日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Vol.35, 2011-7

騒音測定において,マイクロホンを延長ケーブルで延長した場合,どのくらいの誤差を生じるものでしょうか。また,延長ケーブルの長さにも関係するのでしょうか。(Vol.35 No.7)
                                    (大学院生)

((株)小野測器 営業本部 星靖洋)

ご質問は,ケーブルの長さと誤差に関するものですが,一概に「延長ケーブルで○○m 延ばしたときの計測誤差は○○dB となる」と言い切ることは出来ません。理由は,各々の騒音計の電子回路が異なるため,ケーブル長による影響の度合いに違いがでるためです。

騒音計は,マイクロホン,プリアンプ,本体(演算表示部)の 3 つで構成されています。一般的にマイクロホンとプリアンプは一体となっており,延長ケーブルはプリアンプと本体の間に入ります。延長ケーブルによる計測信号の減衰量は,プリアンプの駆動方式や出力回路,ケーブルの電気特性,本体の入力回路により決まります。そのため,メーカごと,もしくは騒音計の型式ごとに,ケーブルの長さによる誤差の大きさには違いがでます。同じ電気特性の延長ケーブルを使っても異なる機種では誤差に違いがでたり,同じ騒音計でも延長ケーブルの電気特性が異なれば延長できる長さに差が生じることになります。

計量法に適合した騒音計の場合,メーカが指定している延長ケーブルを使用し,かつ検定対象の最大長までであれば,測定誤差は規定している精度内に入っていると言えます。また,各騒音計の取扱説明書(技術解説部)やメーカが出している技術ノート等に,特性に関する資料が記載されている場合がありますので,参照するのが良いでしょう。指定以外の延長ケーブルを使用すると,同じ長さでも大きな誤差が生じる場合があるので注意が必要です。

上記の様に,延長ケーブルの長さと誤差の関係は各々の騒音計ごとに異なりますが,主な誤差の要因について簡単にご紹介します。

1.ケーブルの電気抵抗による減衰

ケーブルは通常銅線を使用しており,およそ 17nΩm の電気抵抗率を持っています。これによる減衰は全周波数帯域の信号に対して発生します。誤差の大きさは,騒音計本体の入力回路設計により変わり,また長さと誤差は正比例関係にはありません。

2.ケーブルの静電容量による高周波数の減衰

通常使用される騒音計の延長ケーブルは静電容量(電気を貯める能力)を持っており,プリアンプの出力能力と静電容量値の関係で高い周波数の信号ほど大きく減衰します。例えば,X[m]のケーブルを使用したときに許容できる誤差内に入る最大周波数をY[Hz]とすると,ケーブル長を 2 倍の 2X[m]に延ばすと最大周波数は半分の Y/2[Hz]に下がってしまいます。逆に,静電容量値を半分にすれば,最大周波数は 2 倍になります。

3.ケーブルの静電容量による大信号の制限

ケーブルの静電容量が大きいと,プリアンプの出力能力により高周波数の大きな信号も伝送しにくくなります。図−1 は,120 dB と 130 dB の音圧に相当する信号入力時のケーブルの影響を示した一例です。この例では比較的小さな静電容量値のケーブルを採用していますが,120 dB の音圧では影響を受けない長さでも,130 dB になると減衰するのが分かります。

騒音計は,その機器が使われる用途に合わせて,電子回路や延長ケーブルを選定してあります。精度良く計測するためにも,各社が指定している延長ケーブルを,規定された長さ以下で使用することをお勧めいたします。

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