Vol.25, 2001-10
- 動特性の説明で、過去に対する平均化とはどういうことでしょうか。
(環境測定会社 技術者) -
(リオン㈱ 若林友晴、音環境計測 多田雅昭)
騒音計や振動レベル計では変動する信号の実効値を表すために信号の二乗波形に対し指数的な重み付けをした平均(指数平均)値が得られるようになっています。この重み付けは動特性として規定され、その時定数によって応答が異なります。
指数平均値の時間応答を図1に示します。
信号が変動して大きくなった時、指数平均値は初期の値からその信号が連続して発生した場合の値へと上昇しながら近づいていきます(立ち上がり区間)。またこの動作は信号が小さくなった場合も同様で、指数平均値はそこまでの値を基点として徐々に減衰していきます(立ち下がり区間)。実効値の平均化動作ではこのようにして常に少し前の信号の影響を受けながら現在の信号の大きさに近づいて行きます。なおこの平均は指数平均であるため過去の重みは古いほど指数的に小さくなります。
ここで平均化の応答速度は時定数によって決定され、時定数が小さいほど実効値は俊敏な応答になります。例えば騒音計の早い動特性(F)の時定数は0.125秒であり、遅い動特性(S)の時定数は1秒ですが、実際の立ち上がりでは信号が発生してから実効値が定常信号レベルの1dB下に到達する時間はFで0.2秒であり、Sでは1.6秒になります。また立ち下がりでは10dB減衰する時間がFでは0.28秒、Sでは2.3秒になります。
なお、動特性の時定数をτとした時の時刻tにおける騒音レベルLA(t)は次式で表されます。
ここで、
τ : 動特性の時定数(s) ξ : -∞の時刻から観測時刻tまでの積分変数 pA( ξ ) : 時刻ξにおける瞬時A特性音圧 p0 : 基準音圧 これを利用して、プログラムを作る場合には、図2のアルゴリズムを利用されるとよいでしょう。
Mの初期値は0でなくてもかまいません。初期値に任意の値を与えればその値から真値に近づきます。
また、レベル値時系列データはそれほど細かく取る必要はないので、iを何回かインクリメントする
ごとにjを1つインクリメントすればよいと思います。