日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Vol.26, 2002-1

高架道路の騒音や航空機騒音等の遠距離伝搬についての、国内外の調査研究について教えて下さい。
                           (建設コンサルタント 技術者)

(ケンオン 小西一生)

音の遠距離伝搬に関する研究は1850年代から霧笛による信号のやりとりや大砲の設置場所を決定するために始まった。その後はしばらく戦争等で中断していたが、1950年代に入りジェットエンジンを装着した航空機やロケット開発実験の騒音が社会問題化したため、他の物理分野等の研究成果を加えて研究が西欧を中心に再開された。

それらは、第一に自由空間の逆二乗則による距離減衰が周波数や位相および振幅が絶えず変化する騒音でどの様になっているか、また、遠距離を伝搬する大気中でどのくらい空気による減衰があるかなどである。第二に地表面に近接した空中での減衰要素についての研究で、主に地表面インピーダンスによる反射音との干渉などにより伝搬音が到達しない領域が生じるシャドーゾーンの問題である。また、シャドーゾーンは地形、障害物、森林、風向風速などの影響によって発生する事が示された。第三には遠距離伝搬音と大気の状態の関係で、気温が上空に行くに従って逓減したり、風速が上空ほど速くなると云う気象学の知見を取り入れたものである。地上の大気が層状に分布すると考えると、その中を伝搬する音は層毎に異なる気温、湿度、風速などの影響で層の境界で音の伝搬方向が変化するので、地表面による影響ではない別のシャドーゾーン等が生じる事が多く研究されたが、気象と伝搬音の実測値の良い一致は多く見られないことが分かってきた。この理由は主に気象の実測値の質や数が不足しているためで、風は息をしながら三次元の方向に移動するものだが、一般に測定される風速は特定の場所の、水平方向の成分で、時間平均値であるために、音の伝搬と云う物理現象を表すことのできない観測値と云えるからである。気象の観測値を音の伝搬領域を充分カバーできる数と精密さで測定する事は不可能であるため、音の波動理論と気象学による大気の瞬時の要素を取り入れた理論的シミュレーションの研究や、反対に、長期間の伝搬音測定結果などからの実験的研究が行われている。何れの方法による研究も、大気のターバレンスと呼ばれる乱れがシャドーゾーンに動的に大きく関係する様子をある程度説明できるまでになってきた。

これらは、市街地と騒音などの公害なしに共存できる高速道路や飛行場建設に必要な遠距離伝搬音の研究の始まりと云える。

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