Vol.27, 2003-8
- 道路交通騒音対策に用いられる吸音材の吸音性能に「平均斜入射吸音率」という言葉を聞きますが,どのような値なのでしょうか。また道路交通騒音以外の騒音に対する騒音予測には使用できないでしょうか。(Vol.27 No.8)
(コンサルタント) -
(ニューズ環境設計 福島昭則)
平均斜入射吸音率は道路交通騒音対策に用いられる吸音材の性能を規定する値であり,使用目的に応じて,例えば以下のような基準値が定められています。
高架裏面吸音板 90%以上 掘割側壁吸音板 85%以上 吸音型遮音壁 75%相当 トンネル内装吸音板 70%以上 従来,吸音材の性能評価には、音波が試料に垂直に入射する垂直入射吸音率や,ランダムに入射することを仮定した残響室法吸音率が用いられてきました。しかし道路交通騒音の場合には,音が特定の方向から吸音材に入射することが多いため,垂直入射吸音率や残響室法吸音率では十分ではなく,そのため斜入射吸音率で性能が規定されています。
平均斜入射吸音率は,0°,15°,30°,45°の4方向についての斜入射吸音率を測定し,道路交通騒音の平均スペクトルとA特性補正値を重み付けして算出します。入射角毎の斜入射吸音率の測定にはTSP信号等を用い,吸音材からの反射波を時間軸で分離します。そして吸音材がないときの(完全反射面と考えられる床面での)反射波との比からエネルギー吸音率を求めます。測定周波数範囲は400~4kHz(1/3オクターブバンド)です。
したがって,平均斜入射吸音率は道路交通騒音のスペクトルを考慮しているため,道路交通騒音と異なるスペクトルの音源には適用できません。しかし平均斜入射吸音率の算出のもととなる斜入射吸音率は,入射角度別に周波数毎に測定されています。その値を用いて周波数毎に計算すれば音源のスペクトルが異なっても騒音予測に用いることができます。