を考えてみましょう。入射波と反射波の関係から,粒子速度は,剛壁からλ/4のところで最大になり,λ/2のところで最小となります。このとき,音響管内の管端(剛壁)から一定の距離となる位置に布を取り付けると,図-1に示すように,部材表面からの距離(この場合は異は後空気層と等しい)が,λ/4,3λ/4,…となる周波数で吸音率が大きくなることが確かめられています。この場合,部材表面からの距離は,ほぼ背後空気層と等しいわけですが,粒子速度の大きくなるλ/4,3λ/4,…となる位置に抵抗となるよう材料が存在しているため吸音率が大きくなっているのです。

次に,布よりも厚みのある多孔質材の場合ですが,背後空気層のない,厚い部材が剛壁に密着している場合を考えてみましょう。このとき,厳密には部材内の伝搬速度は空気中とわずかに異なるもののλ/4,3λ/4,…となる位置で粒子速度が大きくなります。剛壁から材料表面よりλ/4より波長の短い(高い)周波数に対しては,材料内部に粒子速度が大きくなる周波数が存在することになるので,吸音材料の効果が得られることになります。また,部材内の流動抵抗の影響で,剛壁から部材表面までの距離が大きくなるにつれて,材料表面での粒子速度が小さくなる周波数(λ/2周辺など)での吸音率の低下が目立たなくなります。流動抵抗が十分に大きい材料の場合には,λ/4となる周波数までは単調増加で,それ以上の周波数ではほぼ一定の吸音率が得られる可能性があります。

最後に,多孔質材と剛壁の間に空気層を設けた場合です。空気層を設けることで,剛壁まで多孔質材料が存在する場合と比べて,内部の材料が減った分だけ流動抵抗が減少するので,λ/2周辺などでは吸音率が低下しにくくなることになります。多孔質自体が,流動抵抗を十分に発揮するだけの厚さがあれば,背後空気層を設けた場合でも背後空気層の部分にまで吸音材料を設置した場合に近い吸音率を発現させる可能性があります。

参考文献][1]木村翔:建築音響と騒音防止計画,彰国社

閉じる

分野

キーワード

フリーワード

PAGE TOP