日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

情報コーナーでは皆様の声をお待ちしています。 会員コラム,Q&Aにご意見、ご質問をお寄せ下さい。

(Vol.44, 2020)

カエル(ニホンアカガエル)の戦略(Vol.44 No.1)
カエル(ニホンアカガエル)の戦略

カエル(ニホンアカガエル)の戦略

この会誌が皆様の手に届くのは21日の予定となっています。まだ冬眠しているだろう時期になんでカエルの話?と思う方もいらっしゃると思いますが、すでに活動を始めているカエルもいるので、そんなカエルの戦略を紹介したいと思います。

 そもそもカエルに関わることになったのは、カエルがどこを好んで活動しているかを、その鳴き声の大きさを測ることで解らないだろうかという話向きからです。大学で継続的に環境調査をしている棚田があるというので、4月の環境調査の時に騒音測定ならばと、私も騒音計を持ってついて行きました。ところが、地元のNPOでカエルの保護に取り組んでおられる方の説明を聞くと、「4月にカエルの声を聴こうなんて遅すぎるヨ!」ということでした。

 驚いて詳しく説明を聞くと、この千框の棚田は、貴重種のニホンアカガエルの生息地として有名な場所ですが、そのニホンアカガエルは2月が最盛期で、早い時には1月から鳴いている。というのです。受売りになりますが、実はこれはニホンアカガエルの生き残り戦略で、他のカエルが出現しない2月頃ならば、自分たちの仲間で水場を占領できるから……というものでした。なるほど、競争相手がいなければ広い水場を独占できるということで、さぞかし繁栄しているかと思いきや、年々数を減らして絶滅の危機に襲われているとのこと。

 その原因は、人間の都合や、天敵によるものということでした。人間の都合というのは、冬は水の管理が大変なので、冬季に田に水を入れていない田んぼがあり、結局この時期にカエルが使える水田が狭められているということのようです。ちなみに、ここでは「生き物のゆりかごプロジェクト」という取り組みがあり、田んぼの中に小さな池を残し、田んぼの水がなくなる冬場に生き物のすみかを提供するという取り組みが行われているそうです。ニホンアカガエルとしては、水場が占領できるということで生き残り戦略として2月を選択したのですが、水場は実は田んぼなので、水場(田んぼ)は人間の都合で水が入っていたり入っていなかったりで、戦略を間違えたと感じているかもしれません。

 もう一つの問題は、カエルは昔の表現でいうと変温動物なので、2月に活動する場合は4月のカエルのイメージのような「ピョン、ピョン」というような活発な行動ができないことだそうです。このため、山からノソノソと田んぼに出てきて繁殖、産卵し、またノソノソと山に戻るという行動をするのですが、動きが遅いために途中でカラスに襲われるということが多々あるそうです。でもこの天敵の問題は昔から変わらないでしょうから、カエルの生き残り戦略では人間の行動が問題と感じているかもしれません。

 蛇足になりますが、現代では変温動物という言葉は使わなくなってきています。これは、動物の体温制御が種によって多様であることが発見され、恒温動物と変温動物の2つに分けられるという考えは誤りであることが分かったためです。いわゆる変温動物だからと言って、呼吸により発熱しないわけではないし、筋肉や神経組織の活動などにより、周囲の温度よりは高い体温をもつ場合が普通です。つまり、種によって特有の体温制御を行っていて、すべての変温動物は気温が下がると活動できなくなるというわけではないことが明らかとなったのです。ここで話題としているニホンアカガエルは厳冬期に繁殖、産卵を行い、その活動を行うときの周囲の気温は、5℃程度かそれ以下といわれています。

 当初のカエルの音測定の話に戻りますが、4月に棚田を占領していたのはシューレゲルアオガエルでした。そこで、棚田の上流域、中流域、下流域でカエルの声を測りましたが、どうやらアオガエルは中流域が好きなようで、中流域でのカエルの声が一番活発でした。また、6月に平地における水田でカエルの声を測定してみましたが、この時はアマガエルが優勢で、場所の違いは特定できませんが、時間変化は夕方から日没にかけて徐々に声が大きくなり、夜間はほぼ同じ大きな声で鳴き続けるという状態でした。

 この調査の詳細に興味のある方は、騒音制御工学会2019年度秋季研究発表会の東京農業大学「生物音測定を利用した環境評価」をご覧ください。

(エヌエス環境 内田英夫)

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子どもにとっての音環境とは?(Vol.44 No.2)
子どもにとっての音環境とは?

子どもにとっての音環境とは?

身近な体験から

研究者、そして子育て当事者として考える、子どもにとっての音環境。生活を通して感じることは、まずうるさい環境は、子どもの育ちにとってもやはり良くない。例えばにぎやかな状況だと子どもは自分のことしか見えなくなりがちで、周りの情報をキャッチし難くなっていると思う。また私が大きな声(が良くないことは頭ではわかっているのだが、つい)で叱ると、子どもには言葉の意味情報が届いておらず、只々「ママが怒ってる」という事態のみが伝わっているように思う。加えてこれが「響く」環境になると、声が増幅され、うるさい・聞き取れない・伝わらない→大声になる・気持ちが昂ぶる、の悪循環に陥り、さぞストレスだろうと痛感している。

また、以前利用していた保育園では、「響き過ぎ」問題に直面した。室の吸音不足と、モデルルームのようにスッキリとした使用状況(内装環境)が災いし、吸音力が低かった。朝登園すると、ある子どもがレゴで遊ぼうと、箱を「ドンガラガッシャーン」とひっくり返した。文字通りの甲高く耳が痛い音で、思わずびっくりしてそちらを見ると、当の本人や周りの子どもたちは平然と遊んでいたのだ。私にとって驚くべきその音は、子どもらにとっては日常の音となってしまっていた。これでは子ども自身の声だって大きくなって然りである。その後、一保護者として恐る恐る園長に直談判してみたところ、施設側の理解があり、吸音改修を施してくれた。また、この話をママ友にすると、「それってどんな影響があるの?」ととても熱心に聞いてくださった。やはり皆我が子のこと、「音」を切り口に保護者の意識に働きかけていくことも大切なことだなと感じた。

研究での訪問先の事例から

身近な場面から一転し、「こんな場面があるのか」と驚いた例を紹介したい。一つ目は、ある認定こども園でのことだ。“静けさ”を園生活の土台として大事にした保育を実践している園で、静かな音環境が生活の落ち着きを支え、また子ども・先生の落ち着いた行動が静けさをつくりだしている。この園で驚いたのは、歌の場面であった。合唱団のような音程感、歌声のきれいさにまず驚いたが、そこでの子どもたちの歌う姿-競わず、皆で聴き合い共に歌う、そんな雰囲気に、感動を覚えた。静けさが「聴く力」を育むことを直感した場面であった。

二つ目は、ドイツで実地調査を行った時の話である。(詳細は別報*参照)個性豊かな保育スタイルが興味深かったが、中でもシュタイナー教育を実践している幼稚園では、「静寂さ」の重視で知られた通り、落ち着いた園環境であった。木造、非対称な形状の保育室、落ち着いた暖色系の光環境、吸音が施され響きの少ない音環境。子どもたちは、各自好きな活動に打ち込んでおり、子どもの声は方々から聞こえてくるものの、それらは干渉し合うことなく落ち着いた時が流れていた。園長にどのような音環境が良いのか尋ねると、「音を音として伝える、ということを大事にしている」との回答があった。何の音か、誰のどんな気持ちの言葉であるのか、これらを「そのものとして伝える」ということ、この表現に思わずハッとした。吸音や騒音を抑えることは、生活者にとり、音-その背後にある「事」や「思い」を伝える・受け取ることを支えているのだろう。また、園舎を持たず「森」で活動する森の幼稚園も興味深かった。森ではあるが、自由放任というわけではないようで、訪問の際はいわゆる「クラス活動」の輪に入れてもらった。歌を歌ったり、動物の足跡についての議論を行ったりと、グループの集いの後、森へ散策に出かけた。訪れた冬の森の中では、多少大きな音が発せられても、それはほんの小さな存在で、にぎやかさに溢れる喧騒感とは無縁であった。森の音環境は、なかなか都会では味わい難い、「自然の中に居る」という感覚をもたらせてくれた。ただ夏はどうなのだろう…虫たちの合唱に包まれるのだろうか。季節を改めて、また訪ねてみたい。

子どものための音環境づくりに向けて

 これまでの研究成果を広めていくため、この3月、本学会副会長船場ひさお先生と共に、(一社)こどものための音環境デザインを立ち上げた。子どもを中心に、建築、教育・保育、福祉、地域社会、様々な観点からより良い音環境づくりを広めていきたい。

(明治大学・(一社)こどものための音環境デザイン 野口紗生)

*[文献] S. Noguchi, et.al, “The sound environment of German preschools and preschool teachers’ thoughts about sound generated by children”, Proceedings of ICA 2019, pp. 5953-5960, 2019.9.

 

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CASE時代の騒音問題(Vol.44 No.3)
CASE時代の騒音問題

CASE時代の騒音問題

CASEというキーワードをご存知でしょうか。自動車業界は,現在「100年に一度の変革期」にあると言われており,その変革の要点を端的に示すものとしてコネクテッドConnected,自動運転Autonomous,シェアリング・サービスSharing & service,電動化Electricの頭文字をとったものです。また,現在猛威を振るっている新型コロナウィルスの感染拡大は,本稿を執筆中の4月末の時点ではまったく先が見えませんが,その影響によって今後,公共交通機関に変わるパーソナルモビリティにも注目が集まると思われます。パーソナルモビリティには,CASEの各技術との親和性が高いと言われています。外出を避けるため,ネット販売や宅配サービスの利用増大が見られていますが,都市間輸送の大型トラックの電動化にはまだバッテリー技術などの課題が多いものの,ラストワンマイルのデリバリーには電動化や自動化の可能性が大いにあります。

さらに,超高齢化という社会環境も自動車に関わる音の問題に無関係ではありません。高齢化の進行に伴って,既に,人口集積が少ない地域での公共交通インフラの維持が困難になり,移動の自由が奪われる住民の問題(いわゆる買い物難民)が健在化しつつあります。個人の自由な移動の確保や,物流の課題も勘案した自動運転技術によるラストワンマイルのモビリティサービスが求められています。また,高齢ドライバーによる運転操作過誤による重大な交通事故などに見られるように,加齢による運動能力・認知能力の低下を補償する運転支援技術や自動運転車両の技術実現が望まれています。

そのような近い将来,自動車に関わる音の問題はどう変わっていくでしょうか。

電動化(E)による音響的な変化は想像しやすいものです。自動車の電動化によって,自動車騒音の主要因の一つである駆動系騒音が大幅に低減し,道路交通騒音の低減効果が期待されます。そして,一方で,歩行者にとっては車両の接近に気づきにくくなることが懸念されてもいます。電動化による騒音低減の予測や,車両接近通報音については,様々な研究が取り組まれていますので,ここでは多くは触れずにおきます。

しかし,自動車の変革は駆動系の電動化に限りません。コネクテッド(C),自動運転(A),シェアリング・サービス(S)も,自動車からの発生騒音や要求される音デザインに大きな変化をもたらすと考えられます。

自動運転や他車との協調運転の技術普及によって衝突の危険性が軽減していけば,制動機構に求められる性能も変わってきます。タイヤや路面舗装に要求される制動性能が緩和され,音響性能の向上(低騒音化や音質改善)に割り当てられるリソースが増加する可能性もあります。いままでコスト面で虐げられてきた低騒音技術が,やっと日の目を見るかもしれません。自動運転などによって不要な加減速や渋滞が抑制され,道路交通騒音が低減される可能性も期待されます。

自動運転の技術がどれだけ進展しても,自動車が人を運ぶ仕組みである限りは人とシステムの接合面は必ず存在します。そして,システムが複雑かするほどに,情報は増加し複雑化します。そのための適切なインターフェースデザインが求められます。その中では,高齢者の知覚特性,特に高齢難聴の傾向を考慮したデザインも求められ,当然,音のデザインも重要になってくるでしょう。

自動運転は,再び,新たな騒音源を生む可能性もあると懸念しています。以前,インターネットのジョークサイト「虚構新聞」(kyoko-np.net)に,<「人影あって安心」自動運転専用ダミードライバー開発>というネタが掲載されました。運転席に誰もいないのに車がひとりでに動くのが不気味だというクレームを受けて,運転席に設置するマネキンを開発したというのです。オチは更なる開発で「運転もできるダミーロボットを開発する」というものなのですが,そこはさておき。このような自動運転を不気味がるクレームから,車が自動運転中であることを歩行者わかるようにしてほしいという要求に発展し,そのために自動運転中を示す音を車外に鳴らせ,などということにならないでしょうか。そんな空想が,笑い話で終わればいいのですが。

山内勝也

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日本語擬音表現の考察の試み(Vol.44 No.4)
日本語擬音表現の考察の試み

日本語擬音表現の考察の試み

. はじめに

これが読者諸兄姉の目に触れるころには、新型コロナの感染拡大も収束しているころだろう。筆者は、この3か月間ほとんど自宅でテレワークという新たな生活様式で過ごしてきた。

休日の外出もままならない中で、大辞林1)を数十年ぶりに、正しくは四半世紀以上ぶりに開き“音”の部分を読み返してみた。【音】空気・水などの振動によって聴覚に引き起こされた感覚の内容。また、その原因となる空気などの振動。音波。中略、音の性質は強さ、高低、音色の三要素で表すことができる。(後略)。この音の性質を基に、日本語の擬音表現について考察を試みた。

. 擬音に対する日本語表現

音にまつわる日本語表現は数多くあることを考えると、古くから音が感覚としてとらえられてきたことがうなずける。

筆者に海外の知見は乏しいが、日本語には実に多くの音に対する表現がある。いくつかの例を挙げて、実際に計測してみた。

2.1 夜がしんしんと

例えば、末松謙澄の翻訳した小説「谷間の姫百合」の中で「夜はしんしんとして静かに月は林の上に懸りて・・」という表現がある。また日本の小説の曽根崎心中の一説に「かげ暗く風しんしんたる曽根崎の森にぞたどりつき・・」とあり、大辞林では“しんしん”は、音もなくひっそりとしたさまとして、“深深”は“沈沈”という漢字を充てている。

そこで、筆者は、深夜2時ごろ、野外に出てまさに月夜の下、自宅付近の環境音を1時間計測した。10分間の等価騒音レベルを6回計測した結果は、2531dBであり。自分の呼吸が気になるくらいだった。

まさに、無響室の暗騒音計測時と同じような静けさを数字は示しているが、不思議と無響室のような鼓膜を押されるような違和感はないことを感じた。

2.2 雨がしとしとと

雨が降るさまの一つに、「しとしとと降る春の雨」などと表現がある。4月のある小雨の日、日中11時頃の住宅の室内(我が家)の音を図ってみたところ、等価騒音レベルで4042Bであった。なお、窓を開くと6065Bであった。当時の気象台のデータから、雨量は1mm/時程度であった。窓を開けているとかなり気になる騒音レベルだが、春のしとしと雨と分かっていれば、草や木のなどに雨粒が滴り落ちる音が雨音として認識され、はたして風雅や季節感をもたらしてくれる音と感じる。

2.3 雨がごうごうと

一方、集中豪雨では、ごうごうと、物音がとどろきわたるさまたる、という表現がある。6月のある豪雨の日、日中11時頃の住宅の室内(我が家)の音を測ってみたところ、等価騒音レベルで4248dBであった。なお、窓を開くと6372dBであった。当時の気象台のデータから、雨量は20mm/時程度であった。長時間継続すれば、河川の氾濫や土砂崩れなどの甚大な災害につながる雨量である。雨音の主な要因は、大粒の雨が屋根や構造物に当たる衝撃性の音で、“喧しい”とかさらに進めば“恐ろしい”ものを連想させる音である。

. まとめ

音にまつわる日本語表現は、まだたくさんある。これらの擬音は単に音の大きさによる区別ではなく、高低さや特に音色を含む音の三要素で表現されたものであることは、多くの書籍が教えてくれる。音色とは、大辞林で、基音の振動数が同じ音の間で、聴覚に差を起こさせる特性をいう。上音の含み方やその減衰率によって決まる、と記載されて、AIに学習させるにはまだ時間が掛かるのではないだろうか。

今回、機会に恵まれ、日本人の豊かな感性と表現力を改めて体験し、今日まで受け継がれかつ現代人にも受け入れられる感覚を実感できた。

 4. おわりに

今回の新型コロナ禍で、医療及びそれに係わる現場で、人命救助に尽力された皆さんに、読者諸兄姉とともに心よりお礼を申し上げたい。

 

参 考 文 献

1) 松村明三省堂編修所編:大辞林(三省堂,1988).

(オリエンタルコンサルタンツ 石川賢一)

 

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身近な自然の四季と音(Vol.44 No.5)
身近な自然の四季と音

身近な自然の四季と音

. はじめに

週に1回、自宅付近の山でのランニングが習慣となっている。山といっても、ゆっくり走って上り下りすること30分程度の丘陵地である。主な目的は、日常の運動不足解消であるが、ここでは、季節に応じて視覚と同様、いやそれ以上に聴覚で感じる自然現象がある。夏に上り始め、四季を一巡して駆け下りてくるストーリーでその移ろいを記す。

. 身近な自然の四季と音

運動するには最も厳しい季節である夏、上り始めは樹林帯である。広葉樹と針葉樹が入り乱れ、ほぼ無風。汗が噴き出し、喉は息苦しく、日本の夏の高温多湿を感じながら走っていると、いつの間にかセミの合唱に囲まれていることに気付く。セミの声は夏の移ろいを聴覚で感じられる身近な自然の音である。都会や自宅では、暑さと不快感を倍増させ、かつ騒音測定には厄介者でしかないが、不思議と樹林帯の中でのセミの合唱は心地良く、足が進む。梅雨時期のニイニイゼミの遠慮がちな声から始まり、夏真っ盛りにはアブラゼミとミンミンゼミの大合唱で最盛期を迎え、ツクツクホウシの声が夏の終わりを告げる。また、真夏の夕方のヒグラシの合唱は郷愁に駆られる良い音であり、走る足を止め、しばらく聞き入ることは筆舌に尽くしがたい。

樹林帯を駆け上がって尾根に出ると草原があり、暑い季節が終わると爽やかな風が感じられる場所である。秋の日はつるべ落としと言われる通り、いつの間にか辺りが暗くなり始める。暗くなるにつれて、コオロギ、キリギリス、バッタなどを主とする秋の虫の合奏は音量を増していく。セミの声ほどの音量と力強さはないが、秋の虫ならでは鳴き声は、繊細かつ優美さを感じさせる。ここでは、多種多様の音が入り乱れているが、聴覚のカクテルパーティー効果により、1つの音色を抽出して感じ入ることができる。立ち止まり、コオロギ、次はキリギリスと音色に集中するのは趣き深い。騒音測定に悪影響を与える暗騒音になりうることは残念と感じるが、何人たりとも止めることができない虫たちの鳴き声は、自然の力強さを感じる音と言える。

立ち止まると涼しさより寒さを感じ始めるころには、いつの間にか秋の虫の声は聞こえない。鬱陶しい蚊や身の危険をも感じさせるスズメバチの羽音に悩まされることがなくなる。広葉樹は紅葉、落葉と姿を変え、山は寒さと静寂さに包まれる。冬は視覚的には寂しい季節となるが、聴覚的にはそうではない。葉を落とした木々の中、音の伝搬しやすくなり、鳥のさえずり、キツツキのドラミングなど、普段意識しないような音が際立つ。無風かつ凍てつくような厳冬の早朝は、山頂から眼下に一望する景色が美しいが、無音の中での聴覚は研ぎ澄まされ、枯れ葉が地面に落ちる音さえも聞こえる。一方、冬型の気圧配置が強くなると、激しい風切り音とともに、木々が激しく揺れ、地面の落葉が巻き上げられる。山頂での休憩は早々に切り上げ、北風を全身に受けながら下りの途に就く。

春一番で強風のピークを迎えるが、その後、啓蟄(けいちつ)を過ぎると穏やかな日が多くなる。小さな蜂やアブの羽音がわずかに聞こえ始める中、草原の斜面を走り下りる。まだ、鳴くことに慣れないウグイスは、ぎこちない声だが、斜面に点在する桜の木が満開になり、春が進むにつれて、ウグイスは惚れ惚れとするような美声を奏でるようになる。一目姿を見たいと立ち止まるが、笹藪の中から美声が聞こえるのみで、見つけることは容易ではない。五感のうち聴覚のみがウグイスの存在を強く感じられるのである。颯爽と走り下ることが山のランニングの醍醐味であり、春は全身に受ける風が最も気持ち良い。

麓に降りてきた。身近な自然から一時離れるため、名残惜しい気持ちになるが、帰路に就かねばならない。河川敷を走っていると、キジの甲高い声が聞こえ、疲労状態から聴覚のみが回復する。空高く舞うヒバリの鳴き声も聞こえる。道路交通騒音に暴露されながら、自宅に着くと、家族の声と生活音または人工音に囲まれ、これが日常の音環境であることを改めて実感する。

また暑い季節が来る。樹林帯を上り始めると、か細い声であるがセミがようやく鳴き始めた。

. おわりに

世の中は著しく変化する中、自然は変わらず、いつでも誰でも受け入れてくれる。そこで聞こえる音は様々であり、耳を傾けることは興味深い。特に、身近な自然の音環境は心地良い。また、自然に楽しませてもらっている謙虚な気持ちを持ち続けたい。

(リオン株式会社 計測器営業技術課 井關幸仁)

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(Vol.43, 2019)

風騒音の犯人は地震!? (Vol.43 No.1)
風騒音の犯人は地震!?

風騒音の犯人は地震!?

あるマンションの管理組合から「東日本大震災以降、冬の北風が吹いた時に音や振動が発生して眠れない。原因を調べてほしい。」という問い合わせが入った。地震と音との因果関係にいささか疑問を持ちながらも、現地調査に着手した。

この事例のように、風によって音が発生する現象は風騒音と呼ばれており、集合住宅のバルコニー手摺や設備用目隠しルーバー・ガラリ等の外装材に風が作用した際に、「ピー」「ブーン」と表現されるような騒音が発生することで知られている。近年、タワーマンションの増加や、意匠性・機能性等を考慮して複雑な断面形状を備える外装材が増加しているため、風騒音は建築物における一般的な騒音問題になりつつある(風騒音発生事例を図1に示す)。

 

               図1.風向別風騒音-暗騒音比較事例*1

そこで、外装材を事前に評価することを目的として、風洞実験室にモックアップを設置し、様々な風を作用させて音の測定を行う風騒音風洞実験を実施する事例が増えている。しかしながら、風騒音風洞実験における測定方法や評価方法に関する規基準(例えばJISや学会基準等)が存在しないため、風洞実験室稼働時の暗騒音や、モックアップ寸法および設置方法、風向再現方法、風向・風速ピッチの設定、そして風騒音の分析・評価方法等、各機関が独自の方法で進めているのが正直な所である。

ここでは例として、風騒音の分析・評価方法に着目してみる。これまでは実験者の聴感による判断をはじめとして、騒音レベル、1/1または1/3oct.band.分析そして周波数スペクトル分析等が採用されていた。一方、風騒音の特徴として、純音性成分が卓越することが挙げられる。同様に純音性成分が卓越する音源としては、風力発電施設や家庭用ヒートポンプ等が挙げられる。これらについては、純音性成分が与える不快感の評価手法に関する研究*2が進められており、周波数スペクトル分析による純音性成分とマスキングノイズ成分の差より算出される純音性可聴度(TATonal Audibility)による評価が検討されている。TAの詳細についてはIEC 61400-11:2012等を参照頂きたい。本工学会研究部会内には、201610月より「空力騒音分科会」が設立されており、このような客観的評価の導入も含めて、風騒音に関する標準的な測定・評価方法の確立に導いてくれることを風騒音実務担当者としては強く要望したい。

さて、冒頭でご紹介した物件である時、住民へのヒアリング中に偶然にも指摘通りの「ブーン」という音が発生しはじめた。すぐさまバルコニーや屋上の設備機器置場等をくまなく調査しまわり、ようやく発生箇所を見つけることができた。犯人は屋上付近にあったテレビアンテナ設置用のポールだった。風が作用した際に円柱状のポールの後流にいわゆるカルマン渦が周期的に形成され、その渦励振によってポールが振動し、固体伝搬音が発生していたことが判明した。そこで対策としてポールの撤去を提案し、無事解決に至った。ところで、地震と風騒音との因果関係はいったい何だったのだろうか?

東日本大震災が発生した2011年の7月、地上デジタル放送への完全移行化が行われた。それに伴いこのマンションでは、アナログ放送からケーブルテレビへ切り替え、ポールに設置されていたアンテナを撤去していた。これまでアンテナによって乱されていた風の流れが、アンテナ撤去後、ポールに対してきれいな風が作用するようになり、風騒音が発生するようになったのだ。アンテナ撤去のタイミングが、偶然、東日本大震災後と重なり、撤去後初めて迎えた冬に風騒音が発生したというオチであった。

参 考 文 献

1) 冨髙隆,増田潔,浜田由記子: 実験室における風騒音評価方法に関する検討, 日本音響学会春季研究発表会講演論文集, pp.899-900 (2018).

2) 平成30年度環境研究総合推進費 研究課題番号5-1710 「風力発電施設等の騒音に含まれる純音性成分による不快感の評価手法の研究」

(大成建設 冨髙 隆)

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騒音制御今昔物語 (Vol.43 No.2)
騒音制御今昔物語

騒音制御今昔物語

少し古い話を紹介しようと思いますが、半世紀を超える記憶は定かでない処もあり、「そんなことがあったのか~」ということでお読み頂ければ幸いです。

騒音問題の草創期

 古くは「噪音」と表し、文字どおり好ましくない音が対象でした。戦時中には爆撃機の到来をプロペラ音で察知する大きなラッパ型の聴音装置を創る研究をしていたと五十嵐寿一先生から伺ったことがあります。

 戦後、交通機関や工場の発生騒音が社会問題になりはじめ、まだ評価の基準なども法制的に充分確立されておらず、それぞれの問題に対して各々の行政機関で個別に必要な対応をしていた時代が草分けでした。

騒音測定あれこれ

昭和20年代後半には、国産のサウンドレベルメーターが出回るようになりました。勿論アナログのメーター指針を読み取るもので、単位はPHON、測定の方法は、耳で音を聞きながら、レベルに応じて聴感補正A,B,Cを素早く切り替え、同時に振れ動いている針を目で追ってレベルを読み取るという熟練の技で、「騒音は耳で測れ」と教えられたのはその証しであり、まさに音を測るという基本的な作業であったと思います。

当時の騒音計は、真空管式で電池もAB二つを入れるので、大きさも重さも今のものとは比べものにならず、記録装置はオープンテープレコーダー。レベルレコーダーはB&K製が大学の研究所など数か所にしかなく、携帯型のものはゼンマイ駆動で動く記録紙にインクで書かせる構造で、一式を運ぶのは体力勝負の測定でもありました。24時間測定ともなれば、徹夜で騒音計と睨めっこというハードなもので、食事交替要員も電池の予備も必要という大事業でした。

    ゼンマイ式レベルレコーダー

今は、ICなどの進歩によって小型軽量でデジタル表示、自動化も普及して無人測定もできるという便利な時代になりました。しかし、そこに人がいない測定結果が本当に現実的な答えを示しているのか、一寸考えて見ることも大切で、ヒトが好ましくない音を捉えているという原点にいま一度着目して欲しいと考えます。

防音工事のはじまり 

 昭和20年代の終り頃、在日米軍の射撃訓練や飛行場の航空機騒音による教育阻害を緩和する対策として、近隣の学校に対する防音工事が始まりました。

当初、防音という表現は、音源制御なのか、受音対策なのか判然としないという声もありましたが、今では防音工事という言葉は一般にも定着して、主に建築物に対する騒音対策を表す用語になっています。

昭和29年に始まった対策では、当時の木造校舎を構造的に遮音するのが難しく、壁の遮音性能を高めるとともに、開口部の気密性を上げ、室内の吸音力も増して教室を静かにする方法が考えられました。しかし、気密化によって換気を強制的に行う必要が生じ、屋外の騒音は入らないで空気の出入りをさせるという消音換気部を設けるなどの工法が開発されました。前例もないし、音響材料も限られ、試行錯誤が続きました。  

その後航空機はジェット化され木造建築での防音には限界があるため。全面的に鉄筋コンクリートに改築して、効果的な対策が取られるようになり、鉄道や道路周辺の騒音防止対策にも応用されました。

 

         新旧騒音計

騒音制御こぼれ話

「鐘は上野か浅草か」と言われてから僅か200年、

今は街の騒音で遠くに鐘の音が届かなくなりました。おまけに、お寺の鐘の音がうるさいという苦情や、子供の遊ぶ声が騒音だという話題も耳にします。多くの人の中には噪音と感じる方もあるのでしょう。数字が一人歩きするデジタル時代ですが、音の問題は数字で解決できない感覚量だという事を忘れてはなりません。

人の生活空間を、遮音目的で気密性を高めることは、

室内の空気環境を良好に保つこととは相反し、この問題が必ず付帯することにも注目しなければなりません。また、外部の音を遮断することで、生活上の必要な音まで排除する危険も考えられます。

世はデジタル時代、騒音の評価単位も変化しましたが、「音」はあくまでヒトの大切な五感で捉える現象であることを基本に、先ずは耳をそば立てて、騒音を扱うように心掛けましょう。 

( 認定技士 岡本圭弘 ) 

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1200年前の音に思いを馳せる―防人の聞いた音 (Vol.43 No.3)
1200年前の音に思いを馳せる―防人の聞いた音

1200年前の音に思いを馳せる―防人の聞いた音

数年前に久しぶりに大学時代を過ごした福岡に行く機会があり,じっくり訪れることがなかった志賀島を改めて散策した。島の入り口近くでレンタサイクルを借りて、歴史深い島を,海風を感じながら巡る道のりは楽しかった。江戸時代に志賀島で発見された金印が出土したとされるひっそりとした場所に立つ石碑を眺めていると,低空で通過する福岡空港に向かう旅客機の音にぎょっとする。歴史と騒音のせめぎ合いの様相だ。島の北部までやっと辿り着くと、そこにちょっとうらぶれた「しかのしま資料館」があった。金印や元寇の詳しい資料など一見の価値がある。暇を持て余した受付の人とひとしきり話をしていると薄い歴史の小冊子に目が止まった。蒙古襲来などテーマを絞った数冊の本をお土産代わりに購入したらその人はえらく喜んでいた。たぶん滅多に売れないのであろう。ホテルに戻って頁をめくるとそれらの小冊子は思いの外面白かった。郷土の歴史の本なので博多に思い入れのある文章だ。二度の元寇の話も生々しい記述についつい引き込まれた。

西暦1274年の1回目の蒙古襲来は博多の町を震撼とさせた[1]。旧暦の103日に朝鮮半島を出発した900隻の船団は、対馬、壱岐を玉砕して1020日に博多に上陸、武士達の必死の抵抗にも関わらず、博多はこの日一日で市街地がほぼ灰になった。この時の戦いの様子を竹崎季長が絵師に描かせたのが有名な「蒙古襲来絵詞」である。よくぞこの詳細な絵を残してくれたものだと思うが、当時の元軍の武器などもよくわかる。元軍の戦法の重要な要素は敵の人馬に有無を言わさず恐怖心を煽り立てる大音響であったようだ。元軍は太鼓を打ち鳴らし銅鑼を打って天地も揺るがすような集団の怒声とともに迫ってくる。リオンの食堂のマルチトーカノイズのような生易しい代物ものではない。武士の乗る馬がこれに驚きコントロール不能となった。さらに肝をつぶされたのが、彼らが初めて体験した新兵器「てつはう」だった。直径15㎝ほどの金平糖のような形をした容器に火薬を詰め込み紐や棒を使って発射する。閃光と大音響とともに炸裂して武士たちの悲鳴とともに強烈な音圧波形を生じさせたに違いない。

話が600年程遡って、西暦663年の「白村江の戦い」。歴史の授業では特に印象に残らなかったが,古代日本を揺るがした大事件だったようだ[2]。朝鮮半島は超大国唐の圧力を受けていた。当時の友好国であった百済再興のため大軍を送り唐・新羅の連合軍と戦ったが惨敗した。次はいつこちらにも攻め込まれるかわからないという状況で,大和朝廷の祖国防衛のための力の入れようは相当だった。梅が枝餅の思い出しかなかった大宰府はその防衛拠点であった。対馬、壱岐などに最前線部隊として「防人」を駐屯させ、対馬から機内まで約25 km毎に「狼煙台」を設けて情報をいち早く伝達しようとしていたらしい。

西暦843年の対馬の防人に関する記録で、音に纏わる興味深い記述がある。その年の冬から夏に掛けて、対岸の新羅の国に夜になると火が見え、鼓の音が日に23回聞こえたというものだ。対馬の北端に立てば釜山まで約40 kmで現在でも夜景が望めるそうだが、鼓の音がそんなに長距離伝搬するかどうか。1200年前に防人が聞いたであろう音を想像してみよう。海上伝搬は波浪による散乱の影響で順風条件であっても予想に反して音波はあまり伝わらないので[3]、音が聞こえた当日は無風でべた凪の状態で、対馬方向に向かう音波が上空で主に温度の影響で下向きに屈折し鏡面のような海面で反射してこれを繰り返しながら2分程度で対馬に達したと想像される。モニンオブコフ相似則が成立するのは夜間の接地境界層で数十m程度なのでその範囲で何度も屈折反射を繰り返すと流石に減衰してしまうだろう。とするとかなり上空まで海面付近より気温が高い状態だったか。低いドンドンという音なので空気吸収は大きくない。距離減衰は80 dB程度と推定できる。東京都府中市にある大國魂神社の有名な暗闇祭りで大太鼓から数mの距離でこっそり測った騒音レベルが110 dB程度だったのでこれを参考にする。風もなく暗騒音は強烈に小さかったはずなので、大きな鼓の音なら騒音レベルで30 dB程度となり何とか聞こえたのではないだろうか。この小冊子を読みながら、真っ黒の海を見つめた孤独な防人が聞いたであろう音を感じることができた気がして嬉しくなった。

参 考 文 献

[1] 郷土歴史シリーズ④元寇,岡本顕實著,さわらび社

[2] 郷土歴史シリーズ⑦防人,岡本顕實著,さわらび社

[3] 横田他、“音の海上伝搬に及ぼす風の影響に関する時間領域差分法を用いた数値解析、”騒振研資料(2018.10).

(リオン 大島 俊也)

 

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インターネットと騒音苦情(Vol.43 No.4)
インターネットと騒音苦情

インターネットと騒音苦情

私が大学を卒業した頃はまだ時代はアナログで、世の中ではパソコン通信という電話回線を使った情報網が普及し始めた頃だった。地方に住む私は、東京のアクセスポイントまで長距離電話をかけ、24009800bpsという今では考えられない低速でファイルの交換を行った。個人個人が電話機を持ち歩く時代はまだ遠く、ポケットベルが全盛を迎え、サラリーマンはポケットベルが鳴ると公衆電話に走っていた。正しい情報を得るためには、図書館や書店に通い、時間をかけて必要な情報を探した。

 僅か30年ほどで状況は大きく変わり、一般の家庭でも数十M1Gbpsで世界と繋がり、昔のパソコンの数百倍の速度と機能を持つスマートフォンを小学生から老人まで携帯している。幾つかのキーワードを入力するだけで、世界中から膨大な量の情報を一瞬かつ無料で集めることができる。買い物も日々の献立も時刻表ワールドワイドにインターネットを通じて行われている。このように世界中の情報にアクセスし易くなったばかりでなく、情報を世界に向けて発信することも簡単になった。多くの人々が日々の出来事をインターネット上に呟き、今日の食事の写真をアップロードしたりしている。列車に乗ると右にも左にも周りの人々の殆どがスマートフォンを開きのぞき込み、盛んに指を動かしている。昔は個人と世界の間には結構な隔たりを感じたが、今ではその壁が溶けて消えてしまったようだ。

 このように生活にすっかり根付いたインターネットなだけに、企業、学会などの公益団体、行政、教育機関のホームページ、wikipediaや地図情報などの正しい情報はとても有用である。一方で個人の感情に任せた情報、思い込みによる情報、個人の経験に基づいた誤った情報、恣意的な正確さに疑問のある情報も世界中にあふれている。特に感情に任せた情報は、情報発信することがトレスを発散するための行為であり、情報の正確さも確認されないまま大量に世界に公開されている。しかしこのような感情的な情報ほど人の共感を得やすく受け入れられやすいようである。

 更にここ数年報道機関などの優良コンテンツは有料化の方向にあり、感情的であったり恣意的な無料の情報ほど容易にアクセスしやすくなっている。それどころか旧来は独自に取材し情報の確実性を売りにしていたマスコミすら、インターネット上のコンテンツに頼るようになり、「ネットでは…」と、インターネット上の情報が権威を持ち、真しやかに語られるようになってしまった。

 すっかりネット社会に馴染んだ今では、様々なシーンでネット上の情報を利用しているが、特に困った時は自分が立たされた状況がどのようなもので、どのように対処するべきか、あるいは共感を求めて、先ずはインターネットにアクセスし、その中から自分に役に立つと思われる情報をかき集め、さらにインターネットに呟く。集めたられた情報の正確さや自分の状況とインターネット上の状況との相違点などを正しく吟味することは、よほどその事情に通じた者でなければ不可能だろう。そのため自分に都合の良い情報になびき、不都合な情報から目をそらし、それぞれの都合に合わせて解釈してしまうこともあるのではないだろうか。

 騒音苦情者の話を聞いていると、自宅前の高圧電線から低周波音が出ているなど、専門家として有り得ない理論を聞くことがある。よくよく話を聞くとその理論はインターネットから入手した情報ということが多い。騒音苦情者も例に洩れず自分の置かれた状況をネットワークで検索し、正しい情報も誤った情報もごちゃまぜのネットワーク上の情報から、自分が共感を得られる情報を選び、新たな理論を再構築しているのかもしれない。例えば低周波というキーワードで検索した結果、低周波音も低周波振動も低周波電磁波も低周波治療器も一緒くたに検索されて解釈され、自宅前の電線から低周波音が発生することにったのであろう。

 しかしながらこのような突飛な理論を一方的に責めることはできない。このような理論は、それぞれの苦しい立場を理解し改善しようとした結果だからだ。

 私たちは、これまで正しい情報の発信を心がけてきているが、どうも専門家向けの傾向が強く一般の人に解りにくいような気がする。法律を難解な法律用語のまま解説したり、物理的専門用語を難しい数式を交えて説明したりしていないだろうか。

 正確な情報を発信することは当然だが、正しい情報を噛み砕いて誰にでもわかりやすくし、誤った情報以上に騒音苦情者に寄り添うような情報発信を心がける必要があるのではないだろうか。

 

(山梨大学 北村 敏也)

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バドミントンの音の魅力とベルヌーイの定理 (Vol.43 No.5)
バドミントンの音の魅力とベルヌーイの定理

バドミントンの音の魅力とベルヌーイの定理

前回のリオデジャネイロオリンピックで女子ダブルスの高橋礼華・松友美佐紀ペアが長身のデンマークペアに対しファイナルゲームの土壇場で大逆転して金メダルを獲得したとき,全員バドミントン経験のあるうちの家族はテレビの前で雄叫びをあげて歓喜し,その後ビールを飲み過ぎて二日酔いになりました。誰か一人,銅メダルでも良いので何しろメダルを獲ってほしいと毎晩神様にお願いしていた無神論者の私の願いは最高の形で叶ったことになります。その後の日本のバドミントン界の世界への台頭は関係者でさえ予想を超え世界大会で上位入賞することが当たり前の状況になっています。現在2020年の東京オリンピックに向けてオリンピックレースの真っただ中で国内でも競争が激化しています。特に女子ダブルスの上位3チームは20198月の世界ランキングで13位を独占しているにもかかわらず、出場枠が2つしかないという熾烈な状況です。

自分も含めたバドミントン愛好者はシャトルを打った瞬間の音と手腕に伝わる振動を合わせた「打撃感」に快感を覚えていると思います。気持ち良く打ち返せたときには、おそらくストリングスとシャフトの弾性を含むラケットの各部位と身体の各部位のばねと質量がうまく連成して力を生み出しているのでしょう。逆に言うと気持ち良く打てるように調整していけばフォームも自ずと無駄なく綺麗になっていくはずです。また、この「打撃感」は体育館の広さや壁面の吸音状況によっても大いに変わります。丁度良い広さと適度な壁面からの反射音がある体育館でプレーするとあたかも自分のスマッシュがいつになくズドンと決まって快感を覚えたりしますが、これは正に“音によるまやかし”で錯覚に過ぎないとも言えます。このまやかしも含む打撃音と癖になる打撃感がバドミントンの魅力の一つだと考えます。

バドミントンプレーヤは相手がシャトルを打った瞬間に打撃の方向を見極めます。相手の打撃に合わせて軽くジャンプする動きは次のステップへスムーズに移行するために特に初心者にはお勧めですが、いずれにしても打撃方向の読みが外れるとその時点でラリーを続けることが困難になります。この読みの瞬間、シャトルの打撃音も重要な情報を持っていると考えられます。各国で行われる世界大会ではお国柄によって会場の音の状況も大きく変わりますが、特にバドミントンを国技とするインドネシアでは観客がラリーに合わせて掛け声を出すため、選手は自分の打撃音さえも聞こえない状況となりプレーに影響すると聞いたことがあります。

バドミントンはスピードと繊細さの双方が要求される競技です。というのも水鳥の羽とコルクでできた5グラムしかないシャトルコックは空気の流れの影響をもろに受けるからです。ラケット面をフラットにして強打するスマッシュに対して、スライスショットはスマッシュと同じスウィングでラケット面を傾けて右や左にスピンを掛けるストロークですが、おもいっきり振り抜いているにも関わらずスマッシュよりもストンとネット際に落ちるため、レシーブ体勢に入っている相手の意表をつくショットになります。この「スライスショット」と流体力学で有名な「ベルヌーイの定理」が密接に関連していると私は考えています。

通常の水や空気の流れでは、流れの速さと圧力の間にベルヌーイの定理と呼ばれる関係が成り立ちます。これは、「流速が速いところほど圧力が小さい」というものです。右利き左利きの違いはありますが、今フォア側からクロスにスライスショットを打つ場合を想定し、シャトルコックの右側をカットするようにスピンを掛けたときのシャトルコック周囲の空気の流れを考えてみます。シャトルコックの右側は回転方向と移動に伴う空気の流れが相反するので流速は相対的に遅くなります。反対に左側は回転方向と移動による空気の流れが同一方向なので流速は速くなります。ベルヌーイの定理がシャトル周りの空気の流れで成立しているとすれば、流速が遅い右側に比べて流速が速い左側の圧力は相対的に小さくなります。当然、圧力の大きい方から小さい方に力が働きます。すなわち、シャトルコックは左に曲がっていきレシーバーから逃げるように切れ込んでゆくことになります。これは野球のカーブボールの原理と同じです。もちろんバドミントンプレーヤは、ラケットや身体のバネの連成やシャトルコック周りの流体の流れを意識する訳ではなく、積み重ねた膨大な練習の経験から感覚としてスムーズな身体の動きやよりスピードの出るラケットワーク、相手の読みを裏切るショットを体得していきます。頑張れ、ニッポン!       

 (リオン 大島 俊也)

 

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ご贔屓の『音系』テレビ番組 (Vol.43 No.6)
ご贔屓の『音系』テレビ番組

ご贔屓の『音系』テレビ番組

テレビが好きだ。朝起きて明かりをつけた後、真っ先に手が伸びるのはテレビのリモコンである。外出する時と寝ている時以外、常に何らかの映像と音を発し続ける状態になっている。そのような性分だからか、長年見続けている番組も多い、と思っていたが、10年以上贔屓にしている番組は意外と少ない。平日の朝、通勤前の一服の清涼剤となっている『めざましテレビ(フジテレビ系列)』、金曜深夜に一週間の激務で疲弊した頭を解きほぐす『タモリ倶楽部(テレビ朝日系列)』、そして日曜日のゴールデンタイム(1)、高視聴率番組のスキマに15年以上一定のインパクトを残し続ける『音のソノリティ(日本テレビ系列)』。これらが私の中の三大長寿番組となっている。今日は、私が長らく愛してやまない番組の一つである、『音のソノリティ』の魅力をお伝えしたい。

J-POWER(旧電源開発)がスポンサーを務めるこの番組は20031011日放送開始、今年で17年目を迎え、先日113日の放送で800回を数えるまでになっている。6分の時間枠(といってもCMを除いた放送時間は実質1分少々)は二胡の優雅な調べに乗せて始まり、ある地域のテーマ性を持たせた『音』を取り上げ、美しい映像に控えめなナレーション、そして解像感の高い音が滔々と流れていく。

対象地域は日本全国津々浦々、テーマとなるのは、鳥の鳴き声や川のせせらぎといった自然音をはじめ、伝統ある産業に由来する音風景、地域に根差す祭りのサウンドスケープとバラエティに富んでいるのが特徴である。また、「セマルハコガメの吐息」といった非常にマニアックなものや、「カタツムリの食事」「いぶりがっこ」といったどんな音を聞かせてくれるのか想像がつかないテーマまでカバーしているところに目新しさを感じる。

日本各地の著名な音風景リストとして、ある種一定の市民権を得つつあると思われる『環境省の残したい音風景100選』と同じテーマであるものは800件中37件とさほど多くはない。環境省の音風景100選は各都道府県に対して大体均等に選出されている(最大でも北海道の5)のに比べて、音のソノリティでは、取り上げられている地域に偏りが見られる。数多く取り上げられている都道府県TOP5は、1位:北海道(117)2位:沖縄県(64)3位:鹿児島県(41)、その後4位:京都府(29)5位:長野県(27)と続く。1位の北海道は、風雪や流氷等の雪国独自の音風景から、キタキツネ、エゾシカ、タンチョウヅルといった北海道特有の動物が多く取り上げられている。2位の沖縄は、水牛、ウミガメ、ヤシガニといったやはり島の生物をテーマとした回が多く、3位の鹿児島も同様に、奄美大島等の島々の生物を取り上げるものから屋久島の水系に関する音、鹿児島各地の祭り事に関する音と幅広く取り上げられている。

特徴的なシリーズとしては、収穫シリーズ:10(小豆島のオリーブ/落花生/わさび/大鰐温泉もやし/じゅんさい/信濃くるみ/石鎚黒茶/ホップ/伊勢芋/南天)、天日干しシリーズ:5(海苔/筆軸/落花生/桜えび/ちりめんじゃこ)、不思議な音シリーズ:6(ポンポン山/弟子屈町の森/有明海/壺畑/早岐瀬戸/後生掛温泉)、産卵シリーズ:11(ウミガメ/カブトガニ/クサフグ/アカテガニ/エゾアカガエル/オニヤンマ/マルタウグイ/金魚/アカガエル/コイ/モンカゲロウ)などがあり、番組プロデューサーの哲学や趣向が窺え、それら各々の音の違いも比べてみたくなるところである。

ちなみに私のお気に入りは、「辛子蓮根作り」と「ポンポン山の不思議な音」。前者は、音自体は蓮根に辛子を詰めるシンプルなものであるが、その音を録るための文字通り涙ぐましい苦労が番組HP(2)記載のDIRECTOR’S COMMENTから窺え、臨場感を持ってその音を感じることが出来る。後者は北海道の雪深い山で身元不明の音が聞こえるという話を聞きつけての取材であったこと、そしてその音の正体を同様にDIRECTOR’S COMMENTから知ることで、より一層音を楽しめることが出来る。是非、本コラム読後は番組HPを訪れ、気になった音を背景込みで味わっていただきたい。尽きないネタ、気になる今後のラインナップを考えると、日曜の夜は、まだまだ4chからチャンネルは変えられそうもない。

(※1:元々土曜21:5422:00の枠であったが、20104月に現在の日曜20:5421:00の枠に移動)

(※2:http://www.ntv.co.jp/oto/)

 

(千代田化工建設 武田真樹)

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(Vol.42, 2018)

世界の音環境シリーズ (Vol.42 No.1)
世界の音環境シリーズ

世界の音環境シリーズ

その①ベルギー編

1.会員の皆様こんにちは.世界の音環境シリーズその①,ベルギー編を担当させていただきます,当学会の理事の上田と申します.私事ながら2017年4月より,縁あってベルギー・フランダース地方のゲントという街にそびえるゲント大学のAcousticsのラボで,空中超音波の研究をしています.当該ラボのボスは,Dick.Botteldooren教授といい,現在ABAV (Belgian Acoustical Society)のpresident,EAA (European Acoustics Association)のvice presidentを務めています.
それはさておき,今回は音環境シリーズということで,私の方からはベルギーの騒音・音環境について簡単にレポート致させていただきます.それでは早速,航空機騒音から参ります.とは言え,あくまでも主観でのレポートですので,詳細等の事実確認はご自身でされてください.よろしくお願い致します.

●ベルギーの主要空港であるブリュッセル空港周辺の航空機騒音問題について

当該ラボでは,ブリュッセル空港の環境レポート(主に大気と騒音)を毎年作成しています.実際に同僚がノイズコンターを描いています.Dickや同僚の話によると,ブリュッセル空港での騒音問題で最も重大な問題は,ポリティカルな問題であると.ここでいうポリティカルな問題とは,騒音レベルがそこまで高くない地域からの苦情で,特に高級住宅街や政府関係者からの苦情が最も多いそうです.航空機自体の騒音レベルが低減されつつある現代はやはり低騒音での騒音問題がベルギーブリュッセル空港でも発生しているようです.余談ですが,ゲント上空はほとんどがその他のヨーロッパ便のオーバーフライトとのこと.飛行機雲が一度に何本も交わる空はとても美しいです.

●道路交通騒音

ゲントでは,数年前にエリア毎にゾーンが指定され,通行の規制が多数なされたようです.そのことにより,特に住宅周辺での道路の一方通行,速度規制が行われています.ドイツ・ベルリン等では,騒音に配慮して速度規制がなされていますが,こちらは渋滞の防止などの理由がメインのようですが,それらの規制により住宅街は特にとても静かです.

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雪と音の関係を知る(Vol.42 No.2)
雪と音の関係を知る

雪と音の関係を知る

会員諸氏が本号を手にするのは春も盛んな新年度の始まりであるが、さすがの大雪も僅かに残る程、オレンジ色の太陽の光が反射して眩しい朝焼けに春の気配を暖かな部屋の中で感じるすぐその後は窓の外に雪が舞う頃に本稿を書いている。届いたばかりの環境省「平成28年度自動車交通騒音実態調査報告」や公調委「ちょうせい」での、環境基準の達成状況が穏やかに改善傾向にあることやエコを唱うヒートポンプ式給湯器や小さな現場さえ重機が使われる建設作業騒音が苦情対象との解説に執筆の関心が傾くも、ここは記録的大雪と報道されてまだ余韻の残る「雪」と音について研究の記憶を辿ってみよう。

. 積雪地での雪の実態

 多雪地域の雪は、陽光溢れる側から覗いたトンネル望遠鏡の先の美しい光景ではなく、「北越雪譜1)」にも描かれたとおり古くから今へも労苦として重くのしかかる。新雪では比重0.1程度も春先の十分湿った雪では0.5を越えて、屋根上の積雪加重で家屋倒壊の危険性があり、しばしば著者は乗用車を並べた木造の屋上駐車場との想像で伝える。建築分野では屋根雪処理は主要課題でもあり、屋根を支える柱や梁の歪みや軋み音に怯えて行っていた排雪作業を合理的に実施する目的で帯雪重量を音響的に検知できないかと研究を開始し、雪の音響特性や音の伝搬への積雪の影響の研究も続けて行ったわけである。

. 積雪中の音響減衰

 手始めは簡単に、積雪下の剛な面上にマイクロフォンを配置、上部のホワイトノイズ音源からの音圧の減衰量を観測し、さらに周囲の積雪も重ねながら実験を行った。その結果、雪の層高に比例してdB減衰値が増し、密度や周波数が増すほどその傾向が強まる特性が把握できた。これを主要な卒業研究テーマに掲げつつ、卒業間近な冬期のみ限定されるこの方法の他に、実験対象をグラスウールなどに替えて留年防止の通年研究とした成果とも対照比較して、積雪は多孔質音響材料と極めて類似の音響減衰特性を持つと把握した。その後、多雪地域でより深く密度も高い自然積雪層内にマイクロフォンを配して積雪中の音響減衰の観測を重ねた。それらのまとめた例を図1に再掲するが、積雪状態を音響特性が既知の多孔質材料に見立てることが可能と考えられた2)

. 積雪面上の音響伝搬3)

雪が降ると静かになると言われる。この真偽の確認の一環として、異なる深さの積雪面上に音源と騒音計(当時)を配置して音響伝搬特性を観測した。多孔質面上の理論伝搬計算とも比較して積雪は厚い多孔質材料と仮想すると良い対応が得られると判明した。僅かな積雪でも伝搬特性の中高音域に深いディップが複数現れ、音声や一般騒音の主要成分の周波数帯域で広く深い大きな減衰を生じ、より深い積雪ではやっかいな低音域にもディップが及ぶと分かり、降雪が騒音を発する活動自体を抑制することと併せて、雪による静穏化の言説の根拠と納得できた4)

. あとがき

 積雪と音に関する著者の研究を振り返ってみた。観測計画の実施に想像以上の雪対応が求められるが、一部紹介は文献に。若さ故に可能な細かな準備作業や柔軟な現場対応、キノコ工場稼働による低い音の騒音が積雪で一時的に消えるとの一住民の声に合点した記憶、そして多孔質材料の特性解明とそのために音響管計測を始めたことが思い出される。最後に、身近な問題や古い言説も新たな研究の源ですと若い人に伝えておきたい。  

 (新潟大学 岩瀬昭雄)

          図-1 積雪中の音響伝搬減衰特性2)

参 考 文 献

1) 鈴木牧之:北越雪譜, 岩波文庫 黄226-1 (岩波書店,1978).

2) T. Iwase, T. Sakuma and K. Yoshihisa: Measurements on Sound Propagation Characteristics in Snow Layer, Proceedings in CD-ROM , 17th ICA (2001, ROMA).

3)例えば岩瀬昭雄:積雪面上における音響伝搬特性, 日本騒音制御工学会誌, 21巻 3号, p148-151(1997).

4) 岩瀬昭雄:積雪地の音環境について– 雪が降ると静かになる?の解明,日本騒音制御工学会誌, 32巻6号, p378-384(2008).

 

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いきものと人が織りなす初夏の音(Vol.42 No.3)
いきものと人が織りなす初夏の音

いきものと人が織りなす初夏の音

仙台市の鳥がカッコウと決まったのは,1971年のことだ。健康都市宣言10周年の記念に,市民投票によって選ばれた。その当時,街中でもその鳴き声を聞くことができ,「杜の都」仙台の象徴にふさわしいということで選ばれたようだ。

近き木に来て郭公の三声ほど 高浜虚子

時が進む中,カッコウの声を身近に聞くことは難しくなってきた。例えば,街の中心からほど近く,かつて仙台城があった青葉山では,1964年と1989年の調査において,カッコウの棲息が確認されている1)。また,1994年に発行された宮城県の野鳥のガイドブックにも,青葉山でカッコウが見られることが記されている2)。しかし,2010年に発行された青葉山の自然のガイドブックには,カッコウの記載がない3)。また,市議会の議事録を調べると,19946月議会の一般質問の中で「市の鳥であるカッコウの声が聞こえなくなった」という発言があったことがわかる。さらに,19976月議会では,環境局長の答弁の中に,1994年に中学生を対象として行った調査結果から,カッコウなどの身近な生き物が,20年前と比べて少なくなっていることがわかった,という発言が見られる。これらを合わせて考えると,カッコウは,1990年代半ばには,市民にとって身近な存在ではなくなってしまったようだ。

蘆原の中に家あり行々子 正岡子規

仙台でカッコウが身近な存在でなくなった原因の1つは,都市開発により,カッコウが好む環境が減少してしまったことにあるようだ。上述の市議会での発言は,正に,その文脈での指摘だ。また,八木山に長く住む知人から,以前は自宅周辺でカッコウをよく聞いたが,地下鉄東西線の工事が始まってから,さっぱり聞かなくなったという話を聞いたこともある。だが,これが全てではない。

カッコウは托卵によって繁殖する(余談だが,この性質により,市の鳥としてはふさわしくないのではないかという議論が,1990年代後半から2000年代半ばにかけて,市議会でなされている。)。その托卵相手の1つがオオヨシキリだ。ヨシキリは,その鳴き声から行々子という別名を持つ。そしてヨシキリが巣を作るのは,葦原の中だ。

よもすがら騒ぎし葦を刈にけり 浜井武之助

葦は,古くは,住宅の屋根に用いられたり,葦簀に用いられたりと,生活に根付いた存在であった。そのため,葦原は人々の手により管理されてきた。葦苅が晩秋の季語なのは,その名残だ。

しかし,住宅の近代化が進み,萱葺屋根は絶滅間近となり,葦簀も安価な輸入物が主流を占めるようになった今,程よく手が入った葦原を目にすることは少ない。これは,取りも直さず,オオヨシキリの安住の地の減少を意味し,それはカッコウの減少にもつながる。

目開けば海目つむれば閑古鳥 飯田龍太

2011311日,東日本の太平洋沿岸部を大津波が襲った。緑が美しかった仙台市荒浜の防風林は,そのほとんどが流されてしまった。

荒浜の方々に聞くと,震災前は,田植えの頃になるとオオヨシキリが賑やかに鳴き始め,カッコウも普通にやってきていたのだと言う。浜辺に座り,波音を背景に聞くカッコウの声は,さぞや美しかったことであろう。

震災後も,オオヨシキリは季節になるとやってきて,喧しい位にその喉を披露している。しかし,好みとする高い木がほとんど無くなってしまった今,カッコウはやってこない。

以上,秀句の力を借りながら述べてきたように,カッコウに彩られた初夏の音風景一つとっても,カッコウさえいれば成り立つのではなく,カッコウと他の生き物たちとの,そして,人々との関係があって初めて,持続可能なものとなる。このことを何とか五七五の形で表現しようともがいた結果が,このコラムの表題として挙げた,著者の駄句だ。

謝辞:本稿は仙台市生物多様性保全推進事業に関わる中で得た情報を活用してい

る。関係する皆様に謝意を表す。 

参 考 文 献

1) 竹丸勝朗:仙台城址およびその周辺地域の鳥類, 仙台市教育委員会編:仙台城址の自然 ―仙台城址自然環境総合調査報告― (仙台市教育委員会,仙台市,1990), pp.219-254.

2) 日本野鳥の会宮城県支部編:宮城の野鳥 (河北新報社, 仙台市, 1994), p.148.

3) 青葉山の緑を守る会:杜の都「青葉山」の今! 青葉山自然観察ガイドブック (青葉山の緑を守る会, 仙台, 2010).

(福島大学 永幡 幸司)

 

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ひとの音感覚を数値化するー工夫とその変遷ー(Vol.42 No.4)
ひとの音感覚を数値化するー工夫とその変遷ー

ひとの音感覚を数値化するー工夫とその変遷ー

はじめに

 当研究室では従前よりプリンタ動作音を中心に機械から発生する音(機械動作音)に対する印象や感覚を評価(数値化)し、それを既存の物理評価量(LAeq, ラウドネス、シャープネス、ラフネス、変動強度etc.)から予測する研究を行ってきました。その流れもあってか、地元企業から製品音の評価や対策の相談を受ける機会が最近増えてきました。そこでの課題の多くは騒音レベルを下げるとか、異音の発生原因を明らかにして対策を考えるというような、いわゆる静音化の話です。しかし、打ち合わせの際に音質評価や快音化の話をしますと、みなさん一様に興味を持たれます。静音化の対策の次には是非考えてみたいと言われますので、この手の研究の潜在的な需要はかなりあるのではないかと思っています。

 印象評価実験

対象音の種類、製品の用途、印象や感覚をどのような観点から評価するのかによって、数値化すると言っても値は当然変わります。まずは、その辺りを整理して印象評価実験の分析を通して数値化を行うことから研究を始めなければなりません。研究室では一対比較法やSD法による評価実験を実施することが多いのですが、いずれの場合も問題となるのが被験者の確保と実験をいかに確実に実施するかです。

大学の研究室の場合、被験者として大学生を確保することは難しくないのですが、どうしても年齢層や性別が偏ってしまいます。広い年齢層、嗜好の多様性を反映した結果を求めるのであれば、学生以外の一般人、社会人に対象を広げる必要が出てきます。企業からの依頼の場合、従業員の方に協力してもらう場合もあります。ただ、そうなると実験環境を揃えて実験を行うことの難しさが出てきます。

 実験環境の変遷

そこで、我々は実験環境や実施方法に少しずつ工夫や改良を加えてきました。当初は紙ベースのアンケート用紙を使っていたのですが、最初にやったことはそれをマークシート化してスキャナで読み取るということでした。一方、評価音の提示については無響室で収録した音にダミーヘッドを使って測定した部屋のインパルス応答等を畳み込んでバイノーラル再生音とし、ヘッドホンを含めた再生機器を統一することで、研究室内外で実施する実験の条件を揃えました。

つぎに、実験担当者にとっての最大の課題は被験者のスケジュール調整でした。被験者の協力を得やすいよう拘束時間の短縮を目的に、試験音の提示や回答の回収の作業をプログラムを自作してアプリ化することにも取り組みました。試験音や回答選択肢の順序効果を低減するための組み合わせの変更も自動化でき回答用紙や読み取りデータの点検作業からも解放されました。

そうした工夫を重ねるうち、e-ラーニングシステム上のアンケートのように、ネットワークを介してWeb上で試験音の提示、回答の回収などを行えば実験実施場所や時間の制約をかなり低減できるのではないかと考えるようになり、昨年は学内で試験的に実施してみました(-1)。 実験機器の統一と事前調整が必要ですが、協力的な被験者を確保し十分な事前説明すれば遠隔値での実験も可能であるとの感触を得ました。これが、今後の実験の一つの方向性かなと感じています。

-1 e-ラーニングシステムを利用したWebベースのSD法による試聴実験の実行画面の一例

野呂雄一(三重大学工学研究科)

 

 

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第四回国際環境騒音振動管理技術会議に参加して(Vol.42 No.5)
第四回国際環境騒音振動管理技術会議に参加して

第四回国際環境騒音振動管理技術会議に参加して

平成30425日、26日に北京で開催された、第4回国際環境騒音振動管理技術検討会(The 4th International Conference on Management Technology for Environmental Noise and Vibration Control)に参加したので、その会議の内容、北京市労働保護科学研究所(State Environmental Protection Engineering Center for City Noise and Vibration Control)の研究者との意見交換会、中国の騒音振動研究者との親睦及び北京市の様子を、ご紹介させていただきます。

第四回国際環境騒音振動管理技術会議

会議は、北京市海淀区蓮花池にある北京中裕世紀大酒店の国際会議場で開催されました。本会議の参加にあたっては、(株)エーアールの福原さん(瀋陽薬科大学教授)と同社北京支社の李さんの仲介によるものでした。会議のテーマは「環境騒音と振動の最新技術」で、騒音振動に関する行政施策、規制体系の現状およびそれらの最新技術に関して、中国や諸外国の研究者からそれぞれの研究成果に関して発表がありました。

発表件数は中国(5件)、イギリス(1件)、オーストラリア(1件)、日本(3件)、台湾(1件)の11件でありました。日本からは、福原さんが「日本における環境計量制度」、内田さん(前長野県環境保全研究所)が「日本における環境騒音の測定精度」、松島が「日本における法令規制の現状」について発表しました。全体の発表の中で目を引いたのは、中国のノイズマップの現状に関するもので、中国ではノイズマップに2009年頃から着手し、現在では、北京や上海などの主要都市においては作成されているとのことでした。

北京市労働保護科学研究所との交流会

北京市労働保護科学研究所からの声掛けより、会議前日に、同研究所研究者との意見交換会と施設見学をさせていただきました。意見交換会には、日本側4名と同研究所長 戸氏及び若手の研究者の20名程の参加がありまして、中国側からの質問に我々が回答する形式で、工場、建設作業、交通関係および環境騒音など多岐分野にわたっての意見交換がなされました。この時に、特に記憶に残ったことがあり、中国の一人の研究者が、本会が編集出版した「地域の環境振動」を示し、振動の予測手法に関する質問をしました。その時は、驚きとともに、私たちと彼らの距離が縮まった感じがしました。そして、意見交換会に参加した多くの若手研究者の姿勢が、非常に熱心であったことが強く記憶に残っています。

北京市の様子

我々が滞在したホテルは、北京市中心部から車で30分ほどの所でしたが、環状道路や高速道路の交通量の多さには驚かされました。タクシードライバーによりますと、交通渋滞は日常的で、特に通勤時間にはさらに混雑が増すとのことでした。

また、市街地を歩いていると、電気自動車及び電動二輪車を多く目とまり、聞いたところによりますと、電気自動車や電動バイクの保有率は、日本よりかなり高とのことでした。

郊外の環状道路沿道には、高層住宅がそびえ立っていましたが、日本のように道路間際に位置しておらず、道路から一定の距離(100200m)が確保されており、中国の国土の広さを感じたとともに、環境保全に関する前向きな姿勢がうかがえました。

市中心部では古い建物が新しいものへの建て替えが進んでいる印象で、そこらここらでビル建設が行なわれていました。

最後に

北京滞在中は、研究所の戸所長や所員の方々及び李さんから友好的なおもてなしをいただいたことに感謝の意を表します。

(前千葉市 松島貢)

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騒音制御の使命と限界(Vol.42 No.6)
騒音制御の使命と限界

騒音制御の使命と限界

1.まえがき

「学会誌の会員コラムを書かないか」と昔の友人からの電話。90歳を超えて自分でも耄碌自覚で、「無理だよ」と言ったが,「昔の話をできる人が居ないんだ」と言われて引き受けてしまった。本工学会当初の昔話は、本誌vol.30&40(2006&16)に詳細な回顧記事があるので,ここでは認定技士の事を書こう。

2.「騒音制御」の社会的要求

第二次世界大戦後、日本は廃墟から復興の為に無我夢中に働き出した。目標はまず経済復興、夜遅くまで工場を動かす。材料を集め,製品を出荷するのにトラックを走らす。直ぐに「工場騒音」と「交通騒音」の公害が発生。効率よく物を運ぶのには 鉄道がある。それも新幹線が代表で、在来線特急が時速100 km位であったものが目標200 km を超え,さらに300 km を目指す。現在は遂に300 km 以上の速度で走る事が出来る。それで増大した騒音問題の処理には建設計画より前に、環境アセスメントで正しい影響予測をする事。法制は1993年の環境基本法によるが、現場では1970年代から導入され、工場団地や鉄道・高速道路等の公共的開発プロジェクトでは、事前のアセスメントが必須となった。各地方のお役所でそれぞれ委員会を組織して委託業者のアセス報告書を審査するのだが、dB(デシベル)の計算値を小数点以下3桁も4桁も出して来る。それだけで音響技術者の不在が解る。此れが全国一般であった。

3.認定技士のこと(騒音制御工学会の存在意義)

当時の石井聖光会長から副会長の中野有朋氏と筆者の2人に課題が出た。「この期に『騒音制御工学会』の存在意義を周知させるにはどう対応すれば良いか」。答えは「音響技術者此処に在り」と「言える『資格制度』を創る」。建築士の様な国家資格は急には無理だから、我らの『工学会』で創ろうと言う事に成った。1983 (昭和58) 年のこと、規程や事務手続が決まり初回登録は1985年5月、26名で発足。その後の成長ぶりが図-1である。これまでの30年で110名。此の数で社会的に一勢力と言えるか言えないかは、周辺の状況によるが、認定技士その人達が親・学会とは別に、先日は146回目の研究会を開き1人が「地熱発電に係わる環境問題」を話したと聞く。(図-2)写真でも新しい問題に真剣に取り組んでいる雰囲気を感じる。この様な活動こそ、認定技士の本領と思う。その資格がどれ程役に立つか立たないか、認定技士本人が良くわかる。役に立たぬ資格は存在意義がない。役に立てる努力がない、これがぜひ必要なのだ。

-1認定技士登録数の推移  (制作:丸川)              

-2 第146回、認定技士の会、スナップ(制作:丸川)

今年から又新しく准認定技士制度が施行された。これを有機的にリンクする必要がある。それが無ければ、新しい制度は生きられない。又、それを認定技士制度をさらに充実する方向に活用する事が可能だ。創った我々の責任であり、使命であると思う。ぜひ、頑張ってほしい。その為の活動費は認定技士の登録料を特別会計とすれば充分である。上記の「認定技士の会」のメンバーの活躍に大いに期待したい。

初めは実績が出来たら環境庁(現環境省)に国家資格として、取り上げて貰えば良いと考えた。然し、今の政府の国営のものを民営化する流れに逆行する。これは、ほぼ不可能であろうと思う。

 4.「騒音制御」の限界

騒音の無い静寂を「シーン」と文字で表すのは漫画だけに限らないが、実際にその音が聞こえるか?と言う問題で、先日お茶の間のTVが音を出していた。耳に入る音が無くなると、内耳の有毛細胞は近くの血流の音を拾って脳に送る。液体の流れの音だから山の中の小川のせせらぎの音に似ている。電気的に増幅すると「白色雑音」である。強くすれば滝壺に落ちる大滝の重い図太い音で「シーン」とは程遠い。これで言える事は、制御には限界があり、ゼロにすることではなく、その時その場に相応しい必要な騒音を残すことが重要である。残す騒音が無ければ人工的に出すことが正しい制御と言えるだろう。()

 前川 純一

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(Vol.41, 2017)

接近通報音こぼれ話~国際基準の楽屋裏~ (Vol.41 No.1)
接近通報音こぼれ話~国際基準の楽屋裏~

接近通報音こぼれ話~国際基準の楽屋裏~

ハイブリッド車・電気自動車等の静音車に接近通報音が設置されることについては,本学会の皆さんのご興味も大きいところでしょう。この音の利用について,引き続き研究と検討が必要なことは言うまでもありません。ですが今回は,本題を横に置き,こぼれ話を幾つかご紹介したいと思います。(Inter-noiseでは”Perception of Electric and Hybrid Vehicles: From Alert Sound Design to Interior Noise”というセッションを継続的に設置していますので,本題はこちらで議論いたしましょう。)

◯テレビでも大きく報道されました

この音に世間の注目が大きく集まったのは,20098月でした。国交省主催の体験会の様子が,テレビ各局のプライムタイムのニュースでも,数分間の枠をとって紹介されていました。音の話題としては,異例の注目度だったと記憶しています。ただ,その多くのは「音が付いて,皆さん気付けばいいですね」という呑気なコメントで締められていて,騒音問題としての議論が欠落していることを危惧しました。(それが,私自身が本問題について具体的な実験研究を開始しようと思ったきっかけです。)

その後2010年には,国交省から対策ガイドラインが制定されました。同時期に,国連ではQRTV (Quiet Road Transport Vehicle)というワーキンググループが設置され,2012年には国際ガイドラインが公布されています。個人的な話題ですが,20108月に,QRTVの議長から,直前のInter-noiseで発表した私の研究を,翌月にベルリンで開催される次回会議で紹介してほしいとのメールが来ました。ちょうどミュンヘン工科大に客員として滞在中でしたので,出席することができましたが,議長からは「ミュンヘンにいたのか,それは奇遇だったね」とのコメント。はるか遠い日本からでも,数週間後の欧州での会議へ気軽に呼び出すというグローバル感覚(?)に触れ,驚嘆したものでした。

◯最近の法制化の動向は?

一方米国では,20111月に対策を検討する法案が可決され,36ヶ月以内に規制案が公布される予定となっていました。しかしその後,その交付は延期が続き(2012年の大統領選の影響もあったと言われています)ましたが,ようやく2016年末に正式な規制内容が交付されました。国連QRTVでは,前述のように米国の足並みが揃わないため,米国を含まないフレームワークでの基準立案が進められ,20163月に,国連規則R.138として正式に承認されました。国内でも,国連規則に準ずる規制を導入し,20183月以降に発売される新型車から,新たな基準による接近通報装置の搭載が自動車メーカーに義務付けられることが国交省から正式に発表されました。

◯その呼び名は?

この発音装置の呼び方には,接近報知音,近接警報音,接近音,車両接近音など幅があります。国交省のガイドラインでは「接近通報装置」と呼ばれていますので,私自身はこれに倣って,接近通報装置/接近通報音という言葉を使っています。国連基準では,AVASと呼ばれています。Acoustic Vehicle Alerting Systemの略です。英語的に「エーヴァス」と発音されるのが一般的なようです。ただ,個人的な経験の範囲ですと,ドイツ語圏,スペイン語圏などの関係者では「アーヴァス」と発音している人も多いようです。

このAVASという単語も,実は日本発祥なんです。2010年の日本のガイドラインを海外に紹介する国交省等の文書では,接近通報装置を”Approaching Vehicle Audible System”と訳し,その略称であるAVASが提案されていました。その後のQRTVでの議論で,この英語表現は不自然であるというネイティブのコメントから,そのままでの採用は見送られました。ただ,そのころまでに,AVAS(エーヴァス/アーヴァス)という語感に委員の多くが愛着を持っていて,このアクロニムを前提とした修正がなされたという経緯です。

ところで,国際基準会議での公用語は英語ですが,参加者の大半は英語ネイティブではありません。このような「英語表現」そのものが議題となると,会議は「英米人チームよろしく!」という雰囲気になるのが面白いところです。英語に手を焼いているのは,程度の差はあれ,日本人に限らないグローバルなことのようです。

平成29111日作成

山内勝也

 

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不思議音とは? (Vol.41 No.2)
不思議音とは?

不思議音とは?

公益社団法人日本騒音制御工学会研究部会不思議音分科会(主査中澤真司)は、発生原因の特定が困難な音、また、特定が困難であった音を”不思議音”と定義し、この問題を学術的に捉え、正確な情報の提供と、原因特定のための調査に関する精度の向上、調査に要する時間の短縮等を主な目的として活動を進めています。不思議音分科会のホームページには、不思議音の事例が紹介されています。たとえば、共同住宅の居室で①サッシの熱伸縮に伴って「ドン、ゴン、コン、トン、ピシ、パキ」と聞こえる音、②排水横引き管の熱伸縮に伴う「チン、コン、カツン、ビン」と聞こえる音、③テレビアンテナの風励振による「ブオーン、ブオーン」と聞こえる音、④エアコン排水ドレーン管からの「ポコポコ」音、⑤外壁PC板の半固定ボルトの熱ずれによる「コン」という音等です。いずれも音の性質、発生時間帯等から音源を絞り込んで原因を特定できた事例です。

私が関係した不思議音の事例をいくつか紹介いたします。一つめは、共同住宅に住まわれている方から「ブーン、ブーン」という音が時々聞こえてきて気持ちが悪いというご指摘を頂いた事例です。入居されている人に音がする時間帯、継続時間と音がする方向の記録を1週間お願いしました。後日、音の記録用紙を回収して原因の分析を行いました。音の発生している時間帯にはある特定の方向から風が吹いていることが気象庁の風向風速データからわかりました。音は特定の方向から聞こえてくるのではなくどの居室にても聞こえるとのことから空気伝搬音ではなく固体伝搬音と判断しました。最初に、ベランダの縦格子手摺が発生原因ではないかと思い調査しましたが、発生部位ではありませんでした。次に、2層上のセットバック住戸の縦格子手摺が原因ではないかと推定しました。理由は、風が抜ける方向に縦格子手摺が設置されていることです。直下階の住戸から音の指摘がでていなかったので別のところに原因があるのではないかという意見も出ましたが、原因を特定するためにセットバック住戸に風の強い日に入らせて頂き、この縦格子手摺が振動していることを確認しました。対策として縦格子に直交する方向にフラットバーを取り付け、音がしなくなったことを確認いたしました。このことから、風が強い地域に立地する共同住宅においては風が抜けやすい建物のコーナー部やセットバック住戸の手摺は、縦格子ではなく振動し難いパネル手摺の採用を設計時に検討することをお勧めいたします。

二つめは、共同住宅の最上階にお住まいの方から「ブーン」という音が24時間微かにしているというご指摘です。自宅の電気ブレーカを落としても音がしているので自宅以外に音の原因があるから調べてほしいとの申し出です。屋上に設置されている24時間稼働の共用設備機器の防振不良を疑い、1台ずつ運転を止めて調査しましたが原因となる機器は特定できませんでした。次に、両隣と直下階の住宅に入らせて頂き、住宅全体の電気ブレーカを落とさせて頂きました。直下階の電気ブレーカを落としたところ音がしなくなったとの連絡がありました。24時間換気用のファンが軸ずれを起こして固体音として上階に伝わっていることが原因とわかりました。軸ずれは、非常に微小であったために直下階の方は異音と認識されていませんでした。この調査は、他の住戸の専有部に入って行う必要があるので解決までに時間がかかりお叱りを頂きました。

三つめは、共同住宅の中間階にお住まいの方から1日に数回「コン」という音がして気になる。音のする時間帯は不規則で、夜間にすることもあるとの御指摘です。風の強い日、天気が良い日等と関連がないかを質問しましたが、全く関連がないという回答でした。この住宅が立地する地域は、非常に閑静であり、サッシもT-2等級の性能のものを設置していたため、室内の暗騒音は時間平均A特性音圧レベルで昼間で25dB、夜間は20dB前後となっていました。このため、通常は気にならないような生活音が聞こえているのではないかと推測しました。直上の住戸に入らせて頂き音の発生する可能性がある室内の扉やふすまの開閉を行いましたが、音は直下階で聞こえませんでした。ベランダ側のサッシを開閉しても音は聞こえませんでしたが、クレセントを強めに開閉すると音がすることが確認できました。指摘を頂いた方に原因を説明し納得を頂いたので特に対策はしませんでした。閑静な住宅地に住宅を計画する場合には、居室の音環境性能の目標値をよく検討し、開口部仕様を決めることが重要となります。   

(㈱熊谷組 技術研究所 大脇雅直)

 

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工学会と社会貢献 (Vol.41 No.3)
工学会と社会貢献

工学会と社会貢献

皆さんは、「社会貢献」というと、どんなイメージを抱かれますか。企業活動においてはCSR(企業の社会的責任)の一環として社会貢献が定着してきましたし、災害発生時の被災地でボランティアとして社会貢献される方も増えています。企業はイメージアップというメリットが、ボランティアには人を助けたいという使命感があり、活動のモチベーションになっていると感じます。では、工学会の社会貢献においてはどうか、少し考えてみました。

公益社団法人に移行した当工学会は、平成21年度に社会貢献準備委員会が、平成22年度には社会貢献委員会を立ち上げました。工学会として社会貢献をどう位置づけ、どのような活動をすべきか議論され、中小企業向け出前講座などの取組が行われてきました。現在の社会貢献部会は、その骨子を基に活動しています。以前は、「奉仕活動?自分には無関係」と思っていた私が(すみません)、数年来参加し、今は部会長を務めています。

現在、社会貢献部会では、一般の方を対象にした音についての簡単な紹介や、子ども向けに音の出るおもちゃの工作体験などを地域のイベントなどに参加して行っています。音を身近に感じ、興味を持ってもらうことが目的の一つです(工学会のホームページでも活動を紹介していますので、宜しければご覧下さい)。参加して頂いた方々の笑顔を見ると、社会貢献していることを少し実感できます。その反面、工学会のイメージアップ、知名度アップにつなげるのは、なかなかの難題です。日本騒音制御工学会という名称も、一般の方には浸透しにくいかもしれません。略称のINCEではどうでしょうか?JAXAみたいに覚えてもらえるとうれしいのですが。

知名度はともかく、工学会の活動自体は、騒音低減という環境保全につながっており社会貢献そのものです。会員の多くはそれが仕事でもあり、日常的に社会貢献していることになります。その意味で工学会は、隠れた社会貢献集団、縁の下の力持ちと言えるのではないかと思います。そういったことをアピールするのも効果があるかもしれません。

また、直接的な騒音低減だけではなく、間接的な騒音低減ということも考えられます。例えば、最近通勤電車の車内は静かだと思いませんか。ロングレール化が進んで電車が発する音も小さくなりましたが、スマホや携帯電話の普及で、友達や同僚と同乗していても話をする人が減ってきたり、新聞を読む人が少なくなり紙面をめくる音がしなくなったりしたことが要因と推測されます。スマホが間接的に騒音を低減しており、これは間接的社会貢献なのでは?こじつけかもしれませんが、こんな風に、自分の仕事を結びつけてみるのも面白いのではないでしょうか。

話を直接的社会貢献に戻します。自身を振り返ってみると、仕事以外の社会貢献をしてきた覚えがありません。子どもの通う学校や自治会などでの活動に参加しても、何かの役に立ったとか、充実したという感じはあまりしません。消極的な参加だからでしょう。

自発的、継続的に活動に参加してもらうにはどうすればよいでしょう。特定の人に負担がかかる活動には人が集まらないですし、得意な人だけに限られる活動も広がりません。何より、面白くなくては続かないものでしょう。仕事であれば、強制力があり継続的に社会貢献していけますが、単に奉仕としての社会貢献では、何か好循環を生む仕組みが必要です。ストレスにならず、充実感が得られ、楽しみでもあって・・・そんな活動ができるのが理想です。

近年、騒音低減という社会的ニーズは依然として高いにも関わらず、当工学会は会員の減少が続く厳しい状況です。何か、新しい使命や方向性が必要だと感じます。例えば「社会貢献」というおぼろ気なイメージを会員が共有することでも、案外強いベクトルになるかもしれません。

そんな大それた話は置いておきまして、防音業務に従事する者として、社会貢献しているという気持ちを励みに、これからも仕事に取り組みたいと思います。最後になりますが、社会貢献部会では、工学会としてどのような社会貢献ができるのか検討しています。良いアイディアをお持ちでしたら、是非お知らせ下さい。

((株)荏原製作所 松田道昭 )

 

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ブブセラと芭蕉 (Vol.41 No.4)
ブブセラと芭蕉

ブブセラと芭蕉

いささか古い話題だが,2010年のサッカーワールドカップは,南アフリカで開催され,試合以外のことで話題になったのが,観客が応援に用いるブブゼラの音だった.フランスの放送局は,あまりのノイズに,ブブゼラの音をカットして放送したほどで,地元固有の文化とはいえ世界各地から訪れるファンにもサッカーをテレビで観る人々にとっても,この音環境は,好ましくは受け取られなかった.

そのブブゼラの音の風景を描いたコラム「かき消されたノイズ」(日本経済新聞2010616日付朝刊・34面)に,「ブブゼラの音にかき消されたブラジル応援のサンバの踊りが,無声映画を見るようで,爆音が無音のような場になった」というくだりがあった.その場にある音をそれよりも大きな音がマスクしてしまい,多様な音風景が,モノトーン化する情景は容易に想像できる.「無声映画」という形容が,大音量のサンバのリズムと躍動するダンスのクロスモーダルの片方(聴覚)が喪失して,視覚要素だけになった景色を上手く言い表している.我々は,他を圧倒するノイズが一瞬静寂感を呼び起こすことを稀に経験する.これは,そういうアンビバレントな知覚経験の一つと言ってもいいだろう.

この音風景から一つの俳句を連想した.芭蕉のあの有名な句「閑さや岩にしみ入る蝉の声」である.なぜ大音量の蝉の声が閑さなのか,この逆説の意味については,芭蕉の精神世界を様々に解釈した諸説が唱えられている.音風景として想像すれば,蝉の声が激しく耳を打っているうちに,やがて音が意識から遠ざかり,いつの間にか深い静寂に包まれてゆく感覚はイメージできる.ブブゼラの爆音と重ねると,ブブゼラがかき消したのは,スタジアムで繰り広げられる応援のサウンドとともに,世界中からやってきた人々が放つ叫びや嘆きや怒りや喜びの声であったが,蝉がかき消したのは,葉擦音や鳥の声などの多様な自然な音だったことが想像される.風で揺れる樹々や自然の中にある動きそのものが起こす音が消され,自然の多様で複雑な変化が,定常で単調になることが「閑さ」の感覚を引き起こしたと説明されると,納得できる.

さて,引用したコラムには続きがある.「南アフリカの人々にとって,ブブゼラを吹きながらサッカーを見ることは大いなる喜びなのだろう.それもまた固有の応援スタイルだということも分かっている.ただ,W杯とは自分たちの音を聞かせるだけでなく,相手の音を聞ける貴重な場所でもある.開催国ならなおさらではないか」.相手の音を聞くという態度,その場に本来ある音を積極的に聴くという構えが音環境というフィールドの特徴である.

 さて,芭蕉の「閑さ」の解釈はこの辺りにして,人はどのような状況で,その場を「静か」と感じるのか.単に物理的な音のレベルが低いという以外の文脈的な音の静けさを考えてみた.

 静けさには,周囲にある音の状態が過渡的で,その変化で感じる静けさと,緩やかな変動,もしくは定常的な音の総体としての静けさがある.前者を微分的,後者を積分的な静けさと呼ぶことにする.積分的な静けさは,LAeqでその場の静けさの一部は説明可能だろう.一方,微分的な静けさは,より文脈的で物理で語ることは難しい.微分的な静けさには,何かが始まるまたは起こる直前の緊張の時間で感じられる予兆の静けさと,何かが起こった直後の余韻として感じられる静けさがある.例えば,指揮者がタクトを振り上げる前の緊張感に満ちた時間,無言の間を待たせる小三治の場を制圧するような時間,格闘技で相手と対峙し戦いの始まりの合図を待つ瞬間.これらは,すべて何かが始まるまたは起こる直前の緊張の時間で感じられる静けさであり,時が止まると形容されるような息を飲む瞬間である.動きが止まるから物理的に音が生じないことと意味との一致がさらに静けさを強調する.

 余韻的な静けさとしては,鹿威しの竹が岩を打つ音の直後の微かな水の流れ(余韻と緊張の繰り返しとも言える),遮音性の高い車のドアを閉めた直後の外界を閉ざす密閉感,寺の鐘の響きが自然の音に溶け込むときの静けさ.継続時間の短い単発音そのものに何らかの意味があり,その後の場の変化,意味の変化,状況の変化と音の同期性が,その場にいるという感覚をもたらす.そして,その環境の暗騒音にも依存するが,単発音が消えた後,そこに静けさを感じる.

 与謝蕪村の俳句に,「蜻(こほろぎ)や相如が絃のきるる時」という句があるが,ステップ的な周囲の音の変化を感覚的に捉えた情景を詠ったものと言える.絃がぷつりと切れたかのようにコオロギが鳴きやんだという,音が途絶えた時に音に気がつくことの感性の表現と解釈できる.

 どんな静けさも心理的な要因がある.今回は触れられなかったが「うるささ」も同じである.それらを数値にすることができない現在では,いかに的確な言葉で形容するかが大事である.そこには,物理のような因果を示す正しい式や測定した物理量があるわけではない.様々な音の現象で生じる心理的な印象を語る言葉を磨くことは,正しい式の導出や精緻な測定の技術と同じように奨励されていい.音ほど物理と心理が様々に絡まりあった領域はないのだから.

(株)小野測器 石田康二

 

 

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博多祇園山笠の音風景(Vol.41 No.5)
博多祇園山笠の音風景

博多祇園山笠の音風景

国の重要無形文化財に指定されている博多祇園山笠は776年続いている伝統のある祭りであり、1996年には日本の音風景100選に選ばれている。昨年11月にユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、山笠に舁き手として参加している者から改めてその音風景を紹介させていただきたい。

静寂から一瞬にして最高潮の盛り上がり、そのギャップが大きいほど人を惹きつける何かがあるというのは良くあること。山笠のクライマックスは最終日の追い山櫛田入り、中でも一番山の櫛田入りは特別だ。追い山当日の櫛田神社内桟敷席は超満員、神社前の土居通りの歩道にも全く身動きが取れないほどの人混み。そして境内には舁き山が通れる幅を残して大勢の舁き手がひしめき合っている。大勢の人がいる割に喧騒感があまり感じられないのは、桟敷席の人たちへ向けて山笠の歴史や行事のあらましを解説する放送に耳を傾ける人が多いからであろう。その放送も一番山が出発する10分前には終わるが、放送が終わっても、いよいよ始まるという期待や緊張からか多少ざわざわする程度で、残り時間を知らせるアナウンスが時々大きく響く程度である。

1分前」、櫛田神社境内にそのアナウンスが響き渡ると、桟敷席からは更に高まる期待感からか、少々のどよめきがあった後は心なしかそれまでよりもざわつきは小さくなる。「30秒前」、櫛田入りに選ばれた舁き手達が舁き山の棒に付く。もはや喧噪さは感じられない。「10秒前」、全ての舁き手は山笠の無事の奉納に全神経を集中し、言葉を発する者はほとんどいない。「5秒前」、桟敷席も静まり返る。これだけ大勢の人がいる中で静けさすら感じる。この静けさが舁き手の集中力と緊張感をより高めさせるのであろう。ほどなくして前捌きの出発合図「サン、ニ、イチ」、大勢がひしめき合う中で一人の声が割と良くとおる。そして出発合図の太鼓が「ドーン」と鳴り響くと同時に舁き手たちが一斉に「ヤーッ」と叫び舁き山が持ち上げられ、「オイサッオイサッ」の声と共に疾走していく。境内の舁き手と桟敷席の観客からは一斉に大きな拍手。この一瞬にしての静と動の切り替わりは何度立ち会っても鳥肌が立つ。静寂を切り裂く大きな掛け声と拍手が、山笠全体の静と動の一瞬の切り替わりを際立たせるのに重要な要素になっているのは間違いないだろう。

いよいよ山は動き始めたが、一番山のみ境内の清道旗を回ったところでいったん舁き山は止まる。ここで再び境内は一瞬の静寂に包まれる。程なくして「祝い目出度の~若松様よ」と舁き山台の表(前)中央に座った棒捌きが歌う博多祝い歌が静かに響く。続いて境内の舁き手たちも一緒になり「若松様よ、枝も栄ゆりゃ」と大合唱となって続いていく。このピアニシモからフォルテシモへ一瞬にして代わる様が、祝い歌の奉納をより荘厳なものにしている。

祝い歌の奉納が終わると「ヤーッ」という声と共に再び山が動きだし「オイサッオイサッ」の声を残して境内から出ていく。そこからは東長寺と承天寺の前の清道を周るなどして博多の街を駆けめぐる。沿道からは舁き手の「オイサッオイサッ」の声の他に、棒捌きや前捌きが舁き達に出す指示の声も聞こえるであろう。舁き手には、舁き山足元の銅金が1トンの重みを受けて火花を散らしながらアスファルトを擦る「ゴー」という音も聞こえる。追い山は5km30分ほどで駆け抜けるので舁き山の速度は意外と早い。その速度を緩めないよう舁き手はどんどん入れ替わるのであるが、山に付いている舁き手たちの狭い隙間を縫って入れ替わるのに、一寸でも気を緩めて足を取られて転んでしまったら、あっという間に舁き山の下に飲み込まれてしまう。その「ゴー」という音は、怪我と隣り合わせということを感じさせるものでもあり、山へ付く際の舁き手に緊張感と集中力を高めさせる効果があるとも言えよう。

博多の街を5km駆け抜け石村萬盛堂前の決勝点を過ぎたところで舁き山は一旦止まるが、台上がりと舁き手たちが整然と入れ替わるとすぐに本コースの勢いそのままに自分たちの町内にある山小屋へと戻っていく。私が所属している中洲流れは、決勝点からほどなくして中洲町内に入る。中洲のビル群の中に入ると、ビルの谷間で「オイサッオイサッ」の声が反響してより一層大きくなる。個人的にはこの響きを聞くと「今年もいよいよ終わりだなぁ」と感じる。山小屋の前で止めた舁き山を囲んで皆で歌う博多祝い歌は、ビル群からの反射のおかげでちょうどよい残響音となり、櫛田神社境内で歌う(聞く)ものとは趣が異なる。歌い終わると博多手一本を入れ、何百人という「お疲れ様でした!」の声が中洲の街中に響き渡る。締めにふさわしいなんとも心地の良い大音量である。こうしてようやく山笠が終わり、山笠行事のいろんな音に代わって、クマゼミどもが圧倒的音量でシャーシャー鳴く音が博多の街に響くいつもの朝と戻っていく。

((一財)成田国際空港振興協会 川瀬康彰)

 

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私の韓国交流記 (Vol.41 No.6)
私の韓国交流記

私の韓国交流記

私事で恐縮ですが,これまでお隣の国,韓国の研究者の皆さんと公私にわたって交流させて頂く機会が多くありました。その過程で見聞きしたこと,感じたことなど四方山話をご紹介させて頂きます。

 私が現在の所属(当時は九州芸術工科大学)に就職した当初,研究室には韓国出身の大学院生が二人ほど在籍していました(その後さらに一人が加わりました)。彼らは日本での生活に大変馴染んでおり,日本のテレビ番組で覚えた冗談を連発するなど,着任したての私は彼らの勢いに圧倒されるばかりでした。研究室のパーティーで韓国料理を頂いたり,合宿で韓国を訪れたのは良い思い出となっています。韓国を身近に感じるのは,彼らのお蔭でしょう。後ほど触れますが,彼らが大学院を修了した後も研究などを通じた交流は続いています(お世話になっている,というのが正確なところです)。

 私が現在の職場に着任して23年が経った頃,私の周囲では韓国との組織的な交流が始まります。他の学会の話題になり恐縮ですが,日本音響学会九州支部と韓国音響学会嶺南支部が隔年で音響学に関する国際会議を共同開催することになり,九州嶺南音響学会議(韓国開催時には嶺南九州音響学会議)が20031月に九州芸術工科大学で初めて開催されました。その2年後の20051月に,今度は韓国・釜山の釜慶大学で2回目の会議が開催され,その後これまでに,日本と韓国の持ち回りで計8回の会議が開催されました。この会議には,韓国から超音波や水中音響を専門とする先生方を中心に,学生さんも多く参加していました。それほど規模が大きくない会議であり,日本の学生にとっても英語での発表に慣れる良い機会となっていたように思います。すべての会議に参加できたわけではありませんが,何度か実行委員を仰せつかり,韓国の先生方や研究室の韓国出身の大学院生と協力して会議を運営する機会がありました。訪問した際にいつも思うことですが,韓国の皆さんの手厚い歓迎,ホスピタリティーはなかなか真似できるものではありません。特に思い出深いのは,釜山から150kmほど北に位置する安東で開催された会議に参加したときのことです。会議の内容もさることながら,エクスカーションとして,朝鮮王朝時代の両班が暮らした伝統的な家屋や生活様式を今に残す河回村(ハフェマウル),韓国を代表する儒学者によって建てられ,お札にも印刷された陶山書院(トサンソウォン)などの見学をアレンジして頂き,大変充実した訪問となりました。この国際会議は,諸般の事情により,20172月に行われた第8回を以って終了となりましたが,この交流は両国の音響学会の連携という形に引き継がれました。今後3年おきに,日本あるいは韓国の音響学会の研究発表会でジョイントセッションを実施するというものです。ご関係の皆様のご尽力により,20179月に行われた愛媛での研究発表会において,第1回目のジョイントセッションが開催されました。次回は3年後に韓国で開催されることになります。

 私個人の仕事を進める上でも,ご縁を頂いた皆さんに大変お世話になっています。2013年から2014年にかけて,韓国のソウル市内で自動車のクラクションに関する測定やアンケート調査を実施しました。ビルが立ち並ぶオフィス街のとある交差点に騒音計を設置し,交差点付近で使用されたクラクションの騒音レベルや,クラクションが使用された状況などを長時間にわたり記録するというものです。ソウル在住の卒業生にご協力を頂き,交代しながら交差点の歩道に11時間座り続けました。当時このような作業を効率的に行う知恵も資金もなかったため,無理を申し上げてご協力をお願いしました。長時間にわたって観察を続けると,交通事情やクラクションが使用されがちな状況が見えてきます。交通規則がクラクションの使用に関係する可能性も伺えました。日本では騒音問題としてクローズアップされることがあまりないクラクションですが,道路交通騒音の主要な音源の一つとなっている国もあるようです。将来こういった問題の改善に多少なりともお役に立てることがあれば嬉しく思います。

 振り返ってみますと,韓国の研究者の皆さんとの交流に大変恵まれてきたように思います。諸先生方が築き,今に続くこのような交流を今後も続けていくことが大切だと考えます。微力ながら,そのお手伝いができれば幸いです。

(九州大学 高田正幸)

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(Vol.40, 2016)

(株)オリエンタルコンサルタンツ会社紹介/(一財)小林理学研究所 (Vol.40 No.1)
(株)オリエンタルコンサルタンツ会社紹介/(一財)小林理学研究所

(株)オリエンタルコンサルタンツ会社紹介/(一財)小林理学研究所

株式会社オリエンタルコンサルタンツ 会社紹介

 オリエンタルコンサルタンツは、昭和32年12月の創立以来、高度化、多様化する社会のニーズに応じた知的サービスを提供し、多様な市場においてグローバルなコンサルタント・ビジネスを展開してまいりました。

 現在、都市・地域計画/社会政策、交通、環境、景観・ランドスケープ、観光、事業経営、道路、保全、防災、河川・港湾、上下水道、鉄道、空港、建築及び農業/農村開発/地域開発支援とさまざまな事業領域で、高付加価値の提供をめざした技術サービスを遂行しております。

 騒音振動に関する分野は、これら広範囲に関わる環境問題のひとつとして、環境部が担当しております。主な内容は以下の通りです。

(1)環境影響評価手続きに基づく調査・予測・調査

 ①環境影響評価手続きに伴う騒音、振動、低周波音の現況調査、環境影響予測評価、工事中や供用後における事後調査計画に基づく騒音、振動、低周波音の現況調査があります。

 その領域は、道路、鉄道、空港、河川/港湾等、インフラに関わるほぼすべてに及んでおります。

(2)騒音等に関する講習会等の事務局サポート

環境省等が主催する地方公共団体職員や民間事業者への騒音・振動・低周波音の測定予測・評価に関する講習会、説明会の事務局のサポートとしても多数の場面で実績を持っております。

(3)環境配慮のためのコンサルティング

このような実績を生かし、環境保全の観点から、学術経験者の方々のご指導を受けつつ、地域や個人に対する騒音対策検討、民間工事の際の環境配慮のためのコンサルティングなども行っております。

 一方で、日ごろから、騒音問題に関する最新知見、研究開発にも積極的に取り組んでおり、コンサルティングエンジニアとして、日々切磋琢磨しております。その一環として、会社を挙げて社員の教育訓練を進める中で、関係学会・団体への加入、論文投稿を積極的に奨励し、実施しております。

騒音制御工学会の研究成果の中には、現場に近い視点で問題課題を取り上げて頂く場面も多く、私たち実務者が現場で抱える疑問などに率直に対処頂いております。今後は、環境問題がより高度なものへと移っていくと思います。私たちも、本学会の場で引き続き勉強させて頂ければ幸いです。

石川賢一

一般財団法人 小林理学研究所 

小林理研は音源開発が得意だね、などとよく言われます。それもそのはず、カーテンレールと鋼球を利用した線音源を開発したのは山下理事長です。縮尺模型実験技法を確立し、道路騒音の塀による回折減音量の予測手法などの検証が行われました。模型実験の多様化に伴い点音源を用いたユニットパターンを求めるためにジェットノイズを利用した点音源を開発したのは加来・山本所長で、不肖私もトレーシングペーパーに細かい孔を開けて、高周波数ノイズを発生させる線音源を開発しました。多少の曲線状の道路にも適用でき、断面径を変えることで主要スペクトルも変えられることから、縮尺比の自由度が増しました。

最近では土肥・横田による通称「ドカン」は、圧搾空気を一期に破裂させることで、大音量広帯域のインパルス音を発生するために開発されました。騒音の長距離伝搬予測における気象の影響、建物の遮音性能の測定に活用されています。また、土肥・岩永はサーボシステムを要する空気圧アクチュエータによって可搬型低周波音発生装置を構築しています。建具のガタツキや家屋の応答、屋外伝搬音性状における地形の影響などの研究に活用されています。

インパルス音源と言えば、豊田・杉江によるOIS(折り紙インパルス音源)は、風船やクラッカーなどの従来の簡易音源に代わり、短時間に大音量のインパルス音を繰り返し発生できるため、室内残響時間測定、内外壁の遮音性能の調査に利用されています。また中森は、上階からの歩行、小走り音といった日常無意識に発せられる低レベルの床衝撃音に着目し、小走り模擬衝撃源を用いた床仕上げ材の評価を試みています。

このところ可搬型、電源レスにも拘っており、実験室と現場の測定環境を相互に近づけたいと云うのが狙いです。この様に各種の音源開発は、対象物の現象を把握するために音響的に語りかける信号の一つでしかありませんが、根底にあるのはレスポンスに混入した物理現象を如何に読み解くかと云った、音響計測技術の向上を目指すものであります。実験大好き人間たちは、ひらめきと忍耐を保って、日夜試行錯誤と解析検討を繰り返し、難題に立ち向かっております。

ご紹介しました研究の詳細は、論文や学会発表されていますが、「小林理研ニュース」にも掲載されています。是非ホームページ(http://www.kobayasi-riken.or.jp/)をお尋ねください。

 吉村純一

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(公財)鉄道総合技術研究所 (Vol.40 No.2)
(公財)鉄道総合技術研究所

(公財)鉄道総合技術研究所

鉄道総合技術研究所は、日本国有鉄道の分割・民営化に先立ち、1986年12月10日に運輸大臣(現、国土交通大臣)の許可を得て設立され、1987年4月1日に、JR各社の発足と同時に、日本国有鉄道が行っていた研究開発を承継する法人として本格的な事業活動を開始しました。また、公益法人制度改革によって内閣総理大臣から認定を受け、2011年4月1日に公益財団法人へ移行しました。

2015年4月には、鉄道総研の志や将来の方向性を示すビジョン『革新的な技術を創出し、鉄道の発展と豊かな社会の実現に貢献します』を掲げ、これを具現化するため、「鉄道の安全、技術向上、運営に貢献するダイナミックな研究開発活動を行うこと」、「鉄道全般に及ぶ深い知見を蓄積し、技術的良識に基づく中立な活動を行うこと」、「日本の鉄道技術の先端を担い、世界の鉄道技術をリードすること」を使命として取り組んでいます。

鉄道総合技術研究所の研究対象は、車両、土木、電気、情報、材料、環境、人間科学など、鉄道技術に関する基礎から応用までのあらゆる分野に渡っています。騒音制御工学会に関わる分野としては、沿線における騒音、地盤・建物振動等の環境問題、車内快適性向上のための車内騒音・振動の問題、駅空間における音環境の問題等があり、鉄道総研全体で十数名が工学会員として活動しています。工学会に関わる他業界の技術の中には鉄道に活用できるものも多く、工学会を通して得られる情報は鉄道総研の研究開発に大いに役立っていると考えています。鉄道が社会・経済・生活環境の発展に寄与していくため、国、鉄道事業者、産業界、学協会等の方々と連携して研究開発を進め、社会に貢献できるよう尽力していきたいと思います。

長倉清

 

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(株)アイ・エヌ・シー・エンジニアリング/(株)荏原製作所 会社紹介 (Vol.40 No.3)
株)アイ・エヌ・シー・エンジニアリング/(株)荏原製作所 会社紹介

(株)アイ・エヌ・シー・エンジニアリング/(株)荏原製作所 会社紹介

株式会社アイ・エヌ・シー・エンジニアリング(INC) 会社紹介

 当社は,社会的に公害問題が顕在化し,関連法が整備(公害対策基本法,騒音規制法,振動規制法など)される時代背景の中,1975年(昭和52年),騒音・低周波音・振動防止の総合推進を図るため,石川島播磨重工業㈱(現㈱IHI)の技術本部技術研究所音響グループと航空宇宙事業本部ジェットエンジン試運転装置グループの業務を統合して設立されたIHI防音センター(田無)が母体になっています。日本騒音制御工学会が発足した翌1977年(昭和52年)石川島防音工業㈱(新宿三井ビル)として設立されました。その後,1997年(平成9年),創立20周年を期に社名を英語表記Ishikawajima Noise Controlの頭文字から㈱アイ・エヌ・シー・エンジニアリングと改名、現在に至っています。途中、1982年(昭和57年)、本社事務所を新宿龍生堂大久保ビルに移転しています。

管理室(総務部(総務・人事Gr、安全衛生Gr)、財務部、調達部、生産管理部)、品質保証部(品質保証Gr、検査Gr)、営業本部(第1営業部(民需)、第2営業部(官需))、技術本部(環境技術部、機械システム部、電気計装システム部、プロダクトサポート部、技術管理Gr、製品企画Gr)、工事本部(建設部、瑞穂事業所)等から構成され、下記事業を展開しています。

1.騒音・超低周波音・振動防止対策コンサルティング

2.騒音・超低周波音・振動防止装置の設計・製作・据付工事

3.水中音響・海底振動の測定・調査・試験・研究

4.航空機エンジン運転設備の設計・製作・据付工事

5.航空・宇宙関連試験設備の設計・製作・据付工事

6.環境保全設備(粉塵計測装置・廃水浄化設備等)の設計・製作・据付工事

(登録事項:音圧レベルに係る計量証明事業登録,振動加速度レベルに係る計量証明事業登録,建設業登録(建設工事業・内装仕上工事業・鋼構造物工事業,機械器具設置工事業・電気通信工事業),一級建築士事務所登録)

私たちは幅広い技術(音響・振動、熱・流体、構造、機械・装置、建築・土木、電気・通信・制御等)を有した「専門家の集団」です。お客様の視点で考え,常に先進技術に挑戦して新たな目で業務を見直し,問題を見つけ解決していく改善活動を実施し,各自の資質を高めるスパイラルアップの活動を推進するなかで全社員のベクトルを揃え,お客様に信頼される環境に優しい製品とサービスの提供を心がけています。「技術をもって社会の発展に貢献する」の経営理念のもと,「エネルギーと環境の未来に貢献する」企業を目指しています。ホームページ:http://www.ihi.co.jp/inc/

井上保雄

株式会社荏原製作所 会社紹介

 当社はポンプメーカーとして設立され、2012年に創業100周年を迎えました。現在は、風水力事業、環境事業、精密・電子事業の3事業を柱に、ポンプや送風機などの機械製造、ポンプ場の設計・施工、焼却プラント・水処理プラントの建設・運営、半導体製造装置の製造などを行っています。これらの機器や設備は、一般の方の目に留まることは少なく、社会インフラや産業を下から支える役目を担う会社と言えるかもしれません。

 騒音規制法が制定され、公害問題への関心が高まる頃、防音の専門部門が社内に設置され、現在もポンプ場や道路トンネル換気設備の騒音検討・対策・調査などの業務を担当しています。河川の洪水を防ぐポンプ場には大容量のポンプを駆動する大型ディーゼルエンジン、トンネル換気設備にはトンネル内を換気する大型送風機、といった騒音源があります。騒音対策が必要なことも多く、自社製のエンジン排気用サイレンサ、換気用サイレンサ、固体伝搬音対策用パネルなどの製品も設計・施工しています。

 ゲリラ豪雨による都市部の洪水対策などのインフラ整備への技術提供は、今後も当社の重要な使命と位置付けています。設備の運転に伴い建物から発生する固体伝搬音の予測・対策など、技術的な課題も残っており、解決に向けた技術開発に取り組んでいます。

 産官学の技術者・研究者が集まる当工学会は、音響的な事象だけではなく、音に関する様々な立場や考え方への理解を深めることができる貴重な存在です。会員の皆さまとの技術交流で勉強させて頂いたことを、これからも社会インフラ整備の場における音環境の保全に生かしていきたいと思います。

図-1 道路トンネル換気設備へのサイレンサ設置例

松田道昭

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清水建設(株)技術研究所/(株)音環境研究所 会社紹介 (Vol.40 No.4)
清水建設(株)技術研究所/(株)音環境研究所 会社紹介

清水建設(株)技術研究所/(株)音環境研究所 会社紹介

清水建設株式会社技術研究所の紹介

 1804(文化元)年創業の当社に、技術研究所の前身である設計部研究課が設置されたのは1944年のことです。当初は宝町(東京都中央区)にあった本社建物の裏手や地下を実験スペースとして利用していましたが、1970年代に現在の所在地である越中島(東京都江東区)に全機能を統合しました。以来、時代のニーズに対応して組織・設備を様々に変化させながら、建設技術の研究開発拠点として機能してきました。

建築音響の研究拠点である音響実験棟は、1975年に完成(残響室、簡易無響室)、2001年に増築されました(無響室、タイプⅡ試験室)。その他、風洞実験棟、クリーンルーム実験棟、ビオトープ等15の実験棟・施設があり、20164月時点で研究員181名が所属しています。直近では、20154月に先端地震防災実験棟が完成し、世界屈指の加速度性能と搭載重量を持つ大型振動台、長周期地震動による超高層建物の揺れを再現可能な大振幅振動台が設置され、ハード面、ソフト面、地震発生時の対応スキル向上の3つの視点から安全と防災に関する研究開発を行う拠点となっています。研究所内の建物には当社の開発技術が随所に採用されており、最先端の建設技術を実証する場にもなっています。東京駅から2駅という都心に立地することから、お客様をはじめ皆様に気軽に足を運んで頂ける利点を活かし、研究開発成果を実際に見て、体験して頂ける情報発信の場としての役割も持っています。

 また、施設と立地を活かした社会貢献活動の一環として、2008年にはシミズ・オープン・アカデミー(SOA)を開校しました。建設とものづくりの面白さ、奥深さをお伝えして興味を深めて頂けるよう各分野の専門家が解説する講座で、小学生の社会科見学、中高生の修学旅行、大学生の課外授業の場として、また一般向けのセミナーや見学会として、2015年までに35,000名を超える方々に受講頂いています。地震対策や環境に関するコースと共に、建築音響のコースも用意しています。建設における音響技術の役割やコンサートホールの室内音響設計の基本等を、様々な音やシミュレーション動画を体験しながら学んで頂けるプログラムとなっています。ご興味をお持ちの方は“シミズ・オープン・アカデミー”で検索下さい。

石塚 崇

株式会社 音環境研究所

近年の建築物は,高層化,大規模化,複合化により音環境が複雑化し,また性能に対する要求が高まったため,騒音・振動に対する設計・施工上の配慮がますます必要になっています。また,建築物の空間構成の複雑化により,使用形体の多様化が進んでおり,建物内における避難ルートの確保,煙の制御方法などより高度な防災計画が求められています。

 このような背景の基,音環境研究所は,音環境問題を対応するコンサルタント会社として1992年に設立され,また2000年に防災問題に対応するコンサルタント業務も開始しました。弊社には現在役員,社員合わせて8人在籍していますが,その内5人が建設会社の研究所のOBであり,その4人が音・振動制御関連を,1人が建物の避難安全検証関連の業務を行っています。建設会社の技術研究所で培った高度な技術力と豊富な実績に基づいた計画・設計だけでなく,施工や工事費にも考慮しており,各種建物の確実な遮音・防災設計,施工,対策に結びついていると自負しています。

騒音制御工学会では4名が会員であり,建設会社の技術研究所に在籍時から研究発表会や学会誌で音・振動制御関連の多数の研究報告を行っています。また,長年理事会・部会・委員会・研究分科会等における学会運営,研究活動を行い,学会にも貢献しているのではないかと思います。

建築物のより良い音環境,及び確実な防災の実現・提供という観点から,今後共社会に貢献できるように尽力していきたいと考えています。

○騒音・振動測定,予測,対策:

道路交通騒音・振動,航空機騒音,鉄道騒音・振動,地下鉄振動・固体音,工場騒音・振動,設備機器騒音・振動,エレベータ・機械式駐車場等の昇降設備騒音・振動,生活音,床衝撃音,拡声音、演奏音,建物建設・解体騒音・振動,低周波音,ルーバー・手すり等からの風切音,外壁カーテンウォール・間仕切壁からのきしみ音,外壁カーテンウォール、窓サッシ等からの熱音

○建築防災計画:

避難計画,煙制御計画

○ホームページ:http://www.otokan.co.jp/

平松 友孝

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(株)ニューズ環境設計/ブリュエル・ケアー・ジャパン 会社紹介 (Vol.40 No.5)
(株)ニューズ環境設計/ブリュエル・ケアー・ジャパン 会社紹介

(株)ニューズ環境設計/ブリュエル・ケアー・ジャパン 会社紹介

株式会社 ニューズ環境設計

創業からこれまでをふりかえって

平成106月に騒音・振動のコンサルタントとして神戸市において創業し,今年で18年目になります。道路・航空機・新幹線鉄道などの交通騒音や,風力発電施設などの工場・事業所騒音の実測や予測を主たる業務としています。その他にも住宅の遮音性能調査や建築物の音響設計なども行っています。

「会員コラム」に書かれている他社に比べると歴史が浅いですが,弊社の創業時からこれまでを振り返ってみたいと思います。創業において,まずは事務所を借り,何もないガランとした部屋で設立準備を始めました。仕事の受注が不確かであったり運転資金などの問題もありましたが,不思議と不安は感じませんでした。空が青く明るかったのをよく覚えています(いつも下を向いて歩いているのでしょう)。官公庁に指名願を出しても,実績がないため入札に呼んでもらえません。このときほど会社のブランド力を痛感したことはありません。一方で,工学会の研究発表は会社の実績とは無関係ですので,積極的に発表しました。最初の5年間は本当にがむしゃらに働きましたが,今では飲み会の酒の魚になるような懐かしい思い出ばかりです。

私はこの業種に就いて35年になりますが,我々の仕事も社会の動向に非常に左右されます。社会に出た当時は,関西では関西国際空港の建設・開港,高速道路の新設,人工島の造成など,たくさんの大規模な公共事業があり,それに係る騒音・振動調査に関係させてもらうことができました。また当時は国道43号の騒音訴訟があり,道路交通騒音対策に係る縮尺模型実験や実測調査にも関係しました。しかし創業時にはこれらの事業はほぼ一段落した状態でした。創業時の大きな仕事は道路橋からの超低周波音の調査でした。また環境基準がLAeqになったことから,沿道の騒音モニタリング業務も多数行いました。あわせて,道路交通騒音の予測モデルに関する委員会に入ったので,パワーレベルや伝搬計算の調査研究も行い,現在でも継続しています。最近では風車騒音に関する実測調査でしょう。交通騒音ほど騒音レベルは大きくはないが,静穏な地域での騒音問題であり,測定においても気を使います。

今後,どのような騒音問題が発生するのかわかりませんが,いずれの時代にも存在してきた問題であり,我々の仕事も必要とされると信じています。

福島昭則

ブリュエル・ケアー・ジャパン 会社紹介

このコラムを執筆している現在、リオパラリンピックが開催されています。自身の力を最大限に発揮し、競技に挑んでいるアスリートの方々の姿を拝見しますと思わず力が入っています。そして見受けるのは日ごろの成果を十分に発揮した皆さんのすがすがしい顔です。音や振動を頼りに状況を把握するスポーツにおいては、それぞれがアスリートの判断の材料になるとともに、外部からの騒音や振動が判断を乱すことがあることを改めて確認しました。観客の声援も競技の妨げになりうるその様な環境で日ごろの成果を発揮できるようにするためには、私たちに何ができるのでしょうか。

時期を同じにして、地下鉄のホームでの目の不自由な方の転落事故は胸を締め付けられる思いがしました。ホームドアを設置すればそれは防げるものでしょうが、コストや構造上の問題で難しい面もあるということが報道されていました。振動や音で危険性を事前に知らせるようなことができたなら防げたのかもしれません。

当社ブリュエル・ケアーはBeyond Measureを掲げています。音響、振動を正確に計測することはこの分野の研究・開発には不可欠です。社会に求められているのはこの計測されたデータから何を生み出すかということです。我々はこの計測の先にある社会貢献を常に求めてまいります。音響振動の分野は暮らしを安全かつ豊かにできる可能性持っており、我々もその一助となれれば幸いです。

 

ブリュエル・ケアーは「音を見る、設計を聴く、振動を操る、騒音を掴む」を提供しています。

お客様の製品の価値を高めます。

 製品に合った心地よい音の開発、振動条件の把握とコストパフォーマンスに優れた抑制策によってお客様の製品価値を高めます。

モデルベース開発を加速します。

 高度な計測とシミュレーション、コリレーション技術によって実験とCAEの連携を強化しモデルベース開発を加速します。効率的な開発プロセスは開発期間を短縮します。

お客様の製品の保証コストを減らします。

お客様の製品が利用される振動環境を再現し確信を持って市場投入ができ、保証コストを減らします。

騒音環境問題を解決します。

お客様は計測設備、データ収集装置、制御コンピュータも専門知識も必要ありません。騒音環境問題に対するモニタリングをお客様に代わって行い、計測、データ収集・管理、公開に至る全てのプロセスをご提供します。

西久保 武

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日本音響エンジニアリング(株) 会社紹介/成田国際空港における環境情報公開への取り組みについて (Vol.40 No.6)
日本音響エンジニアリング(株) 会社紹介/成田国際空港における環境情報公開への取り組みについて

日本音響エンジニアリング(株) 会社紹介/成田国際空港における環境情報公開への取り組みについて

日本音響エンジニアリング株式会社 会社紹介

昨年4月からヒビノグループへ仲間入りし、社名を日東紡音響エンジニアリングから日本音響エンジニアリングへ変更しました。

私たちは40年以上にわたり“音”をキーワードにスタジオ、試聴室、音響実験室といった音空間の設計・施工から、音声・騒音の計測・評価、コンサルティングに至るまで、高品質な製品やサービスを提供してまいりました。現在の業務内容は下記となります。

■レコーディングスタジオ、放送スタジオ、ホール、無響室・残響室等の研究実験施設、のオーディオルーム・楽器練習室等の音響諸室に係る音響設計及び施工

■音響計測システム製品(音源探査、音響材料評価、マイクロホン移動装置、航空機騒音モニタリング等)の製造、販売

■音・振動に関する調査・測定及びコンサルティング、騒音・振動対策

■航空機騒音の測定・予測シミュレーション

■音響・振動に関する実験・研究等の受託業務

■モニタースピーカー、ルームチューニング製品の製造、販売

近年は球バッフルマイクロホンを用いた全方位音源探査装置NoiseVisionを世界に先がけて開発し、このたびその新製品として超小型(直径10cm)のセンサーによるSoundGraphyを発売します。「小さく、軽く」、「どこでも」、「すばやく」、「誰でも」、「つながる」をコンセプトとした、お手軽な「音の可視化」を提供します。

www.noe.co.jp

 

大山 宏

成田国際空港における環境情報公開への取り組みについて

成田空港周辺においては、航空機騒音を測定するため、成田国際空港㈱(NAA)33局の他、自治体69局の計102局の騒音測定局が、北は茨城県稲敷市、南は千葉県山武市まで広範囲に渡って設置されています。各騒音測定局にて計測された騒音値は、(公財)成田空港周辺地域共生財団により一元的に集計処理が行われています。

NAAが設置している騒音測定局については、騒音値の情報をほぼリアルタイムにインターネット上に公開しています。(「成田空港環境こみゅにてぃ」 http://airport-community.naa.jp/noise/)

当サイトでは、航空機騒音、大気質及び水質に係る環境調査結果に加えて航跡情報を公開しており、今年10月には航跡情報ページをリニューアルし、便名検索、発着時刻情報等、機能を追加しました。(航跡情報は、航空管制レーダー情報を使用しており、概ね1日遅れの公開となります。)「成田空港環境こみゅにてぃ」は総合的な環境情報公開サイトとして、成田空港周辺における様々な状況をご確認いただけますので、是非ご覧ください。

また、NAAでは毎年「環境報告書」を発行しています。成田空港が環境に優しい循環型空港「エコ・エアポート」として進めている様々な環境への取り組みや環境測定結果についてご報告しており、空港周辺にお住まいの皆様をはじめ、多くの方々にお配りしています。(環境報告書 http://www.naa.jp/jp/issue/kankyo_report/index.html

 これら情報発信に加え、NAAと空港関連事業者で組織する「成田国際空港エコ・エアポート推進協議会」では、毎年「Naritaエコ川柳」、「エコフォトギャラリー」を募集しています。エコ川柳では、日々の生活の中で取り入れているエコのアイデアや環境保全の大切さを謳ったものなど、多数の作品が全国から寄せられています。また、エコフォトギャラリーでは、空港周辺の美しい自然や飛行機・空港・エコをテーマに素晴らしい写真が集まっています。入賞作品には素敵な賞品が贈呈されますので、是非お気軽にご参加ください。最後に、個人的に面白いと感じた第7Naritaエコ川柳の入賞作品を一つご紹介します。

「粗大ゴミ 夫以外は リサイクル」

今後も成田空港は、より身近に、わかりやすい環境情報公開に努めてまいります。

魚谷 行宣

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(Vol.39, 2015)

リオン(株)/(株)ブリヂストン 会社紹介 (Vol.39 No.1)
リオン(株)/(株)ブリヂストン 会社紹介

リオン(株)/(株)ブリヂストン 会社紹介

リオン株式会社 会社紹介

お陰様で当社は2014620日に創立70周年を迎えることができました。創立以来,一貫して「音響学は人生の安全と慰安に奉仕する学問である」を経営哲学とし技術立社を貫いてまいりました。そして,音の研究と聴覚の研究が総合されたところに,初めて“聞こえ”や騒音などの問題を解決するカギがあると考えていることが,現在の事業展開に繋がっております。

主な事業は,医療機器と環境機器の製造・販売,および研究開発,サービスです。

医療機器事業では「補聴器」と,耳鼻咽喉科領域を中心とした「医用検査機器(オージオメータ)」を展開しています。補聴器は「リオネット」のブランドで親しまれています。防水型補聴器によって汗や水を気にせずにスポーツをしたり,ワイヤレス補聴器で携帯電 話の通話や音楽を楽しむことができます。また,色のバリエーションを揃えた補聴器もあるのでおしゃれ感覚で装用もできます。

環境機器事業では音や振動に関する「音響・振動計測器」と気体や液体の中に浮遊する微粒子を測定する「微粒子計測器」を扱います。音響・振動計測器は騒音計,振動計,レベルレコーダ,データレコーダに加え,地震計や粘度計,音響式容積計・体積計なども扱っています。微粒子計測器では,半導体電子デバイス市場をメーンターゲットに,近年では薬液中の0.03 µm粒子や生物粒子も計測ができるようになりました。

今後もお客様の声を大切にし,より良い製品とサービスの提供に努めていきたいと思います。製品に対するご意見・ご感想がありましたらお気軽にお寄せください。

ホームページ:http://www.rion.co.jp/

尾崎 徹哉(リオン株式会社)

(株)ブリヂストン 会社紹介

  • 賛助会員の紹介

ブリヂストングループの事業は大きく2つあり,タイヤ事業と多角化事業で構成されています.

タイヤ事業では,乗用車用,トラック・バス用,建設車両用など様々な種類のタイヤを生産・販売しています.多角化事業では,建築資材,防振ゴム,ウレタンや樹脂製品,コンベヤベルト,自転車,スポーツ用品などを生産・販売しています.

自動車,建築など種々の分野で振動騒音に広く係わっており,長年にわたり賛助会員として参画させていただいております.騒音制御工学会の活動は,2008年までは横浜工場で防音装置,吸音材,騒音対策エンジニアリング等を担当する部署のメンバーが主に活動しておりましたが,現在は小平市の技術センターでタイヤに関係する振動騒音について研究・開発を行っている部署のメンバーが主体となって活動しております.

タイヤに関係する振動騒音としては,周波数の低い方から,乗り心地,車内音,タイヤ/路面騒音等がありますが,いずれも近年のEV車に代表される車両の静粛化,環境問題への関心の高まり等によりその重要性は増してきています.しかしタイヤに求められる性能は振動騒音のみでなく,燃費,安全性能,耐久性等多岐に渡り,これらのほとんどがタイヤの振動騒音と背反する傾向にあり,各性能を高次元にバランスさせる総合的な技術開発が求められています.

そのために,現象を正しく捉えるための計測技術,FEM,BEM等の数値解析技術等を駆使し,メカニズム研究、対策手法検等に積極的に取り組んでおります。

図1はPUプローブを用いた音響インテンシティ計測により音の発生状況を可視化した例です. 

 図1 音響インテンシティ測定例(乗用車用タイヤ,速度80km/h

 

  • 学会に求めるもの

 賛助会員として参画させていただくことにより,最新の研究に関する情報収集,動向把握,技術シーズ発掘等を期待しております.特に興味のあるテーマについては,個別に共同研究等も実施させていただきたいと考えております.また共同研究を通して,学生会員の方に弊社および弊社の研究テーマに興味を持っていただければ非常にありがたいことです.こちらからも開発の要所において,適宜技術発表させていただきたいと考えております.

 

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ゲルブ・ジャパン(株)/日本ゲッツナー(株) 会社紹介(Vol.39 No.2)
ゲルブ・ジャパン(株)/日本ゲッツナー(株) 会社紹介

ゲルブ・ジャパン(株)/日本ゲッツナー(株) 会社紹介

ゲルブ・ジャパン(株)会社紹介

ゲルブ・ジャパン株式会社は防振業界において100年以上の歴史と実績のあるドイツゲルブ社(GERB Schwingungsisolierungen GmbH & Co. KG)の日本法人として2009年に設立されました。国内へは1990年代より販売代理店を通じて数々の実績を収めており、現在ではこれら国内と世界中の実績を元にお客様に優れた防振装置およびエンジニアリングをご提供しております。ゲルブ・ジャパンでは主に産業用機器向けの振動対策をメインとし、その他に発電プラント向け地震対策や建築物向けの振動および固体音対策、煙突や風力発電機の共振対策、鉄道軌道防振対策等を行っております。

 当社では金属コイルバネと粘性体ダンパー(VISCODAMPERS®)を組み合わせたシステムで振動対策を行っており(添付図参照)、4Hzの固有振動数を標準として装置設計を行っております。金属コイルバネは荷重と変位による固有振動数が線形特性を持っており、2.5Hz10Hzの範囲でシステム設計が可能です。これにより一般的なゴム防振と比較し非常に優れた防振効果および固体音対策が可能です。減衰機構には粘性体ダンパー(VISCODAMPERS®)を使用しており、共振応答の大きな低減や対象物の揺れを素早く減衰させることが可能です。これらの防振装置は1台につき大きな物で200t程度の荷重を支えることができ、パラレルに配置することで建築物等の大荷重を支えることができます。

 近年では振動騒音公害への関心も大きく高まり、今まででは解決が困難であった問題に対しても様々な方法での解決が求められるかと思いますので、国内では事例の少ない金属コイルバネと粘性体ダンパーを用いた対策情報を日本騒音制御工学会を通じ発信させて頂きたく考えております。

 また、当社では現在業務拡大により以下のような人材の募集を行っております。

・振動、騒音関係の業務に携わっていた方、あるいは強く興味のある方。

・現場での施工や工事関係の業務に携わっていた方。

・化学、発電プラントでのエンジニアリング業務経験のある方。

・英語でのコミュニケーションに対し経験あるいは興味のある方。

 またこれら以外の方でも当社にご興味を持たれましたら採用担当までご連絡頂ければ幸いです。

             図.1産業機械用防振装置例

 

     図.2 屋内フロア向け固体音、振動対策装置概略図

日本ゲッツナー株式会社 会社紹介

日本ゲッツナー株式会社は、オーストリアのゲッツナー社の100%出資日本法人として2002年に設立された、特殊ポリウレタン防振材および総合防振システムを用いて、鉄道・建築・機械分野等で発生する騒音と振動の最小化を実現する企業です。製品は日本国内に常時在庫しており、即納体制を整備しております。お客様との協議・仕様に基づき緻密に防振設計される特殊ポリウレタン防振材を、国内の加工工場によるオーダーメイドの製品加工で提供しています。

ゲッツナー社の2大ブランドであるシロマーとシロディンは耐久性と優環境性に優れた自社開発のエーテル系特殊ポリウレタン・エラストマーです。シロマー10種類、シロディン5種類は、施工時のミスを防ぐためにカラフルな色がついています。シロマーはオープンセル(連泡)とクローズドセル(単泡)の混合セル構造体です。1975年以来、鉄道・建築・機械の各分野で多くの使用実績があり、弾性と衝撃吸収の要素を併せ持つことにより理想的な防振・防音効果を発揮します。シロディンは100%クローズドセル(単泡)構造体で、動的特性と弾性に優れ、耐高荷重の用途に有効です。

シロマー・シロディンの特長として、以下の点が挙げられます。①防振性能に優れ、最低固有振動数を約8Hzまで下げることが可能です。②屋外での使用や繰り返し荷重に強く、世界各国の鉄道軌道の防振に使われております。欧州の地下鉄において約50年の長寿命が推定されています。③長寿命かつ高性能であるためトータルライフサイクルコストの低減を図ることができます。④廃棄物にならない素材で構成されており、ほぼ100%のリサイクルが目指せます。

弊社製品は、鉄道から建物への振動遮蔽(バラストマット・マクラギパット・地中床・地中連壁)、劇場・映画館・シネマコンプレックス・スタジオ等音響関連施設の防振、マンション等の集合住宅・ホテルにおける浮床による重量・軽量床衝撃音の低減、学校や保育園などの教育施設、屋上テラス・ウッドデッキ・プール、ジャグジー・フィットネスジム・体育館など複合施設の防振、地下立体駐車場や輪転機、各種機械への防振と固体伝搬音対策など幅広い分野で力を発揮しています。

 従来は防振ゴムが主流だった日本国内で数多くの実績を重ねて参りました。最近は鉄道や防振浮床だけではなく、乾式二重床・階段・ユニットバス・清掃用ゴンドラなど幅広い分野で使用されています。騒音や振動でお困りのことがあればお気軽にお問い合わせください。

高橋 聖子(日本ゲッツナー株式会社)

 

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千代田化工建設(株) 会社紹介(Vol.39 No.3)
千代田化工建設(株) 会社紹介

千代田化工建設(株) 会社紹介

千代田化工建設は、1948年の創業以来石油精製プラントや液化天然ガス(LNG)プラントをはじめとする、各種プラントの設計・調達・建設を国内外のお客様に提供するエンジニアリング会社です。現在ではさらに、太陽光などの再生可能エネルギーや水素をはじめとする新エネルギー分野にも注力し、新たな価値を社会へ提供できるよう、尽力しています。

 

豊富なプラント建設実績から得られた技術と知見を活用・展開しており、なかでも音響関連事業は、①各種プラントの騒音制御分野、②各種プラントの音響技術を用いた診断分野、③各種空間の音環境デザイン・コンサルティング分野の3分野に特化してサービスの提供を行っています。

 

①各種プラントの騒音制御分野では、新規プラント建設時の騒音伝搬予測や騒音・振動配慮設計、プラント稼働後の騒音・振動に起因する問題について、プラント建設地域の規則やお客様のご要望を踏まえ、常に進歩を続ける低騒音タイプの機器のコーディネートや騒音対策技術の活用を通じて常に適正な検討と対応を実施しています。近年では、建設時の環境アセスメントが厳格に行われていることもあり、プラント稼働後の改善対応が減っています。

 

②各種プラントの音響技術術を用いた診断分野では、機器が発する音をモニタリングして、その異常を検知する手法や、超音波を用いたセンシングにより機器の異常や劣化を診断する手法により、プラントの安全・安定操業に貢献しています。

 

③各種空間の音環境デザイン・コンサルティング分野では、公共空間や商業空間をはじめとする空間を、情報性・環境性・演出性の3点から計画もしくは見直しを行い、より良い音環境となるよう各種デザイン・コーディネーションを行います。近年より対応が求められるバリアフリーの要素についても配慮します。騒音制御工学会が編者となり弊社社員が共著している『バリアフリーと音』にもそのエッセンスが散りばめられています。

 

ホームページ:http://www.chiyoda-corp.com/

日置輝夫/武田真樹

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鹿島建設(株)技術研究所/(株)ベネック振動音響研究所 会社紹介 (Vol.39 No.4)
鹿島建設(株)技術研究所/(株)ベネック振動音響研究所 会社紹介

鹿島建設(株)技術研究所/(株)ベネック振動音響研究所 会社紹介

鹿島建設()技術研究所

1945年,日本土木建築統制組合という業界団体が財団法人建設技術研究所を設立しました。進駐軍の占領政策でこの組合が解散した際,この研究所を継承し,1949年にゼネコン初の技術研究所として誕生したのが,鹿島建設()技術研究所です。当初は,永代橋近くにあったそうですが,1957年に現在の調布・飛田給に移転しました。以後,飛田給から2km程度離れた多摩川に近い西調布実験場のほか,葉山水域環境実験場,検見川緑化実験場と実験の特性に適した地域にも拠点を設け,次世代を見据えた研究技術開発に積極的に挑戦しつづけています。その成果は,国内初の超高層ビル・霞が関ビルや青函トンネル,明石海峡大橋などの建設に現れ,豊かな国土の創出と社会発展を支えてきました。近年では,飛田給地区の再構築計画をすすめ,実験棟に続き,2011年には環境デザイン賞をいただいた研究本館が完成しました。

建物・構造物等に関して,構造物の設計・施工はもとより.これらが確実に快適に機能するよう,諸々の技術開発等を行っています。技術開発や新技術・新工法の適用においては,社内関連部署と連携し,中心的な役割を果たしています。社員への教育や学協会活動など、地域社会への貢献も重要な任務であるとし,活動を行っています。社員への教育として,建築系については,技研研修員制度という,設計や施工を担当する部署から12年間研究所に在籍するというシステムを40年近く継続しています.専門知識を深め技術の水平展開を図るとともに,派遣元部署との連携を高める役割を担っています.

現在,騒音制御工学会の会員は,建築環境系由来の部署に7名,機電系由来の部署に1名在籍しています。これまでに,私どもは,JR小倉駅ビルにおける列車などの振動や固体音対策,環境配慮型のビル解体工法である鹿島カットアンドダウン工法,そして前述の研究本館と3件の環境デザイン賞をいただきました.副賞の江戸切子のワイングラスを人数分集め,宴の場をもつことを密かな目標にしつつ,新たな技術の開発と適用をすすめ,真に快適な空間を創造していくとともに,社会に貢献できるよう尽力していきたいと思っています.

峯村敦雄・古賀貴士

株)ベネック振動音響研究所 会社紹介

当社の創業は2009年であり、おそらく本学会の賛助会員の皆様の中で最も若い組織の1つではないでしょうか。社名の由来は、これまで我々をご指導頂いた方や創業の準備段階から多方面の方々からのご支援を得たことを将来にわたり常に念頭に置こうということで、恩人、後援者という意味のbenefactorから「ベネック」と造語しました。私も含めて振動分野の研究に従事していた人間が多く、振動分野の業務を軸に特徴を出していこうということで、「振動」を「音響」の前に持ってきました。組織的には未だ研究室の域を出ませんが、他の研究機関と同水準の技術サービスを提供していきたいという志で「研究所」としました。

 当社では、振動・音響関係の計測を基本として、業務ごとの目的に応じた評価や解析を行っています。建築の遮音性能の計測や橋梁での100チャンネルを超えるような振動・騒音・低周波音の同期計測など、様々な規模の業務実績を重ねて来ました。橋梁の計測では、発生源の橋梁部だけでなく、伝搬経路、保全対象の家屋内外の多地点を同期して計測します。発生源、伝搬経路、保全側のすべての計測データが揃うことによって、振動・騒音・低周波音の発生メカニズムの把握、問題箇所の抽出、予測解析と多岐にわたる検討を行うことが出来ます。

 このような計測や解析が出来るのも、昨今のセンシング技術や数値解析の目覚ましい発展の賜であり、ますます技術の高度化、専門化が進んでいるのではないでしょうか。測定や評価方法の規格が定まっている業務はそれほど多くなく、仮に規格等が定まっている計測においても、多様な要望に応えるべくどのような調査計画を立てれば良いかを、会員の皆様も日々いろいろと悩みながら、取り組んでいることと思います。

 当社ではそのような最新の技術情報の収集や疑問や悩みの解決の糸口を探すべく、本学会に積極的に参加し、更なるサービスの向上に努めています。また、当社のような若い組織が参加することによって少しでも本学会の活性化に繋がれば幸いです。

 最後に、人材を随時募集しています。新卒、既卒、専門分野を問わず、振動・音響の業務に興味のある方はご連絡下さい。メールアドレス:benecv@benec-vsi.co.jp

 

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(株)大林組 技術研究所/(株)四元音響設計事務所 会社紹介 (Vol.39 No.5)
(株)大林組 技術研究所/(株)四元音響設計事務所 会社紹介

(株)大林組 技術研究所/(株)四元音響設計事務所 会社紹介

株式会社 大林組 技術研究所 環境技術研究部の音響技術の紹介

大林組は、1892年(明治25年)の創業以来、国内外建設工事、地域・都市開発、及びこれらに関するエンジニアリング、不動産事業ほかの建設サービスをお客様に提供する会社です。近年では東京スカイツリー、グランフロント大阪、虎ノ門ヒルズなどの建設にも携わってまいりました。

技術研究所環境技術研究部では、建設サービスに関連する環境関連技術、すなわち土壌・資源循環、バイオ技術活用、自然環境、耐風安全・都市環境、気流・屋内環境、火災・安全安心、音響・電磁環境など各分野の研究・開発・調査を担当しています。

本学会に関連する音響・騒音制御では、以下のような技術と特長があり、新たな価値を社会に提供できるよう、日々努力研鑽を重ねています。

①コンサートホールや会議室の明瞭性など、響きを制御する分野: 可聴化シミュレーションなどを用い、制御の効果を関係者が共有しながら、より良い響きの空間を共に作り上げます。

②工場や発電所など、屋外騒音の制御が必要な分野: 騒音規制脳の規制基準などを満足しつつ、将来の施設更新も踏まえた、経済的な対策を立案します。

③マンションや事務所など、屋内外騒音の制御が必要な分野: 用途や使い勝手・経済性・耐久性等を考慮し、条件に応じた最適な仕様を立案します。

④工事騒音の制御が必要な分野: 近隣に配慮し工事を円滑に進めるための対策技術・調査技術の研究開発・展開を進めます。

詳しくは、弊社ホームページにて、「音響 騒音」をキーワードに検索頂ければと思います。今後とも宜しくお願い申し上げます。

弊社ホームページ: http://www.obayashi.co.jp/

池上雅之

株式会社四元音響設計事務所 会社紹介

 当社は福岡県を拠点に、音と振動に関する様々な問題解決に取り組む専門コンサルタント会社であり、今年おかげさまで創業35年を迎えました。

 当社の技術力が最も発揮される業務の一つに、プラントの騒音対策立案が挙げられます。騒音を目標値まで抑えるには、民家や敷地境界線など保全領域全体に対して寄与の大きい音源から順に対策優先度および必要減音量を定めることが肝心で、その結果を元に各音源に対する具体的な対策方法を立案することになります。

 必要減音量を定めるまでの流れは、まず現状でのプラント内の主な屋外音源(建屋透過音を含む)や遮蔽物等を調査し、それらを伝搬予測計算用にモデル化します。予測計算にはISO9613-2に準拠した自社製シミュレータを用い、各音源から各予測点までの寄与レベルを計算した上で、経験に基づくノウハウを生かしながら対策優先度や必要減音量を定めます。

 現況の再現予測では実測値と一定の整合がとれた予測値を得ることが求められます。そのためには、モデル化を行う際にシミュレータの「癖」を理解しておくことが重要で、計算過程が明らかな自社製ソフトを用いる最大の理由がここにあります。

 また音源のPWL設定も予測値に直接影響するため、妥当なPWLを現状調査で如何に得るかが課題となります。一般にプラント内では様々な機器類からの騒音が混在しているため、音源毎のPWL把握は容易ではありません。決められた作業時間内に騒音源を調べ上げるにはインテンシティマイクでスキャンしている余裕はなく、分析器付き騒音計を用い(ときには振動加速度ピックアップも併用)、音源寸法、放射特性、測定対象以外からの影響等を把握し、モデル化方法やPWL推定方法を意識しつつ、いくつかの最適な測定位置を見極めて手早く騒音計測することが求められます。

 敷地境界線等での測定では騒音値だけでなく、プラント外からの影響や、プラント内のどの音源がどの程度寄与しているのかを測定員が聞き分ける能力も試されます。

 このような実務を積み重ねながら、測定技術、分析能力、予測精度の向上に日々取り組んでおります。

以上、話題がプラントに偏りましたが、建築音響分野においても九州、沖縄を中心に20を超えるホールの音響設計を手掛け、供用後には好評を頂いております。

 代表を含め7名の小さな会社ですが、常にお客様の立場にたって小回りの利く最適なサービスを提供し続けるべく、今後も努力して行く所存です。

藤田啓晴

 

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ジェイアール東日本コンサルタンツ(株)/(株)小野測器 会社紹介 (Vol.39 No.6)
ジェイアール東日本コンサルタンツ(株)/(株)小野測器 会社紹介

ジェイアール東日本コンサルタンツ(株)/(株)小野測器 会社紹介

ジェイアール東日本コンサルタンツ㈱ 

当社は、国鉄改革に伴い発足した「東日本旅客鉄道㈱」(JR東日本)のグループ会社になります。設立は19894月で、JR東日本発足のわずか2年後、鉄道関係の土木構造物の設計を担う会社として出発しました。騒音・振動関係の業務は19917月、環境課として、国鉄時代から直轄測定に携わっていた社員を中心にスタートを切りました。新幹線の騒音問題は新幹線開業直後からの重要な経営課題でしたから、それなりの人材も育っていたことになります。

騒音・振動関係の業務は、当初、鉄道沿線の評価測定が中心でしたが、最近では新幹線車両の音源解析および騒音・振動対策による効果の予測や測定も増え、顧客の高度な期待にも応えられる様になりました。新幹線の高速化などを通じ、JR東日本グループの発展にいくばくか貢献できているものと自負しております。

当社が環境業務を手掛けるようになり25年になりますが、環境部門では音圧・振動関連の業務の他、土壌汚染調査を中心とする濃度、環境アセスメント、緑化業務と業務範囲を広げ、現在では、総勢18名の社員を擁するまでになりました。

当社も賛助会員に加えて頂き、会員各社の新しい技術に触れる事ができ、良い刺激となると共に、新しい業務に取り組む際の参考にさせて頂いております。工学会の発展が、当社の社会への貢献の拡大に繋がって行くものと思っております。今後とも宜しくお願いします。

(写真の説明)

新幹線高速走行試験の際、トンネル坑口線路内に超低周波騒音計を設置してのトンネル微気圧波測定状況。

環境部 木原久隆

株式会社小野測器 会社紹介

当社は1954年の設立以来、産業のマザーツールである計測器を一貫して手がけてきました。創業時、まだ一般の世の中で「ディジタル」という概念がなかった頃から、当社はディジタル技術を駆使した計測と制御の技術でお客様のものづくりに貢献してまいりました。

 当社の主な事業は、自動車開発における計測・制御システム、音響・振動関連計測器、およびトルク、寸法・変位や回転・速度計測に関連するセンサの開発・製造・販売です。お客様の用途に合わせて幅広い製品ラインアップをご用意しております。騒音制御工学会の会員の皆様には、当社を「音響・振動計測器」メーカとして認識いただいている方々が多いと思いますが、実は自動車性能計測機器が当社の売上高の60%以上を占めています。エンジン試験やパワートレイン試験、台上走行試験等を行う試験室など、自動車業界の発展のスピードに対応し、高度なご要求に適うシステムを開発・販売しています。

 FFTアナライザ、騒音計をはじめとする音響振動製品群は、様々な業界で長年ご愛顧いただいております。お客様にとって適切な計測器、および計測方法を提案し、測定する環境の整備が必要であれば無響室や残響室などの計測環境の整備も行っており、開発サイドと販売サイドが一体となって、お客様の問題解決のためにお役に立ちたいと願っています。私自身は、音響振動グループの中でも、お客様の問題解決のお手伝いを目的とする、総勢10名のコンサルティンググループに所属しております。騒音や振動の低減だけではなく、最近では機器の発生音の音質まで踏み込み、不快でない音、さらには好ましい音を追及して付加価値を高め、他社との差別化・ブランド化を追求するお客様へのお手伝いもさせていただいており、関連する内容を「騒音制御」の「技術資料」(Vol.37 No.4, 20138月)でも報告させていただいております。コンサルティングで得られた知見やニーズは計測器やソフトウェアの開発のための大きなヒントになりますので、常にお客様のお手伝いをさせていただける存在でありたい、と願っています。

騒音制御工学会における皆様の研究成果は現場から得られた貴重な知見が多く、また、その時々の話題をいち早く取り上げられておりますので、様々なテーマにおける新しい情報を多く吸収させていただいております。お客様が抱える問題は時代とともに変わり、求められる成果はますます高度になります。そのようなニーズにお応えできるよう、皆様より勉強させていただきたいと思います。

須田 直樹

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(Vol.38, 2014)

騒音防止技術(耐候性吸音材)に係る想いと願い (Vol.38 No.1)
騒音防止技術(耐候性吸音材)に係る想いと願い

騒音防止技術(耐候性吸音材)に係る想いと願い

1、初めての騒音問題

 私が日本碍子㈱に入社した昭和40年頃は世界的に送電電圧の超超高圧(50万ボルト~100万ボルト)化が進んでおり、超超高圧用碍子(がいし)の開発研究に携わることとなった。日本碍子の製品開発は実物実証主義が基本である。小牧市に新設された高電圧研究所において、日々持ち込まれる新型の碍子や雷撃保護装置に数百万ボルトの電圧を加える試験に明け暮れていた。絶縁が破壊されると大音響とともに火柱が走る。私は深夜まで轟音と閃光を発生させていた。

 当時小牧地区では名神高速道路が建設中で、近くの工事飯場の長から厳しい苦情の電話があった。直ちにお詫びに伺ったところ、午後8時以降の試験禁止を条件に了解いただいた。時間制限だけで済んだのは、即刻対応したことと、当時は技術立国を願う開発支援のムードが今より強かったことによると思う。

私が体験した最初の騒音問題、騒音防止協定である。

2.電力施設の騒音対策とセラミック吸音材の開発

昭和46年、私は新事業を開発する部署に移った。その前年に公害国会と呼ばれる「第64回臨時国会」が開催され、騒音規制法をはじめ各種の公害防止関連の法令が整備された。「発変電所等における騒音防止対策指針」((社)日本電気協会)も発行され、各電力会社が公害対策に本格的に取り組みだした年でもあった。  

私の開発テーマに「騒音防止」が加えられた。

吸音特性に優れるウール系吸音材は、保水による吸音率の低下や周辺部材の腐食、気流による繊維の飛散など、その耐久性がすでに問題になっていた。碍子はほぼ無劣化のセラミック製であるため、「碍子で吸音材を作って来い」という声が某電力会社の幹部から聞こえてきた。半分冗談だったかも知れないが、想えば、セラミック吸音材を世に出した天の声である。

日本碍子は下水処理事業も行っていて、汚水槽に空気の泡を送り込む散気タイルを製造しており、この散気タイルを目にされた東工大の松井先生らが吸音材としての可能性に着目されていた。ただ、当時の散気タイルは吸音帯域が狭く、また屋外使用時の耐凍結性などにも不十分なところがあった。

松井先生や武蔵工大の小西先生、大林組技術研究所真藤氏などの指導を得て改善研究に臨み、吸音材の解析検討の手法として等価電気回路を選んだ。吸音特性の改善が、私には馴染みのインピーダンスマッチングの問題に変わった。等価回路からは所定の流れ抵抗と、より高い気孔率、より薄厚の多孔体が望まれ1)、素材の強度アップや磁器粒子・釉薬などの構成変更が必須となった。施工面から複数枚を枠に収める構造も求められた。幸い社内各部門の協力により一年余で課題を克服、高耐侯性セラミック吸音材が誕生した。

直ちに、関西電力㈱と共同でセラミック吸音パネルを用いた防音壁の実証試験を行い、種々の音源条件に対応できる設計データが蓄積できた。米国電気学会も昭和30年代に変圧器騒音について実験研究を精力的に進め、吸音性防音壁に関する推奨曲線を発表していた。我々の実証試験の結果はこの推奨曲線を支持し、さらに多様な対策予測を可能にするものであった。

昭和49年に(社)電気協同研究会内に変電所低騒音化専門委員会(私もWGの一員)が設けられ、騒音対策の具体的手法を検討していた。この委員会で上記の実証試験結果が評価され、電力施設の騒音対策にセラミック吸音パネルが広く採用されることになった。

3.道路、地下鉄、ホールなどの騒音対策

高速道路の防音壁や地下施設換気所の騒音対策でも耐久性が評価されてセラミック吸音材が採用された。

衝突時に粉になるトンネル用、排水性に富む舗道用、意匠性を高めたホールやプール用など、用途毎に求められる性能を加えたセラミック板が世に出て行った。

碍子製造で培われたセラミック技術により多孔質ながら高強度の磁器板が得られたものである。形状だけ似せた吸音性能の低いものなど、類似品が世に出てセラミック吸音材が不当に評価されたこともあり、忸怩たる思いもした。納品された材料の音響特性や強度等を現場で評価できる技術や測定システムが早期に実用化され、広く利用されることを願っている。

等価回路が求める最薄厚の吸音体に遂に出会った。アルミ繊維吸音材と透明フィルム吸音材である(㈱ユニックス、森本徹氏の発明による)。流れ抵抗を最適値に調整して、軽量性と耐候性を生かした高架下反射防止パネルや壁頂円筒パネルを開発、さらに透光性吸音パネルの需要拡大などに尽力することとなった。

4.結言

かつて無い特長を有する素材を求め、そして出合い、用途の要請に応える工夫から新たな需要が生まれた。今後も、多くの新規な機能部材やシステムが誕生し、静穏快適な空間が広がっていくことを願っている。

主に公共施設の騒音対策に関ってきたが、環境問題に携わる方々が新たな試みを歓迎し評価いただいたことに深謝している。親しくご指導いただいた先生方や諸先輩、支援いただいた多くの皆様に心から感謝申し上げます。

(1)「硬い骨格を有する多孔質吸音材の望ましい構成条件-等価回路による検討-」音学会誌1997,7

古賀正輔

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千葉市の騒音振動に関する取り組み (Vol.38 No.2)
千葉市の騒音振動に関する取り組み

千葉市の騒音振動に関する取り組み

千葉市の騒音振動業務について紹介します。部署は環境局環境保全部環境規制課騒音対策班で、職員数は担当課長を含めて8名です。

担当業務は騒音振動業務と、自動車排出ガス低減を目的とした自動車公害対策も担当しています。本コラムでは騒音振動に関する業務について紹介します。

騒音振動に関する生活環境保全を目的に、工場事業場、建設作業、交通関係(道路交通、航空機、在来鉄道)及び飲食店営業(深夜騒音)の規制、監視等及び一般環境騒音の調査並びに苦情処理を行っています。

○苦情の現状

本市に寄せられる苦情件数は、表1に示すように、平成21年度までは増加傾向にあるものの、騒音振動合わせて年間130件程度でしたが、平成22年度から急激に増加し平成24年度には738件となっています。その内訳は738件のうち550件が航空機騒音に関する苦情です。航空機騒音の苦情が急増した原因は、平成22年10月に羽田空港で4本目の滑走路が供用開始されたことに伴い、本市上空に新たな2本の飛行ルートが設定され、これまで飛行実績のなかった地域に航空機が通過するようになったことです。

○工場事業場への対応

工場事業場は法律と条例含めて年間100件程度の届出に関する審査と、操業時の規制基準遵守監視を行っています。本市の近年の傾向として、工場事業場に設置される特定施設は、金属加工機械等の製造加工関連設備より空調設備関係の送風機や冷凍機(圧縮機)等が増加しています。

また、大規模小売店舗立地法届出の騒音予測に関する審査、宅地開発事業の騒音問題に関する事前協議を行っています。

○建設作業への対応

特定建設作業の届出数は年間延べ2,500件程で、苦情件数は100件前後です。近年は建設工事に関する苦情件数が増加傾向にあるため、その対応策として、本年度、建設関係団体の協力を得て、建設業者や解体業者へ建設工事実施時の留意事項に関するリーフレットを配布し、苦情発生の未然防止に向けた啓発活動を実施しています。

○自動車騒音と道路交通振動への対応

自動車騒音は騒音規制法の常時監視として、市内主要幹線道路における環境基準適合状況把握調査(面的評価)を実施しています。その評価結果は千葉市サウンドッマプに表示し千葉市HPに掲載しています。詳細結果等は、

http://www.city.chiba.jp/other/soundsys/jojikanshi/index.html をご覧ください。

○航空機騒音への対応

新ルートは、南風好天運用時に、本市上空で南北から飛来する航空機が交差し、朝6時から夜間23時まで、時間あたり最大40便が通過するようになり、航路下住民は深刻な騒音影響を受けるようになりました。そのような航空機騒音への対応として、航空機騒音実態把握を目的とした市内3地点での常時監視を実施するとともに、千葉県と県内関係市で構成する協議会で、国に対し航空機騒音低減策として、飛行高度の引上げ、海上ルートへの移行や首都圏全体での航空機騒音分担等を要望するなど、重点課題として改善に取り組んでいます。

松島 貢(千葉市環境規制課騒音対策班)

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福岡市における交通騒音・振動について (Vol.38 No.3)
福岡市における交通騒音・振動について

福岡市における交通騒音・振動について

はじめに

福岡市は北に博多湾,南に脊振山地,東に三郡山地と,海と山に囲まれた人口約151万人(H26.2.1現在)の都市で,航空機や新幹線などの公共交通ネットワークが発達しています。

環境局では,騒音・振動について発生源別に定期的に監視するとともに,市民からの騒音・振動に係る苦情相談などについても対応しています。

自動車騒音・振動

市内には,福岡都市高速道路(総延長56.8km),九州自動車道,国道3号線及び国道202号線など主要幹線道路が通っており,自動車交通量も多くなっています。

自動車騒音の常時監視実施計画については,平成24年度から5年間で512区間(総延長391.9km)について実施する計画であり,平成24年度の沿道住居等における環境基準達成率は95.3%でした(図-1)。常時監視結果については,道路管理者の道路補修計画等へ活用できるよう説明会を開催し連携を深めています。

航空機騒音

福岡空港は,国内で最も都心に近く,地下鉄が直結し博多駅から5分でアクセスできる利便性の高い空港ですが,周辺には市街地が広がり住宅も多いことから,航空機騒音について配慮が必要な空港でもあります(図―2)。

また,平成24年の年間発着回数が15.6万回と羽田,成田に次いで多く,今後の需要の増加に対応するため滑走路増設の計画が進められています。

平成24年度は空港周辺を中心に12地点について年1回の短期測定を実施しており, 3地点で環境基準を超過,9地点で達成していました。

平成25年度からは,環境基準の改正に合わせて測定計画を見直し,福岡空港の特性及び飛行経路等を考慮して継続的に監視が必要なエリアの7地点について毎年2回の短期測定を実施しています(図―3)。

鉄道騒音・振動

新幹線については,平成23年3月に九州新幹線が開通し,山陽新幹線とあわせて2路線が通っており,山陽新幹線について4地域11地点,九州新幹線について2地域6地点の計6地域17地点で騒音・振動を測定しています。

九州新幹線の1地域については,開通時の騒音調査で環境基準を超過していたため,現在騒音対策工事が行われています。その他の地域については,平成24年度は山陽新幹線の2地域で環境基準を超過,残り3地域では環境基準を達成していました。

在来線については,鹿児島本線,篠栗線,筑肥線,香椎線,天神大牟田線,貝塚線の沿線6地域で騒音・振動を監視し,現状の把握に努めています。

工場・事業場の騒音・振動

市内に大規模な工場・事業場はなく,ほとんどはビル等の送風機で,近年は規制基準を超過する事例は少なくなっています。

苦情相談

騒音・振動に関する苦情相談では,解体・建設工事に伴うものが全体の半数を超え最も多く、今後もこの傾向は続くと考えられます。また,全国一集合住宅の多い都市を反映して,近年はマンションの上下階の騒音などの近隣騒音や低周波音に関する苦情相談も増加傾向にあります。

おわりに

騒音に関する苦情は依然として多く,低周波音や近隣騒音など規制のない新たな問題も増えていますが,福岡市の良好な生活環境を保全していくため,今後も騒音・振動に関する監視を実施していきたいと考えています。

 

江頭 勝(福岡市環境局 環境監理部 環境保全課)

 

 

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神奈川県藤沢市の紹介 (Vol.38 No.4)
神奈川県藤沢市の紹介

神奈川県藤沢市の紹介

はじめに

 藤沢市は、神奈川県南部中央の相模湾に接する一般市で、人口約42万人と横浜市などの政令市を除くと県内で人口が最も多い市になります。

環境保全課では、騒音振動を含めた環境法令を所管し、環境分析、有害鳥獣駆除やスズメバチの巣の撤去なども業務としています。

騒音振動の担当職員は、騒音振動を含めた苦情処理及び一般環境騒音や厚木基地に係る航空機騒音測定など環境調査を行う職員として、管理職を含めて3名配置されています。

(平成26年4月末現在)

 

夏期海岸対策について

 藤沢市は夏になると、海岸に海水浴場が設置され、多くの観光客が訪れます。その海水浴場に併設される海の家のクラブ化による風紀や騒音について問題が生じたことがあり、その対策に、市観光課を中心とした関係各課と神奈川県や警察、海水浴場組合が協同し取り組んでいます。

 環境保全課としては、海の家への取組みのほか、近隣住民との夜間パトロールへの参加や市条例で定められている深夜花火の禁止について、花火販売店や観光客に向けた啓発等を行っています。

 

苦情処理の現状について

 環境保全課に寄せられる苦情相談の総受付件数と騒音振動に関連する苦情受付件数は、表1のとおりとなっています。

騒音振動の苦情受付内容としては、図1に示すように建設工事が最も多く、特定建設作業に該当しない一般的な建設工事現場が大部分を占めています。

 苦情処理を行うに当たり、建設部局や保健所など様々な部署との連携をとり、発生源への指導に市として齟齬が生じないよう注意を払っています。

 騒音振動は感覚公害でありますが、近年は特に音に対する考え方も多様化しているように感じます。そのため、公害苦情処理は、申立人と発生源との仲裁等が主となり、客観的な判断やコミュニケーション能力が求められており、測定や法令による行政指導だけでは問題解決に向かわないことに難しさを感じています。加えて匿名による申し入れが多く、申立人と発生源の位置関係が示せないため、行政指導を行うにも苦慮しています。

 

低周波音への対応

 事例はまだ少ないですが、近年は市民から低周波音に対する相談が増えています。相談内容は様々で、発生源不明で家の中で低音がずっと聞こえるといった漠然としたものから、家庭用給湯器のように発生源を特定してくる場合もあります。

 低周波音レベル計を1台所有しており、現地調査に加えて測定を行っていますが、測定結果から物的若しくは心身に係る苦情に関する参照値を超過しないことや、特徴的な低周波音域の周波数帯も検出されず、結局、原因不明となってしまうことがほとんどです。また、発生源が特定できたとしても、一般的な騒音と異なり規制基準がないことから、発生源へ依頼をするまでとなってしまいます。

 低周波音については、上記に加えて事例の少なさから対応経験や知識も乏しい状況ですので、満足のいくような対応はまだまだ難しいですが、県の助言や技術提供を受けながら取り組んでいます。

福本 航一郎(藤沢市環境部環境保全課)

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見えないものを見る(Vol.38 No.5)
見えないものを見る

見えないものを見る

はじめに        

 この度、平成25年度の研究功績賞(騒音・振動低減材料の開発等に係る一連の研究業績)をいただき大変光栄なことと思っています。 私の騒音・振動との関りは、大学勤務時代に「ランダム振動の防止に関する研究」をスタートし、ブリヂストン時代(当時はブリヂストンタイヤ株式会社に1971年に33歳で途中入社)に振動低減、騒音低減に関する技術・製品開発に携わり、50年近く、この分野に関わってきて、現在まだ、この分野に関わっておられることは幸せなことだと思っています。この分野におけるこれまでの私の歩みの一端をご紹介させていただきます。

大学から企業に入って、騒音・振動の低減材料・デバイスの製品開発が主たるミッションになりましたが、それらを継続的に、体系的に生み出すために、音・振動の基盤技術も重要と考え、取り組みを進めました。

現在、いろいろな分野で、可視化技術が開発されていますが、私も基盤技術の一つとして、“見えないもの見る”つまり、“音や振動の可視化”についても早くから興味を持ち、  

いろいろな手法について検討し、製品の低騒音化、騒音低減材料・デバイスの開発に適用し、新しい発見や開発の促進に役立てて参りました。

音を可視化するということ

 可視化することは、点の情報を面の情報で捉えることが出来ます。そのことにより、音源探査に役立つのは勿論ですが、材料やデバイスの発現メカニズムの解明、製品の低騒音化の新しい情報など開発や設計のヒントが得られます。

 まず最初に、私が取り組んだのが、図1に示す“圧分布”と“位相”の可視化(無響室の中で写真撮影)でした。

 この可視化により、新しい騒音低減デバイスの開発が急速に推進でき、社内外の認知にも有効でした1)

また、この技術を大型タイヤの騒音低減にも適用した結果を図2に例示しますが、タイヤの騒音発生メカニズムはパターンノイズは高周波数領域で、中低域周波数領域はタイヤのサイドからケースの共振に伴う固体伝搬音が発生していることが分かり、その後の低騒音化に有効な情報を得ることが出来ました。

現在では、ビームフォーミングの技術によ   図2大型タイヤの騒音発生例2)るリアルタイムに騒音探査が出来る装置も開発されており、私も低騒音化に適用してみて、大変有効なツールと思います。

おわりに

騒音・振動低減技術・材料は“古くて新しいもの”と思います。原理原則は変わらないが、評価・解析技術の進歩、新材料の出現、人の生活様式、意識の変化、法規制などによって、これからも変化、発展していくものと思います。“音・振動の可視化技術”もますます進化して行くものと思いますが、その有効性は、使い手次第ともいえると思います。

文献

  • 飯田:可視化情報学会27,No.104,3-8

冨田、飯田:騒音制御Vol15,No.4,Vol27   

飯田一嘉(ブリヂストンケービージー株式会社)

 

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騒音行政と本会の係わり (Vol.38 No.6)
騒音行政と本会の係わり

騒音行政と本会の係わり

昔(過去)

大学での教育・研究生活から、今後公害行政においても調査・研究が重要であると神戸市からの要請を受け、初めて公害行政の現場の姿を見たのは昭和4711月であった。

 当時は、五政令都市(横浜、名古屋、京都、大阪、神戸)と東京都が六大都市公害担当会議と称し、大気、水質、騒音などの情報交換会を年2回開催していた。

当初の騒音の主な議題は、昭和51年に制定された振動規制法、近隣騒音、規制・苦情処理の定常的業務、環境騒音の把握手法等そして騒音行政にも大気行政の様な学会(大気汚染協議会)の設立のことであった。

取り分け、学会の設立については、今後の騒音行政にも官・民・学の協働の必要性を認識して論議の末、環境庁に対して昭和47年に設立された騒音制御工学会を同庁所管の学会にと働きかけをすることになり、名古屋市の故柴田さんと神戸市の私がその任務を任された。

その後、六大都市公害担当会議は規制法毎に分かれ、政令指定都市騒音・振動担当者会議となった。

この間、担当者会議では、騒音・振動の規制業務の課題を環境庁(特殊公害課)に提起した。環境庁はそのつど「騒音防止技術マニュアル検討会」、「近隣騒音対策研究会」、「建設作業騒音規制基準改定調査検討会」等を立ち上げ、現場の声として担当者会議を含めた地方自治体がメンバーとして積極的に参加した。

同時に、環境庁は、環境騒音の把握について総合的・広域的観点から、担当者会議の幾つかの都市の先駆的試みを参考に「都市環境騒音の把握手法」をまとめた。

他方、騒音制御工学会では、騒音行政が今後の望ましい音環境の創造に向けて効果的且つ合理的な対策を推進していく担い手として、環境騒音振動行政分科会(主査 沖山文敏)を立ち上げた。

昭和61年(1986年)度の学会・技術発表会が始めて東京を離れて神戸市で開催することになった。

当時の時田保夫工学会会長、前川純一実行委員長の全面的なご賛同、ご支持を得て、大阪府の厚井さんと私が、学会で初めてシンポジウムを企画した。

公害基本法(昭和42年)が制定され20年目を迎えようとしている時であった。この間、工場事業場等の騒音・振動対策は、騒音及び振動規制法令の規制により改善が図られた。しかし、都市生活が豊かになり、人々の快適性に対する要求の変化、生活様式の多様化等に伴い、深夜のカラオケ、商業宣伝の拡声機、一般家庭のピアノ、クーラー騒音といった新しい多種多様の局地的騒音、加えて、交通騒音という広域的騒音が社会的に問題となり、都市の騒音環境をより一層複雑化、深刻化させていた。

このような背景を踏まえ、我々行政に携わる者が官・民・学の狭間にあって、“今、何をなすべきか”との視点で、「行政と騒音シンポジウム」を開催した。

その内容は、環境庁より「騒音振動公害行政の現状と展望」、地方自治体より「環境騒音調査」・札幌市、「在来鉄道騒音の目標値」・名古屋市、「航空機騒音予測」・千葉県、「公害防止条例と騒音規制」・八尾市、「地方自治体の騒音・振動行政-近畿圏の現状と課題-」・奈良県の報告、そしてコメンテータとして石井聖光先生、久野和宏先生にお願いし、実りある試みとなった。

このシンポジウムは、環境騒音振動行政分科会の手によりその後も精力的に続けられた。

やっと、平成3年(1991年)に、大都市の担当者会議及び環境騒音振動行政分科会の地道な努力の結果、本会は環境庁所管の社団法人として認められた。

今(現在)

が、誠に残念なことに、例えば、行政の本誌の購読会員数が激減したことを見ても、本会と行政との係わり合いが薄くなった。何故か? 本会が、必ずしも、行政のためだけに設立したわけではないが、その理由は多々あろう。

その後、本会は、平成23年に公益団体法人として主務官庁も環境省から総務省に移行した。

今、地方自治体の騒音行政を取り巻く環境は、地方分権に伴い厳しくなったが、騒音等に係る苦情は相変わらず多い。私が関与している、山田伸志、犬飼幸雄両先生と騒音行政OBの方々と運営している「NPO住環境の騒音、振動、低周波音を考える会」で取り扱う苦情相談も同様で、しかもその内容が行政の対応の拙さ、不十分さから生じた事例が多く苦慮している。

本会の活動の大きな柱は、調査研究、社会貢献の推進であるが、どちらの側面についても、地域住民(国民)の生活環境を保全し、健康の保護に資するためには、地域住民との接点をより多く持つ地方自治体の騒音行政の力が不可欠であるが、その騒音行政も組織の弱体化等に伴い多くの課題を抱えている。

例えば、詳しく記述できないが、環境基本計画や環境都市計画等の策定に苦慮している。単に、騒音等の実態と低減策だけでなく、今日的課題の「循環型社会」、「生物多様性社会」、「人口急減社会」等の視点にも考慮した地域に応じた音環境創造を提言できないか、など。これも学会に期待したい課題の一つでなかろうか。26・9

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(Vol.37, 2013)

騒音問題と係わって50年あまり(Vol.37No.1)
騒音問題と係わって50年あまり

騒音問題と係わって50年あまり

こんなに長く、この問題に関与することになろうとは、全く思いもしなかった。大学(昭和31年卒)では光学研究室で色彩学を専攻。その頃、天然色映画も始まったばかりで、当時の東映大川社長から、助監督、照明ということで、卒後、東映に入社することが決まっていた。しかし家族等の反対によりこれは取りやめ。 急遽、石川島重工業㈱(現IHI)に入社、技研に所属することになった。しかし造船や重機の製造会社ではまだ色彩に関連する仕事などなく、2年ほど応力測定などの計測業務に従事していた。

昭和33年頃、防衛庁技研で「警備艦の騒音防止に関する研究」が取上げられ、委員会が設置され、IHIがその手伝いをすることになった。委員長は当時東芝マツダ研におられた我が国騒音の草分け守田栄先生、委員の一人は当時東大航空研究所におられた五十嵐寿一先生であった。そんなある朝、直属上司(のち東芝取締役牧浦隆太郎氏)に呼ばれた。「色は目で見るもの。音は耳で聴くもの。同じようなものだからお前やれ。」ということでIHIの委員にされてしまった。それからが大変、同じようなものと言われても音については何も知らない。教えを乞う先生もいない。測定器もない。実験に使う測定器は、初めてお会いする五十嵐先生のところからお借りすることになった。守田先生にもこの時初めてお会いした。これがきっかけで、その後、お二人の先生とは、お亡くなりになるまでの長きにわたり、騒音等についてご指導を賜り、日本音響学会、騒音制御工学会、国の仕事などを一緒にさせていただき、公私共に大変なお世話になった。この出会いによってその後の私の人生が定まったといっても過言ではない。

この委員会の後は、社関連の騒音問題を一手に引き受ける羽目になり、折から急増し始めた騒音公害問題解決のため日本国中から東南アジアやヨーロッパにまで頻繁に足を延ばし多くの対策を手掛けた。海外出張も89回までは数えていた。

昭和 51年頃、造船不況乗切り策としてIHIでは幾つかの関連会社を発足させる準備が進められていた。そんなある日、当時の真藤恒社長(のちNTT初代社長、会長)から、突然呼ばれた。「騒音対策の会社として石川島防音工業(現INCエンジニアリング)を設置することにした。社長として君はそっちでやってくれ。」である。ビックリ仰天、ハイというより仕方なく決まってしまった。昭和52年から59年までの間、騒音・振動問題に関する実務や経営についてみっちり勉強させられた。その間、しばしばNTT社長室を訪れ何かと相談に乗って戴いた。退任後は再びIHIに戻り、IHI退社後、平成3年、騒音・振動防止のコンサルタント事務所(中野環境クリニック)を設立、現在に至っている。

この間に手がけた、騒音、公害振動、超低周波音、低周波音等に関する主な対策事例、発表論文、報文などの昭和3851年分は、騒音・振動資料全集上巻(1200頁)、昭和5261年分は下巻(2500頁)として、東洋堂企画出版社より出版(工学会に贈呈済み)、昭和62年~現在の分(1800頁)は目下整理中である。

著書は、昭和47年、大気汚染・騒音技術計算入門を共著で表したのが始まりで現在迄100冊を超えているが、どんな本であるかは、最近の20数冊は、KinokuniyaBookWebamazon.co.jplivedoor Booksなどでみることができる。

今回、工学会から功績賞を戴いたが、今までに日本造船学会、日本産業機械工業会、産業公害防止協会、その他の学、協会から頂いた論文賞、奨励賞、功績賞などを含めると、20件余りになった。まことに有難いことである。しかし賞に値する働きをしたという実感はない。ただ騒音対策等に飛び跳ねていただけのことであった。

従来の騒音対策は、主として機械等の発生する「音波の制御」という 物理、工学の問題、まさに騒音制御工学そのものであり、音波の発生低減によって騒音問題の解決が図られてきた。

しかし最近は、音波を音として感じる人間の感覚、心理が問題になってきている。 同じ強さの音波であっても、安眠、聴取、健康、習慣、利害、気質等によって音の感じ方が異なり、様々なトラブルが生じている。このトラブル解決のためには、人間の思いを変えること、いわば「人間制御」が必要なようである。

政治も代わり、経済、社会環境も変わりそう。騒音対策調査もスマホでできる時代、騒音制御工学会もそろそろ今後を見据えた将来構想を策定する必要があるのではないかと思う。

かっての東北大学二村忠元先生の急逝をきっかけに、どういうわけか、守田先生から、「中野さん死んだら終わりだよ。死んだら終わりだよ。」と再三言われてきたことを、何かにつけて思い出すが、ここまできたからには、終わりまで、もう少々頑張らざるを得ないようである。

中野有朋(中野環境クリニック)

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環境影響評価における騒音・振動専門家の役割 (Vol.37 No.2)
環境影響評価における騒音・振動専門家の役割

環境影響評価における騒音・振動専門家の役割

今社会でいろいろな問題が生じると、その問題に関するいわゆる専門家の先生が評論したり、コメントを述べていて、こんな事の専門家もいらっしゃるんだと驚くことがあります。

一方私たちは騒音・振動問題の専門家と言って良いでしょう。この専門家が活躍する場の一つに環境影響評価法があります。環境影響評価法(環境アセスメント)とは規模が大きい開発により環境に著しい影響が及ぼす恐れがある事業について、事前に環境影響について調査し評価し、環境に影響の少ない施設を建設することを目的としています。環境影響評価に関する問題には騒音、振動、低周波音問題があります。会員の中でも環境コンサルタントとして計画段階から事業者と一緒になって実態調査から予測評価を行って環境影響評価書を作成していると思います。またその結果を都道府県、市町村の首長の代わりに意見をまとめる審議会の委員として活躍している方も居ると思います。私も東京都、千葉県、横浜市で審議会(都、県、市等で会の呼称が異なるが以下審議会とする)などで専門家として委員を経験してきましたので、その役割、問題点などについて述べたいと思います。

環境影響評価法の対象事業は規模が大きく例えば、高速道路の新設または改築、ダム・放水路・河口堰、新幹線鉄道、飛行場、発電所その他全部で26事業ありますが、事業名を聞いただけで規模が大きそうなものです。これを「法アセス」と略称し必ずアセスを行わなければなりません。これより規模がやや小さめのものは第2種事業と位置付けられ、必要によって選択されたり、都道府県の条例でアセスを行っています。たとえば東京都では1000台以上路外駐車を有する施設を対象としているので大型のスーパーマーケットの計画でアセスの対象になることがありました。横浜市では100m以上の高層ビルはアセスの対象となるため、みなとみらいの高層ビルがアセスの対象になることがあり都道府県でも違っています。

騒音・振動以外に、環境影響評価とはどんな項目のものがあるでしょうか。予測評価の項目としては大気汚染、水質汚濁、悪臭、土壌汚染、地盤沈下、日照阻害、風害、電波障害、植物・動物、地形・地質、水文環境、史跡・文化財、景観、ふれあい活動の場、廃棄物、温室効果ガス等。環境問題は非常に多岐にわたります。したがってコンサルタント会社はこれだけの専門家を抱えなければなりません。また審議会の委員もこれだけの専門家をそろいなければなりません。審議会の会議では騒音・振動以外のチンプンカンな話も聞かなければならないので大変です。ただ私は大学の授業で環境工学、環境影響評価論などを担当していたので他の専門家の話が大変参考になり授業に反映でき非常に勉強になりました。

アセスで必要な専門的知識は①調査の方法です。騒音・振動レベルを工事中や完成をイメージしてどの場所で、いつ、どのような方法で調査しなければならないか、低周波音も調査しなければならないか、不要か等を決定する知識です。これが適切でないと、審議会の委員や、住民から指摘されます。②一番大変なのが予測です。専門家の出番です。工事中の影響も評価しなければならないので、建設機械の騒音のパワーレベルを予測し、距離減衰を計算し、それを合成するわけですが、ここまでは当たり前。専門家は建設機械が低騒音型か、超低騒音型か、データがある機械か、距離減衰は理論値だけでよいかなどの見解が必要です。③高速道路の計画では自動車走行時の騒音の予測が必要です。ほとんどの場合日本音響学会のASJ RTN-Modelが使われています。ただこの式が適切に使用されているかチェックします。駐車場の流入交通騒音の予測や、清掃工場のごみ搬入車の騒音の予測に使ったりしている場合があり、専門家から指摘を受けたりします。③また計画中の施設から低周波音が発生するかは騒音の専門家がそのプラントをよく知らないと見逃す場合があるので注意を要します。

私が担当して特に興味ぶかかった例を紹介しましょう。東京スカイツリーは昨年完成し毎日見物客でにぎわっていますが、あれも東京都のアセスの対象になったものです。審議会の専門家(小生)は「関東平野にこのようなタワー(円い棒)が立つと、風が吹いた場合カルマン渦が発生して異音が発生しないか」と質問した。検討していただき詳細には棒ではないのでカルマン渦は発生しないとの返事だったが今そのような苦情はないようです。東京国際空港再拡張事業では、千葉県上空での騒音の為滑走路の位置が変えられています。中央新幹線(超伝導リニア)は地下40mを通るので騒音・振動はほとんど問題ないと思われますが、トンネル出入り口の微気圧波の問題がありそうです。

騒音制御工学会としても音響学会式に相当する予測式の提案や工事騒音に関する低騒音機器の開発や、低騒音工事方法の開発、低周波音の評価方法、微気圧波の問題、新しくアセスの対象となる風車の測定、評価など実務に即した研究をしてもらいたいものです。

名誉会員 工藤信之

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千葉県の紹介(Vol.37 No.3)
千葉県の紹介

千葉県の紹介

はじめに

 千葉県では騒音・振動を担当する職員として、県庁内の本課に、騒音・振動を含めた感覚公害を担当する3名及び主に自動車騒音を担当する1名、研究機関である環境研究センターに2名の研究職が配置されています。(平成254月現在)

 

羽田空港再拡張に伴う航空機騒音への対応

 千葉県は、羽田空港、成田空港、下総飛行場に係る航空機の飛行経路下にあり、航空機騒音による影響を受けています。特に、羽田空港については平成221021日のD滑走路の供用開始に伴い、これまでの航空路が変更となり、今まで航空機の影響が無かった地域が影響下に入ることとなりました。

 千葉県では、航空機騒音の実態把握のため、図に示す新たに設定された航路下において、D滑走路供用開始前後の3年間で5回の調査を行いました。

 調査の結果、うるささ指数(WECPNL:加重等価平均感覚騒音レベル)が70を超える地点は見られなかったものの、これまで航空路下ではなかった地点では、WECPNL値や騒音発生回数が大幅に増加した地点もありました。

 羽田空港のD滑走路供用後は県内の航空機騒音に対する苦情件数も大幅に増加しているため、今後も引き続き実態の把握に努めます。

 なお、調査結果等の詳細については、http://www.pref.chiba.lg.jp/taiki/souon/koukuuki/hanedasaikakuchou/index.htmlをご覧ください。

 

県内市町村職員への技術支援

 千葉県では、騒音振動防止行政の実務を担う県内市町村職員の技術力向上のため、測定技術講習会を毎年開催しています。

技術講習会は、初級及び中級の2区分で実施され、初級3日間、中級2日間の日程となっています。

初級の目標は、騒音計や振動レベル計の基礎操作と規制基準に対する適合・不適合が判断できることであり、中級の目標は苦情が発生した場合に問題解決に役立つ知識・技術を習得することとしています。

市町村の担当者が、自ら実務に使用する測定機器(騒音計、振動レベル計、レベルレコーダー等)を持ち込み、それぞれの測定機器に応じた操作方法を模擬音源や実音源等を用いた実習を通じて学びます。

測定実習以外にも、市町村で受け付けた苦情の実例を持ち寄り、情報交換を行っています。

更に平成23年度からは、市町村の騒音振動実務のベテラン職員を講師として迎え、苦情処理に関する講演を行っています。

 技術講習会では、測定技術を学ぶのはもちろんですが、「顔の見える関係」の構築による県と市町村間や市町村相互の緊密な連携に努めています。

 また、技術講習会の開催以外にも、県内市町村で騒音振動に関する技術上の問題が生じた場合は、環境研究センターにおいて相談を受け、必要に応じて技術サポートや県保有測定機材等の貸出を行っています。

千葉県環境生活部大気保全課 杉尾 明紀

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宮城県における騒音・振動について (Vol.37 No.4)
宮城県における騒音・振動について

宮城県における騒音・振動について

東日本大震災による影響

 平成23311日未曾有の大災害をもたらした東日本大震災が発生しました。大津波が押し寄せた沿岸部は壊滅的な被害を被り,2年を経過した現在も復旧・復興が思うに任せない状況にあります。当センターは昭和536月に発生した宮城県沖地震で庁舎の柱や壁がひび割れ,検査機器類もほとんど落下するなど大きな被害を受け,その後耐震補強工事等を実施しましたが,今回の東日本大震災には耐えることが出来ず,庁舎のいたるところがひび割れし傾くと同時に1階の床が陥没し波打つ状況となり,内部の機器類は落下転倒し大きな被害を受けました。新庁舎は現在地に平成26年度中に建て替えることになっています。

騒音振動に関しては,飛行場が海岸の近くにあるため,航空機騒音の常時監視局6局中3局が津波により跡形もなく流出しました。常時監視局は全て新環境基準対応型で整備後約1年しかたっておらず大きな痛手でしたが,平成24年度末には再整備し現在は元の状態の6局で監視測定を行っています。また,庁舎内に配備している騒音計やレベルレコーダなどの騒音振動関係機器の点検調整や破損した機器類の再整備が12月までに全て完了し,平成24年度からは通常業務ができる状態にまで復旧しました。

高速交通騒音対策

本県では航空機騒音,新幹線鉄道騒音,高速自動車道騒音を高速交通騒音対策として常時監視を行っています。航空機騒音については,国土交通省所管の仙台空港,航空自衛隊所管でブルーインパルスの母港である松島飛行場,陸上自衛隊所管でヘリコプター主体の霞の目飛行場の3飛行場について,「航空機騒音に係る環境基準」の類型あてはめを行っています。飛行場周辺の常時監視地点における過去20年間に亘る経年変化では,仙台空港,松島飛行場については,漸減傾向にあり,霞の目飛行場も地点によるバラつきはあるものの全体的には横ばい,あるいは減少傾向にあります。

東北新幹線鉄道は昭和57年大宮-盛岡間を最高速度210km/hで暫定開業しましたが,その後順次速度が向上され,現在は一部の車両が320km/hで営業運行しています。新幹線沿線の常時監視地点における騒音レベルの経年変化は一部を除き全体的には漸減傾向にあります。一方振動レベルについては一部減少傾向にありますが,他の地点では横ばいか増加傾向にあります。これらのことから,速度上昇に伴う各種の騒音対策の効果が表れていますが,振動については対策に難しさがあるように思われます。

高速道路については,東北道,山形道,常磐道,三陸道及びこれらを結ぶ高速道路が開通しています。開通当初はアスファルト舗装でしたが,現在は高機能舗装が拡大し,常時監視地点の過去10年間の経年変化から,高機能舗装による騒音レベルの低減が見られます。

自動車騒音の面的評価

県内の幹線道路沿道50m範囲の住宅における環境基準の達成状況を把握するために,幹線交通を担う道路沿道に設定している307評価区間約4万戸の住宅について評価しています。平成12年度からの経年変化を見ると,昼夜間とも環境基準を達成している割合は約7%の改善が見られました。なお,平成25年度からは常時監視業務が市の法定受託事務となったため,県の評価対象は町村の133評価区間,約9,000戸と大幅に減少しています。

苦情の状況

本県における典型7公害の苦情件数は昭和45年度からの経年変化を見ると昭和54年度の1,302件をピークに減少を続けており,平成23年度は約500件で、このうち仙台市が約半分を占めています。騒音・振動についても昭和54年度の456件をピークに減少を続けていましたが,平成12年度に増加に転じ,平成22年度からは再び減少傾向にあり,平成23年度は183件で典型7公害の約37%と多くを占め,建設作業に関する苦情が多い状況にあります。苦情に関しては,一義的には市町村が対応しますが,問題が複雑化した場合や詳細な測定が必要な場合は当センターに測定依頼されます。近年は,新幹線鉄道によるトンネル出入り口から発生する低周波音や発生源が不明な低周波音と称する測定の依頼が多くなっています。

技術研修

本県では,年度当初に毎年騒音振動悪臭担当者研修会を開催しており,1日目は環境関連法令の概要、騒音振動・悪臭の基礎的事項や事務処理の説明,2日目は実習を行い毎年3040人が参加しています。研修生はほとんどが事務職であり,主に初めて騒音を担当する職員となっています。この研修は騒音規制法や県公害防止条例の円滑な事務処理が目的であるため,実習の内容も工場騒音や自動車騒音の測定方法とデータ処理が中心で即戦力の養成に力点が置かれています。

最後に

全国的には騒音に対する苦情は依然として多く,風力発電やエコキュートなどの新たな問題や今後評価方法の変更等が考えられますが,各県の試験研究機関に騒音専任職員がほとんど配備されていない状況の中で,新たな問題に対する即応体制の整備が求められています。

菊地 英男(宮城県保健環境センター)

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「環境対策」への取り組み(Vol.37 No.5)
「環境対策」への取り組み

「環境対策」への取り組み

名古屋高速道路は、伊勢湾岸自動車道、名二環、東名阪自動車道、東名高速道路、名神高速道路等の高規格幹線道路と一体となって、名古屋都市圏自動車専用道路ネットワークの中心に位置する都市高速道路であります。その中で名古屋高速道路公社(以下、「公社」と呼ぶ)ではいろいろな環境対策を実施することで高速道路沿線の環境保全に努めているところであります。   

今回は、名古屋高速道路における環境対策の一部紹介と、環境対策に対する私個人としての考えを紹介させて頂きます。

○自然や周辺環境を重視した環境対策

名古屋高速道路では、騒音対策として低騒音舗装の敷設や遮音壁の設置などを実施し、騒音環境の保全に努めておりますが、そればかりでなく、都市高速としてその周辺の景観に配慮した構造・色彩とすることや、自然に配慮した環境にすることも実施してきております。具体的には、名古屋城の外堀近傍の景観とそこを通過する高速道路との調和に配慮するため、高速道路の上・下部工を剛結構造として梁を省略するとともに桁形状を逆台形にし、その色彩を白色系とすることで高架下を明るくしたこと(写真-1)、公社が管理する施設と自然豊かな東山公園周辺の環境と調和を図るために施設の壁面を緑化としたこと(写真-2)、都市計画の変更時に地域で大切にされていた樹木の保存を考慮したこと(写真-3)、名古屋城外堀に生息するヒメホタルのことを考慮し、柱方式の高速道路照明ではなく特殊な照明(その当時日本で初めてパイプ照明を高速道路に採用)としたこと(写真-4)です。

○環境対策に対する個人的な取り組み

以上は事業者(公社)として取り組んでいる環境対策となりますが、私個人としても「環境対策」に取り組んでおります。その一つ目は、資格取得です。私自身は環境計量士(騒音・振動)という環境分野の資格を取得しています。この資格自身は騒音・振動の測定に関する資格となっておりますが、環境問題を取り組む上で「環境分野の技術的な資格」を取得することで、環境分野の専門への理解を深めることは重要なことと考えております。二つ目は、ペットボトルの蓋の回収です。社内にあるペットボトルを収集し、指定されたところへ運ぶことです。まだこの件については数回程度しか動いておりませんが、道路事業とは違った「他の環境対策」に取り組んでみたいと思ってのことであります。これから「環境対策」を考えるとき、自分の本業(道路事業)にとどまれず、いろいろな分野の環境改善に目を向けて動いていくことが、今の時代、これからの時代に求められていることではないかと考えております。

○今後の取り組み

今年、高速4号東海線六番北から木場までの延長3.9kmの建設が完了し、名古屋高速道路の全計画延長81.2kmが完成する予定となっております。これまでは主に高速道路建設と合わせて高速道路沿線の環境対策を実施してきたところでありますが、これからは建設してきた高速道路に対して環境の変化や時代のニーズに対応していくことがますます重要になってくると感じております。それには「事業者の取り組み」だけにとどまらず、なんらかの「個人的な取り組み」も社会的に要求される時代になってくるのではないかと考え、私自身なにかできることはないかと「三つ目」の取り組みを模索しているところであります。

飯塚洋介(名古屋高速道路公社技術部環境対策課)

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名古屋市環境科学調査センタ-の紹介 (Vol.37 No.6)
名古屋市環境科学調査センタ-の紹介

名古屋市環境科学調査センタ-の紹介

名古屋市環境科学調査センターは、本市における公害の専門的調査研究を行うため、昭和46年公害研究所として発足し、昭和539月からは現在地の名古屋市南区へ移転し業務を行っています。その後、平成44月環境科学研究所に名称を変更しました 。また、平成134月から、ダイオキシン分析研究センター(名古屋市守山区、なごやサイエンスパーク、先端技術連携リサーチセンター内)でダイオキシン分析業務を実施していましたが、平成223月に終了しています。そして、平成244月に公害総合監視センターを編入し、環境科学調査センターに名称変更しています。

公害総合監視センターから移設された常時監視システムは、昭和40年に大気環境測定局を設けたことから始まり、44年にテレメータシステムを導入、48年発足の公害特別監視隊を経て、昭和56年から公害総合監視センターにおいて運用を行なってきています。常時監視システムでは大気環境測定局、大気発生源観測局及び水質発生源観測局の運用及び管理を行なうとともに、多項目水質計による市内主要河川の水質調査を定期的に実施し、環境の状況の把握を行っているところです。

このなかで騒音振動に関する業務は平成12年までは担当4名で実施していましたが、さまざまな状況の変化により減員されて、現在担当は2名となっています。

騒音振動関連業務では、騒音定期監視、調査研究等を行っています。

騒音定期監視として、道路交通(図-1)騒音や新幹線鉄道(図-2)騒音振動の測定を実施しています。道路交通騒音は、幹線道路沿道15地点において、一週間連続測定を実施しています。新幹線鉄道は沿線6地点(参考地点を含む)において鉄道騒音、振動、速度などの測定を実施しています。  

調査研究は、道路交通騒音対策における低騒音舗装の効果(図-3)と経年変化の把握として低騒音舗装施工地点において継続的に調査を実施しているところです。

また、約5年おきに関連する保健所が実態監視として新幹線鉄道騒音振動、在来鉄道騒音振動、自動車騒音振動、一般環境騒音について多数地点で測定を実施しており、測定地点の選定や測定方法の検討等に当センタ-としても参加しています。

以前は新幹線、在来鉄道、一般環境、航空機、自動車、工場等、多岐にわたって実態の調査把握を実施していましたが、現在、人員減少に伴い業務および技術レベルの維持が課題となっています。可能な限り業務および技術レベルを保っていければと思っています。

 

 

樋田昌良(名古屋市環境科学調査センター)

 

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(Vol.36, 2012)

東大生研坂本研究室の紹介 (Vol.36 No.1)
東大生研坂本研究室の紹介

東大生研坂本研究室の紹介

本研究室は,応用音響工学の看板を掲げ、建築音響、都市環境音響に関わる予測、計測、評価の研究を行っています。 東大生研の研究室が他の多くの研究室と異なる特徴として、正規の卒論生がいない点が挙げられます。生研は東大の付置研究所であり、学部教育を行っていないのがその理由です。しかしながら、千葉工業大学(名誉教授の橘先生、OBの矢野先生、佐藤先生が所属)の他、東大の佐久間先生(大学・大学院で坂本の同期)、明治大の上野先生(2007年まで研究室助教)、神奈川大の安田先生(2004年~2006年博士研究員として所属)など、つながりの深い先生方が近くの大学に研究室を構えているという恵まれた境遇にあり、それらの大学の卒論生を研究実習生として受け入れています。また最近は、「自分の大学には音響の研究室がないけれど、どうしても音響が研究したい」という意欲のある学生の飛び込みもあります。彼(彼女)ら若い力が当研究室で行う多くの研究の推進力となっています。

 というわけで、2011年度の研究室の構成は、スタッフ3名(坂本准教授、横山助教、辻村特任研究員)、博士課程4名、修士課程4名(うち1名研究実習生)、卒業研究を行う研究実習生5名の総勢16名です。大学院生のうち4名はヨーロッパ・アジアからの留学生で、国際色豊かな点も研究室の特色です。

 生研特有の大きなイベントとして、531日(研究所の創立記念日)を含む週に開催される「生研公開」があります。要はオープンキャンパスなのですが、生研のほとんどの研究室が総力を挙げて準備に取り組みます。我が研究室も、INCE/Jの春の研究発表会の日あたりから、それまで1年の研究成果のまとめの作業を連日連夜行います。このイベントは、大学院生達が研究の次のステップを踏み出すための非常に良いきっかけとなり、また産業界や異分野の方に対するプレゼンテーションを経験することで大きく成長する場でもあります(図1)。毎年、開催されていますので、是非一度、ご来場下さい。

研究としては、実験的手法や計算機を用いた数値解析技術による音場予測法に関する研究、音響伝搬特性の計測方法に関する研究、スピーチプライバシに関する研究、建築の遮音に関する研究、音場シミュレーションを用いた各種音場の評価(図2)、道路交通騒音の予測に関する研究などを行っています。多くは建築と都市の音環境に関する研究ですが、最近携わっている研究の中で騒音制御工学会とのかかわりが非常に深いものとして、風車騒音の聴感実験があります。環境省の戦略指定研究「風力発電等による低周波音の人への影響評価に関する研究」の一環として行っているものです。この実験を実施するために、これまで遮音測定に使用していたカップルの残響室―半無響室に大規模な改修を行いました。風車騒音に限らず、騒音制御工学会がカバーする分野は社会性が強いことは誰もが認めるところです。大学で培われる技術は、産業界だけでなく社会を豊かにするために利用されるべきとの認識をもって、若い学生たちと研究を進めていきたいと思います。

研究室の情報はホームページに公開しています。是非、http://www.acoust.iis.u-tokyo.ac.jp/を訪れてみて下さい。

-1 記念写真「生研公開お疲れさまでした」

-2 無響室と音場シミュレーション装置

坂本慎一(東京大学生産技術研究所第5)

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九州大学岩宮・高田研究室の紹介(Vol.36 No.2)
九州大学岩宮・高田研究室の紹介

九州大学岩宮・高田研究室の紹介

私たちの研究室は,音と人間の関わりに関しての研究を行っています。具体的には,音質評価に関する研究,サウンドスケープに関する研究,サイン音に関する研究,音と映像の相互作用に関する研究などを実施しています。人間を対象とした研究が多いため,心理実験やアンケート調査が中心となりますが,俳句や小説といった文芸作品,テレビや映画などの映像メディアに表現された音環境も研究対象としています。

大学院の学生は,九州大学芸術工学部音響設計学科からだけではなく,他学科,他学部,他大学からの入学者もかなりいます。外国からの留学生や社会人学生も,増えてきました。岩宮眞一郎と高田正幸の2名の教員が,学生を指導して研究を進めています。いくつか最近の研究の一端を紹介します。

「オートバイの音に対するライダーと非ライダーの意識の違い」の研究では,うるさくて嫌われ者のバイクの音をライダーが好んでいる状況を明らかにしました。ライダーは単にバイクの音を聞いているのではなくて,バイクをイメージしながら音を感じているのです。ライダーたちは,ドスのきいたマッチョなアイドリング音,ブイブイ唸り,かん高く吠える走行音が好きなのです。

「トイレ用擬音装置に対する意識調査」では,自分自身の排泄音を他人に聞かれることへの羞恥心が日本女性特有のもので,「音姫」などのトイレ用擬音装置が広く受け入れられている状況を明らかにしました。福岡市内の女子トイレを巡って,擬音装置が結構な音量なのを確認しました(なお,私が女子トイレを回った訳ではありませんので,誤解のないように)。

携帯型音楽プレーヤの利用実態に関する研究では,若者が携帯型音楽プレーヤを利用して音楽を日常的に聴取している実態を明らかにしました。音楽聴取中に,回りの音があまり聞こえず,危険な目に遭遇した回答者も何名かいました。散歩時にふさわしい音楽に関する調査と称して,音楽を聴きながら小川のほとりを散策してもらい,その実,聞こえた環境音の調査を行いました。音楽を聴いていると,すてきな自然音を聞き逃しているようです。

 韓国のGS建設との共同研究にも取り組み,GS建設さんが手がける高級マンション内のサウンドスケープ・デザインのお手伝いをさせてもらいました。この研究では,研究室の卒業生が経営する韓国のサウンドスケープ社がデザインした各種のサイン音の評価を行い,マンション内に設置することになりました。(あくまでも)韓国出張のついでに,韓国のごちそうをたくさんいただきました。

「機械音の音質の経済評価」では,ドライヤーや掃除機などの音質を快適にすることで,製品に付加価値が生まれることを明らかにしました。ドライヤーでは,快適な音はワン・コイン程度の価値があります。

「自動車の警笛に関する意識調査と印象評価実験」では,運転者が警笛に込めたメッセージを明らかにしました。「プッ」あるいは「プップッ」と短く鳴らした警笛は挨拶として解釈されます。「プー」と長く鳴らされると,危険な状況の警告と受け取られます。また,低域を強調することで警笛の不快感を軽減することができます。

音の生態学-音と人間のかかわり-(コロナ社),音楽と映像のマルチモーダル・コミュニケーション 改訂版(九州大学出版会),音のデザイン―感性に訴える音をつくる―(九州大学出版会),音色の感性学 -音色・音質の評価と創造-(コロナ社)などの著書では,我々の研究室の成果を紹介しています。

世の中のトリビアを増やしているだけかもしれませんが,興味を持っていただければ幸いです。いつか,「イグ」でいいから,ノーベル賞を取ってみたいと夢見ています。

 図-1 心理実験の様子(地味でごめんなさい)

岩宮眞一郎(九州大学芸術工学研究院)

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熊本大学矢野・川井研究室の紹介 (Vol.36 No.3)
熊本大学矢野・川井研究室の紹介

熊本大学矢野・川井研究室の紹介

本研究室は、学部組織としては工学部建築学科にあり、建築環境工学の研究室として主に音の分野を扱っています。メンバーは教員が2名、今年度の学生は学部から博士課程まで13名が在籍しています。このところ耐震構造やエネルギー問題など、当面の大きな課題のために建築音響研究室の学生の人気は今ひとつですが、少数精鋭、実験室・現場実験から大規模な社会調査まで、また騒音評価分野からサウンドスケープ研究まで、音と人とのかかわりを対象とした研究を広く手がけています。研究施設は無響室と上下に連結した残響室があり、心理実験や音源・材料特性の測定に活用しています。研究室の行事として10年以上続けている大分大の建築音響研究室(大鶴・富来研)との年2回の合同ゼミがあります。先方は物理解析、当方は心理評価が専門で、異分野間交流として視野を広げるよい機会となっていると思います。

 研究活動について紹介します。まずは研究室の基幹テーマといえるのが交通騒音への住民の不快感反応に関する調査研究で、これは20年来継続しています。ここ数年は交通量の増大が著しいベトナムの都市での調査と、昨年に全線開業した九州新幹線について、開業に伴い騒音源が変化していく条件下での調査という、二つの課題に取り組んでいます。当研究室にはベトナムからの留学生現時点で3名所属していますが、ベトナムでの調査には彼らが大活躍します。サンプル1000人規模の面接調査や24時間騒音測定での現地のアルバイト学生の統括、さらに日本人スタッフの宿や現地交通の手配までを、彼ら留学生が取り仕切って遂行してしまうのには感嘆しました。こうした海外の調査には日本人学生も参加し、騒音測定の機材操作などを担当しました(図-1)。バイクにあふれる信号のない大通りを歩いて渡るのはなかなか難しいのですが、学生達も次第に慣れて、道路端の屋台での昼食など、異文化に触れるよい機会となったと思います。こうした調査の成果を国際会議で発表することも多く、学生も果敢に英語での発表の場に出て行くなど、地方大学にあって比較的国際色の高い研究室といえるのではないかと思っています。

                                      図-1 ハノイでの道路騒音測定

 この交通騒音に関する調査研究とともに、サウンドスケープの観点を取り入れた「より快適な音空間」づくりをめざした研究も手がけています。以前には、熊本市内の中~大規模店舗の店内音環境の全数調査を実施しましたが、これは「騒音レベルが低ければよいというわけではない空間」をどう評価・計画するか、という課題に取り組んだものです。ここ2年ほどは保育園の保育室における吸音の効果に着目した現場実験を続けています。保育室は一日平均80デシベル超といった報告例があるように知る人ぞ知る高騒音レベル空間ですが、一方で建築音響設計上の基準やガイドラインは存在せず、保育園の園児たちはこうした空間で一日の活動時間の大半を過ごすわけで、それは大きな問題ではないか、というのが研究の着想でした。その後、現場実験に協力してもらえる保育園が現れ、ポリエステル吸音材を保育室の天井に糸で吊る(図-2)、というやり方で現場実験が実現しました。2年間にわたり条件を変えつつ騒音レベルを測定したところ、吸音により明らかに室内のレベルが下がり、また当初はやかましいのが当たり前で音を気にしたことがないと話していた保育士の方からも、雰囲気が落ち着いたとして大変好評でした。保育園という身近なところに潜在的な「より快適な音空間」があったことを示したという手応えがあり、しばらくは保育空間の音響設計のあり方について研究を続けていく予定です。また最近は保育室用の吸音板として熊本県産木材で製作した孔あき板を使用するなど、地元貢献も図っています。

                          図-2 保育園での吸音実験と県産材吸音板の施工

川井 敬二(熊本大学大学院自然科学研究科)

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三重大学ナノセンシング研究室の紹介 (Vol.36 No.4)
三重大学ナノセンシング研究室の紹介

三重大学ナノセンシング研究室の紹介

本研究室は,音や光(電磁波)などの波動を利用した計測技術および関連の信号処理技術などに関する研究を行っています。光(電磁波)関連の研究は主に竹尾隆(教授),音関連は野呂(准教授)が担当しています。今回は私の担当である音(騒音)に関連する研究テーマについて簡単に紹介させて頂きます。現在,研究室で取り組んでいる音関連のテーマは大きく分けて4つあります。騒音制御と関連しないものもありますが,各テーマ毎に以下に概略を説明させて頂きます。

(1)環境騒音および住民反応の予測

  環境騒音の評価量であるLAeqは基本的に同一の観測点において24時間の測定を前提としています。そのため広範囲にわたって面的調査を行うには多大な労力を要します。一方,JISでは十分な精度を確保することを条件に測定時間を短縮したり予測による方法も認めています。本テーマでは,短時間のLAeq の実測値に観測点に関する騒音以外の情報(地域類型,季節,時間帯,道路からの距離等)を加えて,ニューラルネットワーク(モデル)やサポートベクターマシンを使って長時間のLAeqの測定値を予測することを研究しています。また,騒音レベルだけでなく,その地点の騒音に対する住民の反応(アンケートに対する回答)を同時に予測することも試みています。

(2)機械動作音に対する印象の予測

これは某プリンタメーカーさんとの共同研究です。そのため予測対象としている機械はプリンタ複合機(MFP)ですが,研究手法そのものは他の機器でも同様になるかと思います。印象の評価は試験音を被験者に試聴してもらう実験をSD法や一対比較法により実施し,因子分析などにより解析を行います。これにより対策すべき音源の特定や対策の効果を確認できますが,研究の目的はこの分析結果(印象)を物理的評価指標(例えば,LAeq,ラウドネス,シャープネス,ラフネスなど)から予測することです。現在,特に注力しているのは,周囲騒音がある場合の動作音の評価と予測です。なるべく実環境に近い条件で動作音を評価したいと考えています。

(3)体導音による掻破行動量の測定

これは当大学医学部(皮膚科)との医工連携の共同研究です。タイトルだけでは何のことかさっぱり分からないと思います。簡単に説明させて頂きますと,アトピー性皮膚炎などの痒みを伴う慢性疾患の症状把握や薬効評価のために患者が皮膚を掻く行動(これを掻破行動といいます)を音を使って検知するシステムの開発です。音といっても空気中ではなく,体内を伝わる音(振動)を手首に装着した特殊なマイクロホン(センサ)でとらえて睡眠中に無意識に体を掻く行動量を自動計測するシステムです。現在,試作機(BIOtech 2012 に出展)が出来上がり評価試験を行っています。従来の患者の自己申告やビデオ動画の解析に代わる標準的な評価方法となることを目指しています。

(4)歌唱音声の評価に関する研究

当大学の教育学部(音楽科)の弓場徹(教授)の開発した発声練習法(YUBAメソッド http: //www. yubamethod. com/)を支援するソフトウェア(歌唱音声の評価法)の開発を行っています。音程の判定だけでなく,地声/裏声といった声質の判定を行うことを目標としています。

 

このように様々な分野の方々の協力を頂きながら研究を進めており,これらの具体化・製品化により社会に少しでも貢献できればと考えております。

-1 試験音の作成等に使用するダミーヘッド

       図-2 掻破行動量測定システム(試作)

野呂 雄一(三重大学工学部)

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千葉工業大学における音響研究の紹介(Vol.36 No.5)
千葉工業大学における音響研究の紹介

千葉工業大学における音響研究の紹介

1.はじめに

千葉工業大学では,音声,聴覚,音響心理,電気音響機器,超音波,建築音響,騒音・振動等ほとんど全ての音響分野で活躍する研究者が多数在籍し,外部研究機関とも密接に連携しており,これら人的資源を有機的に結合し,研究者間の協力・共同研究を推進することによって,有用な研究成果を効率的かつ継続的に生み出すために,音響工学フォーラムと称する研究組織を構成している。(表1) ここではこのグループの研究活動について概要を紹介する.

2.研究活動

この研究組織の前進は,音響情報フロンティアセンターとして文科省・学術フロンティア推進事業の研究プロジェクト「快適音環境の創生」(平成17年度から平成21年度)を遂行であった。この5ヵ年に亘る研究期間に,音の情報性・文化性・福祉性・安全性・快適性・社会性に着目し,各種環境における音響的快適性の向上と音響情報伝達の高精度化などを目的とする研究を進めてきた。本プロジェクトにより,音環境実験スタジオ(図1)および6ch.収音・再生方式による3次元音場シミュレーションシステムなどを整備した.また,研究成果を社会に発信するとともに,プロジェクト研究に対する評価・意見交換を積極的に行うために,「交通騒音問題への取り組み」,「音響計測技術に関する最新情報」,「快適音環境の創生・研究成果報告会」と題した3回のCIT音響フォーラムをシリーズ的に開催してきた。

平成22年度から,代表・分担・協力研究者計11名による研究グループを組織して,“公共性・安全性”に着目した大型プロジェクト「公共空間における安全確保のための音響情報伝達に関する研究」(科研基盤研究A・研究代表者:橘 秀樹)を開始した。さらに,この研究組織の目的として,各研究者の音響分野の知見を持ち寄り,様々な視点から意見交換や情報交換を重ねる場を設けることで,広い視点から個々の研究やプロジェクトについて相互に現況を理解し,多岐にわたる研究を有機的に結合した総合音響学としての社会の抱える課題の発掘と研究の促進を図ることを念頭に研究活動を行ってきた。この成果として,「超音波の応用―映像化技術」(平成232月),「音声の情報性」(平成2310月)と題したCIT音響フォーラムをそれぞれ開催した。

また,平成22年度より環境省総合環境研究推進費「風力発電等による低周波音の人への影響評価に関する研究」(研究代表者:橘 秀樹,分担者:矢野博夫)を開始した.本研究では、風車騒音の生理・心理的影響等を明らかにし、環境影響評価に係る技術資料や影響の防止対策のための基本的な知見を得ることを目的として,風車騒音の実測調査および地域住民に対する影響調査,風車騒音に係る聴感実験,文献調査などの手法により3年間で目標を達成する計画である.このうち風車騒音の実測調査・社会調査については騒音制御工学会を中心に,風車騒音に係る聴感実験については東大生研・坂本研究室を中心として,現在,精力的に研究が進められている。

 

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福島大学サウンドスケープ研究室の紹介 (Vol.36 No.6)
福島大学サウンドスケープ研究室の紹介

福島大学サウンドスケープ研究室の紹介

福島大学が所在する福島市は,福島第一原子力発電所の爆発事故により放出された放射性物質によって汚染されています.例えば,福島大学における原稿執筆時(2012827日)の空間線量は,芝生を張り替えるなど徹底的に除染された文部科学省設置のモニタリングポストの周辺で0.3 µSv/h弱,通路を挟んで隣接した,ほとんど除染が行われていない私たちの研究室の前の草地で0.8 µSv/h程度です.原発事故以前の福島市の自然放射線量が0.05µSv/h 程度であることをお示しすると,正に桁違いの汚染であることがおわかりいただけるかと思います.

 このような状況の中,私たちの研究室ではサウンドスケープ研究を続けています.サウンドスケープという語が意味するところについて未だに誤解されている方を散見しますので,この機会を利用して改めて紹介しておきますと,「個人あるいはある社会にどのように知覚され,理解されているのかに強調点の置かれた音の環境(音環境).それゆえ,サウンドスケープは個人と音の環境との間の関係によって決まる.」1)と定義される概念です.この概念は,音環境を美しく,人の福祉と健康を破壊することがないものへと改善したいというマリー・シェーファーの信念の下,生み出されたものです.このような概念を看板に掲げる私たちの研究室では,日本の(さらには世界の)音環境をより「よい」ものとすることを究極の目標としています.

 私たちの研究室で行っている,今の福島の状況を最も反映した活動は,福島市内の音環境の変化を記録しweb上で公開する「福島サウンドスケープ」(http://www.sss.fukushima-u.ac.jp/~nagahata/fsp_311)です.象徴的な事例を紹介しましょう.原発事故後,福島市内の公園で子供の声を聞くことはまずありませんでした.被ばくを避けるため,子供たちが外で遊ばなかったからです.公園の除染は,昨年の夏頃から本格的に進みましたが,多くの公園で,

しばらくは子供の声が聞こえてきませんでした.春になり,除染が成功した公園では,しだいに子供の声が戻ってきました.でも,うまくいかなかった公園では,未だに子供の声は聞こえてきません.カーソンは『沈黙の春』2)の中で化学物質に汚染され,鳥が沈黙した春を描いていますが,福島で現実に起きたことは逆でした.皆さんはこのサウンドスケープから何を聞き取りますか?私が現時点で1つ言えることは,政府や福島県などは事故直後から現状の汚染レベルは健康に直ちに影響を与えるものではないと繰り返してきましたが,「健康」という語をWHOの定義に従って捉えれば,私自身を含め,福島市で生活する人々は,既に健康上の被害を受けているということです3)

 また,私たちの研究室では,新潟県中越地震の際から被災地に入り,避難生活の支援を行うと共に,音の問題を中心に,避難生活の生活環境の問題について検討してきました.その経験と成果の一部が今回の震災で役に立ったことは,不幸中の幸いでした.

 震災と直接は関わらない研究も,1つ紹介しておきましょう.バリアフリーな音環境の研究です.この研究では,視覚障害者をはじめとする様々な立場の方々との対話を繰り返し,心理実験等を交えながら,より多くの人にとって安心で安全に移動できる音環境はどのようなものかについて検討しています.静音な車の問題が象徴するように,音によるバリアフリーが検討される際,音環境全体を考えた議論が少ない今,これを打破することが当面の目標です.

 このように私たちの研究室では,決して健康な(音)環境とは言えない福島の地で,人の福祉と健康を脅かすことのない音環境を作り出すことを目指した研究を行っています.そして,私の最近の切なる願いは,健康な環境で研究をするということです.

 文献

1) B. Truax ed.: Handbook for Acoustic Ecology (A. R. C. Publications, Burnaby, 1978), p. 126.

2) カーソン(青樹簗一訳):沈黙の春 (新潮社, 東京, 1974.

3) K. Nagahata, “What can/should soundscape community do when we listen to the soundscapes in Fukushima?”, the global composition: proceedings, pp. 88-96, (2012).

 図―1 モニタリングポストの周りの除染の様子(「福島サウンドスケープ」より)

永幡幸司(福島大学共生システム理工学類)

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(Vol.35, 2011)

新潟大学・大嶋研究室/埼玉大学 建設構造工学研究室の活動紹介 (Vol.35 No.1)
新潟大学・大嶋研究室/埼玉大学 建設構造工学研究室の活動紹介

新潟大学・大嶋研究室/埼玉大学 建設構造工学研究室の活動紹介

新潟大学・大嶋研究室の活動紹介

本研究室では音響数値シミュレーション手法ほかの開発・実証・普及を行っている。現在の活動は主に以下であるが、特に2.3.は実務への数値シミュレーション普及を目指した活動であり、興味を持たれた方は是非、末尾の参考サイトを御覧頂ければ幸いである。

  1. 気流中の音響伝搬数値解析手法の開発 (図−1)

 屋外における気流など気象効果を考慮した音響伝搬の予測が近年、重要性を増しつつあることから、汎用性の高い線形化オイラー方程式に基づいた数値シミュレーション手法の開発、および本手法の実街区への適用のために数値地形データからの3次元街区形状メッシュ自動生成技術の開発に取組んでいる。また本手法実証のための参照データとして、道路交通騒音伝搬における風速と騒音レベル変動の同期測定を行っている。

  1. オープンソースの音響数値解析環境整備活動 [1]

 上記1. で開発したような音響数値シミュレーションソフトウエアおよび付随するナレッジ・ノウハウは従来、開発研究室の元で閉じる傾向が強く、実務者が最先端の研究成果を享受できない状況が続いて来た。この状況に対し、産学の有志でOpenAcousticsプロジェクトを立ち上げ、現在は日本建築学会下の研究委員会としてこれらのオープン化を目指している。

  1. オープンソースCAEに係る普及啓蒙活動 [2]

 音響分野に限らず、汎用の計算工学的シミュレーション (CAE) ソフトウエアは従来、高額でブラックボックスな商用ソフトウエア以外に選択肢の無い状況であった。しかしながらここ数年になって、誰もが自由にダウンロードして、用途に応じて改良できるオープンソースのソフトウエアが登場してきた。この動きに対して、分野横断的な産学の有志により啓蒙普及のための一般社団法人を立ち上げ、活動を行っている。

 参考サイト:[1] http://www.openacoustics.org/

       [2] http://www.opencae.jp/

図−1: () 1×1 km実街区における音響伝搬の波動数値シミュレーション、() 風速と騒音の同期測定風景

 

大嶋拓也 (新潟大学工学部)

埼玉大学 建設構造工学研究室

 本研究室は,土木工学系の学科に属し,名前のとおり,橋など社会基盤構造物の計画・設計・性能評価・維持管理に関わる静力学・動力学的諸問題を主な専門としています.教員が筆者を含め3名,学生が学部3年生から博士後期課程の大学院生まで例年25名程度の規模の研究室で,アジアからの留学生が多数在籍していますので,日本語と英語を併用しながら教育・研究活動を行っています.環境振動や騒音に関する研究は,主に筆者が担当しており,動力学的問題から派生した研究テーマとして,構造物の振動に起因する環境振動や騒音,低周波音の問題,さらに振動や音が人に与える影響の解明とその評価に関する研究を行っています.最近の研究例として,例えば,環境振動評価への応用を目的とした全身振動に対する人の知覚閾に関する研究では,知覚閾測定用に設計・製作された振動試験機(図1)を用いた被験者実験により,振動の特性と知覚閾の関係に基づく知覚閾の評価法を検討しています.また,実験室内には音響心理実験用の防音室も設置されており,それを用いて低周波音に対する人の知覚閾に関する研究を行っています.さらに,現場での振動・音の実測や解析,シミュレーションを利用した研究も行っており,その一例として,橋梁の継ぎ目に配される伸縮装置に関連する騒音問題の研究では,伸縮装置の実物大試験や現場での計測,また振動・音響解析により,その原因の究明と対策について検討しました.今後も,学生さんたちが社会に出ていくための準備を支援するとともに,騒音・振動問題の解決に資するような研究を行っていきたいと考えています.

松本泰尚(埼玉大学大学院理工学研究科)

     図1 知覚閾測定用振動試験機

 

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横浜国立大学建築環境工学研究室/日本大学井上研究室の紹介 (Vol.35 No.2)
横浜国立大学建築環境工学研究室/日本大学井上研究室の紹介

横浜国立大学建築環境工学研究室/日本大学井上研究室の紹介

横浜国立大学建築環境工学研究室の紹介

私共の研究室では,音以外にも温熱,空気,光など様々な要素を扱っています。このため,専門分野の異なる複数のスタッフと20名前後の学生が所属しています。音分野は筆者の担当ですが,長らく田村明弘先生(現名誉教授)が教鞭をとられていました。また,本会に関連深い元横浜市の故鹿島さん,神奈川県の横島さん,本学VBLの船場さんなど多くの方々に,共同研究から学生指導まで,多々お世話になっています。

研究としては騒音の暴露‐反応関係が大きなテーマの一つとなっています。現場測定とアンケートによる方法のみならず,実験室(模擬居間)での心理反応実験なども行っています(図-1)。音の研究自体の学生さんの受けは悪くはないのですが,屋外での実測や社会調査は敬遠されがちなのが悲しいところです。

他に,「視覚障害者は音環境の捉え方が晴眼者とは異なるのでは?」との考えから,視覚障害者と音の関係に関する研究も行っています。障害者関連というと,建築の分野ではUD等が叫ばれ建築計画分野で扱われることが多いためか,学生さんからは「これって環境工学なんですか?」という質問がしばしば出ます。そうすると「そもそも研究領域の境界なんてものはだな…」とかなんとかゴニョゴニョと言いながら,興味を示した学生さんを引きずりこみつつ,細々とやっております。

限られた紙面では,なかなか伝えきれないニュアンスも多々ございますが,ご興味を持っていただけたのであれば幸いです。山の上のキャンパスですが,お近くへお越しの際は,お気軽にお立ち寄りください。   

    図-1 模擬居間実験の様子

    図-2 視覚障害者の歩行実験の様子

太田 篤史(横浜国立大学大学院工学研究院)

日本大学井上研究室の紹介

 井上研究室では、建築音響に関するテーマを中心に研究を行っています。2010年度の研究室スタッフは、教員2名の他に、社会人大学院生(博士後期課程)2名、大学院生(博士前期課程)8名と卒論生28名を加えた合計40名です。

 中心的なテーマの一つである「住宅の音環境」については、約35年前から研究を継続し、国内外に350編を超える論文等として成果を公表しています。具体的なテーマとして、実居住者や住宅購入予定者を対象に膨大なアンケート調査を定期的に実施し、客観的な立場から、性能の表現方法の提案や各時代の問題点及び要求性能を明らかにしています。一方、技術的な音環境制御に関するテーマとしては、建築物の遮音メカニズムを明らかにすることや予測計算の確立、性能改善方法等を目的として、床衝撃音、界壁や外壁の遮音、固体音等、住宅で問題となるほとんどの音源について研究を行っています。特に、床衝撃音の予測計算法については「インピーダンス法」なる計算法を確立し、日本建築学会の出版物にも掲載されており、現在幅広く利用されています。上記以外の最近の研究テーマとしては、「音環境に係わる民事裁判の現状と分析」、「高齢者・子供に配慮した住宅床の快適性・安全性に関する研究」、「居住床を対象とした環境振動の測定・評価方法」、「保育園・小学校の建築計画と音環境」などがあります。さらに、音・振動以外の研究としては、都市の熱環境や電磁環境に関する研究も行っています。研究室のHP(http://feeling.arch.cst.nihon-u.ac.jp/)をご参照ください。

-1 井上教授により開発された床衝撃音測定用ゴムボール(JIS A 1418-2の衝撃力特性(2)を有するゴムボール)

図-2 井上教授により開発された歩行衝撃シミュレータ(左図)と実歩行との再現性(右図)

井上勝夫・冨田隆太(日本大学理工学部建築学科)

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九州大学藤本研究室の紹介 (Vol.35 No.3)
九州大学藤本研究室の紹介

九州大学藤本研究室の紹介

2011年度スタッフは,私を含めて13名という小さな研究室です。正式には「建築音響」が研究室の名称ですが,この10年間に取り組んできた研究テーマは,(1)建物群による道路交通騒音減衰量の予測法,(2)ポリエステル不織布吸音材の応用,(3)コンサートホールのステージ音響,(4)アジア発展途上国の道路交通騒音管理などです。(1)の成果F2006F2006+(本会2009年度守田栄論文賞受賞)は,日本音響学会ASJ RTN-Model 2008にも採用されています。現在,点音源モデルへの拡張を目指して研究を続けています。また,()産業技術総合研究所と共同で,ASJ Modelに準拠した道路交通騒音予測・評価のためのGISソフトウェアPOEMの開発を行っており,近いうちに()パスコからレリースされる予定です。(2)では,()フコクと共同で,ポリエステル不織布を用いた吸音材ポリウールPWとその生産・加工過程で発生する端材をリサイクルした吸音材RPWを開発しました(本会2009年度環境デザイン賞受賞)。これらの建築・自動車用吸音材へ応用を目指して研究しています。(3)では,演奏者が演奏しやすいステージ音場を解明し,それを実現する方法を研究しています。(4)はインドネシアからの留学生が取り組んでいる研究です。アジア発展途上国では,現在,自動車が急激な勢いで増加しており,それに伴って沿道の道路交通騒音問題が顕在化しています。騒音を野放しにせず,沿道を少しでも静かにするにはどうしたらよいかを考えています。以上の他にもいくつかの研究に取り組んでいます。http://faal.jpをご参照いただければ幸いです。

こうして,改めて取り組んでいる研究を見直してみても,どれも“静けさの価値”の認識向上に直接的につながる研究とは言えないなあと反省させられます。私自身に残された研究時間も少なくなってきたことだし,ここは一念発起,「エラベール吸音機」(本誌352)の研究でも始めますか(?)。実現までおよそ100年かかると予告されているので,私にはその完成を見届けることはできませんが………。

藤本一壽 (九州大学大学院人間環境学研究院 都市・建築学部門)

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芝浦工業大学波動情報研究室の紹介(Vol.35 No.4)
芝浦工業大学波動情報研究室の紹介

芝浦工業大学波動情報研究室の紹介

本研究室は,音響ディジタル信号処理を専門としています.近年は大きな音が発生するMRI装置の駆動音の計測と,その大きな音環境で検査を受ける患者さんの負担を減らすためアクティブノイズコントロール装置の開発の研究を行っています. 2011年度の研究室には教員1名に修士課程の大学院生3名と卒研生12名が所属しています.芝浦工業大学のキャンパスは豊洲,大宮,芝浦に分散しており,本研究室は豊洲キャンパスにあります.

中心的な研究テーマは医療診断で用いるMRI装置の駆動音の分析です.首都大学東京の八木一夫教授と共同研究を行っています.MRI装置は核磁気共鳴現象を利用して体内の断層画像をつくる装置です.そのために傾斜磁場を断続的に発生させていて,強力な静磁場を発生させるコイルと傾斜磁場コイルで生じる大きな力の断続的な発生により大きな駆動音が生じています.大病院で使用している多くの装置は強磁場が生じる装置です.MRI検査の内容に応じていくつかの撮像が行われます.検査時間は20分~60分程度と言われています.

-1にいくつもの撮像を行った場合の患者さんの耳元で収録した駆動音の一例を示します.図-2は静磁場が1.5T3Tの強磁場を発生させるいろいろなMRI装置の駆動音の音圧レベルまたは騒音レベルを示しています.いずれも大きな音ですが,その大きさは機種や撮像法によって変化しています.撮像法によって駆動音の周波数特性も異なっています.図-3は装置の周囲の音響インテンシティの情報を元に装置から音が放射する様子を示したものです.装置中央の検査部位を挿入する穴の部分と装置壁面からの音が発生しています.このように我々はMRI装置の内部や周囲のさまざまな音を計測してきました.これにより,頭部検査の被験者の耳の位置である装置の中央,膝の検査時にはMRI装置の中央に検査部位を置くため耳の位置は装置の外側にあるからです.検査室の内部で駆動音を聞くのは被験者だけではなく,被験者を介助する人も大きな音に曝されます.これらの情報を発信することで,興味をもついろいろな分野の方に知って頂くことができると考えております.

さらに,MRI装置が発生する音を逆位相の音で打ち消して減衰させるアクティブノイズコントロールの研究に取り組んでいます.この技術を用いて大きな音に曝される患者さんのために防音保護具の開発を行っています.これにより患者さんにとって不快感のない音環境の実現を目指しております.

武藤 憲司(芝浦工業大学工学部通信工学科)

 

 

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愛知工業大学成瀬・佐野研究室紹介 (Vol.35 No.5)
愛知工業大学成瀬・佐野研究室紹介

愛知工業大学成瀬・佐野研究室紹介

本研究室は、環境振動の伝搬性状の研究を中心に、低周波音、建築音響についても研究を行っております。

 建築構造体内の振動伝搬を考える場合、振動モードの影響を考える必要があります。本研究室では、平成4年度に実験的モーダル解析システムを導入し、3階建ての鉄筋コンクリート造の建物をはじめ、木造住宅などについても実験を行って参りました。実験的モーダル解析は、例えば図1に示すように、構造物を加振し、加振力と受振点の加速度の実測結果から固有値(モード)を同定します。この結果、振動を可視化することが可能です。図2は4階建の講義棟のモードシェイプです。1階と2階はコンクリートブロックの間仕切壁ですが、3階と4階は木造の壁となっております。これらの結果から、木造の壁であっても、鉄筋コンクリート造の床に対して大きな影響を及ぼすことがあることがわかってきました。

 モード同定方法によっては、構造変更による対策効果を推定することができます。模型実験を交え、振動しにくくするための研究を行っております。

    図1 建築構造体の振動加振実験の様子

 

図2 モードシェイプ(4階建)

 

 本研究室では、畳敷きの和室における振動測定の方法についても検討しております。畳上ではピックアップをそのまま置くと設置共振による影響が現れます。畳を剥がしますと、床の質量が減少するなどして、正確な振動を測定することができません。これらを検討するために、図3に示すとおり、研究室内に和室を作り検討を行っております。

               図3 研究室内の和室

 

 橋梁から発生する騒音(低周数領域を含む)の低減の研究も行っております。図4は瀧上建設工業株式会社と開発を進めている「塗装による放射音低減工法」です。

          図4 塗装による放射音低減工法

 振動・騒音という社会問題を対象にした研究が中心になっておりますが、音を楽しむことも大切であると考えております。愛知県にも良いコンサートホールがあります。一度おいでください。

成瀬治興(愛知工業大学工学部)

 

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金沢工業大学土田研究室の紹介(Vol.35 No.6)
金沢工業大学土田研究室の紹介

金沢工業大学土田研究室の紹介

本研究室の主たる研究課題は音環境ですが、建築環境系の研究室ということもあって光環境などの分野も研究テーマとしています。これらの分野を環境心理という視点から総合的に探究する点が特徴です。建築は文化を扱うということを念頭に、研究にも風土や歴史を踏まえた視点を持つようにしています。

研究施設としては、2009年に完成した研究所に無響室と残響室を保有しています。学部の講義が行われるキャンパスからは車で20分程離れているので移動に多少の不便はあるものの、環境的には充実しています。

研究室の重要なテーマはサウンドスケープです。現在は庭園を多く取り上げています。庭園には人間の環境に対する認識が凝縮されており、そこから我々はどのように環境をとらえ、どのように環境をデザインしようとしてきたかの歴史が分かるのです。例えば池泉式の庭園には滝やせせらぎなど、音の出る仕掛けが多く存在します。茶室に附属する露地(茶庭)では、蹲(つくばい)や水琴窟といった装置があるのも音を意識させるように作られていることをうかがわせるものです。

サウンドスケープ概念は音環境の整備全般を目指しますが、それはモノのデザインにとどまりません。人間の心に働きかけることも、デザインの一環であるとされます。そのため、音への感受性を育む「サウンド・エデュケーション」も重視しているのです。自治体や学校などの求めに応じて、研究室でもワークショップを企画・実施しています(図1)。

心理的認知構造を読み解く技術も重要になります。心理的印象と環境要素の関係を示す心理的システムである認知構造は、まずは定性的な把握が必要です。分析の方法としてはKJ法がまず思いつきますが、より客観的で効率的な方法の工夫がされるようになってきました。「評価グリッド法®」(注1)はその一つです。

この手法は、対人関係等に関する意識を探るという臨床心理の技法として開発されたレパートリー・グリッド法が元になっています。評価グリッド法は好ましさの異なる対象に対して、「本質的な着眼点は何か(抽象化)」、「差異を生じさせる具体的条件は何か(具体化)」のようにラダーリングという質問を繰り返すことで認識の階層構造を導き出すものです。本研究室ではこの手法をパソコンによって支援するソフトを開発しました(注2)。

しかし、ラダーリングという手続きは、被験者自身が対象を論理的に認識できないとうまくいきません。被験者によっては単なる言い換えになってしまったり、抽象化と具体化を混同してしまったりします。そのような場合に効果的な方法としては「PAC分析」というものがあります。この方法も臨床心理の分野で開発された方法で、自由連想した事柄の主観的な類似度を元にして認知構造を得るものです。被験者のあいまいな認識を、クラスター分析を用いることで樹形図(デンドログラム)として目に見える形に変換することができます。それに基づいて認識の抽象化や具象化を行うので、論理的な思考をあまり行わずに階層化できるのです。この手法についても支援ソフトを開発しています(注3)。

 

質的な観点から音環境の持つ意味をとらえることは、量的な尺度だけでは測りきれない文化的価値を明らかにすることにつながります。空間の雰囲気のような高度に心理的な対象には、音の質的な情報が関与しています。現場でどのような音が発生しているのかを詳細に調査するとともに、心理的な事象を読み解くという研究を続けています。

 

図1 サウンド・エデュケーションの様子

1)「評価グリッド法®」は開発者の讃井純一郎氏によって商標登録されています。

2)土田義郎、小酒裕貴:評価グリッド法支援ツールの開発と応用, 日本建築学会技術報告集, Vol. 14, No. 27, pp. 205–208 (2008).

3)土田研究室・PAC分析支援ツール:http://wwwr.kanazawa-it.ac.jp/~tsuchida/lecture/

pac-assist.htm(2011年9月20日現在).

土田義郎(金沢工業大学環境・建築学部)

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(Vol.34, 2010)

騒音制御工学との関わり(Vol.34 No.1)
騒音制御工学との関わり

騒音制御工学との関わり

 出会い

 1953年、東京都新宿区百人町にあった、建設省建築研究所で、久我先生の助手を勤めさせて頂いたのが、出会いである。戦災復興期、日本の建築界をリードする蒼々たる先生方が在職されていた。火災実験後の建物1階に、小さな残響・無響室があり、建材の遮音性能の試験などを行った。この頃は、都電が走っている時代で、都の騒音実態調査などにも協力した。東京巣鴨の「とげ抜き地蔵」は、“オバサン方”に有名であるが、本堂の音響改善で残響測定に行った記憶がある。また当時、数寄屋橋近くにあった、日本建築学会會館の外壁タイルの剥離調査を依頼され、足場板を渡した簡易ゴンドラの手動ウインチを操作し、怖々と一枚ずつ検査をした想い出がある。

  鹿島技術研究所

 1958年、鹿島建設()に入社し、技術研究所配属となった。業界初の残響・無響室が地下階に設備されており、企業研究所の先進性に感動した。以来1995年定年退職まで、騒音制御業務一筋に過ごした。退職の折、後輩所員達が、研究業績集を作成してくれた。社内技術協力報告書が、300件に上る事が記載され、ニーズが如何に多かったかを裏付けている。印象深いのは、現在も時折超低周波音が問題となるが、1965年代に信濃川を挟んだ対岸の家屋で、戸障子・家具が振動するという現象が生じ、地元新聞の話題となった。東大地震研、東北大学と共に、我々も調査に参加した。原因は、ジーゼルエンジンの排気音にあると判明したが、探査・測定技術など大変な勉強になった。後年同様な問題が、大規模石油化学プラント周辺で生じた。プラント機器の稼動状況と振動現象の追跡調査で、大規模クーリングタワー・ファン羽根一枚の腐食脱落が、原因と判明したが、前例の経験が大いに役立った。1960年頃から、鉄道沿線に新設する精密工場敷地への振動影響調査が増加した。手製の振動計に代わり、鹿島1号となる熱ペン記録式振動計を調達した記憶がある。

 その頃から、各地の火力発電所の騒音実態調査等を行ったが、石油プラントの騒音問題に関わる事も多くなり、徹夜で周辺地域への影響調査を行っている。また1970年頃、当社がターンキー方式で受注した、石灰石山から積み出し港までの長距離ベルトコンベヤーシステムの防音・防振対策には、市街地ルートもあり、苦労した想い出がある。参考に、某プラントのベルトコンベヤー騒音を無断で調査し、警備員から追跡されたりしている。研究所には、長友(元本学会長)・古宇田先輩が在職され、ラジオ・レコードスタジオの音響設計、大規模工場等の自然換気計画など、業界として先進的な環境工学の問題に取り組んでおられた。また、電力需要の増大に伴い、市内大型変電所が増大し、150MVAクラスの変圧器騒音対策が、問題となっていた。これを防音と換気を考慮した建屋の開発で解決し、多数の施設設計を行った。また、わが国初の超高層ビル(霞ヶ関ビル)では、中間階に設備機械室が設けられ、上下階に対する防音・防振対策が要求された。ここでの貴重な経験が、その後の超高層ビルやホテルの設計等に大いに役立った。他方、社外委員会で開発した、全カバー式鋼管杭打機は、当時の建設工事ニーズに応える騒音制御技術の成果と言える。

  緊張した想い出

 1969年、日本の代表的な建設技術研究機関として、皇太子明仁親王殿下(現天皇)が、行啓された。その折、都内の実騒音とレベルの関係をご説明した。新国技館の音響設計に当たっては、館内放送の明瞭性を蔵前国技館の現況と較べ、シミュレーション音声で、春日野理事長(元栃錦)等、協会役員に説明をした。1982年、デミング賞を会社として受賞したが、審査の先生方に研究テーマの選定から、成果活用展開のQCサークルの実証説明など、苦労した想い出がある。苦い想い出としては、騒音対策を施した化学工場のプラントが、爆発で一瞬に建屋鉄骨のみになった事。また、騒音対策を行った市内変電所が、火災事故になった事。そして、棟頂に消音換気モニターを設計した、長大工場の一部棟が、撓んだこと等が思い出される。

  著書など

 当学会には、設立時から関わってきたが、「騒音・振動対策事例集」は、委員の方々が当社研修センターに合宿で纏め上げた、特別な想いがある。また、研究業績賞(著書)を頂いた「建物の防音と防振」は、鹿島建設技術研究所の関係所員が、分担執筆した成果である。そしてこの度の研究業績賞は、これまでの実務経験に基づく“居住性を考慮した「建築設備の防振設計技術」(技報堂出版)”が評価されたものと思っている。また、本会発足の動機となった熱気に溢れた仙台での、“インターノイズ75”に参加し、論文報告が出来たことは、懐かしい想い出である。

 終わりに、私の騒音制御工学との関わりは、時代のニーズを背景に、技術検討依頼先およびその解決の過程で、多くの人々との恵まれた交流にある様に思う。

 (元鹿島建設(株)技術研究所 麦倉喬次)

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騒音計(サウンドレベルメータ)(Vol.34 No.3)
騒音計(サウンドレベルメータ)

騒音計(サウンドレベルメータ)

最近の各社の騒音計の仕様を見ると、ダイナミックレンジは100dB以上、周波数の重み特性や動特性は計算通りの特性が、また電池での作動時間も数十時間など、基本的な騒音測定に十分以上の性能を持っている。取り込む音が測定対象の音であることも確認出来れば完全な測定と言うことが出来る。当然通常用いられる各種騒音評価量の計算機能も内臓されている。またパソコンなどの外部機器と接続して更に高度な処理が可能である。私が騒音計に関する業務についた40年前から見ると、騒音計としてだけではなく万能な音の計測器として完成している。すなわち万能なサウンドレベルメータが生まれたと言うことが出来る。

古い文献を紐解いて見ると、1930年代に世界的に騒音測定に関する研究が盛んに行われている。1936年には米国で騒音計の規格の試案が公表されている。当時わが国でも、騒音問題が取り上げられており、幾つかの機関で調査研究が行われていた。また1930年代は現在用いられているほとんど全ての電気音響変換器が実用化された時代である。これらの状況については多くの先達の報告がある。特に騒音測定についての守田栄先生の「騒音測定の移り変わり」騒音制御、Vol.1,No.5(1977) p.1にかなり詳しい記述があるので参照されたい。またその中で人の判断は0.1dBになることはないであろうという記述は極めて示唆に富んでいる。私は今でも騒音の測定値は1dB刻みで、統計処理の結果必要な桁数で表すべきと考えている。

騒音評価では、変動する音の測定・評価という大問題を解決しなければならない。人間が変動する音(騒音)をどう感じるのかが問題なので、まず当時実用化されていたオージオメータが用いられた。いわゆる聴取式の騒音計である。その代表がBarkhausenGeraeuschmesserである。この騒音計は小林理研にあると聞いているが、確かめてはいない。私がこれを試すことが出来たのは30年ほど前にドイツの標準研究所PTBを訪問した時のことである。実際に動かした。聴取式の騒音計は検出器として人間を用いており、測定値が人間の主観評価に依存する。この方法では必要な定量的結果を得ることが困難である。

わが国では第二次世界大戦中、海軍の要望によって指針型騒音計の規格が審議されている。目的は、何処ででも誰にでも安定した一定の精度の得られる測定機の開発である。すなわち心理的量ラウドネスレベルの標準値を如何に物理的測定法に採用し、指示計器で表示できるかである。日本音響学会でもこのために、当時使用・試作されていた10機種ほどの指示型の騒音計が集められ、性能の比較を行っている。マイクロホン、ダイナミックレンジ、基準の音圧レベル、周波数特性、指示計器を含む動特性など多くの問題が述べられている。マイクロホンにはピエゾ型、カーボン型、ダイナミック型とコンデンサ型が用いられていた。ダイナミックレンジは20dBが目標であった。周波数特性と指示計器の動特性については他の機会に譲る。また当時は真空管の時代であり、数種類の電池が必要で、その大きさは騒音計の本体とほぼ同じ、50 x 50 x 25 cm位、重さは本体、電池それぞれ十数kgであった。

これらの成果は、昭和24年騒音計のJES規格の制定に繋がっている。さらに当時の騒音問題の高まりとともに、昭和26年騒音レベルが計量法に取り込まれた。このためにJES規格を基に、昭和27年JIS B7201-1952「指示騒音計」が制定されている。また検定の対象としては指示騒音計とし、聴覚騒音計は検定対象外となった。

前述のわが国における騒音計規格化は、1936年の米国の標準規格(ASA)や1940年のドイツの標準規格(DIN)なども参考に行っている。その後国際電気標準会議(IEC)の推奨規格普通騒音計(IEC R123:1961)と精密騒音計(IEC R179:1965)が作られた。JIS規格は検定制度とIEC規格との整合を図りながら改正を重ねてきている。現在ではIEC規格が国際標準となり、騒音計の規格はIEC 61672:2002 “Sound level meters”となった。この規格との整合が図られたJIS C 1509:2005「サウンドレベルメータ(騒音計)」が制定されている。

計量法による騒音計検定実施のための研究が昭和26年通商産業省電気試験所(現産業技術総合研究所)で開始された。まず、標準マイクロホン、MR103などのいわゆる1インチ型コンデンサーマイクロホンを用いた音圧標準が確立された。昭和35年から騒音基準器検査で供給されている。その後昭和40年頃の環境問題の高まりとともに、昭和46年環境庁が発足し、騒音レベルを取引証明に用いるために、騒音計の検定制度が求められた。当時騒音計検定に関する研究が電気試験所で服部昭三博士(三重大学名誉教授)を中心に進められていた。服部先生の騒音計検定に関する大変合理的な方法の確立によって、昭和48年機械電子検査検定協会(現日本品質保証機構)で騒音計の検定業務が開始された。この制度の運用は現在も順調に運用されており、技術などの進歩に合わせて改良が加えられているようである。

三浦 甫(静岡理工科大学名誉教授)

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(Vol.33, 2009)

マニュアル考(Vol.33 No.1)
マニュアル考

マニュアル考

 昨年、オール電化の家を新築した。エコキュート、システムバス、蓄熱暖房器、IHクッキングヒーター、テレビドアホン等を初めて使うことになったが、新築にあわせて数点の電化製品も慎重した。各種の取扱説明書はダンボール一杯になっている。さて、その内容の理解のしやすさは千差万別ではあるが、おおむね絵入りで読みやすく心がけてはいるようだ。しかし、今のところほとんどそれらの取説を読む必要はない。機器についている液晶画面に出てくる手順通りにすれば事は済んでいるのである。

 ところで一方、諸兄も携帯電話をお持ちと思うが、それにはどれだけ多くの機能がありのだろうか、あの分厚い取説を読む気がしないので自慢ではないが、私はいまだにまだ2~3の機能した使っていない。

 そんなこんなを考えている中、昨年、栄えある研究功績をいただいた。非常にありがたく、これまでご指導いただいた方々、また研究に協力していただいた方々に深く感謝する次第である。それを機に。少し昔のことにはなるが、測定器等のマニュアルについて思い出、そしてそれにまつわる現状について考えて見ようと思う。

〇騒音測定をめぐって

 昭和40年代初頭、二村忠元教授、曽根敏夫助教授の下に、各地の都市から依頼されて市街地の騒音測定することが多かった。中央値を求めるため5秒おきの騒音レベルを記録するのに3人一組(読取り、時計、記録)で行っていた時代である。日本製の騒音計も使ったが、B&Kの計測器を標準として使っていた。そのマニュアルはもちろん英語ではあるが、回路図まで掲載されていたのは、日本製のマニュアルと比べて驚きであった。それが私にとって実用英語と電子回路の本当の勉強の始まりであったような気がする。

 またその頃、ディーゼルエンジを使った火力発電所(45,000kW)からの低周波数を城戸健一教授の指導のしたで計測したことがある。当時、低周波音の測定は市販されておらず、B&Kのマイクロホンアンプを改造(コンデンサーを挿入し、ゲインを犠牲にして低域まで延ばした)して使用し、1000Hzを運搬波とする振幅変調器を自作して民生用テープレコーダーを組み立てた。これで、2~30Hzの低周波は十分記録することが出来たのである。
 さて、低周波音の対策としては、直径及び長さがそれぞれ6mの円筒型消火器や直径10m、高さ12mの消火器を取り付けて問題は解決した。しかし、自作測定器のマニュアルを書かなかったためか、その後誰にも使ってもらえなったのは残念である。

ところで、昭和43年に私が初めて買った車は「スバル100」であった。車いじりが好きで、故障した折りにはディーラーの修理工場で部品を買いながら、修理手順を開いて、ウォーターポンプの交換をしたりしていた。そんな時に、やはり車好きの友人からアメリカで市販しているスバル車の分厚い英語版修理マニュアルを土産にもらった。自分で修理するのが当たり前のアメリカではあるが、すなおに驚いたものである。その後国内でも各社の車の日本版のマニュアルが市販されるようになった。

 されいまは?と言えば、自動車エンジンは完全にブラックボックスの中に納まってしまっていて、とても素人だ手をだせるものではない。しかし。購入後6年経つ私の今の車は、これまで何の故障も起きていない。それだけ技術が進歩したものと思うが、修理マニュアルを見なくて済むのに一抹の寂しさと不安を覚えるときがある。

〇マニュアル通りの危うさ

 私は現在、県や市の環境審議会や廃棄物処理施設委員会、大規模小売店舗立地専門委員会等の委員をしている。そこでは各種の報告書や届出書について審議するのであるが、騒音レベルの予測ではそれぞれが何がしかのマニュアルにしたがって計算しているものと思いうのであるが、その適用が正しくなされていないものをまま見ることがある。機器の大きさを考慮せずに計算式を適用したり、騒音の音響パワーレベルを音圧レベルを小数点以下の4桁まで表示しているものがあった。マニュアルには計算結果の桁数についての記述がなかったものと思われる。

〇まとめとして

 15年ほど前、インドネシアのバリを旅したことがある。大きなほ凧がビュンビュンと音を立てて舞っている大空の下で、3人ほどの若者が神妙に老人になにやら教えを請うているようである。老人は凧に張る糸の張り具合を調節して音を調律しているようであった。まさにこれぞ口伝であると思ったものである。ついでに言えば、マエストロ工人が持つ技の極意はマニュアルでは示せないそうである。

 さて、これから開発される機器の使用マニュアルはどんどん必要なくなっていくであろうが、故障時等での対応マニュアルの充実にはまだまだ改善の余地があると思われる。

 話はそれるが、話題を出された学生は、本で調べることなく、ネットで検索して課題を仕上げる風潮にある。さて、これからの世の中は、何処?

(東北文化学園大学 香野俊一)

 

 

 

 

 

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東京タワー展望台(Vol.33 No.2)
タワー展望台

東京タワー展望台

 2009年,関東地方では民放各局の開局50周年企画が数多く行われていた。昨年暮れには,東京タワー50歳を祝うイベン卜が開催された。ここであらためて東京タワーの電波塔としての役割を思い出す。

 「東京タワー展望台リニューアルプロジェク卜における“静かさ創出による音環境デザイン”」 が,当学会の環境デザイン賞を受賞したのは平成14年度。既に6月の月日が流れた。この間,東京タワーを舞台にした映画や小説が次々とヒッ卜したことも相まって,東京タワー展望台の人気は急上昇した。リニューアルプロジェク卜に関わった一として嬉しい限りである。

東京タワーの建設時を振り返る資料や企画はたくさんあるが,今後リニューアル時を振り返ることは果たしてあるだろうか。そう考えた時,あのリニューアルプロジェクトにも,様々なドラマがあったことを思い出し,少しだけこのコラムに書き記しておきたいと思った。

 このプロジェクトは設計コンペで始まった。私はコンペへの参加に向けて、プロジェクトのメンバーと共に何度も東京タワーに足を運び,その都度不思議な魅力に取りつかれていったように思う。なつかしさや親しみもあったが,何よりも東京タワーからの展望は,どんな展望台からの眺望よりもすばらしかった。だからこそ,主役である”展望”を大切にするするデザインにしたいと思った。大展望台に吹抜けをつくり,ロープウェーのようなライドを走らせるプランも飛び出した。さすがにこれは採用されなかったが,想いは通じたのだろう。我々はコンペを勝ちくことができた。

 大変だったのはそれからのこと。展望台の運営を休むことなく工事が進められたため,資材を運ぶエレベーターは夜間しか使用できないが,オープニングイベン卜の日程は何があってもずらせない。昼夜逆転の毎日。 私は“にわかヱレベーターガール”となって,真夜中に職人さんを乗せたヱレベーターの運転を何度となくしたものである。工事の喧騒が去った夜明けの展望台で一人環境演出音の現場調整に走り回ったのがつい昨日のことのように思い出される。

 工事中は辛い事も多かったが,展望台から見る日の出の美しさには,何度も励まされた。大都会東京が眼下に広がるその先に見える海が,少しずつ紅く染まっていくあの光景は,忘れられない。

 環境デザイン賞の盾は,大展望台の一角にひっそりと飾られている。皆さんも,かくれんぼでもするつもりで見つけに行ってみてほしい。

 

(船場ひさお)

 

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東北大学マルチメディアホールについて(Vol.33 No.3)
東北大学マルチメディアホールについて

東北大学マルチメディアホールについて

 JR 仙台駅の西約2 km に位置する東北大学川内キャンパスは, 伊達政宗が築城した青葉山丘陵のふもとの段丘地帯「川内」地区にあり 北から南東方向に流下する広瀬川によってまれていることからその名由来が固地したとされているようである。

 マルチメディア総合研究棟の建つ北キャンパス周辺は ,古くは仙台(青葉)城時代の大身侍屋敷地一戊辰戦争後の接収, 旧陸軍用地―第2次大戦後のGHQ 司令部駐屯地(川内キャンプ)という歴史を経て, 東北大学川内キャンパスとして下現在に至っている。

 私が教養部年代を過した 1960年代初めは,広大な芝地の中に点在する緑と白で統一された木造建物や,かまぼこ型の米軍関係の建物が教室,講義室であり, 当時の学生運動全盛の騒々しい時期にあって,ゆったりとした異国情緒を感じさせる風景のキャンパスであった。中層建物の建ち並ぶ現在のキャンパスと隔世の感がある。そして今度は,このキャンパス北側に主要幹線道路と仙台市地下鉄東西線の整備が計画され,平成27年の(仮称)川内駅開業に向け始動しており,またひとつ新しい顔を見せようとしている。

マルチメディア総合研究棟

平成15年度環境デザイン賞の対象となった東北大学マルチメディア総合研究棟は,マルチメディアの機器の開発普及を背景とした研究や学習・教育形態の変化に対応し,教養教育(総合科目,芸術関連科目)及びマルチメディア環境教育の全学教育充実を目的としている。

  地上6階,延面積6954㎡規模本施設は,前記地下鉄東西線(仮称)川内駅に隣接し,中心広場へと展開する北キャンパスの玄関に位置しており,地域住民や学生にとっての「開かれた施設」として,「キャンパスの顔」 ,「キャンパスの新しいシンボル」として計画 ,デザインされた。施設構成は,多様なニーズに対応できる環境づくりを目指し,計画諸室を学生のためのパブリックスペースを中心に,不特定多数の学生を対象とした実習室等のフレキシブルゾーンと ,研究室を中心としたフィックスゾーンの二つのゾーンに設定し空間構成している。

 本物建は 前述のように主要幹線道路 ,地下鉄に平行に近接して建つため,将来の騒音・振動の影響に対し, 高品位のマルチメディア教育施設としての適切 ,良好な音環境確を確保することが重要な技術テーマであった。対応にあたっては,東北大電通信研究所音響情報システム部門の指導,協力によって設計を行った。

 構造は,フレキシビリティの高い空間構成実現のため,梁間方向15.0mの1スパン構造とし,大スパン架構の梁は鉄骨造としたが高軸力の柱は,剛性確保の考え鉄骨鉄筋コンクリート造とした。基礎は,将来の地下鉄駅舎建設時及び地下鉄運行時の騒音・振動に対するために,剛性の高い場所打ち杭(オールケーシング工法)を採用し,杭先端位置を駅舎基礎下端より深くした。

マルチメディアホール(多目的大教室)

マルチメディアホールは,総合科目,芸術関連科目(音楽・美術・演劇)の授業や講演会等を主要目的とし,音楽演奏や伝統芸能の発表などへの対応も要求される多目的教室で, 建物東側低層部の2~3回に吹き抜けで配置している。収容人員約470名のホールは,その両側面に廊下を配した約31.15×15.0の長方形平面で,ステージ平土間一段床(客席の約3/5)の花壇教室となっており,その室要量は約2200㎥,約4.7㎥/人となっている。音響設計はあくまで講義を主体的に考え,音楽等への対応は付加的対応としている。

 地下鉄騒音・振動に対し,リニアモーター採用の場合の受音側騒音NC 値を55程度,音源側対策後の予想NC 値を35程度と想定,ホールの騒音許容水準をNC25として対策が立てられた。その結果,地下鉄の卓越周波数63Hz帯域に最も効果のある浮き床構造の防振仕様(共振周波数10Hz)採用となった。

 床は, 躯体スラブの上に丸型防振ゴムを挟んで厚150mm のコンクリート浮き床を載せる防振構造とし,段床部分は浮き床に鉄骨束立てでコンクリート段床を支持する構造とした。壁・天井は防振床と切り離し,壁と天井を支持する鉄骨架構を専用の防振ゴムで受ける構造とし,石膏ボード二重張りの防振遮音層とフラッターエコーに配慮した拡散仕様の表面仕上げ層の二重構造とした。

 採用浮き構造の音響測定後の性能評価は,振動絶縁については廊下での加震対して地下鉄周波数帯域である63Hzで所定の減衰効果を,空間音圧レベル差や床衝撃音についても浮き構造の十分な防振・遮音効果が報告されている。また,室内音響測定により,残響時間,エコータイムパターン,明瞭度等についても,良好な結果が確認されている。

 「高断熱高気密」,「次世代省エネルギー仕様」,「免震構造」…最近は,住環境目標の恒常に伴い,増大する環境負荷や自然変動への対応に関する言葉が日常生活の中で氾濫している感があり,自然に開け放され一体となった日本古来の住まいが懐かしく感じられるこの頃である。

(建築工事実施設計担当 株会社式 関・空間 設計 若松 洋)

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無題(高速道路遮音壁が環境デザイン賞を受賞(Vol.33 No.4)
無題(高速道路遮音壁が環境デザイン賞を受賞

無題(高速道路遮音壁が環境デザイン賞を受賞

2009年、東名高速道路が開通40年を迎えました。これまで日本の東西の都市圏を結ぶ大動脈として日本経済の発展に大きく貢献してきましたが、急速な都市化による生活環境の悪化、構造物の高齢化、交通集中による渋滞発生など、様々な問題点が発生していることも事実です。そこで、代替路線として新東名高速道路の建設を平成5年から進め、当学会の環境デザイン賞を受賞した箇所は平成15年に開通しました。

新東名は、「ゆとりある道路構造」を目指して全線で6車線を確保し、トンネル内の路肩を広くしカーブや勾配も緩やかに設計されました。加えて「人にやさしい道づくり」を目指し、周辺地域に与える影響を考慮するのはもちろんのこと、景観に配慮したデザインも考慮することとしました。遮音壁についても例外ではなく、おそらく初めて走行景観や外景観を考慮して遮音壁構造を決定することとしました。

先行して開通した区間では最大高さ8m張り出し5mの遮音壁を設置しました。走行中に感じる圧迫感の軽減に配慮した形状や材質を選定し、照明や標識なども遮音壁と一体化したすっきりとしたデザインにすることで開放感のある道路空間を実現しましたが、施工性、維持管理性、経済性に劣り、これを全ての新東名沿線に展開していくことは内部的に非常に困難でした。そこで、「新技術を駆使して何とか優れた遮音壁が考え出せないか」と知恵を絞ったのが大型の分岐型遮音壁です。

それまで存在していた分岐型遮音壁を大型化したもので、模型実験や現地試験施工により効果等を確認して構造を決定しました。パース図をパンフレットに記載するなどほぼ決まりかけていましたが、会社の上層部より「もっと景観に配慮するように」との声がかかり、遮音板の落とし込みをやめ前面取り付けタイプのパンチング構造にしたり、直線部と分岐部の境目を曲線にして滑らかにしたりさらに工夫を重ねました。景観がよくなった代わりに施工方法や強度の確認に手間がかかり現場の担当者は苦労の連続でした。

こうして完成した大型の分岐型遮音壁は、施工性、維持管理性、経済性はもちろんのこと、デザインも大変好評であり、また環境デザイン賞も頂いたことから、今後建設を進めていく静岡県内の新東名高速道路にも順次設置していく予定でした。しかし、平成13年頃から始まった日本道路公団の民営化の議論により、事業の見直しが図られ、交通量や車線数を見直したことに加え、大型車の速度規制やタイヤの性能向上などにより、騒音の予測値が当初想定していた値よりも大きく下回るようになりました。このような事情から、今後本遮音壁の設置を予定している箇所が少ないことはとても残念なことです。

 私は、大型の分岐型遮音壁の施工中に初めて本件に関わりましたが、騒音の先生方におかれましては、新東名高速道路の遮音壁計画が決まった時から非常に沢山の御意見・アドバイスを頂きました。また現場にも足を運んで頂きました。この場を借りて改めて御礼を申し上げます。ありがとうございました。  

パンフレットに記載された大型の分岐型遮音壁

実際に設置された大型の分岐型遮音壁。H鋼を隠し、見える部分を滑らかにした。

普段は見られない上部からの視点

 (舩橋 修)

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工事騒音リアルタイム評価・対応システムの開発(Vol.33 No.5)
工事騒音リアルタイム評価・対応システムの開発

工事騒音リアルタイム評価・対応システムの開発

1.はじめに

 平成215月に「工事騒音リアルタイム評価・対応システム」に対して平成20年度の環境デザイン賞を賜ったことは,開発者として誠に栄誉のあることであり,今後の研究開発への励みにもなるものである。ご指導いただいた関係各位に深く感謝申し上げる。

 当社は「利他利己」というお客様第一の精神で「お客様の満足」を目指した事業活動を進めている。その中で,建設工事が周辺環境にどれだけ優しくなれるかもキーワードとなっている。本システムはこの様な考えの中で開発され実用化された。ここでは,開発時の苦労話などを織り交ぜながら,本システムの開発概要を紹介させていただく。

2.開発の背景

 平成174月にAトンネル作業所から相談を受けた。同年の7月から開始されるトンネル掘削期間中の夜間作業時の騒音を,トンネル坑口に近接する民家で40dB以下(LAeq)で管理したい。40dBというレベルであるので,異常騒音発生時に迅速に対応を取りたい。そのための管理システムを導入したい。という内容であった。詳細な条件を聞くと約12ヶ月の夜間作業を対象とし,仮設備基地,工事用地境界,民家での騒音を自動計測し,管理値を遵守しなければならないとのことであった。

 手持ちでこれに対応するシステムも無く,3ヶ月で運用開始しなければならないことから,直ぐに某社の騒音監視システムを思いだし見積依頼したが,様々な要因があり自社でシステム開発することになった。

Aトンネル工事で開発されたのが,工事騒音リアルタイム評価・対応システムver.Ⅰとなった。このシステムは大きなトラブルもなく,工事も無事に竣工することができたが,一つだけ大きな課題を残した。

それは,民家での計測値に暗騒音の影響が含まれてしまうというものであった。本来であれば,システム構築時に考慮すべき事項であったが,多点で連続してLAeqを計測するシステムを作ることばかり考えてしまったことが敗因であった。そこで,ver.Ⅰシステムの改良版として,平成19年初頭から暗騒音の自動削除機能を有するver.Ⅱシステムの開発に着手した。これが環境デザイン賞を賜ったシステムである。

3.暗騒音の自動削除

 ver.Ⅱシステムの特徴は,暗騒音の自動削除と影響を与えた騒音源の寄与レベルを自動で求めるところにある。寄与レベルについては,現地で主要な騒音源と騒音監視地点間の騒音レベルの減衰量を求め,ソフト上で初期設定することで対応できたが,暗騒音の自動削除については,その方法と検証方法について頭を悩ませた。検証方法(実験)について簡単に紹介する。

 パラメータの詳細検討を主目的としたため,実験室での実験となった。そこで,まず,現場周辺で発生するであろう暗騒音を調査した。交通車輌,鳥類,犬,蛙,虫,川の流れ,人など様々な騒音を手当たり次第に収録して実験用の暗騒音源とした。これに,自前で保有していた工事騒音源を利用して,写真1に示す実験モデル(工事騒音用スピーカ7箇所,暗騒音用1箇所)を実験室内に用意し,工事騒音と暗騒音を発生させながら,暗騒音の自動判別パラメータを検証した。この時の騒音源の組合せは,騒音源と暗騒音の時間変動特性や周波数特性をベースとして作成し1000パターン以上となった。

4.現場での運用

 平成1910月頃にはだいたいの形がついたので現場検証を開始した。初めて使うものには不具合が付き物であり,システムを設置させて頂いた作業所の皆様と知恵を出し合いながら完成形にちかづけた。お陰様で,現在では当社の10以上の工事現場で騒音管理システムとして展開運用され,工事周辺地域への工事騒音軽減の一助となっている。

 

 本システムの改良改善は現在も継続している。今後の発展型として,騒音だけでなく,振動・粉塵・水質など,建設工事によって発生する環境負荷要因を総合的に管理するシステムの構築を考えている。

写真:弊社技研実験室に設置した実験モデル

(飛島建設 小林真人)

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研究のはじめに(Vol.33 No.6)
研究のはじめに

研究のはじめに

昭和36年東京大学生産技術研究所で,まず騒音測定をすることとなった。その前に,騒音計(当時は指示騒音計といった)の較正をしなければならない。それには,マイクロホンにあてた笛を吹くことになっていた。その方法を,当時石井聖光先生の研究室にいた朝生周二氏が指導してくれた。最初に自分で吹いてみせてから,私がやってみることになった。ところが,なかなかうまく吹けない。それではダメだということで数回吹いてやっとOKがでた。いささかうんざりしたが,これが出来ないと測定がはじまらないのだから仕方がない。

それから10年位のちに,ある空調設備工事会社の社長さんと騒音の話をしていたとき,その社長さんから会社で指示騒音計を購入したときの話をきいた。最初に笛を吹いて較正することになったが,なかなかうまくいかない。そこで「そうだあいつを呼んでこい」ということになった。そのあいつとは,社内でも有名な尺八の名手であったとのことである。

それからさらに20数年後に,今度は,東京都の公害審査会の委員として,小林理学研究所を訪問する機会があった。そのとき。所内の博物館を見学させていただいた。そこのガラス・ケースの中にあのなつかしい笛があったのである。いっしゅん,もう一度この笛を吹いてみたい衝動にかられた。しかし,数年来わずらっていた気管支ぜんそくの身では,笛の音よりも,私の気管支から発生するであろう気流音が心配で,笛吹きをあきらめた。

〇研究の流れ

 昭和36年大学院に入り,いまだ千葉から引越し中の六本木に勝田髙司先生の研究室を訪ねたときから研究がはじまる。空気調和・衛生工学会の創立40周年依託研究が,渡辺要先生,勝田先生の両研究室共同で行われることとなり,修士課程1年の私が担当することとなった。この研究は,送風時におけるダクト系統の発生騒音に関するものであり,その後40数年にわたり設備騒音にかかわる糸口となった。

当時の両研究室には,石井聖光先生,後藤滋先生,寺沢達二氏,平野興彦氏,朝生周二氏などがおられた。簡易騒音計にしかふれたことのない私に,前述の支持騒音計はもちろん,石井先生手づくりのべニヤのケーシングにマジックで目盛りの書いてある各種測定器の使用方法を教えて下さったのは上記の方々である。

 当時,後藤先生が送風設備の騒音制御について学位論文をまとめられた後であり,新しく完成した無音送風装置と給排気口を有する残響室とを用いて,送風機,ダクト直管部,曲管部,分岐部,混合箱,吹出口,インダクション・ユニットなど,ダクト系各部の気流特性,音響減衰特性,気流による発生騒音などの研究を行った。この実験装置も地下鉄千代田線の工事とともに取りこわされた。

 昭和43年には日大生産工学部に移ったが,ドライバー1本,半田ゴテ1本もなかった。何とかしようと努力したが,学園紛争もあり,新しく実験室が完成したのは昭和46年であった。東大生研の装置を模型としてひとまわり大きい実験室とした。

 昭和49年には米国出張のチャンスがあり,MITBBNCarrierJoyMitcoCSUなどを訪問し,IngardBaadeKerkaBiencoGalaitsisGorchevBullockなどと知り合えたのは大変参考になった。

 その後も空気調和設備に新しいシステムが導入されつづけ,高圧の軸流送風機,定流量あるいは変流量ユニット,グラス・ファイバ・ダクト,フレキシブル・ダクト,個別空調機,ヒート・ポンプ・ユニットなど新しい音源にはことかかない。

 それにつけても,コンサート・ホールやオペラ・ハウスの設計,コンピュータ・シミュレーションなどのはなやかさに比し,実験の99%の時間は,ダクトのセッティングととりはずしに要し,まさに3Kのからまりのようなところがあり,若い学生諸君(後半は女子学生が多い)をなだめすかすのが大変であった。

〇おわりに

 最近の空調設備は,一部を除いてセントラル方式から個別方式へ大きく移行している。かつては,コイル,エア・ワッシャ,空気調和器そのものまで設計していたエンジニアは,メーカのカタログから選定するのみの悪くいえば,カタログ・エンジニアなる傾向がある。そうなると,メーカの機器そのものの騒音特性がますます重要になる。ところが一部とはいえ,正しい騒音データの示されていないものがあるのは,誠に残念である。

 その解決のためには,運転状況も踏まえた騒音測定方法の規格が大切である。しかし,規格があっても,使わない,あるいは正しく使わないのでは,まさに絵にかいたもちになってしまう。

(日本大学名誉教授 坂本守正)

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(Vol.32, 2008)

イスタンブールとマドリッドの騒音事情-騒音評価は相対評価?-(Vol.32 No.1)
イスタンブールとマドリッドの騒音事情

イスタンブールとマドリッドの騒音事情-騒音評価は相対評価?-

 11時間を超えるフライトの末 、イスタンブールに到着したのは、現地時間で夜8時を過ぎていた 。機内では、一人アルコールを少々 (?)塩野七海さんの”コンスタンティノープル陥落”を夢中になって読んだ。イスタンブールについては全く知識が無かったが、この本のおかげで、町の中に残る城壁、ギリシャ正教の本拠であったアヤソフィア、ボスフォラス海峡から見えたルメリ・ヒサール、 ガラタ塔が印象的なジェノバ居留区などなど…トルコは私にとって非常に印象深い町になった。

 空港を出てイスタンブールのホテルに向かった。暗い道路をジェットコースターのようなタクシーに揺られ 、見えてきたのはマルマラ海の海岸で人々がバーベキューをする光景。やはり遊牧民の国なのか? 大規模ではなく、家族単位の小さなグループが、ほのかな明かりを囲んでバーベキューを楽しんでいた。かなり遅い時間にもかかわらず、バーベキューの輪の側で小さな子供とその親がボール遊びをしているのには驚いた。それほど大音響で騒ぐ人達はいない印象であった。

さて イスタンブール騒音事情ということであるが、一番に思い出すのは自動車騒音である。トルコの人々は、まさにレーサーという感じであった。急発進、 急ブレーキ…道路には車線が引かれてはいるが 、彼らにとっては全く関係ない。隙間があればとりあえず頭入れ、追い越しをかけていった。当然 、走行騒音は大きい。しかし、それ以上にクラクションが印象的であった。前を走る車の前に隙間があれば、すかさずクラクション。割り込み、車線変更、追い越しの時、そこら中からクラクションが聞こえてくる。軽いクラクション、意思のこもったクラクション、長さも強さも異なるクラクション…常にクラクションが鳴っている。まるでの声の掛け合いようであったは。

 鉄道は、1週間の滞在中に1度しかに目にしなかった。トプカプ宮殿のテラスからボスフォラス海峡を眺めて殿いた時である。眼下をゆっくりと存在感のある音をあげ列車が横切るのが見えた。列車音が聞こえている時間の長さ、重量感のある響き、ともに貨物車?という印象を受けた

 トルコの交通機関として重要な役割を果たしているのはトラムである。代表的な車両と古い車両が走っているが、 近代的車な車両が旧市街、古い車両が新市街を走っているのは、観光客の輸送力を考慮しないのか?日本の観光地における感覚との差を感じた。代表的なトラムの音は静かすぎて、 周りの景色や会話に話夢中になっていると危うく引かれそうになった。(自動車騒音が大きかったせいかもしれない…)

 1週間のイスタンブール滞在後 、マドリッドに移動して最初乗った乗り物は、やはり空港からタクシーであった。滑らかな発進、 停止 、非常にゆっくりと柔らかい運転で安心して乗っていられた。(ただ、日本から直接マドリッドに入った人によると、マドリッドのタクシーは運転が非常に荒く怖かったということ…)

 マドリッドで主な移動手段は地下鉄だった。学会会場までの地下鉄は比較的新しい車両で、車内でも顔を近づければ話はできた。一方ホームでは、坑内が反射性の材料で仕上げられているためなのか?車両が重たいのか?とにかくうるさい。日本の様に、ホームへの電車進入のアナウンスは必要ない。電車がっ入てくるのは誰でも分かる。また、町へ向かう地下鉄は車両が比較的古ものが多く、車内騒音も大きい。治安的な意味で緊張感のある車内だから音も大きく感じるのか?騒音が車内の雰囲気に緊張感を与えているのか?思わず貴重品を手で押さえてしまう。

 地下鉄の路上ミュージシャンならぬ車内ミュージシャンに遭遇した。小型のアンプを用いて地下鉄の音に負けない大音量で演奏していた。隣の車両で演奏してくれるとちょうど良い程度である。彼は地下鉄の混み具合のあまり気にせず、日本の地下鉄並みの混んでいる車内に最後に乗り込みドア前を確保、 一区間で1局、駅毎にドアを移動して行った。

 マドリッドからはパリ経由で日本に帰国した。 シャルルドゴール空港の豊かな響きには驚いた。まったくアナウンスを聞き取ることができなかった。

 日本に着き、空港から自宅へは地下鉄を利用した。「電車が参ります」というアナウンスの後、非常に静かに(音をたてず)地下鉄がホームに入ってきた。

 この文章を書いている現在、帰国から1ヶ月以上経ち、日本の地下鉄に対してあの感じた印象はすでになくなっている…

((財)財小林化学究所 横田孝俊)

写真1 夕方大渋滞(イスタンブール)のえきれなくなりトラムの線内路をるタクシー耐走

 

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社団法人日本騒音制御工学会の誕生と足跡(Vol.32 No.2)
社団法人日本騒音制御工学会の誕生と足跡

社団法人日本騒音制御工学会の誕生と足跡

 平成18年度の研究功績賞を賜りました。 日本騒音御工学会の会員として大変光栄に存じております。この機会に,ご指導いただいている諸兄を始め会員の皆様に厚く御礼申し上げます。

 本誌は第32巻。日本騒音制御工学会の第1巻(1977 年2月 )が刊行されてから32年が経過したことになります。学会誌の刊行の前年,昭和51年(1956)5 月に騒音振動に関わる方々が本工学会を発足させました。騒音振動の関連産業,現場技術関連,コンサルタン卜業,地方白治体を含む行政,大学や研究機関の方々が一堂に会して音,振動に係る強勉を推進すると共に発情報交換を活化しようという目的で学会が設立されるに至りました。同年12月8 日,9 日の2 日にわたって第1 回の技術発表会が東京・麹町の平河町にある日本都市センターホールで開催されました。この会の加は参加者300名,講演論文集はB5 判,260 ページ,現在に比べると大変小ぢんまりした大会でした。

 会誌の相関に先立って「日本騒音制御工学会ニュース」が月に刊行され, これが全会員に配布されていました。8 ページほどの簡素な冊子で,工学会の発足に中心的にご尽力された先生方,環境庁の大気保局長を始めとする騒音,振動関係の行政に携わる方々のコメン卜が掲載されていました。

 工学会ニュースは1977 年1 月・第8 号で刊行を終了,隔月で発行される学会誌「騒音盛業」に使命が引き継がれました。これは学会機関紙「騒音制御」として現在まで基在本的に変わることなく刊行されています。

 工学会設立当初は日本音響学会からの「のれんわけ」のような印象が持たれていました。音響学会での論議は「堅苦しい。」とか「直接的な内容に欠ける。」といった印象が濃く, 具体的で普段着的な内容に満ちた学会の設立が望まれたようです。このため,大会での発表会も「研究発表会」ではなく「技術発表会」とされていました。現場に軸足を置いて技術的問題点と秘術成果を発表することに大きな意義を持たせたものでした。 平成8年発表の(この年, 発表会に合わせて工学会発足20周年記念イベントが京都で開催されました。)から「技術発表会」ではなく「研究発表会」と呼ばれるようになりましたが,具体的な技術に焦点を絞った内容であることが特徴的な発表であったようです。

 おりしもわが国では鉄道,道路網の設備,大規模設備の建設などが活性化して騒音,振動に関わる問題が釈迦的に多様な姿で浮上してきた時期を迎えていました。

 新東京国際空港(成田空港)が開港したのもこの頃でした。

 初代の会長には音響学の大御所,騒音測定に中央値の導入を提唱された「守田栄」先生が就任されました。「守田栄先生」が工学会誌「騒音制御」の創刊号の巻頭言で次のように述べておられます。

 「騒音制御工学会はあくまで制御のための工学会であると思います。そこに工学の限界があることをに心に止めて学問のためにも役立たいといます。」

 日本騒音制御工学会は平成3年に社団法人の許可を受けて任意団体からの脱却が図られました。社団法人化されることによっていくつかの法的制な制約生じましたが,確たる社会が認められた団体なったことになります。(主務官庁は環境省。)

 法人化されても設立当初の基本コンセプ卜は変わることなく,今日の工学会倫理要明に明記されています。

 工学会の倫理要綱から抜粋を下記にします。

1.人類に対する責務

[安全健康福祉]

我々は,白らの専門的知識,技術,経験を生かして,人類と社会の安全,健康,福祉に王権します。

[学術の発展]

我々は、自らの磁化と責任において,学術・技術の発展と文化の向上に寄与するとともに,専門家の社会的評価の向上に不断の努力を重ねます。

[公平性 ]

我々は、他者の文化の多様性に配慮し,すべての人を人種,宗教,性別,障害,年齢,国籍にとらわることなく公平に対応します。

2.社会に対する責務

[個人の白由と人格](略 )

[情報公開とプライパシー保護](略)

[法令と契約の尊守](略)

[重大な影響の想定](略)

3.環境に対する責務

[環境への配慮](略)

[知識の普及](略)

[環境の教育](略)

4.専門家としての責務

[誠実と公正](略)

[研鑽努力](略)

[人道配慮](略)

[国際的努力](略)

(財団法人小林理学研究所理事長 山下充康)

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研究機器と研究手法を回顧して(Vol.32 No.3)
研究機器と研究手法を回顧して

研究機器と研究手法を回顧して

1.はじめに

 平成18年5月の総会において研究功績賞を頂きました。本会設立以来の会員として大変光栄に思っております。これも研究の指導・助言・援助をしてくれた先輩・同僚・部下・学生のお陰であり、心から感謝しております。

私が研究と名の付くことを初めたのは、大学の卒業研究であって、1960年4月のことです。課題は、原子炉の燃料棒から冷却水への熱伝達を模擬するものであって、その後の研究課題と随分異なっていますが、実は授業の中で熱に関するものが余り好きでなかったので、大学最後の思い出にと考えて敢えて選んだのです。しかし実験装置の設計・製作など結構面白かったと覚えています。使った計測機器は電流計と熱電対で、計算手段は計算尺でした。大学院での研究課題は、その後の研究とつながります。

2.振動の測定

 大学院では希望通り亘理厚先生の研究室に所属しました。本会発足時の日本制御工学会ニュースNo.1(1976年6月)が手許にありますが、それによれば、亘理先生は本会の理事であり、かつ日本機械学会会長として祝辞を寄せています。また幹事の幸田彰先生は私の教養学部時代のクラス担任で、講義では図学を習いました。それはさておき、私は工作機械にも関心があり、学部時代の講義で工作機械の自励振動の話を聞いて興味を持っていました。丁度研究室に旋削の自励振動を研究している方がいたので、私は研削の自励振動を研究したいと考え、先生の許可を得ました。

 研削の自励振動の研究では、回転する被削材の振幅数10ミクロンの微小な振動を非接触で検出する必要があるので、私が使ったのは、静電容量型変位計でした。これは回転する被削材の近くに絶縁した電極を置き、電極と被削材の間の静電容量の変化から周波数変調で振動を検出しようとするものでした。振動の記録には、電磁オシログラフを使いました。一巻き25メートルの感光紙に振動波形を記録するもので、実験が一区切りすると暗室で現像したものです。

3.高速フーリエ変換

 研削の自励振動では、振幅は変動するものの、周波数は格別の分析をする必要もなく、一定時間内のサイクル数をオシログラフの記録から読み取ることで済みました。

当時工作機械の自励振動の発生理論として再生作用理論がありましたが、私はこれに疑問を抱き、それを立証するため被削材の回転数変動を精密に測定することを試みました。そのためモジュール0.3(歯丈0.675mm)、歯数400枚の歯車2枚を用いて周波数変調によって回転数変動を検出する装置を作りました。測定してみると、回転数変動の時刻歴は複雑な波形を示しており、詳しい周波数分析が必要になりました。そこでトラッキングフィルタを用いました。変動波形をデータレコーダで記録し、ある時間分だけテープを切り取ってループを作り、それを繰り返し再生してトラッキングフィルタに通し、フィルターの中心周波数を変えて周波数成分を読み取りました。今ならば高速フーリエ変換機器でたちまち出来てしまうことですが、当時はトラッキングフィルタが中心周波数可変の狭帯域周波数分析機器でした。

私の周囲で耐震問題を扱っていた人達は、不規則な地震波がゼロ点を横切る時間間隔から卓越周期というものを読み取っていました。不規則波形をフーリエ解析すれば周波数成分が求まることは分かっていましたが、電子計算機は既に現れていたとはいえ、フーリエ解析は計算機の能力上現実的な方法ではなかったのです。1965年に発表された高速フーリエ変換計算方法は周波数分析する者にとって画期的な手法でした。発表当初は高速フーリエ変換の計算機プログラムを自作した人もいました。私は高速フーリエ変換機器を購入して利用した組です。

4.有限要素法

 有限要素法の登場は、機械構造物の固有振動数や固有振動モードの計算に関してこれまた画期的な出来事と言ってもよいでしょう。これを使って旋盤の固有振動数や固有振動モードを計算したこともあります。既に大規模な一般解析ソフトが市販されていましたが、高価でした。それに大学の研究としては特定の解析対象について自分でプログラムを作るので十分であるし、教育の点から言うとその方が学生のためにもなったと思います。後年振動インテンシティの研究をしましたが、材料力学を専門とする同僚の助言を得て、薄板の剪断応力を十分考慮した有限要素を使ってプログラムを作りました。

5.おわりに

 博士課程の頃に、研究所にOKITACというメモリが確か4キロワードの電子計算機がありました。マシーンコードという言語でプログラムを作り、紙テープで入力しました。初めて使ったとき、計算の速いのに感動しました。

加速度計の進歩にも助けられました。振動インテンシティの計測などは、超小型の圧電素子型の加速度ピックアップがなければ、計測は困難でしたでしょう。

 こうして自分の研究生活を振り返ってみると、振動音響関連機器の進歩と計算手法の進歩に預かるところが大きかったと思います。表題のような一文を記した次第です。しかし何が面白かったかというと、現象検出のために対象に応じて自分で装置を工夫したことでしょう。

(大野進一:東京大学名誉教授・都立科学技術大学元教授・神奈川工科大学元教授)

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音を聴き・聞き歩 -小学生のサウンド・ウオッチングを指導して-(Vol.32 No.4)
音を聴き・聞き歩 -小学生のサウンド・ウオッチングを指導して-

音を聴き・聞き歩 -小学生のサウンド・ウオッチングを指導して-

音を耳から脳へ in put することに対して日本語では標題の様に「聴く」と「聞く」の2通りある。英語ではさしずめ“listen”と“hear” となるであろう。前者は対象に対して耳を傾ける、すなわち能動的な態度であり、後者はむしろ聞こえてくるのを受け止める受動的態度と言える。さて、こんな前置きをしたのは以下に、当地福岡市で私が子ども達を引率して身の周りの音を聴いて、或いは聞いて歩くという学校行事を行った経験を書こうと思っているからである。

数年前に福岡市環境局環境審議委員会のメンバーであったとき、環境局の主催で市内における多くの校区の中から幾つかの小学校を選び、先生方や保護者にも手伝って頂いて自分たちの校区内にはどのような音があるか、どのような音が鳴っているかを聴いて歩くことを行った。いわゆる sound watching である。すなわち今流行のウオークラリーの sound 版である。このようなことを実行する目的は身の周りに日常的に鳴っている音に改めて耳を傾けてみることにより、「この音は大切にしたい音だな」とか、「こんな音は無くしたほうが良いね」という音の選択、或いは整理をすることによって「良い音環境とはどんなものかな」を子ども達に考えさせる、そして気持ちの良い音環境の実現を、自分たちの人生の内容としてつなげて行くように教育するのが目的である。

この sound watching の方法としては生徒たちを数人のグループに分け、先生や保護者1,2名の同道をお願いして約2時間の行程である。ときには生徒のお喋りを注意することもある。短い時間の行程であるが、それぞれの生徒にどんな音に興味を持つかの個性があって面白い。そして体育館に戻ってきて予め準備された全紙大の校区白地図にマジックで色とりどりに書き入れる。その作業になると生徒達は実に楽しそうである。各人が聴いて来た音の記憶をたどりながら、そしてその時の周囲の状況や景色を思い浮かべている様子が子ども達の表情から伺える。すなわち景色と音が完全に頭の中で結び付いているのであろう。彼らが校庭から出て歩いて来た道は家並みを通って国道を横切り、松林の中を歩いて砂浜に出ている。したがって彼等が感じた音は静かな住宅地、通行人の話し声、自動車の音、松林の風、いわゆる松籟、浜に出て砂を踏む音、波の音など様々である。白地図への書き入れが終わると、各班の代表を決めて、自分たちの描き入れた図を説明する。面白いのは生徒たちがグループを作るのを見た保護者たちがまたグループを作ったことである。そして、保護者たちによる絵も出来上がった。さすが発表は遠慮しておられたが、完全に童心に戻っているように見受けられた。これぞ音を味わう楽しさ、魅力というものかも知れない。

子ども達を連れたこの sound watching は中央区天神の校区の生徒たちに対しても行った。これは西区地帯の比較的閑静な雰囲気とは全く異なる異質の音環境である。そこで育った生徒達は全く異なる音感覚を持っている様だった。聞こえてくるのは車の音ばかり、人の声も全くかき消されて喧騒そのものの音世界であった。この校区の生徒たちが白地図上に音源を描いたのは、自動車ばかりの絵であったと記憶している。

しかし以上の話は、視覚健常者のことであって、視覚を失っている人の聴覚は全く別であるらしい。私がかつて指導していた合唱団にある日全盲の女性が入団した。勿論介護の人に手を引かれてであるが。団員の歌うのを1,2回じっと聴いていたと思ったら皆と同じ歌声で歌い出したのである。また、福岡でベートーベン第九を指導するのは度々であるが、全盲の方が入団して来られて、どうされるのかなと思っていたら完全に暗譜していて、しかも私の指揮の動作が全て勘で分かるらしく、他のメンバーと全く変わらぬテンポとリズムで楽しんでいたのには、むしろ感激を覚えたものである。話題が外れたみたいだが、感覚の優れた特徴を存分に生かして日常生活を送ることが如何に大切であるかを言いたい。視覚もさることながら聴覚を最大級に大切にしたい。そして折角我々は音に囲まれているのであるから、周囲の音を注意深く聴いて、また聞こえてくる音にそれとなく、或いはじっと耳を傾けて味わう。それらの音は時にうるさかったり、また心地よかったり、そして周囲の音に対して様々に価値判断を下しながら生活したいものである。

(九州芸術工科大学名誉教授 佐々木 實)

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空気調和ダクト系騒音の予測に向けて(Vol.32 No.5)
空気調和ダクト系騒音の予測に向けて

空気調和ダクト系騒音の予測に向けて

1.はじめに

平成17年5月,はからずも「建築設備の騒音制御に関する一連の研究」に対して平成16年度の研究功績賞受賞をいただき誠に光栄に存じます。ご指導・ご鞭撻・ご支援をいただいた日本騒音制御工学会の皆様に深く感謝申し上げます。私の研究は「建築の空気経路とその騒音制御の計画」を軸とする狭い領域に過ぎず、しかも,断片的に食い散らかしてきただけですから後ろめたいものを感じざるを得ません。しかし,折角の機会ですから,ここでは「空気調和ダクト系の空気伝搬音の予測」に限定して、どこでもがき苦しんでいるのか、積年の悩みを吐露させていただくことにします。

2.現状と音響パワー法の限界

上記予測に関しては,手計算がコンピュータで実行されるようになったことを除けば,私が大学院の学生であった1960年代に既に体系化されていたASHRAE(米国の空気調和・冷凍工学会)のガイドブックの内容から殆ど本質的進歩がない。その計算体系は主音源の送風機から順次ダクト要素ごとにオクターブバンド音響エネルギー授受を加減算していく、いわゆる音響パワー法である。しかし、空気調和ダクト網の場合、この音響パワー法は基本的に低・中音域への適用ができない。さて、どうしたらよいか。

以下には、送風機接続ダクト(ダクト断面寸法1m程度)からから吹出し口接続ダクト(ダクト断面寸法20cm程度)にかけて、分岐を通じて徐々に先細りになる一般的な空気調和ダクト網を想定して具体的に述べる。

3.高音域(音響パワー法)

音響パワー手法は、本来、統計的エネルギー解析法に相当してダクト網がモード密度の高い(以下、密モード)ダクトで構成されることが前提になる。その適用限界はダクト網の中の小断面ダクトによって決まる。各モードの個性が無視されるために必要なモード密度の目安として5モード以上を要求するとすれば,音響パワー法は、ダクト寸法20cmに対する2次モードcut on周波数、すなわち、約1.7kHz以上の高音域でしか成立しない。

4.低・中音域(波動法)

約1.7kHz以下の周波数領域ではモード数4以下の疎モード状態のダクトが含まれ、基本的に波動法に依らざるを得ない。直角曲りにおいて、低次モードの波(波面の進行方向がほぼ軸方向)はそのほとんどが反射して透過率は小さく、主としてより高次モードの波(波面進行方向が軸直交方向のクロスモード波)として伝搬していく。一方、クロスモード波が入射するときには反射は小さく、大きな透過率でより低次モードの波が伝搬していく。すなわち、透過率はダクト伝搬モードに強く依存する。音響パワー法ではそれを考慮できない。

5.ダクト要素の音響特性データ

そこで約1.7kHz以下の周波数領域では波動法ということになる。しかし、現実には波動法に対応可能なダクト要素音響特性(透過・反射率と発生音)データが存在しない。その測定・整備が必要であり、それこそが、ここで取り上げたい課題である。

5.1 全接続ダクトが疎モードの周波数域

分岐ダクトの場合、各モードの外向き波及び内向き波の複素振幅の総数は4(モード数)×2×3(接続ダクト数)=24、その係数行列の要素(反射率と透過率)数は122に達する。この同定には試験信号音により各モード内向き波の複素振幅の比率を12通り変化させ、それぞれについて総数12×2の各モード外向き波及び内向き波の複素振幅の分離検出が必要である。発生音を伴う音源要素の場合には、能動的特性を求めるためさらに試験音停止状態において各モード外向き波及び内向き波の複素振幅を測定する。

このような疎モード接続ダクト間の音響特性データが全ダクト要素について整うならば、断面寸法1mのダクトの2次モードcut on周波数、すなわち、約340Hz以下の周波数範囲では、ダクト網全体を通じて波動法が可能になる。

5.2 密モードの接続ダクトと疎モードの接続ダクトが混在する周波数域

残る約340Hzから約1.7kHzにわたる周波数範囲ではダクト網に密モード状態のダクトと疎モード状態のダクトが混在する。その領域については妥協的な手法を採用せざるを得ない。最も単純には、音響パワー法による音源側の密モードダクトから波動法による透過側の疎モードダクトへの一方通行のパワー透過率のみ考慮する手法が考えられる。このとき密モードから疎モードに移行するダクト要素では、その音源側のダクト網は音響パワー法、透過側のダクト網は波動法で処理することになる。

6.ダクト要素音響特性データの整備

以上をまとめれば、ダクト要素の音響特性を表わす音場量は周波数域により異なり、(a) 全接続ダクトで音響パワー、(b) 接続ダクトにより音響パワーとモード振幅の混在、(c) 全接続ダクトがモード振幅の3つタイプに分類される。タイプ(a)は既存データが豊富である。一方、 タイプ(b)と(c)、すなわち、波動法に対応し得る「ダクト要素音響特性」データは1次元波動(0次モードのみ)に対するデータを除けば殆ど無に等しい。その測定・整備について私自身には残された時間が少ない。若い会員の皆さんの取り組みに期待したい。

(神奈川大学工学部教授 寺尾道仁)

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32巻6号曽根先生原稿(Vol.32 No.6)
32巻6号曽根先生原稿

32巻6号曽根先生原稿

平成16年5月に、平成15年度日本騒音制御工学会研究功績賞を頂戴した。日本音響学会では、名誉会員は功績賞の候補になれないことになっており、名誉会員と功績賞受賞は補完的関係にある。何となくそのような感じを持っていたので、功績賞をいただいたことは予期せぬ喜びであった。

 騒音制御工学会の発足からすでに32年が経過し、当時を知る人も徐々に減ってきていることに一抹の寂しさを覚える。記憶に残っていることを記録しておくのも、年長会員の任務かも知れないので、設立当時を振り返り、また、最近感じていることを述べてみたい。

○騒音制御工学会の創立前後 1975年8月に、日本ではじめてインターノイズが開催された。1971年に米国INCEが設立され、1972年に第1回のインターノイズがWashington DCで開催された折、出席された故五十嵐寿一先生に、日本での開催が打診され、帰国後、先生は何人かの方々に相談されたようである。私の恩師で、当時上司であった故二村忠元先生がその話を持ち帰り、お前やる気があるかとおっしゃるので、やりましょうと答えたのが、インターノイズとの関わりの初めであった。それまでの経験と言えば、東京ICAの折、故菊池喜充先生が主宰された東北大学でのサテライトシンポジウムのお手伝いをしただけで、甚だ心許ない次第ではあったが、私が事務局長を務めることになった。

 インターノイズ75のために、1973年に準備委員会が設けられ、近づいてからは組織委員会に切り替えられた。これらの委員会において、わが国にもINCEをつくろうという話が持ち上がり、インターノイズ75の終了後に具体化したものである。日本騒音制御工学会という名称は、たまたまインターノイズ75の趣意書に「国際騒音制御工学会議」という和名を使ったことに由来する。学会発足に向けて準備委員会が作られ、私も準備委員として参加した。日本騒音制御工学会が発足した当時は、役員会の構成員は理事と幹事で、筆者ら若手は、幹事という名称で参加した。

○インターノイズ84のころ インターノイズ75の何年か後に、ハワイで日米の共催でインターノイズ84をやろうという話が米国INCEから持ちかけられ、これに対する日本側の準備委員会がつくられた。故二村先生、石井先生、前川先生、子安先生その他の方々が加わっておられたものと思う。日本からも General Co-chairman を出すことになるが、準備委員会の中では、小林理学研究所長の職にあった子安先生がその任に当たるという諒解であったように聴いている。ところが、1981年に、子安先生は突然、同研究所を辞められた。準備委員会では、無職の子安先生に Chairman をお願いするのは、余計な負担をお掛けすることになるのではないかという懸念から、私にその任が振られてきた。私にとっては晴天の霹靂であったが、故二村先生からのお話でもあり、引き受けざるを得なかった。

 インターノイズ84のプログラム委員会(米国側)のアブストラクトの審査は結構厳しく、日本からの応募のうち何件かは reject されてきた。ところが、reject 候補の論文の中には、日本側主要メンバーの発表も複数あり、これには閉口した。理由は、騒音との関係という点で論旨が明確でないということだったように思うが、再考を願って採択してもらったものもある。

○街頭騒音など 環境庁が設置されて以来、騒音問題に関する各種検討委員会に参画し、また、地方の環境行政のお手伝いにも長い間携わってきた。宮城県では、街頭商業放送の音量基準を昭和40年台に設け、街を静かにしようというこの政策は、ある程度の成果を収めた。最近、街を歩いてみると、従来からの商業宣伝放送のほかに、多くの商店からの個別宣伝放送でアーケードの下は喧騒を極め、何を言っているのかもよくわからない。また、拡声装置を使わずに、地声の大きいアルバイトを使って客の呼込みをしている店が少なからず見られ、英国の田舎の城下町を訪れたときにたまたま出会ったtown crier を髣髴とさせる。街頭の喧騒の中に居ると、騒音問題が、時代の流れでサウンドアメニティやサウンドスケープの問題にすり替えられ、本来の立場から目が離れてきたのではないかという懸念すら覚える。

環境関係の審議会や委員会に出席していると、行政の下請けをしているコンサルタントが作成したと思われる報告書では、「騒音に関する要請限度をクリアしている」とか、「要請限度を維持することを目標とする」などというとんでもない記述が、かなり多くの場で出てくる。要請限度は、それ以上の状態では住民の受忍限度を超えるので、緊急避難措置として、当該道路の自動車交通量の制限を要請できるというレベルであり、維持すべき望ましい基準とはおよそ性質の異なるものである。私が気付いた場合は、このような表現はすべて削除してもらうことにしている。

 騒音制御工学会としては、騒音は、第一義的には低減すべきものという本来の立場を忘れずに活動を続けていただきたいものと思う。

(東北大学名誉教授、秋田県立大学名誉教授 日本騒音制御工学会名誉会員  曽根敏夫)

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(Vol.31, 2007)

平成18年度大都市騒音振動主管担当者会議(Vol.31 No.2)
平成18年度大都市騒音振動主管担当者会議

平成18年度大都市騒音振動主管担当者会議

平成 18年度大都市騒音振動主管担当者会議

平成 18年度大都市騒音振動主管担当者会議が神戸市において10月19日 (木)に開催された。

出席者は環境省水・大気環境局白動車環境対策課から指導係長を筆頭に,従来の政令市に新たに堺市が加わり, 1省1都 15市, 28名の参加者であった。

議事は各市から提案された議題に対する討議と,環境省水・大気環境局白動車環境対策課津田係長から白動車騒音常時監視について講演をいただいた。

各市から提案された議題は以下の6区分であった。

(1)道路交通騒音振動関係

道路交通騒音・振動関係の討議内容は4件あり,白動車騒音の限度と道路交通振動の限度に基づく測定の実施状況,白動車騒音常時監視システムの運用状況等,及び白動車騒音における車線数の捉え方について討議を行った。この中で白動車騒音の常時監視に関しては,各市とも評価の精度向上やシステムの運用面に関して苦慮している様子が伺えた。

(2)鉄道騒音振動関係

鉄道騒音に関する討議は全て在来鉄道騒音・振動に関するものであり,沿線住民からの苦情を受けても,測定手法が確立されていないこと,基準が定められていないことにより,対応に苦慮している意見が多く出された。

(3)大規模小売届舗立地法

大規模小売屈舗立地法に基づく騒音に関する審査は,総合騒音及び夜間最大値の予測値が基準値を超過した場合の対応が各市により違いがあった。この討議で,同法における騒音審査に関しては,同法の運用や解釈に関して統一的な見解の確認の必要性を感じた。

(4)苦情対応・規制基準の適用方法関係

苦情対応では,近年増加している,同一建物内における敷地境界の位置,同一敷地内に二つの事業所が存在する場合の敷地境界線と規制の考え方であった。各市ともさまざまな対応をしているが,共通していることは,建物管理者や発生源者に白主的に解決を図るよう適切な助言を行っていることであった。このように,現行の法令では規制に馴染まないものに関しても,政令市においては積極的な対応をしていることが伺えた。

(5)届出関係

特定工場等に関する届出に関しては,各市とも事務の効率化と簡素化を図るために,表計算ソフ卜を活用していた。しかし,図面等に関しては,電子ファイル化が困難なため,電子ファイル化した届出も,処分することが出来ずに収納場所の確保に苦労しているとのことであった。

(6)拡声機・人声の規制関係

拡声機に関しては,野外コンサー卜が規制対象となるか,事業者に対しての指導方法について討議した。多くの市が,臨時的に行われる野外コンサー卜については,規制対象としていないが,苦情が発生した時には事業者に音量を下げる等の指導を行っていた。

人声については,事業活動に伴う人声については騒音規制法の趣旨から,規制対象との見解が多かったが,実際は事業者に対して注意を促している程度の指導が殆どであった。学校や保育園の生徒や園児及び赤ん坊の泣き声に関する苦情に関しては,規制に馴染まない見解が多かった。

最後に,環境省水・大気環境局白動車環境対策課指導係長から,白動車騒音常時監視の処理基準の改正について解説があった。

改正のポイン卜は,規制対象の明確化,測定作業頻度の規定,騒音把握手法の拡張とのことであった。今後は,現行の実測に基づく推計評価から,推計手法の確立を図るとのことであった。平成 +2年度の会議は,白熱した討議が繰り広げられるなか閉会となった。

(千葉市松島貢)

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ホノルルの騒音事情(Vol.31 No.3)

ホノルルの騒音事情

じめじめと鬱陶しい梅雨が近づき, ワイキキの爽やかな青空を再び味わいたいと思っている方々も大勢いらっしゃると思います。広報委員会のご担当からは”インターノイズの裏話”の執筆を依頼されましたが, 現在は閉鎖した日本語版実行委員会ウェブサイトに掲載した記事の一部に手を加え改めて書かせていただくことにしました。

  • 航空機騒音:ホノルル空港の滑走路は, 半ば海に突き出しているので, 民間大型機の騒音は, ワイキキ周辺にいる限り気になりません。軍用機もワイキキ周辺では見たことがありません (空港の西側に基地があるらしい)。小型機がときどき “ぶ~ん” といいながら飛んでいますが, 気になるほどではありません。落ちないかどうか心配するだけです。
    たまに, 頭上をヘリコプターが飛ぶことがありますが, 犯罪の捜査か救急の患者搬送 (くらげが発生する時期には大活躍です) が多いようで, 騒音を気にするどころではありません。
  • 鉄道騒音:最近, 観光用にサトウキビ列車が復活したという噂を聞きましたが, オアフ島は, 鉄道騒音とは無縁です。
  • 自動車騒音:交通騒音の中で問題になりそうなのが, 自動車騒音ということになります。最近は, 幹線道路沿いにも高層住宅が建てられるようになりましたが, 基本的に幹線道路沿いに住んでいる人は殆どいません。道路沿いだったとしても, 庭がすごく広かったりするので気にならないのでしょう。高速道路を走っていても, 防音塀を見たことがありません。らしきものはあっても, 貧弱極まりなしです。
    日本ではあまり見かけない大型のトレーラーなどが沢山走っています。音響パワーレベルはかなり高いだろうと感じています。改造マフラー車もちらほら見かけるようになりました。
  • これも自動車騒音?:ワイキキでは, エンジンやタイヤ/路面以外から大きな音を出している車が走っています。風さえ通れば暑くないので, クーラーを使わず窓を開けて走る車が結構いるのですが, その窓から聞こえて来る大音量の音楽です。
    ワイキキ近くで, 西城秀樹の歌に合わせて “ロ~ラ~~” と叫びながら走っている車がいたら, 多分, 運転しているのは家内です。
    運転手さんと乗客が “幸せなら手をたたこう” を大きな声で歌いながら走るトロリーバスを見たこともあります。水陸両用車 (戦時中, 上陸用舟艇として使われていたとか) で市内と海をめぐるダックツアーでは, アヒルの鳴き声のクラクションを大音量で鳴らしながら観光客に手を振って走っています。
  • バンプ (段差):目的は騒音の低減ではなく, 安全の確保だと思いますが, ホテルやゴルフ場の敷地内, ショッピングモールの駐車場など, いたるところにバンプが作られています。当然, 速く走れませんので, 騒音レベルも下がっているようです。住居地域内の道も, バンプはありませんが, それほどスピードを出せないように設計されているようです。
    ある方から, 土木の世界ではハンプ (hump) と呼ぶというご指摘をいただきましたが, 現地踏査により, 米語 (少なくともハワイ) では, humpではなくbumpと呼んでいることを確認いたしました。
  • ゴミ収集車:住居地域での最大の騒音源です。あきれるほどの大音量を出して, ゴミを回収していきます。音楽もアナウンスも流しませんが, ごみ箱からゴミを落とすときの音の凄まじさは尋常ではありません。文句をいう人がいないのが不思議なくらいです。公共の目的のためであれば, 許容するという意識なのでしょうか。普段の住居地域は, 周りが静かなだけに, 人の声が案外気になります。窓を開けている家が多いので, 夫婦喧嘩などは筒抜けです。
  • 排気ガス:騒音の話題ではありませんが, バスを筆頭に, 大型車は, 屋根より高い位置で排気しています。拡散に役立つのかどうか存じませんが, 少なくとも, 後続の車には優しい配慮です。

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事務所移転裏話(Vol.31 No.4)
事務所移転裏話

事務所移転裏話

事務所移転裏話

2007年 7月12日,我が日本騒音制御工学会の事務局は,長年住み慣れた武蔵野の地を離れ,千代田区麹町に移転いたしました。学会誕生以来,小林理学研究所内に事務局を置き,小林理研ならびにリオン株式会社の皆様から有形無形の様々かつ多大な援助をいただいてまいりました。これまで事務局の運営が滞りなくなされてきたのも,沢山の方々のあたたかいご支援,ご助力によるものとあらためて感謝する次第です。しかし,国分寺という場所柄,多くの会員が気軽に事務所を訪れることが出来にくいことなどから,事務所を都心に移転する案は以前から出されており,このための基金が積み立てられてきておりました。今春,都心での会議に頻繁に利用してきた低額料金の貸会議室が閉鎖となり,これを別の貸会議室で行うとこの先かなり出費が増えることがわかりました。積み立ててきた基金も事務所開設に不足のない金額となっておりましたので,これを機に都心への移転を真剣に検討しようということになったわけです。

と,ここまで硬い感じで書いてきましたが,ここからは裏話らしく,私が今年初めに事務所移転に関する特命理事を仰せつかり,その後物件探しを始めたあたりからの顛末をまとめてみたいと思います。

「都心への事務所移転!」と言ったところで,何から始めたらいいの?というのが正直な気持ちでした。賃貸事務所の相場調査,引越し費用の概算,必要になる什器備品のリストアップ,そして何よりも物件探し!おおよそこのあたりが私に課せられた役割かなあと思い,まずはあても無くネット検索を始めたのが今年の2月だったと記憶しています。それから信頼の置ける不動産やさんはいないかなあとしばらく考えたところ,ふと思いついたのが年に­3回くらい某研究会 (実態は懇親会)でお会いするKさんでした。業界が微妙に違うかなあと思いつつ連絡してみたところ,あっという間に私が挙げた条件の物件リストが送られてきました。なるほどこういうことはスピードが大事なのだと思い知り,早速 30件ほどの物件リストから良さそうなものを3箇所選び, 3月9日に内覧させてもらいました。四谷,麹町,本郷と歩きましたが, 2件目に訪れた「麹町グリーンビル」は,同行した前述のKさんも「広いね!いいね!ほんとにここ,値段合ってる?」と驚いて担当者に聞き直すほどの好物件で,私も直感的に「ここがいいな!」と思ったのでした。決して新しいビルではありませんが,通りに面した広いガラ

スが明るい雰囲気を生み,ワンフロア全部を借りられる上,廊下に出られるドアが-つあるため,レイアウトを工夫すれば事務局と会議室に別々に出入りできるのです。給湯室やお手洗いが共有スペースとなっていて,賃貸面積に含まれないこともお得な感じでした。それにこれならトイレ掃除を事務局スタッフがやることもないし,会議室を事務所に併設しても大丈夫と思いました。駅が近いことも気に入りました。最寄り駅は地下鉄ですが, JR四谷駅からも歩ける距離です。そしてビルの名前も何となく環境にやさしそうで,いいなと思いました。

さて,とんとん拍子に良い物件を見つけてしまったのですが,実際に契約ができるのは5月の総会後。 2ヶ月もの間,ビルのオーナーさんが待っていてくれるかしら,というのがとても心配でした。でも,同じビルの最上階に住んでいるオーナーさんを訪ねて諸々の事情を説明したところ,あっさり了解してくださり,理事会の決定と総会での承認を待っていてくれることになりました。

その後オーナーさんが,床壁天井のリフレッシュ工事をしてくださったので, /月に確認に行った時のこと。「天井も白く塗り直しておきました!」とニコニコしておっしゃるので何も言えませんでしたが,岩綿吸音板の天井が塗料で塗られ,すっかり吸音性能を失っていました。事務所 &会議室として使うのに支障はありませんが,音の響きの感じが確かに変わるものだなあと実感し,騒音制御についてもっともっと一般の方々にもPRしていかなければならないことを痛感した次第です。皆様も新事務所を訪れた際は,この天井を失敗例としてご確認ください。

さて,こうして無事移転した新事務所ですが,事務所ヱリアと大会議室,小会議室を備え,理事会や各種部会・委員会,分科会などに使うことができます。また徐々にではありますが,当学会や騒音制御に関する書籍や資料を会員の皆様に白由に閲覧いただくスペースも充実させていく予定です。そして小規模なセミナーや一般の方々を対象とする相談窓口の設置など,社会貢献の拠点として積極的に活用していきたいと思います。

社交辞令ではなく,ぜひ皆様お近くにお越しの際はお立ち寄りくださいませ。なおビルの名前は「グリーンビル」ですが,外壁はオレンジ色ですので,どうぞお間違えなきよう。

(将来計画等担当特命理事 :船場ひさお)

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「よくわかる低周波音」パンフレットについて 全国環境研協議会で「騒音の目安」づくり(Vol.31 No.6)
「よくわかる低周波音」パンフレットについて 全国環境研協議会で「騒音の目安」づくり

「よくわかる低周波音」パンフレットについて 全国環境研協議会で「騒音の目安」づくり

♦「よくわかる低周波音」パンフレッ卜について

近年,低周波音による苦情件数は毎年100件を超えるようになりました。これは低周周音の認知度が高まったことや生活の質の向上に伴い、よりよい生活環境が求められるようになったこと等に起因していると考えられます。一方、低周波音の発生メカニズムや影響評価などは,理解の難しいこともあり,日常生活における建具のがたつきや何らかの不快感を持った方が,「低周音=不気な音」として不安を抱いてしまうとともに、そうした先入期間の問題解決のげになることもあります。

こうした背景から、一般の方を中心に、低周音波について低周波音に関する基本的な事項を理解して頂くことを目的とし、環境省では,平成18年度、低周波音の普及啓発に関する検討業務において、「よくわかる低周波音」パンフレッ卜を作しました。

パンフレッ卜の目次は次のとおりです。

1.低周波音とは

2.低周波音の発生源と苦情

3.低周波音かと思ったら

4.低周波音の苦情にはどんなものがあるの

5.低周波音を防止するには

完成したパンフレットについては、これまでに全国の都道府県、市町村にお配りし、環境省ホームページにも掲載していますので、地方公共団体をはじめ,事業者の方に是非ご活用いただきたいと考えております。パンフレッ卜が必要な場合は,下記連絡先までご連絡下さい。

 低波周音は,騒音などよりも馴染みが薄いことから、その影響や対処方法はあまり知られていません。本パンフレッ卜が,低周音の波理解を深め,問題解決の一となることを願います。

<連絡先> 環境大気環境局気活環境室生省水・ 大OTO@env.go.jp。

♦全国環境研協議会で「騒音の目安」づくり

 全国の公設環境研究機関の組織である全国環境研全協議会に,本年度から「騒音小委員会」が初めて設置され活動を開始しました。この小委員会においては,地域住民にわかりやすく騒音の情報を提供することを目的として「騒音の目安」の全国版を作成することになりました。この種の資料は、大都部市の騒音測定結果に基づき作成された例はありますが、全国的に作成されたことはありません。そこで、全国環境研協議会の会員機関に協力を求めて、各地域で種々の騒音源について測定を行い、これらを取りまとめて「騒目の目安」を作成いたします。

 騒音に係る苦情は、環境省が取りまとめた統計においても,年々情数が増加しており、騒音問題が以前の都市化した地域から、全国的な広がりを持った環境の課題になったことを示しております。この騒音問題を意無味な摩擦をさけて合理的に解決するためには, 騒音について適切な地域住民に提供することが肝心であります。

 測定機器を持たない一の住には般民には、通常の生活で遭騒する騒音のレベルについて、適切分かりやすい情報を提供することが、問題となっている騒音についての認識において重要と考えられます。特に、分かりやすい図表による「騒目の目安」などの 資料は、これらにおいて有効と考えられております。そこで,全国的に共同調査を実施することが考えられますが、このような調査は一斉に実施する必要があり、全国の環境研究機関を網羅する全環研協議会で実施するのが一番適切な調査と考えられ「騒音小委員会」が設けられました。

 この騒音小委員会については、参加を公募した結果、平成19 年9 月現在、24 機関32名もの参加を得ており、全国で一斉に騒音測定が開始されております。騒測定音は,LAeq を中心に所定の様式で実施されており、統一した「測定マニュアル」が参加機関に配布され、これに基づいて測定されております。なお、この事業は、 2箇年の調査が予定されており、平成,21年には、それらの成果を取りまとめて公表する予定であります。

((財) 京環境都整備公社京環境科学研究所 末岡伸一)

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(Vol.30, 2006)

平成17年度 全国環境研協議会騒音振動担当者会議について(Vol.30 No.1)

平成17年度 全国環境研協議会騒音振動担当者会議について

本会議は全国自治体の環境・公害研究機関で組織する全国環境研協議会が開催する年1回の会議であり,平成17年度は横浜市環境科学研究所が開催担当の事務局となり,横浜市技能文化会館で開催された(参加者40名)。初回の平成12年度から今回が6回目と,比較的新しい会議であり,全国の5支部の中だけの会議に別途加えられた。大気や水関係の自治体研究者には全国的集いがあったが騒音・振動関係者には無く,全国的な研究発表や意見交換の場として設けられたものであり,近年では環境省との情報交換の場としても機能している。

開催は,毎年,本工学会の秋季研究発表会前日に当発表会場の一画での実施を原則としており,当発表会への参加を促してもいる。

一般講演(会議次第参照)では珍しく振動関係が2件もあり,同講演(1)では,LVmaxが24時間ほぼ一定(平均値69dB)故に苦情対応はこの値を用い,また仮に閾値を50dBとしてそれ以上のデータを用いて評価値を求める提案をしている。同(2)では,苦情に伴う振動測定が道路を除けば多くの場合に実施されず,敷地または官民境界で実施されても殆どが基準に適合である矛盾は,水平に揺れやすい木造家屋の家屋増幅を把握しない限り解決しない。また,現行は無駄なデータの蓄積に等しいとし,鉛直方向の家屋増幅量を5dBとした根拠に疑問を呈している。同(3)では,各種評価をLAeqで実施するのは合算の便利さや国際的動向からも当然としつつ,規制では,特定建設作業単位では規制が困難であり「特定建設作業場」を導入すべきとし,問題点としてLA5の非現実性,各種音源ごとに評価時間が異なる点,夜間運用の禁止(例:新幹線)などを挙げている。また都市の様々な場所の騒音レベルをLAeqで例示するために,鋭意データを収集中であると報告し,併せて中間報告的データを示した。

特別講演で藤本氏は,Inter-noise2005への投稿論文を中心に,日本の騒音行政とその進展を紹介し,最近では,環境騒音に因るアノイアンスと睡眠妨害に重点を置いた統一的社会調査手法の作成を本工学会に委託し(平成12年),本工学会が道路交通騒音や在来線騒音が主な地域で社会調査を行い平成16年に最終的な案を提出したこと,その案をもって引続き空港または新幹線に面した地域で住民反応を調査していること,また,成田国際空港に暫定滑走路が完成後,飛行機の機数増にも拘わらず多くの常時監視局のWECPNL が小さくなった件につき,新たな測定法を検討中である旨を報告した。

同垣下氏は,平成17年6月に騒音規制法の自動車騒音監視の処理基準を改定し,監視対象を2車線(市町村道は4車線)以上の道路と明確化,測定作業頻度を毎年~5年(最大10年)のローテーションとし,5~10年で監視対象区間の全域をカバーする試算を示し,測定の代替に推計手法を活用することを報告した。また同年8月公開の自動車騒音の面的評価支援システム,及び評価マニュアルの改定などを踏まえた監視結果を通して,環境基準達成目標年が最も遅い幹線交通を担う道路(平成21年以降)の基準達成に向け活かすとした。

会議次第

・主催者挨拶横浜市環境科学研究所長  小柳 高好

一般講演

・道路交通振動評価量L10.及びLeqに対する大型車交通量の影響-国道16号における24時間測定結果   千葉県環境研究センター  樋口 茂生

・ 振動規制法施行状況調査からみた振動苦情横浜市環境科学研究所   鹿島 教昭

・ 等価騒音レベルによる評価の統一と課題東京都環境科学研究所   末岡 伸一

特別講演

・ 騒音行政の新しい方向環境省大気生活環境室   藤本 正典

・ 自動車騒音常時監視を実施する体制の基盤強化について環境省自動車環境対策課  垣下 禎裕

その他

次期主催者挨拶

愛知県環境調査センター  田中  進

(横浜市環境科学研究所 鹿島教昭)

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続編・「騒音制御29巻6号」匿名座談会の編集後記(Vol.30 No.2)

続編・「騒音制御29巻6号」匿名座談会の編集後記

「騒音制御」の編集委員としての主要な仕事の一つとして,特集の企画・編集があります。編集委員は総勢13名で,2名で1組になり各号の特集を担当しています。騒音制御29巻6号(2005.12)の特集を長倉委員(鉄道総研)と担当させて頂きました。この特集は,名前こそ違い前号の続編にあたります。基礎知識だけでなく,測定に本当に役立つ知識を前面に押し出す企画として,座談会を行う案が浮上しました。座談会の成否は出席者で決まると思いますが,その人選につきましては,毎月開かれる編集委員会で討議し決定しました。今回の座談会は匿名でありますので,出席者の選定の経緯は,ここでは触れることが出来ませんが,現場での騒音・振動測定に精通した15名の方にお集まりいただきました。座談会のスタートは,皆さん何を話せばよいのか戸惑っていました。しかし,司会者が動機付けをしたとたんに,堰を切ったように出て来た話題は我々が事前に想定していた,“現場測定においての実務者の立場として言っておきたいノウハウ・トラブル解消法”ではなく,つね日ごろ思っている“計測器に対する疑問・要望・不満”でした。この際,解明・発散しておこうという発言が相次ぎました。騒音測定に熟達した方々からの計測器を使う上での要望や不満は的を射ており,計測器メーカの方にとっては痛いところを突かれていると思いました。これらの生のやり取りを文字にしてしまっていいのだろうかという危惧の念を抱きながら聞き入っていました。この座談会には,計測器メーカの方が3名出席していましたが,質問の集中砲火をあびた計測器メーカの方から,普段は到底聞けない真のユーザからの意見を聞けたと逆に感謝され安堵しました。当初予定していた2時間半を過ぎても終わらず,4時間以上の長丁場になりましたが,中だるみもなく出席者にとっては非常に有意義な座談会であったと思います。

座談会での発言を文字にするテープ起こしが一苦労でした。出席者の皆さんは,一人一人の発言が文字になる座談会であることを承知しているにも関わらず,人の発言中に他の人がかぶって発言をしてきます。発言者が話したい内容と,似て非なる発言をかぶせてくるのでつながりのある文章にならないのです。とかく,日本人は人の話を全部聞かないとか,話の途中ですべてを理解したつもりでいる,話をさえぎるとか,いろいろなことを言われていますが,まさにそれでした。4時間分の発言内容を,雑談を含めて全て掲載しますと60頁を必要とします。会誌には,9頁にまとめましたので,かなりの部分はカットしたことになります。また,グレーな情報は採用しないことをまとめるにあたって念頭におきました。そのため,座談会の雰囲気が伝わりにくくなってしまったことも否めません。

この座談会で私が知り得た貴重な情報としては,騒音計で騒音レベルを測定する際の周波数範囲です。私は,仕様に記載のある測定周波数範囲内で騒音レベルを表示していると思っていました。ところが,最近のマイクロホンは性能が良くなり,基本的には仕様に記されている測定周波数範囲より広い周波数帯域が測定できますので広がった分も含めた騒音レベルが表示されます,とのことでした。従って,A特性補正曲線をそのまま低域あるいは高域まで延ばして補正を行い騒音レベルとしているそうです。常識的に考えれば,性能は良いに超したことはないのですが,仕様に記されていない測定範囲外の扱いについても明確に記載して頂くことを是非ともお願いしたいものです。この座談会で驚いたもう一つのことは,ピストンホンの取り扱い方についての件です。詳細に関しましては,「騒音制御29巻6号,匿名座談会-現場測定で役立つ知識・知恵-」を深くなお且つ行間を読んで頂ければと思います。

今回の座談会は,日ごろの委員会・研究発表会とは異なり,積極的に出席者が発言しなくては成立しないことが心地よい緊張感となり,手持ちの情報を通り一遍に披露するだけでなく,情報を収集する場として積極的に活用しようとする姿勢を明確に感じました。情報が欲しい側(計測器使用者側),情報を提供する側(計測器メーカ)がお互いに充実した時間を共有出来たことに対しては,この企画は成功したものと自負しています。ただ,特集号として内容的に読み応えのあるものになったかについては不安が残ります。テープ起こしの担当が言うのも変ですが,座談会は読むより参加する方が何百倍か役に立つことが分かりました。次回の座談会はいつになるか判りませんが,事前に出席したい旨,お近くの編集委員に予約をしておいた方が良いと考えます。

(財団法人 小林理学研究所 木村和則)

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音の化石を残したい(Vol.30 No.3)

音の化石を残したい

最近時々考えることは音の有意性というか、必然性というか、なぜその音はその特性を持っていないといけないか、それらのお互いのバランスがどう成り立っているのか、ということです。騒音、建築音響関連の仕事を始めてしばらくは、その固有の音源や遮音部材の単独のものとして考えていた。しかし耳のほうが、ある必然性のもとに作り上げられてきたと考えると、音源の特異性は聞かせる側の意思、作為の結果だと思われる。聴覚も聞かせる側、聞く側の生態系全体として取り込まれた感覚だということが、やっと分かってきたような気がする。一般的に考えると自然界や少し前の時代には大きな音を出すこと自体が難しかったのではないか。伝達手段として音を作るのに苦労や試行錯誤を繰り返していた時代と、音を小さくするために苦労している時代。確かに熱や動力の現在の使用量に比べて音のエネルギーは微々たるものであるが、雷以上の音圧に酔いしれている爆音愛好家(マフラー改造車や強力ロック演奏など)たちの心は自己顕示欲と、その麻酔効果なのか、もしくは難聴なのか。

“聞く耳持たぬ”の効果は何dBと考えてみると、泥酔しているときに、雷が近くでなっても起きないことがあることを考えると、100dB位までは平気かもしれない。一方“聞く耳持つ”方は、私の経験から言うと15dB位まではクレームの対象となり得ると考えられる。当然坊主が憎ければ袈裟まで憎い気持ちは理解できるが、音に敏感な人でそれ以上に研究熱心な方もいて、日々周辺の生活状況調査と原因究明をされる。筆者などが不思議音などの探査をするため意識的に壁に耳をつけるのと同じように壁に耳を当てて聴いてみる。そうすればかすかな固体音も聞こえるので、いろいろメモを取りデータを分析し、音による他人の生活パターンまで把握する、こういう人は研究者と言える。

音が無いのも不安なものである。世の中から取り残されたような感じがする。無響室を説明するときに時々思うが、10dB位の中にどれぐらい居られるのだろうか。たとえば、音も無く、光もなく、匂いもほとんどなく、壁にも触れさせてもらえない5重苦は想像を絶するが、即身仏になるお坊さんは死ぬまでは耐えられる。一般人はまず死ぬ前に這い出してくると考えられるが、自分自身だと5分ぐらいが限界かもしれない。もしくは暴れまわって早く死ぬ。寝ていると思えば6時間ぐらいは持つかもしれないが、凡人には心頭滅却しても火は熱そうで、やはり人は必要だから音を聞いているのだ。

音に関わって数十年経つが、勉強不足なのか、物理的側面はやや理解できたものの、他の側面、特に心理面、生理面については、分かったようで分からない。こうした彷徨える音技術者を助けてくれるのが騒音制御工学会の目的と勝手に解釈して、この学会について考える。騒音の研究者、実務者ならびに基準などを作る人、それを運営する人達が集まって、討論し衆知を集めるのが騒音制御工学会の役目の一つと思われる。工学会なので学術的なことが多くなるのは当たり前だが、網羅的に考えると若干メンバーのバランスを欠く部分もある。たとえば居住者、被害者、つまり一般的に言うと裁判の原告になる人達で専門性を十分判定できない、もしくは聞きたくないのか、お互いにホームページでやり取りし、盛り上がったりしている。本人たちの意見はあまり否定されないので、お互いの傷を舐め合いながらの憂さ晴らしの場となることが多い。物理的な言い訳は感情論には却って邪魔になるのかもしれない(それでも音は聞こえている・・・調)が、これだけで問題が解決されているのであれば一つの選択枝かもしれない。でも、そういう人達に 公平中立にアドバイスしてあげられる人は必要な気がする。ボランティアが成り立つかどうか、今まで検討されたこともあるが、責任と費用のことなど結構問題は多い。

騒音制御工学会の分野別で不足していると感じられる人材は、司法の人、機械や建材の生産者、一般人となるが、これらは外部に幅広く公開シンポジウムなど開かないと、御馴染みさんが増えないと思われる。

周りの何かの音を騒音と感じる人がいる限り、騒音制御工学会の存在価値は失われないであろうが、学会も30歳になることだし、音は、その場限りのものであるのでなおさら、今まで生きてきた証として、何か残したい気もする。未来の人が発掘した化石からいろんな音がでてくるような、そんな仕掛けはないだろうか。夢はサウンドライブラリー地球版なのだけれど・・・。

(財団法人ベターリビング筑波建築試験センター 安岡博人)

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創立30周年記念式典開催(Vol.30 No.6)

創立30周年記念式典開催

平成18年9月20日に秋季研究発表会の開催されている愛知工業大学エクステンションセンターにおいて、社団法人日本騒音制御工学会の創立30周年記念式典が開催されました。この式典には、来賓の方や多数の会員の皆様のご出席をいただき盛大に挙行することができ、感謝しております。詳細については別途ご報告いたします。なお、当日は多くの皆様から祝電をたまわり、ここにお名前を記して学会からの御礼とさせていただきます。

(30周年記念事業WG主査 安藤 啓)

  • 株式会社アイ・エヌ・シー・エンジニアリング
  • 愛知県環境調査センター
  • 株式会社秋田県分析化学センター
  • 株式会社大西熱学
  • 株式会社大林組
  • 株式会社小野測定器
  • 鹿島建設技術研究所
  • 環境アセスメント学会
  • 環境計測株式会社
  • 株式会社環境技術研究所
  • 技報堂出版株式会社
  • 財団法人空港環境整備協会
  • クラリオン株式会社
  • 株式会社神戸製鋼所
  • 財団法人小林理学研究所
  • 佐々木實(名誉会員)
  • 清水建設株式会社
  • 消音技研株式会社
  • 住友金属建材株式会社
  • 全国環境研協議会
  • 社団法人大気環境学会
  • 大建工業株式会社
  • 大成建設株式会社
  • 大同コンクリート工業株式会社
  • 大丸通商株式会社
  • 東海旅客鉄道株式会社
  • 東北大学電気通信研究所
  • 東洋建設株式会社総合技術研究所
  • ナイガイ株式会社
  • 株式会社永田音響設計
  • 中日本高速道路株式会社
  • 長野県環境保全研究所
  • 財団法人成田国際空港振興協会
  • 財団法人新潟県環境分析センター
  • 社団法人におい・かおり環境協会
  • 日本アイテック株式会社
  • 社団法人日本音響学会
  • 日本ガイシ株式会社
  • 社団法人日本環境アセスメント協会
  • 日本ゲッツナー株式会社
  • 社団法人日本建築学会
  • 財団法人日本自動車研究所
  • 日本ドナルドソン株式会社
  • 日本ノイズコントロール株式会社
  • 財団法人日本品質保証機構
  • 株式会社ニューズ環境設計
  • ネミー株式会社
  • 東日本旅客鉄道株式会社
  • 富士エンジニアリング株式会社
  • 株式会社フジタ技術センター
  • ブリュエル・ケアー・ジャパン
  • ヤマハ株式会社
  • 株式会社四元音響設計事務所
  • リオン株式会社

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(Vol.29, 2005)

手放せない会誌を目指して(Vol.29 No.1)

手放せない会誌を目指して

このコラムでは、昨年までの2年間(27巻・28巻)に、若手会員の方とベテラン会員の方から騒音制御工学会に対するご要望やご意見などを投稿いただき、紹介してきました。その中で、会誌に対するご意見も幾つかありました。それらに対する回答を兼ねて、会誌編集の現状や今後の方針などに関して、編集理事の立場から筆(?)を執ろうと思います。

会誌「騒音制御」の編集委員を2期(4年)連続して務めた後、前期から編集委員長を任せられて3年が過ぎます。15年ほど以前にも編集委員を1期務めましたので、もう既に、私は9年間も編集作業に関与したことになります。しかし、この作業に飽きたり、マンネリ化していると感じることがありません。これは、「静かな社会を実現したい」との趣旨から騒音制御工学会に入会されている会員の殆どの人が、「工学会が不要になるほど十分に静かな社会を実現できた」と感じられないことと、共通するものであろうと思います。会員の皆様にお伝えしたい騒音制御工学に関する情報が、まだ溢れるほどに存在していると考えます。この溢れるほどの情報の中から、如何にして読者に関心を持っていただき、判りやすくお伝えできるものを抽出するのかが、編集委員会の任務であると認識しています。私よりも長期に亘り連続して編集委員を務めている1名の委員は、「仕事に直ぐ役立つような特集の企画が最適である」と口癖にしておりますし、私もそのように考えています。

編集委員会には委員長の他に12名の委員が居り、2名が一組になって6組で次のような分野を分担して、特集記事の企画をしております。[騒音発生源],[騒音振動伝搬系],[音環境や感性評価],[規格と計測技術],[社会政策],[交通騒音]。もちろん、この分担に固執するものではなく、ある種の騒音に関する、発生源・伝搬経路・受音環境・計測評価方法という一環の中で騒音低減技術や関連情報を特集にする場合も有ります。過去に無かった特集、過去に発行されていても内容が大部分更新される特集等を、委員会の討議を経て選定して企画の詳細を詰めています。その場での編集の方針は、「手放せない会誌を目指して」です。学術研究をするために手放せないというよりは、騒音制御に関連する実務を進める時に、直ぐに役立つ解説や技術事例の報告および資料集等が詰った会誌が、手放せない一冊になると理解しています。編集委員の殆どが騒音制御を実務としていますので、自分が利用したくなるような内容の特集案が提案されますと、「良い企画である」、「関心を惹く特集である」等で委員会の討議が盛り上がることが多々有ります。しかし、企画した内容を執筆できる人がいるのか、という執筆候補者探しの段階で行き詰ってしまい、時期尚早として残念ながら見送る場合も時々有ります。これは、工学会の会員のニーズと同じ視点から特集を企画したいが、難解すぎる、あるいは冗長すぎる内容では会員のためにならないと判断するからです。

さて、幸いにして会誌の発行予算には最近余裕が有りますので、会員からマンネリ化した会誌であると思われないような魅力ある編集をすることを目的に、今後の会誌編集における抱負を紹介いたします。

現状の隔月発行は維持しますが、ページ数を現状の平均よりも約15%増加させ、そこへ会員からのご要望に基づく連載的な解説記事や技術資料を掲載しようと思います。例えば「技術自慢」のようなシリーズ企画を設け、世界に誇れるような国内の騒音制御技術を紹介したり、「国際会議短信」のようなジャンルを設け、会員がINTER-NOISEで発表した講演論文の概略を半ページ程度で紹介して頂こうと思います。また、図表をカラー刷りで判りやすく表現するツールも普及してきていますので、特集記事の中にはカラー刷りでないと理解できない図表も散見するようになりました。そこでこれらの図表を集めたカラー刷りの口絵ページを定常的に4ページ以内で設けることも予定しております。モノクロ印刷でも十分に理解できる図表を敢えてカラー刷りにすることは有りませんが、会誌も将来的には電子出版へと移行する流れは確実ですので、そうなればモノクロとカラーを区別することも不要です。ですからカラー図表の受け入れも必要に応じて進めようと思います。

会員から「手放せない会誌」と認められるようになることを目指して、今後も特集を中心にする編集を継続いたします。企画の対象には、「ニーズに応える特集」や「時節に適した特集」の観点から編集委員一同が、騒音制御工学に関する幅広い分野にアンテナを拡げて情報の収集に努力していきますが、会員の皆様からも企画して欲しい特集内容などをご提案いただけると嬉しいです。また、28巻6号の特集のように国際的な動向の紹介をすることも、ニーズに応える企画の一つとして、不定期ではあっても企画していきたいです。

なお、解説記事の特集が主体であっても、会員からの投稿論文の掲載も益々促進しようと考えます。特に有効性に関する査読に重みを付けることで、仕事に役立つ論文が載っている会誌として、独自性を示せるものと考えます。

(荏原総合研究所 丸田芳幸)

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広報・行政に関すること(Vol.29 No.2)

広報・行政に関すること

この原稿では、2003~2004年の学会誌の会員コラムに掲載させていただいたご意見、ご感想に対し担当者としての考えを述べさせていただくことにいたします。

会員コラムは、騒音制御誌の1ページを使わせて頂いておりますが、編集委員会とは別に、広報委員会がQ&Aと合わせ情報コーナーとして企画制作しています。広報委員会では、学会の広報に関すること、ホームページの運営に関すること、会員拡大に関することなどを内容とした事業を実施しています。

さて平成16年11月19日に「公益法人制度改革に関する有識者会議」から民間非営利部門による公益的な法人活動の発展を促進するための新たな仕組みについて、政府(行政改革担当大臣)に対し報告書が提出されました。

この報告書では、(1)現在の主務官庁が認可するという判断主体のあり方、(2)認可及び指導監督にあたっての判断要件のあり方、(3)組織目的をより確実に実現するために組織を方向付ける適正運営確保のあり方、(4)その他、公益性の判断に伴う主な効果、特定非営利活動法人制度との関係について述べています。

当日本騒音制御工学会におきましても特に上記(3)適正運営確保に関し、ガバナンス(適正運営)のあり方、情報開示のあり方について見直しを行い、近々予想される公益法人改革に対応しておく必要があると考えています。このような動きの中で、公益法人として事業及び財務内容を積極的に情報公開し、組織の透明性を確保する必要があることから広報委員会といたしましても積極的に関わっていくつもりです。

公益法人として対外的な情報公開につきましてはこれまで以上にいろいろな場面で実施していきたいと考えておりますが、会員相互の情報交換につきましてもっと積極的にシステム作りが必要であるとのご意見を頂いております。当学会での会員相互の情報交換の場としては、春秋に開催される研究発表会、研究部会に設置されている各分科会、4月に開催される懇談会などがあげられます。これら発表会や分科会活動につきましては当学会のHPにおきまして随時紹介しておりますが、現時点におきまして全ての活動状況を紹介するまでには至っていないのが現状です。今後は、各活動主体が積極的にHPに記事を掲載するよう働きかけていくつもりです。また、HPからメーリングサービスの申し込みができる仕組みもできあがり、当学会会員であればメーリングリストに登録することが可能です。会員の皆様へのお知らせなど学会からの情報発信に利用できます。皆様から当学会員に情報を伝えたい場合は、広報委員会宛にメーリングサービスへの情報提供のご依頼をいただければ、登録している会員の皆様へ広報、伝達することができます。

頂きましたご提言に、子供や市民向けに資料の提供や講習会を開催したらいかがというものがありました。公益法人として社会貢献が求められている現在、当学会からも積極的にそのような活動を行う必要があると考えます。かつて、環境騒音振動行政分科会では市民向け講座を開催した実績があります。この市民向け講座は単年度で終わってしまったと記憶しておりますが、今後は当学会の継続事業として会員以外の人々への普及啓発活動を考える必要があるものと考えます。

環境騒音を低減するためには、騒音に関わる知識をもつ行政担当者を育てなくてはならないとのご意見を頂きました。どのような事業を実施する場合でも言えることと思いますが、事業の立案、予算折衝、事業の実施、効果調査の過程では実施事業についての知識が必要になります。まず立案の段階で、事業の意義、必要性、予測される効果などにつき合理的な説明が求められます。いわゆる環境行政に携わっている行政担当者は、その多くを化学系の専門家が占めています。このため、環境騒音対策として立案される案件も少なくなりがちです。しかし、行政担当者も事業の必要性について団体等からの要望があれば、議会等への説明もしやすくなるという面もあり、地域が抱える問題解決のために技術協力を行うことも考えられます。現実に、ある自治体が解決に苦慮していた低周波音被害について、低周波音分科会では環境省と連携して現地調査を行い、解決への道を開いたという事例もあります。今後、問題を抱える自治体への技術支援も当学会が関わって行かなくてはならない活動と言えるでしょう。

(神奈川県環境科学センター 堀江侑史)

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出版等に関すること(Vol.29 No.3)

出版等に関すること

学会誌の「会員コラム」に掲載された若手会員及びベテラン会員の方々から頂いたご意見ご希望の中から出版等に関する貴重な助言について考えてみたいと思います。

若手会員の執筆者からは,「子ども向けや一般市民向けの騒音についての啓発資料を作成する際に自由に使える資料集を作成し,学会ホームページを利用して広めることはできないだろうか。利用者からの声を基に,改訂を繰り返していけば,数年後には,素晴らしい資料集ができあがっていることであろう。」というご意見を頂きました。この中には二つのポイントがあります。一つは子供や一般市民向けとして利用者を絞った資料を編集するということ,もう一つは利用者からの声を基にフィードバックを繰り返して編集を進めるということです。

現在,審議が進められている日本騒音制御工学会のピアレビューの素案には,「出版を担当する者は,読者が求めている図書の把握に努め,適切な出版物を選択しなければならない」とあり,頂いたご意見を反映させることは,まさにこれを実践するものとなります。いきなり子供向けの出版物を作るというわけにはいきませんが,現在,一般向けの啓発書として「お話シリーズ」の編集を進めております。その一端をご紹介しますと,「バリアフリーにおける音のやくわり」,「航空機と飛行場周辺の騒音」,「低周波音とはなにか」,「不思議音のなぞ」(いずれも仮題)などです。優しく書くことほど難しいことはない,優しく書いていただくように依頼することはさらに難しい,その一方で役立つ専門書と売れる本とは違う など,念頭に置くべきことは多々ありますが,初心者の方に出来るだけ理解してもらうためのシリーズを目指しております。

これまで当学会からは多くの書籍が出版されておりますが,いずれも多数の執筆担当の方々の共著となっております。学会誌の特集号もそうですが,特集のテーマに基づく原稿の要旨を揃えることは非常に難しいといえます。書いている本人は担当の章で筆述すべきことに専念して,他章とのバランスまでは配慮しないものです。その意味でコンセプトが散漫にならないようにするためには,編集において強力なイニシアティブを発揮する,あるいは少人数による執筆をお願いすることになります。上記のお話シリーズは後者の場合に相当しています。また,これらの出版の際には,ホームページ等で紹介すると共に講習会を企画して広く説明する機会を増やすべく,広報委員会,事業部会と密接に連携をとって進めております。

事業部会では,春と秋に講習会を開催しております。ここで人気のQ&Aコーナーは,参加者から日頃疑問に思っていることや職務上課題となっていることについて質問が投げかけられます。これは,二つ目のポイントに関連しますが,この内の幾つかは,読者の共通の疑問に対する専門家による回答という形式で,学会誌及び学会ホームページの「Q&Aのページ」に掲載されています。この中で最も多く求められているのが,専門用語の解説です。

頂いたご提案のようにフィードバックを繰り返すとまではいきませんが,投げかけられた質問などを参考に,関連ある用語をまとめて一つの項で系統的に説明する「用語事典」(仮称)の出版を計画しております。近年,インターネットの検索サイトが充実しており,一般的な側面からの専門知識を敏速に探し出すことができます。しかし,その情報を基にして子引き孫引きしていく内に,画面に表示される範囲内の断片的な情報しか頭に残らないことにお気づきになるでしょう。

学生時代によく利用した専門書には,有形無形の情報サイトが張りめぐらされており,使い慣れた初版が第二版,三版と内容が更新されても買い換える気がしないものです。一つのことを調べるために,何ヵ所ものページに指を挟んで,あっちこっちと見返した経験があります。的確なキーワードさえ見いだせれば,一つの項目を見るだけで多くの知識が系統的に関連づけて得られるように関連検索を充実し,長く利用していただける専門書を提供していきたいと考えております。

ベテラン会員の方から頂いた「日本騒音制御工学会創立以来の足跡,30年の歴史資料を編纂し後世に遺して頂きたい」というご意見につきましては,すでに創立30周年記念事業企画委員会(主査: 安藤副会長)が設置されており,研究発表会に合わせ記念シンポジウム,記念出版,記念事業等の概要が検討されています。創立30周年記念歴史資料の編纂が,環境保全における音の重要性の社会的アピールに繋がるよう,編集を進めたいと考えております。

(財団法人 小林理学研究所 吉村純一)

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工学会の活性化(Vol.29 No.4)

工学会の活性化

総会(平成17年5月24日)に先立って開催された評議員会の説明資料に、会員の年齢構成図がありました。正会員1256名の平均年齢は50歳で、20歳代の会員は25名、30歳代は256名、40歳代は304名、50歳代は436名です。88歳になる2名の長老を含めて60歳以上の会員は235名です。この年齢構成を見て愕然としました。来年は創立30周年を迎えますが、創立当初は20歳代の新進気鋭であった世代の会員が際立って多く、後継者が順調に育っているとは言い難い状況のようです。社会の騒音環境が依然として厳しい状況の中で、人々の環境に対する要求レベルは高くなる一方であり、今後も学術、技術、行政の3つの分野の会員がともに協力し、知恵を出し合うことが望まれています。本工学会の魅力を高め、若い会員を増やして活性化を図ることが重要と思います。

一昨年の会員コラムには、若手会員の方々、また昨年の会員コラムではベテラン会員の皆様から学会のあり方や運営方法などについて数々のご意見やご提案がありました。昨年の5月に鈴木陽一先生から研究部会長を引き継いでから1年が過ぎたところですが、これらの貴重なご意見やご提案を大いに参考にさせて頂いています。以下に研究部会での議論の一端を紹介します。

研究部会には現在14の分科会が設置されていますが、本号の研究部会報告にも記されているように、それぞれ活発な活動を行っています。ただし、冒頭に述べた高齢化の問題は各分科会の活動ではより深刻で、大学でも行政でも直接現場で手を動かせる若手の研究者や担当者が激減しており、今後の人材不足が懸念されています。この点については、「音は何故マイナーか」をテーマとする第2回の“環境騒音問題に関する懇談会”でも、種々のご意見がありましたが、研究部会では、今回、新たに分科会委員の公募を試みました。会員の皆様で、興味のある分科会がありましたら、是非、応募いただきたいと思います。また、新たな分科会の提案も大歓迎です。

「春季研究発表会」は今年の4月の発表会で第4回の開催になりました。現在、第5回の実行委員会が組織され準備が進められています。第1回の春季研究発表会は、平成14年に岩瀬昭雄研究部会長のもとに開催されています。当時は部会委員として発表会開催の議論に加わりましたが、この春季の発表会は分科会によるオーガナイズドセッション方式で行なうことが決まり、その方式は現在まで引き継がれています。これは、従来から年1回、秋に開催されていた通常の研究発表会との性格の違いを明確にすることや、分科会活動の活性化に繋がることを意図したものです。会員の皆様のご協力で、発表件数などは順調に推移しており、平成16年の発表件数は、春季が36件、秋季が84件であり、年間の発表件数が平成になって初めて100件を越えました。とはいえ、研究部会ではこの5年を一つの節目と捉え、発表会の実施運営方法の見直しの議論を始めました。現在の研究発表会については1)4つの分科会がオーガナイズを担当しており、一般の研究発表が難しい、2)4月の開催は年度初めであり参加しにくい、3)秋の研究発表会を2日ではなく3日にして、オーガナイズドセッションもそこで行うことにし、春季研究発表会は止める、4)これまで分科会ごとに行っていた分科会報告会や、技術レポートの発行が少なくなってしまった、などなどの意見があります。今年度の研究部会で春季研究発表会のあり方を検討していますので、会員の皆様からのご意見も頂ければ幸いです。

「環境騒音問題に関する懇談会」も春季研究発表会の前日に開催された今回の懇談会で第4回目を迎えました。橘秀樹前会長の提案で始められたこの懇談会は、「学会の活動方針や学会に課せられた役割などについて、自由に議論し、情報交換する場」であり、通常の研究発表会やシンポジウムとは異なる雰囲気の中でフロアからも数多くの忌憚の無い意見が述べられています。未だ出席されたことのない会員の皆様も、是非、次回は足をお運び頂きたいと思います。

第2号の会員コラムで広報委員会委員長の堀江侑史氏が学会ホームページによる情報発信の重要性を指摘されています。研究部会でもこれまでの研究発表会のプログラムなどに加えて、部会の活動内容や分科会の成果などの情報発信を積極的に進めるべく、検討を進めています。

以上、研究部会から話題提供をさせて頂きましたが、魅力ある工学会を目指して活動していますので、今後とも、お気付きの点やご提案などお寄せ頂ければ大変有難いと思います。

(名城大学 吉久光一)

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「技術評価」等に関する課題について(Vol.29 No.5)

「技術評価」等に関する課題について

学会誌の「会員コラム」に掲載された若手会員並びにベテラン会員の方々から、貴重なご意見やご希望を頂き、その中から今回は「技術評価」等に関する課題について、現状の取り組み方や今後の抱負を述べさせていただきます。

 

    • ・認定技士当工学会では日本騒音制御工学会認定技士(以下認定技士という)の制度を確立していて、現在,約100名の方々が認定を受け活躍しています。ところが、認定技士は国家資格ではないため、一般社会において認知度が低い点は否めません。この認知度を高めるためには種々の活動、すなわち、認定技士としてのPRをはじめ、名刺の肩書きにも認定技士である旨を記す等、認定技士としての自覚を持って活動する必要があろうことは言うまでもありません。環境省に働きかけて国家資格としての認定を望む向きの方もいらっしゃるのですが、現状の社会情勢ではなかなか難しいようです。関連する国家資格の最たるものが、皆様良く御存知の技術士ですが、当工学会が包含している分野に関しては、適当な分野の細分化がなされておりません。対応としては重要な分野として技術士会に申し入れ,それ相応の位置付けを望むのか、独自に活躍するかということになりましょうが、いずれにしても一筋縄ではいかない問題です。地道な活動が当然必要ですが、現在,任意団体でもある認定技士の会と協力して展開する必要もあるといえましょう。翻って考えてみますと、現在の日本では、技術や技術者が正しく評価される制度が確立しておらず、苦々しい思いをしたことは、枚挙の暇が無いほどといえます。日本的体質と言ってしまえばそれまでですが、技術者側も技術を使ってもらえばそれだけで満足といった姿勢も影響していることも事実でしょう。以下に紹介しますAPECエンジニアでは比較的しっかりこの技術評価が実現されており、今後の我々の鑑になると考えられます。

・APECエンジニアAPEC(Asia-Pacific Economic Cooperation)エンジニア登録制度は、日本、オーストラリア、カナダ、香港、韓国、マレーシア、ニュージーランド、インドネシア、フィリピン、米国、タイの11エコノミー間で締結されました、国境を越えた技術者の自由な活動を支援する制度です。APECエンジニア相互承認プロジェクトにより、エンジニアとして承認されますと、加盟国内では同等水準の技術を有する技術者として扱われ、活動が促進されることになります。APECエンジニアとして登録できる分野は現在Civil、Structural、Mechanical、Electrical、Chemicalなど11分野がありますが、日本ではこのうち前記の5分野に関して、申請を受け付けております。但し、これらの申請に必要な国内の資格としては、今のところ技術士や一級建築士などです。認定技士の該当分野としては“Structural”でありますが、現在のところ認定技師の資格を保有しているのみでは登録が出来ません。今後、APECエンジニア審査委員会に対して,工学会として働きかけをしていければと考えています。

・今後の展開今後の展開としては、工学会として地道に広報活動を展開していくことや、建築学会でも議論され、現在は多くの実績をあげている司法支援活動、さらには技術支援の保険制度なども重要な課題だと考えています。騒音振動の問題では単なる物理的な技術による解決に加え、人間感情のこじれから生ずる問題も少なくありません。そのため技術者以外に法曹界の協力も得られれば、更に強力な組織になりましょう。また保険制度とは、時には予想もしない事態により、対策効果が十分に発揮されなかったりして予想外に金銭が掛かる場合をバックアップする保険です。いずれにしても、まず認定技士が十分その任に堪えられるだけの知識、技能を保有していることを一般社会に認知してもらう事や、社会に向け多くの正確な情報を常に発信していくことなどが最優先課題と言えましょうか。これらの問題解決には我々も真剣に考えてはおりますが、多くの方々の知恵とご尽力を期待するところも大であります。いかようなご意見でも結構ですので、お寄せいただければありがたく存じます。

 

 

(鹿島技研 安藤 啓)

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工学会全般に関する現状の取り組み内容,今後の抱負(Vol.29 No.6)

工学会全般に関する現状の取り組み内容,今後の抱負

3年間にわたり,騒音制御工学会の将来について様々な角度から御意見を頂戴しました。このコラム自身の役割が十分に発揮できているものと思います。学会を運営する側としてもこれらの貴重な意見を元にして学会の将来設計に反映させて行きたいと思います。今回は工学会全般に関する現状の取り組み内容,今後の抱負等を述べさせて頂きます。

    • ・ 公益法人改革に向けての準備状況すでに広報委員長の堀江氏からこの欄で御紹介がありました通り,政府では公益法人改革を推進するための立法化が進んでいます。近い将来,新たな法律のもとで民間非営利法人として騒音制御工学会の存在が根拠付けられることになります。その際,非営利法人に要求されるのは,公益性の確保,自律性の向上,情報開示による透明性の向上,ガバナンスの強化です。平ったく言えば,規律正しく,公益性の高い事業を行いなさいということです。このような方針に対応するために,現在,運営のためのルールの整備を行っています。すなわち,実情にそぐわない規則をいくつか廃止すると共に,規律正しい運営をするための諸規則の新設を順次行っています。例えば公益性の高い法人である学会として,倫理に関する意思表示をするための「倫理綱領」,「ピアレビュー倫理綱領」の制定,工学会の運営組織の役割等を明確にする「組織および運営に関する規程」の改正,受託事業全般管理を定める「受託事業規程」の制定,事務局の運営に関する「事務処理規則」,「職員就業規則」,「会計規則」などの制定を行っています。まだ審議中のものもありますが,平成18年度が開始される頃には新たな法律に述べられる非営利法人としての要件をすべて満足出来るようになるよう鋭意努力を続けております。また,平成18年度より会計方式や財務諸表の作成方式が変わりますので,新たな税理士さんの指導のもとそれに対処すべく努力をしているところです。

・ 工学会の社会貢献についてかねてより騒音制御工学会の社会的認知度が低いといわれていました。認知度を向上させるためには,社会貢献というものが必要です。また,公益性の確保,すなわち不特定多数の人々への利益を図る意味でも社会的貢献は必要です。好運なことに近年は環境省から数多くの委託調査を受けており,工学会として真剣に対処しています。特に最近は,将来の環境行政に対する意志決定のベースとなる科学的データの収集や検討をすることが増えており,この意味で学会としての社会的貢献が着実に行われていると考えています。

・ 国際化が図られているか?この5年間位にI-INCEやinternoiseではGlobal Noise Policyという考え方が盛んに議論されるようになりました。それは,「騒音を排出する機械や装置は一つの国で作られて,その国の中だけで使用されるのではなく,多くの国々で製作され,それらが輸出・輸入されて多くの国の騒音問題に結びついている。そうすると騒音を規制するには国境を超えて多国間の問題としてとらえなければならなくなる」ということです。既に一部の製造企業の方々は感じられていると思いますが,EU(欧州共同体)内に機械・装置を輸出するためには,一定の騒音基準以下でないとダメという規制がかかっています。これは裏返せばEUに貿易上の非関税障壁が発生していることにもなるのです。従って,今や騒音問題と言うのはローカルではなく世界的問題として考えなければならないということです。むろん,これは機械・装置だけの問題ではなく,環境騒音問題全体に対する取り組みに大きく関与することになります。

工学会が取り組むべき問題は,国内の騒音だけでなく国際的な騒音問題の取り組みということになります。しかし,現在,工学会内では国際的議論とはやや離れたローカル問題だけに集中しているように思われます。それはそれで意味のあることとしても,日本の産業の持続的発展を願うならば,工学会内にも国際情報の収集と分析,意見の提示を図る組織が必要であると考えています。特に,I-INCEの中の議論では,Global Noise Policyというものを策定するには,ヨーロッパ,アメリカ,日本の協力が必要であるとしていますので,海外における一層の協力が必要と思われます。

・ おわりにこのコラムは工学会の将来を考える上で非常に役立っていると思います。まだまだ工学会にはやるべき仕事がたくさん残っていますが,ものごとは一朝一夕にはなし得ないので,徐々に良い方向に進みたいと考えている次第です。会員の皆様の御協力を今後とも宜しくお願いしたいと思います。

 

(小林理研 山本貢平)

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(Vol.28, 2004)

騒音制御工学会に期待する(Vol.28 No.1)

騒音制御工学会に期待する

騒音制御工学会の設立経過については,本誌Vol.10 No.6 に紹介したが,米国においてINCE USA及びInternational INCEが発足したのは,Noise Control Act が米国議会で可決された直後の 1972年で,日本で最初にInter-Noise が開催され,騒音制御工学会が発足したのは,1967年に公害対策基本法が制定されて,騒音にかかる環境基準が設立された直後の1975年である。それ以来約四半世紀の間に騒音に関する研究も飛躍的に活発になるとともに,工学会における研究発表も年一回から二回に増加し,設立当初には予想もしなかったほどの成果があがっていることは,まことに大慶至極である。近年は毎年開催されるInter-Noise への参加者も諸外国に比べて格段に多いことは,会員諸氏,特に若い研究者の活躍によるところが大きい。最近の騒音問題については,毎回の Inter-Noiseにおいて,欧州統合にかかるEU 諸国の騒音規制についての新しい発表があり,米国,欧州,極東の三大地域において環境問題に対する取り組みが本格化していることを示している。その極東の中心的役割を担う日本騒音制御工学会の責任は極めて大きい。

工学会の設立当初,音響学会との違いは騒音対策に関連して,行政における取り組みにも重点をおくことになっていた。近年は騒音の研究者と行政における対策の担当者との交流も活発に行われて,効果的な成果があがりつつあるように思われる。これも音響学会の騒音振動研究委員会と工学会の運営が共通の方々によって総合的に計画されているからであろう。

今後は音響部門に限らず,騒音に関係のある機械,建築,土木や現代の音響研究には欠かせない情報,通信分野との交流によって,新しい発展を図ることが期待される。

文献

  • 五十嵐寿一 : 騒音制御工学会の生い立ち 騒音制御  Vol.10 No.6 (1986)

(小林理学研究所 五十嵐寿一)

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騒音環境改善のために学術 技術 行政の協調を(Vol.28 No.1)

騒音環境改善のために学術 技術 行政の協調を

この学会は学術、技術、行政という三つの異なった分野の会員によって構成されており、これがこの学会の大きな特徴で、これは騒音という問題を通じて社会に貢献するためにとても大切なことだと思います。

学会という名の団体は学術研究が主体で、その成果を実用化するための技術は認めてもその地位は低く、さらに行政まで含めている学会は少ないのが現状です。

学会が学術団体だとすれば学術研究を尊重するのは当然かもしれませんが、騒音に関する限り如何に学術研究が進んでもそれを実用化する技術がなければどうにもなりません。その技術が進んでも行政がそれを取り上げてくれなければ問題は解決しないのです。

工業が発達し物流が盛んな現代国家で静かな環境を得るためには、学術、技術、行政が三位一体となって事を進めなければなりません。

たとえば道路交通騒音を例に考えてみましょう。我が国の自動車騒音の単体規制は世界で最も厳しい部類に属します。この規制に合格した車が道路幅に相応しい交通量で制限速度を守って走っても道路の周辺では交通騒音の環境基準を満たせない現実があります。

ドイツの高速道路(アウトバーン)ではその両側40m以内には人の住む家を建てるのを禁じていると聞いていますが土地の狭い我が国ではできない相談です。

となると窓の遮音を良くして室内を静かにするしか考えられません。できれば道路に近接した建物には人が住んで欲しくないのですが都市部では夜間人口が減るのを防ぐためにこうした建物にも住宅を作ることを奨励しているのです。

これは道路に限らず鉄道や航空機の騒音にも、また工場騒音にも言えることで、土地に余裕のある欧米諸国では考えられないわが国特有の問題です。

騒音環境を改善するために学術、技術、行政の担当者が対等の立場で互いに協力して事を進めなければなりません。この三者のどれが欠けてもいけないのであって、全体の総合評価はそれぞれの評価の足し算ではなく掛け算だと思います。どれか一つが0点なら他の二つが100点でも総合評価は0点です。

もう一つ大切なことは立場によって評価の基準が異なることです。学術の立場から見たある技術の評価と技術の立場から見たその技術の評価は同じではありません。このためややもすると自分の立場で相手を低く評価してしまうことにもなりかねません。会員相互の理解を深め互いに認めあうことが大切です。

(東大OB 石井 聖光)

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邯鄲の夢(Vol.28 No.2)

邯鄲の夢

はじめに騒音公害は典型7公害のうちでワースト・ワンであり、従前に較べて多少減少したとはいえ、状況は必ずしもよいとは言えない。

低周波騒音対策騒音対策の技術はかなり進んでいるものの未だ十分とは言い難い。
一方、自動車室内、オフィス内などでは空調器用のファンの、さらなる静音化が進んでいる。
他方、低周波音対策が研究され、工藤(東京農工大)などによるサイドブランチ形サイレンサやリアクティブ形サイレンサなどがその例である。
低周波音の音源対策として、たとえばファン自体で35dBもの低周波音が低減し、実用に供していることが筆者らによって報告されている。

学際的研究以上のハードの研究も大切であるが、これらに対しては学際的立場で研究を行うのも一法と考える。幅広い分野の研究者、技術者の知恵を結集して、ことにあたれば、その進展はかなりのものになろう。

感性を考える以上の立場とは違って、音環境の技術はそこに生活し作業する人々にとって、静けさと安らぎを与えることになろう。しかし、何か欠如を感じる。それは何であろうか、私は感性への配慮の欠闕であると思う。
感性は定量的にあらわすことは難しい。一つの方法として、音質評価があると思う。音質評価については桑野(大阪大学)、橋本(成蹊大学)らの研究がある。
感性と音質評価の方法は一対一の関係とは言い難いというものの、有効な手段であることは否定できない。

結び

以上、いくつかの問題を抽出したが、各分野の研究者、技術者の研鑽を望むとともに邯鄲の夢におわらないことを望む。

参考文献

  • 1)工藤信之, ポンプ(静音設計と騒音防止・利用技術), pp.292-298, (1993)
  • 2)桑野園子ほか,カテゴリ連続判断法による音質評価, 日本音響学会誌, 38, pp.199-210, (1982)
  • 3)橋本竹夫ほか, 定常音の上にAM音を付加した時の音質評価について, 日本音響学会騒音研究会資料, N88-07-01, pp.1-10, (1988)
  • 4)鈴木昭次, 超低周波音の発生と対策, 日本機械学会誌, pp.86-91, 日本機械学会, (1983)

(元法政大学工学部機械工学科 鈴木 昭次)

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名神高速道路建設の頃の思い出(Vol.28 No.2)

名神高速道路建設の頃の思い出

わが国最初の高速道路は名神高速道路であるが、それまでの日本の道路は自動車が通行するには全く適していなかった。以下は昭和30年代前半頃の話である。高速道路を建設すると周辺地域にどれ程の騒音を及ぼすのか全く分っていなかった。そこで日本道路公団により当時筆者が在籍していた大阪大学産業科学研究所音響部、北村音一先生(故人)に騒音予測の研究依頼があった。まずは実験車としてワゴン型乗用車と4tトラック各1台を用意し、大阪と奈良を結ぶ通称「阪奈道路」で走行実験を行った。数人の警察官をお願いして5分間づつ約200mにわたって交通を遮断して実験車を走らせた。路肩にポ-ルを立て、防風ガ-ゼを張った金網篭にマイクロホンを入れて種々な高さで吊し、騒音レベルを測定した。道路建設の担当の方はとても張り切っておられて「高速道路での制限速度は100km/hとし、それ以下で走る車はスピ-ド違反として厳しく取り締まる!」という威勢の良いお話であった。

実験の結果、周辺の住民が通常の生活ができる程に騒音を抑えるにはどの位の高さの塀が必要かを更に研究する事となり、大阪市内と郊外で様々な高さの塀について測定したところ、高さ5m程の塀が必要であることが分かった。当時はまだ前川チャ-ト(現・神戸大学名誉教授、前川純一先生のご研究による、塀による減音量の計算グラフ)が無かったので、実際に5mの塀で実験する事となり、各所を探したところ唯一大阪刑務所にあることが分かり、お願いして実験をさせて頂く事となった。北村先生と私は刑務官さんの立合いのもと、服役者ではないという腕章をつけて入り、塀の外にスピ-カを置いて測定を行った。予想通りの結果が得られたが、実際に高さ5mの塀は高過ぎて運転者と近傍の住民に圧迫感を与えかねないと思われた。その後防音塀を低くする研究が行われ、例えば先端を少し内側に曲げた「しのび返し型」、また九州大学大学院芸術工学研究院藤原恭司教授が研究を進めてこられた、吸音性筒状物体が先端に設置されたタイプの塀、または先端を複数に分岐させた「トナカイ型」、そしてもっと効果的な「半地下構造」にする等、多くの工夫がなされた。

何れにしても現在の高速道路網に比べ、名神高速道路しか無かった時代を思うと昔日の感がある。このことは道路網の拡大につれて発生交通量とそれに伴う騒音レベルの予測が益々重要になってくることを意味するであろう。

(九州芸術工科大学名誉教授 音環境システム研究所 佐々木 實)

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次の世代に期待する(Vol.28 No.4)

次の世代に期待する

このコラムで若い方々の考えをいろいろと読ませていただいた。それぞれの立場の方々が、次のステップへの進展を考えておられるのを見て、この半世紀における騒音振動問題がいかに変遷してきたか、またその中で自分が何をしてきたかを考えさせられます。

私が騒音に関係してから工学会の創立までの25年と、創立当時から現在までの30年の間に環境における騒音振動問題は、技術の進歩と社会の進展に伴って大きく変化をしながら現在にきているなと感じているところです。昭和20年代の私は、騒音などという得体が知れないものが研究の対象になるのだろうかというような疑問を持ちながらの取り組みでした。都市騒音の主体が自動車のクラクションと街頭放送と米軍基地の航空機騒音だった時代です。気が付いてみたら、工場事業場の騒音や建設工事の騒音とあわせて交通機関の騒音が大きな問題となって、いわゆる公害という観点から取り上げられてきた騒音を仕事とする人達の中に入っていました。多くの現場を見て研究の火種が一杯という時代だったのを思い出します。

行政が真剣に公害問題を取り上げてきたときの学識経験者の端くれに入れてもらって、行政というものの重要性にもタッチすることが出来ました。これが日本騒音制御工学会の設立に重要な三本柱として、学術、技術、行政の共同体が出来た大本になっています。若い方々はそれぞれの時代の変化の中での騒音振動問題に取り組んでおられるので、時代にマッチした問題の把握をしていることと思いますが、普段考えていることを述べてみます。
・騒音振動では現場の計測が基本ではないかということ。現場を知らずにバーチャルの世界での知識だけでは実生活での騒音振動問題は解決しない。・今のコンピューターを基本とする技術の進歩は、これで何でも出来てしまうという奢りにつながってしまうのではないかとの危惧。
・国際的な基準の発信源となってほしいけれども、基準の中にも幅をつくり、国情で選択できる自由がほしい。
・問題に取り組むときに、突き進むばかりでなく、振返って全体像を眺める余裕がほしい。
などです。
時々、なんで20世紀はあんなに急いで重厚長大の箱物に拘ったのだろう、もっとゆっくりだったら公害問題なども起こらなかったのではないかと感じることもありました。しかしこれを言ったら技術屋の負けかなと口をつぐんでしまうのですが。これからも技術屋の実績を役立たせるためにも、行政との協力が中心になってほしいと思うのです。

(小林理学研究所 時田保夫)

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騒音問題について啓蒙活動(Vol.28 No.4)

騒音問題について啓蒙活動

本誌Vol.28 No.1の会員コラムで、五十嵐寿一先生から日本騒音制御工学会の成り立ちについて、石井聖光先生から本学会が学術、技術、行政の三者が協力して騒音問題の解決にむけて活動している特色ある学会であることが紹介された。成立時からの伝統を踏まえ、学術、技術、行政の三者の活発な連携体制はユニークで素晴らしい。これを実感したのが本学会の研究部会および外部委託も含む種々の委員会活動で、ここではまさに学術、技術、行政の三者の間で忌憚のない意見と情報の交換が行われ、学ぶことが多く、私自身、大いに充実感を味わうことができた。

学会誌「騒音制御」は論文、技術報告の他に解説や特定テーマについての特集号など、異なる分野からの騒音制御に迫る新しい情報を得ることができるのが有り難い。この分野の取り上げ方は視野が広く、たとえばVol.27 No.2のように「福祉・医療・教育における音の活用」やVol.28 No.1の「音響に関する国際規格の最新情報」のように騒音に限定せずひろく音一般の重要なテーマについて丁寧な紹介がなされている。

本学会に期待することは、現在のアクティビティの高さを維持しつつ一般会員および社会に対する啓蒙活動のさらなる推進である。先に述べたように本学会では研究部会に属する種々の分科会および騒音評価手法や高速鉄道騒音の評価など種々の委員会が設けられ、活発な活動を行っている。研究部会の活動は学会誌にその概要が掲載され、委員会の成果は報告書にまとめられるが、進行途中の研究もありその総てが公表されるわけではない。春か秋の研究発表会の折りにでも分科会活動全体をPRする機会や、あるいは特定分科会の企画で一般市民も対象に公開講演会などの機会を設けることなど考えられる。騒音のような環境問題の場合、その解決に向けて一般市民の意識が大いに関与すると考えられるからである。

(大阪大学名誉教授 難波精一郎)

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本学会に於ける行政分科会の役割(Vol.28 No.5)

本学会に於ける行政分科会の役割

最近の騒音・振動行政をみますと,極めて厳しい環境に直面しています。騒音に限ってみても,関係法令の制定時からみると発生源及びその形態が多種多様化し,測定・評価も大きく改訂されましたが,住民の騒音に対する意識の変革によりその受け取り方(苦情)も大きく変わりました。その対応にも,例えば単に騒音計による騒音レベルのみではなくスペクトル,継続時間,時間帯等の要因が絡み、苦慮することが多くなっています。加えて,市町村を指導する立場の都道府県においては研究機関等の騒音振動部署の統廃合,法の規制業務を行っている地方自治体においては騒音振動の組織体制の縮小,財源難による測定・調査体制の不整備,担当者の短期間の定期移動による経験・情報量の不足等により,必ずしも十分な行政対応が出来ない状態となっています。

さらに,行政改革の煽りで市町村合併により新たに関連法令の業務を施行しなければならない地方自治体の誕生もあります。このような現状を踏まえて本工学会,取り分け行政分科会の方向性,使命,役割はなにか。本工学会は学界,業界,行政が三位一体となった組織であり,それぞれの立場を尊重せねばなりません。 しかし,現実は三者がバランス良く保たれているとは思えません。行政側からみると,精一杯の努力をしている割に,技術力が伴わないためか,説得力に乏しいためか,会員数が少ないためか,本工学会における行政の立場は弱いように思われます。本来は,行政は住民の苦情対応,その時の騒音レベル等の実態,対策後の評価等々の現場を熟知した,生きた情報を持ち合わせて本工学会で活動すべきでしょう。

私は現在幸いに(?)大学,行政,企業で環境問題に関わっていますが,こと騒音に限っても,アセスメント,大店立地法等における実測値の曖昧さと不足,企業の環境管理における測定体制の不整備或いは各自治体の実態報告の少なさ等が目につきます。

環境問題のメディアにおいて,読者に対し現場のペンによる記事よりも写真の方がより真実性或いは感動を与えるとして重んじられるように,騒音等においても現場の実測データがより重視されるべきでしょう。そのために,行政分科会が率先して-現場を重んじた実測-の行動を起こすことが必要ではないでしょうか。当然,本工学会はその支援を積極的に行うとともに,地方の騒音振動対策の実態にも目を向け,加えて昨年度の本コラム等に提案された若い人々の意見を尊重する組織体制の確立が急務であると思います。

(前神戸市環境局・環境カウンセラー 瀬林 伝)

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わが工学会の展望と課題(Vol.28 No.5)

わが工学会の展望と課題

INCE/USA の要請でInter-noise75が仙台で開かれ、その翌年わが工学会が結成されてから30年に近い。

隔月に発行される学会誌や技術(部会)レポートの充実ぶりは、春秋の研究発表会の活況と共に目覚しいものがある。にも拘らず音は何故マイナーか?。

1984年5月の総会で制定された工学会認定技士資格制度は,当時の石井会長の下,副会長の中野氏と私が2年掛けて原案を作成したもの。騒音公害対策の社会的ニーズが高まったのに,その責任を負うべき音響技術者の社会的地位が認められず,環境計量士制度の国家試験にも化学分析の技術を要求され,音響屋の所在が無いかのような状況であった。何とかして我々の存在を社会に認知して貰う必要があったのである。

その目標達成はいつか?。長引く不況の中,実力重視の傾向と共に資格ブームとさえ言われ、その種類は1000とも2000とも言われる。社会に貢献する個人の能力を証明するもの故,国家資格が最高である。国が直接試験をせず只認定することによっても公的資格として認められ,高い信用や評価を得ているものがある。文部省認定の実用英語検定や簿記能力検定,通産省認定のインテリア・コーディネータ等がそれ。わが工学会認定技士を環境省が認定しないのは何故か?、その理由を明確に把握する必要がある。そしてその障害を克服して国家資格を勝ち取るには、担当理事を決め、いろんな立場から考えて環境省を攻略するのに、会長が先頭に立って全力を揚げて取り組んで欲しい。

さらに関連する問題は、道路交通騒音予測式、大店立地法、品確法・住宅性能表示等、音響技術者の活躍が当然期待されるべき場であるのに、それらのマニュアルが出来、ソフトまで売り出される事になると、其の作成に尽力した音響専門家が一転して排除される場になる。この現実を許して良いのだろうか?。何かが狂っている。何かが間違っている。社会構造に問題がある、と言って座視できない問題ではないか。

参考に先進諸外国はどうなっているのだろうか?。

先ず、自らの能力を高めinter-noiseに発表する件数を増やすための研鑚をするのは当然だが、音の重要さの社会的アッピールを、政府・民間に対して工夫を凝らして、強力に推進すべきではなかろうか。

最後にお願いしたいこと。日本騒音制御工学会・1976年・創立以来の足跡、30年の歴史資料を編纂し後世に遺して頂きたい。世代交代の時期なのだから。

(神戸大学名誉教授、環境音響研究所、前川純一)

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半世紀(Vol.28 No.6)

半世紀

1951年,鹿島建設技術研究所に入り半世紀に及ぶ技術研究者としての生活が始まった。企業に属した故もあって,筆者は,工学技術はその時代か近未来において実用され,社会に貢献すべきものと常に考えてきた。その後四半世紀を経た1976年,騒音制御工学会設立に参画できたことはその意味でも本当に幸いで,それからの研究生活の基盤となった。

工学会は,騒音公害問題への対応を軸に,法令の整備,技術の向上と専門家の権威の確立及び組織化,良い生活環境に関わる市民の知識や理解を進めることなどに大きく貢献しつつ成長を遂げてきた。設立後四半世紀を経て,環境分野は,健康安全と不快解消のための公害対策から一歩進んで,生活の中の心理や感性といったアメニテイ,快適な空間の創出まで範囲が広がってきている。

現在の騒音問題は,1つが鉄道,空港,高速道路,大規模市街地開発といった国,自治体レベルの巨大広域プロジェクト,もう1つが住宅内外や施設周辺など市民生活近傍の個別の問題を対象にケースバイケースの対応が求められる仕事というように,はっきり2極化してきたように思われる。前者に関しては,唯一の専門工学会としてもっと積極的に関与し,発言の機会を求めなければならない。後者に関しては,個人的レベルで生ずる多様な対応事例を収集して肌理細かく分類・分析を行い,データベースに整備してコンサルタント,アドヴァイザ業務の処理能力をレベルアップし,一般化することが必要になろう。

重要な変化に少子高齢化があり,今後半世紀は身体機能が衰えた高齢者の比率が高い社会が続く。補聴器を着用して初めて,騒音を含めて質量共に情報損失がいかに大きかったかに気付く。苦情への共感や評価が鈍っていたのではないか,自分自身の反省である。住居地区では解体工事,自動車よりむしろ単車,生活動脈の補修,商店街の宣伝,空調室外機,水洗など居住環境にこれほど喧しく煩わしい騒音があるとは,専門家としての問題意識が問われよう。

最後に認定技師について,環境省によるオーソライズは急務として,折角国際組織を持つ騒音制御工学会であるからにはAPECエンジニア*への道を是非検討していただきたい。将来は技術を保証する保険制度の確立も視野に入れるべきであろう。

  • *
    APEC Engineer:現在日本ではCivil(技術士),Structural(1級建築士)のみ。他にEnvironmental, Mechanicalなど合計11分野がある。加盟国は,韓,米,加,豪,マレーシア,インドネシアなど10カ国。情報は,http://www.engineer.or.jp/apec/whatis.html

(長友宗重)

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騒音制御工学会誌に期待すること(Vol.28 No.6)

騒音制御工学会誌に期待すること

工学会誌「騒音制御」は、1977年の創刊以来隔月刊で発行されています。騒音制御工学会は会員の構成が広い範囲にわたっていることが特徴であるために、通常の多くの学会誌と比較すると論文・解説をはじめとして毎号が手元に届くたびに実際に読む部分が多く、しかも年を追って充実した内容になっています。

現在工学会の会員数は世界中の騒音制御関連の学協会のなかでトップクラスであり、毎年開催されているインターノイズでの発表件数は主催国に次いで2番目になるのが通例になっています。ただこうしたインターノイズでの発表はすべて英文で書かれていますので、発行された論文集やCD ROMを工学会の会員が直接に目を通す機会が多くないのが残念なことです。

これについての一つの提案ですが、少なくとも日本からの発表論文のアブストラクト(日本文)を「騒音制御」に掲載することができれば、会員にとって役に立つことが多いと考えられます。発表者には余分な負担をかけることであり、また会誌のページ数の増加も避けられないことになる訳で、簡単に実現することはできない問題ではあることになりますが、学会誌のより一層の充実に貢献することになると判断されます。さらにこうした欄を設けることは、会員の活動範囲を拡大することにも寄与することになります。

学会誌をこうした方向で充実させることは、会員数の増加にも大きな役割をするわけで、今後の工学会の発展に対しても重要な問題になると判断されます。さらにこれは今後益々重要性の増加が期待されます国際貢献という面からみても無視することができなくなるに違いないと思われます。

国際貢献という面での騒音制御の分野については、日本からの研究内容は世界中から注目されており、特に道路、鉄道、航空機など環境騒音の問題や騒音評価の基本的な取り扱いに関連した問題については、海外でも参考にされることが多いので、その状況を把握しておくことは、われわれの研究を発展させるためにも寄与するものになると考えられます。

また日本からの発表が比較的少ない研究分野について、今後の日本からの貢献を考える上でも、参考にしたいものになることが期待されます。

(千葉工業大学 子安 勝)

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(Vol.27, 2003)

工学会に対して思うこと(Vol.27 No.1)

工学会に対して思うこと

11月某日にこの原稿の執筆依頼を受け,軽くお引き受けしたものの,後になって,はたと困ってしまいました。「会員の方々に啓発するような,かつ工学会がより活性化するような」意見を述べよ,という命題は,研究発表会で2回しか発表したことのない私にはとても敷居が高い。ですので,まず研究発表会に対して感じていることを書かせて頂きたいと思います。

私は,騒音制御工学会の他に音響学会と建築学会の二つの学会に所属しています。このどちらの学会も,規模が大きいためか,発表会の原稿は2ページです。ところが,制御工学会は4ページも書くことができます。これを埋めるには,大変な苦労を要します。「下手な内容では書けないぞ」となります。そのために追実験をしたり,追計算をしたりと,研究を進める良い推進力になりました。発表会当日も,持ち時間が20分程度と十分にあり,準備も大変だけれどとても充実していたことを思い出します。このように,一つ一つの研究発表に紙面と発表時間を十分に割くことができるのは,規模の小さい学会ならではのことと思いますが,今後決してやめてはならないと思うことの一つです。

ところで,私は大学に籍を置いて研究に従事しています。大学にいますと,「最新の研究・技術」といわれるものに触れることができます。しかし,実際の現場で何が問題となっているのか,といったことには疎くなりがちで,ややもすれば周囲の状況を見ずに研究が趣味的になってしまう恐れがあります。その一方,現場だけに固執していると,常に対応が場当たり的になり,体系的にものごとを進められなくなるでしょう。この二つのバランスを常に保っておくことがとても重要だと思います。自分にとって面白いものを追求しながらそれを実際に応用できる場面を常に意識する,そんなスタンスが取れれば,と常々思っています。その意味で,工学会には現場のニーズを常に発信し続けることを期待していますし,私としてはそれを自分の研究活動に取り入れるよう,うまく利用したいと考えています。

「実地と研究を繋ぐ学会・学会誌」という意味で,もうひとつお願いしてもよろしいでしょうか。実地で必ず意識されるものに,法令や基準があります。それらには,定量的な規制値や基準値が示され,解説記事等にも網羅的に紹介されていますが,それらの値はどのような知見を基にして定められたものなのでしょうか。そのようなバックボーンが一つ一つ解説されたら,盲目的になるだけでなく理解がより深まるのではないかと考えています。

(東京大学・生産技術研究所 坂本慎一)

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21世紀になって思うこと(Vol.27 No.1)

21世紀になって思うこと

本工学会の会員平均年齢は50歳を上回ったそうだ。言うまでもなく若手の会員数がのびないことが原因だが,このままの状況が続けば騒音問題・振動問題を真剣に考える技術者が不足してくるのは目に見えている。騒音・振動問題の分野はそんなに魅力がないのだろうか。そのように見えるのは,活躍している技術者の姿が見えない,あるいはアピールできていないからではないだろうか。

私は騒音・振動のコンサルタントを生業にしている。仕事を通じて思うのは,まじめに取り組んでいる技術者が正しく評価される機会が少ないことである。担当技術者として問題解決の前面に出てこない,あるいは出ることができないで裏方に徹していることが非常に多い。また,コンサルティング業務は社会一般に行われている見積り入札のような金額のみで評価する制度にはなじまない。まずは解決すべき問題を正確に認識し,技術が評価の対象となるべきである。社会が大きく変化しようとしている時期である。これに乗じて技術が正しく評価される社会制度ができ上がることを望んでいる。

本工学会でも認定技士制度を通じた活動により,専門的な学術・技術の普及が図られており,今後認定技士の重要性も増していくことであろう。しかし,技術が普及するためには会員各々がそれぞれの立場で活躍しアピールしなければならない。幸いにも本工学会は,学識経験者,行政,民間企業などの幅広い分野の方が会員である。これは本工学会の強みでもある。お互いに情報交換し活躍の場を提供し合い,盛り上げていきたいと思っている。

次に若手研究者の方にひとこと。最近,研究発表会への若い方の参加が少なくなってきているように思う。研究発表会は成果の発表の場であるとともに,印刷物には載らないような失敗談・苦労話・生の声が直接聞ける場でもある。私が約20年前にはじめて研究発表会で発表したときには非常に緊張したことを覚えている。しかし継続して参加することにより,たくさんの方と知り合いになれた。そしてたくさんの知識・情報を頂いた。確かに「騒音制御」や「研究発表会講演論文集」の印刷物には最新の情報や技術が掲載されており貴重な情報源である。しかし技術を実用あるいは応用しようとすれば,やはり直接本人に教えを請うのが手っ取り早い。また諸先輩方は,自分が育ててきた技術を次世代に受け継いでほしいはずだ。21世紀の音環境を担う若き研究者の皆さんには,研究発表会に参加し,直に諸先輩方と話をしてほしい。

((株)ニューズ環境設計 福島昭則)

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未来の騒音環境は?(Vol.27 No.2)

未来の騒音環境は?

当学会の会員になって15年あまり,その間,「街は,住環境は,静かになってきたのだろうか。」と考えることがあります。私が所属する研究所は,武蔵野の面影そのもののなかにあり,住まいも同様の環境にあるゆえ,実のところ騒音を切実な問題として捉える機会は,皆無に等しいほどです。それゆえに,たまに訪ねる都会の騒音が「耐え難い」と感じることが多々あります。とても「以前より,静かになった」といえる状況ではないと考えているのは私だけでしょうか。

我々の周辺にある代表的な騒音源に関して,近年の変化を振り返ると,建設機械のボディーに低騒音型と書かれたステッカーをよく見かけるようになり,民間航空機では最新の低騒音型機が普及段階にあり,自動車では,ハイブリッドシステムを採用した路線バスや乗用車が街を走るようになり,電気自動車や燃料電池車が一部で実用化されていることなどにより,低騒音化技術が進んでいることは事実であるといえるでしょう。鉄道では,2005年に浮上式車両が実用化される模様で,「公害問題を解消した画期的な交通システム」と謳われています。もっと身近な例では,オフィスや住宅において内部の音,外部からの音に対して配慮されていることを売りのひとつにしているものも増えてきており,OA機器や家庭電化製品においても作動音が小さいことが商品の性能として語られるようになってきています。低騒音化は,重要な先端技術といっても過言ではないかもしれません。なかには,大気汚染などに配慮した結果,音に対しても有利に働いている副次的な意味合いのものもありますが,経済活動が活発になるにつれて騒音問題が放置できなくなり,それを解決するためのコストを社会全体で 負担しようとする機運が高まったことで,さまざまな技術開発が進んだことはいうまでもありません。

その一翼を当学会が担ってきたことは事実であると考えます。先に挙げた新技術の燃料電池車や浮上式鉄道などが従来のものに取って代わることで,騒音問題が解消されるには多大な費用と時間が必要でしょう。しかし,これからも環境問題を解決することの重要性をアピールし,積極的な活動によって社会をリードしていく立場に当学会が立ち続けなければならないと考えます。

将来,「騒音」という言葉が死語になるときが来るのでしょうか。そのときの都市や交通機関はどのようなものになっているのでしょうか。現在およびこれからの騒音制御工学会の活動がそうした未来の実現に大きく貢献していくことを願ってやまない次第です。

(財団法人小林理学研究所 平尾善裕)

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失敗の経験知をアーカイブに!(Vol.27 No.2)

失敗の経験知をアーカイブに!

現場における問題解決は,なにより現場での経験がものをいいます。問題が発生している現場の状況は,様々な条件のinputと,その結果であるoutputが多元的に絡み合っていますが,経験豊富なエンジニアは,過去の経験知がシナジー的に作用して,その系の中にいくつかの解を見出すことができます。 個人の頭に保存されている無意識に体系化された問題解決の知恵を検索し適用しているわけです。こうした暗黙知を形式化すること,言い換えれば他人が利用可能な知のデータにすることは大変な作業です。 自ずと若手エンジニアは,先人の知恵を擬似体験的にショートカットする機会に恵まれないまま,現場で学ぶアプローチを繰り返すことが求められます。 確かに,現場を経験することでしか獲得できない知恵もあるでしょう。しかし,騒音・振動の発生のしかたも多様化し,問題の質が複雑化する一方で,過去と同じアプローチでは,結果としてオーバーフローし,疲弊に繋がりはしないか心配です。 では,若手エンジニアに何か支援できるものがあるでしょうか。現場の状況をインプットすれば,いくつかの回答が得られる優れもののソフトウェアでしょうか。 それは,便利なツールには違いないでしょうが,重要なプロセスを省くことで,エンジニアとしての個人のスキルを向上する機会を失わせることになるでしょう。 問題解決の要諦は,原因と結果を繋ぐ系の分析力に尽きると思います。個人の能力向上の弊害にならずに,ベテランのシナジー戦法に対抗できる若手エンジニア支援システムがあるとすれば, 私は,失敗事例データベースではないかと思います。学会の研究発表会などでは,トラブルシューティング的な発表も多く,事例として有効に活用されているエンジニアもいることでしょう。 しかし,問題解決事例の情報は,前提となる条件が同一の場合など,むしろ特殊なケースです。逆に,その多くが公表されていない失敗事例は,成功を収めようとして,結果として失敗した実例ですので,そこにいくつかのヒントが得られるはずです。 1つの答えを知るより,いくつかの問いを持つことが有益なことがあるのではないでしょうか。

さて,本学会会員の高齢化が話題になっていますが,むしろ,今後多くの熟練エンジニアや研究者の知恵が,個人に埋もれたまま引退されることの損失に焦点をあてるべきではないでしょうか。 ベテランが,現場で活かしていた暗黙知を,形式化する道具・仕組みとして,失敗の経験知を蓄えるアーカイブを本学会が提供することにより,若手エンジニアが積極的に学会に関われる土壌を築くことが,望まれていると思います。

((株)小野測器 技術本部 石田康二)

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IT化が進んでも変わらないこと(Vol.27 No.3)

IT化が進んでも変わらないこと

とある地方のスタジオ。30年前に建てられた現社屋を改築するプロジェクト。設計事務所から、「今の建物の竣工検査報告書と比べて・・・」という問い合わせに、古い資料を探すと、残響時間測定と空調騒音測定だけで丸一週間かけた報告書が出てきた。

実は、この前に、解体前の建物の確認測定をしていた。使用状況の制約もあり、急いで実施した測定の所要時間は20分程度だった。

技術は進歩し、測定すれば簡単に結果が出るようになった。計算機の進歩、IT化。情報はめくるめく瞬時に世界を飛び交うようになった。それに伴って我々の技術レベルも進歩しているはずだが、ともすると、結果が本質を捉えているかどうかさえ危うい場合もあるのではないか。さらには、存在するはずの新しい発見を見過ごしてはいないだろうか。

10年ほど前ならば、計算機処理も発展段階であり、データを分析するにも自分でプログラムを考えて組む場面も多かったが、ソフトウェアが充実してきた現在では、徐々にブラックボックスが増えてきている。今更全てを把握することは必要ないのだろうが、「どうして?」と振り返る余裕を心のどこかに持ちたいものだ。

時間といえば、工学会の研究発表会では、発表時間だけでなく議論の時間も他学会と比べても多いはず。しかし、質疑の時間の議論が本当に活発かと改めて問うてみると、必ずしもそうでもないような気がする。例えば質問者がOHPを持って壇上に登場するぐらいの白熱した議論があってもいいのかも知れない。議論を活発なものとするために、たとえば梗概集を希望者に事前配布するというのは如何でしょう。あるいは、事前に予稿をネットワーク上で閲覧できるようにするという方法もあるのでは。

話は変わるが、日頃から、議論の下地となる環境を提供するということも学会の重要な役割だと思う。最近、個人的には出席率が低下しており心苦しい限りなのだが、研究部会の遮音・床衝撃音・不思議音の3分科会が、活発に活動している。これらの分科会は、議論を交わす場として、メンバー相互の切磋琢磨のためにも非常に有効に機能している。他分野でも活発にこういった活動が展開されていくことを期待したい。惜しむらくは上記3分科会は、「いつもの」メンバーなわけで、ムラのようになっていると見られてしまうこと。しかし、こういった活発なムラが徐々に増えていくことこそが重要なのだろう。

(鹿島技術研究所・古賀貴士)

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気軽に情報交換のできる”場”づくりを(Vol.27 No.3)

気軽に情報交換のできる”場”づくりを

私はここ数年、事業部会や編集委員会などの委員を仰せつかり、有意義に活動させていただいております。

事業部会においては、講習会や見学会等の企画をやらせていただきましたので、直接参加者の皆様からご意見や質問をいただくことができました。また企画内容によって、参加申込みに顕著な違いが現れるなど、会員の方々のニーズや要望を肌で感じることもできたように思います。

一方で編集委員としては、会誌を読まれた会員の方々の感想なりコメントといったものがなかなか聞こえてき難い状況にあると感じています。

考えてみれば、会員相互が自由に情報交換をしたり、ディスカッションしたりする場というのが当学会にはほとんどありません。年2回の研究発表会でも、特に若い研究者の方や、騒音制御の実務に日々携わっておられるエンジニア、あるいは様々なきっかけから音環境に関する業務に携わることになった方、学生さんなどが、発表の際の質問以外の場面で意見交換できる場面が見当たらないと思うのです。また現在のような不況の世の中では、会員であってもなかなか業務時間中に研究発表会等に参加できない方もいらっしゃるかと思います。

こういったことを考え合わせると、メーリングリストのようなものを立ち上げて、普段着で情報交換できるような場をつくってはどうかと思うのです。ふと仕事の手を止めたひととき、気軽に書き込むことができ、書いている人の雰囲気や心情が垣間見られるような、そんな場所が、バーチャルでもいいのであったらいいなと感じています。

(千代田化工建設(株)中村ひさお)

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日本の鉄道の低騒音技術は世界一?(Vol.27 No.4)

日本の鉄道の低騒音技術は世界一?

騒音の環境基準と聞いて、たいがいの方は道路交通騒音を連想し、鉄道騒音を思い浮かべる方は、恐らく少数だと思う。私はこの研究所に来て15年以上にわたり鉄道騒音の研究に携わり、鉄道騒音について日頃感じていることを述べさせて戴こうと思う。

新幹線鉄道では、四半世紀以上前の昭和50年に新幹線鉄道騒音に係る環境基準が告示された。環境基準は、線路区分ごとに達成目標期間等が設定されたが、達成状況が芳しくなかったので、地域を限定し当面の対策により75dB以下とするいわゆる「75ホン対策」が進められている。この環境基準を遵守するために、25年以上にわたり、低騒音車両の開発、防音壁の設置や嵩上げ、新しい形状の防音壁の開発、レールや車輪の研磨などありとあらゆる騒音対策が行われてきた。その結果として現在では、日本の新幹線は世界で一番静かな高速鉄道になったと思う。例えば、いま中国の上海の空港アクセスとして導入された常電導磁気浮上式鉄道のTransrapidは低騒音を売り物にしているが、このTransrapidの時速300kmでの騒音値は、84dB(A)(線路中心から25m離れた地点)である。日本の新幹線が時速300kmで75dB(A)以下であることは、いかに低騒音であることか分かって戴けると思う。これは、主にJR各社、鉄道建設公団、(財)鉄道総合技術研究所を中心として関連する各社が、新幹線の騒音対策のために知恵を出し合い研究開発を行ってきた成果の賜であることは言うまでもない。

新幹線の75ホン対策は順次進められ、現在は平成14年度末を目途とした第3次対策が終えたところである。平成12年度に沿線の地方公共団体が測定した結果では、22都府県の321地点のうち132地点(軌道中心から25m離れた位置)で環境基準を達成している状況で、その達成率から言うと、芳しくないのが実情のようである。環境基準は100%達成されるのが理想であろう。しかし現実には、環境対策と利便性の相反するものを両立する必要があり、資金的にも国民の合意が得られる線には限界があるものと思われる。この環境基準達成率の低さが報じられるので、日本の新幹線はうるさいのではないかと感じている方が多いように思う。

現在、鉄道の分野では、新幹線の騒音対策技術は、順次、在来鉄道にも活かされつつあり、新たに導入される新型の車両には新幹線車両で培われた多くの低騒音技術が使われ、さらに静かな鉄道を目指して研究開発が行われている。世界に誇れる日本の鉄道の低騒音技術である。このことを騒音制御に携わる他の分野の方々にも知って戴きたいと願う次第である。

(独立行政法人 交通安全環境研究所 緒方 正剛)

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行政から工学会に対する期待(Vol.27 No.4)

行政から工学会に対する期待

昨今,生活空間における良好な音環境を確保することが,快適な居住環境を形成する上での重要な要件となってきております。例えば,「大規模小売店舗から発生する騒音予測の手引き」では,生活環境の中で配慮すべき事項として騒音が認知されていますし,「騒音に係る環境基準」においても居住環境における騒音の暴露量を評価することになっております。

このように,生活の場における音環境の良し悪しが重要視されてきている近年,以前と比べて,多種多様の騒音問題が顕在化してきております。例えば,低周波音,複合的な騒音,法令等の規制対象外となる騒音等,今までは潜在的であった問題が表面化しつつあります。これらは,法的整備や騒音影響に関する科学的知見が十分でないために,住民が受けている被害を客観的に判断することが難しいものとなっております。行政としても,問題解決の拠り所がないわけですから,対処に苦慮しているのが現状です。

これらの問題に対処する法令等は,時代のニーズから将来的には整備されることは間違いないでしょう。しかしながら,国レベルでの話になるとかなりの時間がかかると思います。まして,地方自治体レベルでは,厳しい財政状況や専門職員の減少により,多くの場合,新たな施策を展開することは厳しいと思います。

そこで,他学会と比べて行政との関連が深い本工学会が騒音行政を先導する形で,情報を積極的に発信することはできないでしょうか。現在までにも,研究部会の下14の分科会が活動しておりますが,行政への働きかけはまだまだ十分なものではないと思います。裾野を広げ,騒音行政に携わる多くの方々から,疑問点,問題点,関心事等の声を積極的に収集することにより,工学会が取り組むべき課題を見つけることができるでしょう。なぜならば,これらの中には騒音問題の主体である住民の意見が含まれているからです。残念ながら,現在ではこのような声を聴く場が設けられておりませんので,率直な情報交換を行えるシステムを構築することが先決になると思います。あるいは,IT化時代のご時世ですので,工学会のホームページを利用することもできるかと思います。

現在までの懸案事項の解決や新たな問題への迅速な対応を目指し,工学会から騒音に関する情報を発信することは,住民の健康で文化的な生活を確保することにつながるはずです。そして,このことこそ工学会が果たすべき重要な使命の一つだと思います。

(神奈川県環境科学センター 横島潤紀)

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地方都市に地下鉄はない-地方における音の啓発事業の現状-(Vol.27 No.5)

地方都市に地下鉄はない-地方における音の啓発事業の現状-

飛行機のエンジン(120dB)、車のクラクション(110dB)、電車のガード下(100dB)、うるさい工場の中(90dB)、地下鉄の車内(80dB)、電話のベル(70dB)、ふつうの会話(60dB)、しずかな教室(50dB)、図書館(40dB)、ささやき声(30dB)。

この音のリストは、福島市が数年前に小学生向けに作成した環境副読本に掲載された、「音の大きさ」を解説する図に挙げられたものである。一見すると、何の変哲もないリストに見えるが、福島市在住の小学生に配るという点を考慮すると、問題点が浮き上がってくる。リスト上の大きな音の多くが、福島では聞けない、または、聞くことが困難な音なのだ。 ─ 福島市から最寄りの飛行場までは車で1時間強かかり、1日の発着便数は両手の指で十分数えられる。電車は新幹線を除き地上を走っており、地下鉄なんか存在しない。工場もあるにはあるが、小学生にとってそんなに身近な存在ではなかろう。今時電話のベルというのも、とても珍しいのではないか。

かといって、福島に大音量を発生する音源が存在しないわけではない。例えば、秋には鳥追いのための爆音器の音が聞えてくる。学校の運動会(とその練習)の放送もかなりの音量である。また、最近、夜は暴走族が頑張っているようである。

子どもたちに音についての理解を深めてもらうには、実際に聞いたことがない音の大きさを紹介するよりは、彼ら自身にとって身近な音の大きさを紹介するほうが、遥かに効果的であろう。おそらく、副読本を作成した担当者も、そうは思っていたに違いない。しかしながら、スタッフに騒音の専門家がいるわけではない地方都市の役所においては、担当者にとって入手可能な資料をかき集めて、それらを参考に作成するしかないのが実情であり、その結果が冒頭のリストとなったのである。これは、福島市だけの問題ではない。

このような現状を踏まえて一つ提案がある。学会として、学校や役所等が子ども向けや一般市民向けの騒音についての啓発資料を作成する際に自由に使える資料集を作成し、学会ホームページを利用して広めることはできないだろうか。利用者からの声を基に、改訂を繰り返していけば、数年後には、素晴らしい資料集ができあがると同時に、学会と地方都市の役所との間に深いつながりができあがっていることであろう。

(福島大学 永幡幸司)

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工学会の役割について(Vol.27 No.5)

工学会の役割について

少々乱暴な私見も交えて、音環境に対する私の想いと工学会の役割について述べさせて頂きます。

豊かになったいまの日本では次々と強い刺激を求めて、それらを簡単に手に入れることができるようになりました。そのため人々は総じて鈍感になってしまったのか、街なかには無神経な音があふれています。人々はそのような状況が気にならない、あるいは、気にしても仕方がないとあきらめているのでしょうか。また、そのような音を発生させることにもためらいがなくなっているような気がします。音に対する意識が低い世界では、人に対する関心も低くコミュニケーションが稀薄になるのではないかと考えます。これは今の日本の状況に通ずるものではないでしょうか。

昔の人のように自然の音を楽しみ、生活の中に音を取り入れて一服の清涼剤としたような暮らしに戻ることはできないかもしれません。しかし、何かに追われるような生活から、今で言う”スローライフ”に戻ることで、音環境に対する意識も変わるかもしれません。

しかし今より不便になったり、個人が損をするようなことはなかなか進まないでしょう。そこで音を制御する技術の出番だと考えます。微弱なエネルギーの音波を制御することで、あるいはそれを利用することで、世の中が変化するなんて愉快ではありませんか。ストレスの少ないスローライフの鍵を握るのは音、騒音制御かもしれない。騒音を制御しているうちに、いつの間にか人々が心豊かに暮らせるような世界になっている。そこまでは望み過ぎとしても、生活の中で再び音に注目が集まることを願っています。

最近の本工学会は、会員数が伸び悩み、平均年齢も高まっているようですが、これは、騒音に対するイメージが過去のもの、公害に関する技術と捉えられて関心が低下していることにも原因があるかもしれません。私の場合、騒音制御に関する業務に従事し続けているのも、目に見えないものを捉えて消すおもしろさ、不思議さに惹かれているためだと思います。

そのような騒音制御に関する楽しみや捉え方を広め、興味を喚起し続けることも本工学会の大切な役割ではないでしょうか。また、先述のような新しい世界を創造するのに役立つ技術、夢のある技術として騒音制御技術を捉え、そのような世界へ導くことも本工学会の役割だと考えたら楽しいですし、新しい方向に向かって発展できるかもしれません。

((株)荏原製作所 音環境部 松田道昭)

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騒音制御工学会に思うこと(Vol.27 No.6)

騒音制御工学会に思うこと

本会について思うことと題しましたが、私自身と本会の関わりをふり返り、わたしの勝手な期待を書いてみようと思います。

さて、私は、日本騒音制御工学会に入会したのは20代前半だったと思います。かれこれ20年が経ちました。その間、本会から自分と関わりある音響分野について数多くの情報をもたらして頂いたと思います。当時は、これら専門に関する情報公開の場は非常に限られていたため、本会から提供される調査・解析データや新工法・新技術の情報は、私のような実務担当者に大変役立つものばかりでした。わたしは、情報収集の場として大いに活用させてもらいました。その後は、私自身も本会の研究発表会や論文投稿の機会も得るようになり、情報を受信する側だけでなく、発信側として活用させていただくようになりました。

現在、本会の研究発表会も年2回となり、ますます情報発信としての役割が大きくなったと思います。  会員の構成比はわかりませんが、この機会に若手技術者の発表会への参加も企業側として積極的に勧めていきたいと思います。近年、社会的に「透明性」,「説明性」などが叫ばれる中、私たち実務担当者としても、単に一企業の提案にとどまるのではなく、公表された技術・工法を積極的に採用すること、または自らの技術を公表することにより妥当性、信頼性を高められること等欠かせない状況であると考えています。

以上を踏まえ、今後4つの観点で本会との関わりをもって行きたいと思います。

    1. ・新技術等の情報収集

・研究発表会などを通じた若手技術者の教育

・信頼度の高い文献データの確保

・妥当性のある測定方法・対策技術の把握

 

そこで、本会に期待するのは、要素技術や基礎研究も含め、実用性の高い研究をこれまで通り数多く紹介してほしいこと、新技術等の効果検証データを紹介してほしいこと、若手技術者や研究者が参加できるワーキングなどの開催、国内外の動向も含めた、騒音・振動分野の最新情報の提供などをお願いしたいと思います。なお、個人的なお願いがあります。春の研究発表会は、現在4月上旬に開催されていますが、せめて4月末か5月に時期をずらしていただけると、参加できる可能性がもう少し高まるように思います。

今後とも、日本騒音制御工学会が、騒音・振動分野の情報発信の核になっていただけるものと期待は膨らむばかりです。

(株)オリエンタルコンサルタンツ 石川賢一

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道路騒音対策技術をもっと身近に(Vol.27 No.6)

道路騒音対策技術をもっと身近に

前職のつくばでの研究者時代、ほぼ道路騒音問題一筋に8年余り取り組んできた。しかし、昨年7月に福島の現場事務所にやって来て、つくばでの8年間は一体何だったのかと思った。着任早々、台風に見舞われたのが大きかった。阿武隈川の洪水被害の対応で3ヶ月があっという間に過ぎていった。その後、河川、砂防、道路事業の多岐にわたる業務が押し寄せてくる中、道路騒音を考える暇はなかった。また、事務所内で道路騒音という言葉を発する人もいなかった。

しかし、少し経って、ちょっとまずいことに気づいた。排水性舗装(低騒音舗装)の問題である。東北地方整備局では、環境基準を上回っている市街地では、順次排水性舗装を施工するという方針を立てている。当事務所管内でもその方針に沿って、どんどん施工が進んでいる。ちょっと待てよ。豪雪地帯ではないにせよ積雪のある福島都市圏で、排水性舗装の耐久性はどの程度か。また、減音効果はどれくらい持続するのか。これらが十分確認されず物事は進んでいる。急いで確認のための調査をすることにした。

道路騒音に対する苦情も初めて飛び込んできた。一般道路平面部(幸いなことに副道があった)での遮音壁の設置要望であった。事務所の国道管理区間で遮音壁が設置されているのはごく僅かだ。まして平面部に遮音壁を設置したことはないため、遮音壁アレルギーがあった。所内の議論で紆余曲折があったが、とりあえず私の判断で高さ2mの透光型遮音壁を350m程度設置した。透光型遮音壁は珍しいと地元テレビで放映され、住民の喜んでいるコメントも取り上げられ、何とか所長の面目が保てた。

道路騒音問題など二の次だった地方の現場とはこういうものである。排水性舗装や遮音壁など少しずつ騒音対策が広がりつつあるが、騒音が分かる技術者など事務所に一人いればよい方だ。道路構造物やガードレールのことがよく分かる技術者は多くいても、遮音壁の建て方の基本が分かる人はほとんどいない。

そこで、騒音制御工学会にぜひお願いしたいのが、道路騒音対策技術の現場への普及活動である。ターゲットは、騒音コンサルタントの技術者ではなく、現場の行政官(土木技術者)である。道路騒音の基本が1日で理解できるようなごく簡単な手引き書が必要である。現場技術者の底上げこそ、騒音行政、騒音ビジネスを活発化させる近道だと思うがいかがであろうか?

国土交通省東北地方整備局
福島河川国道事務所長 上坂克巳

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(Vol.26, 2002)

環境騒音振動行政分科会開催(Vol.26 No.1)

環境騒音振動行政分科会開催

平成13年度第2回環境騒音振動行政分科会定例会が、11月29日に環境省において開催されました。出席者は委員と環境省の方々を含めて18名で,環境省大気生活環境室から低周波音対策について、自動車環境対策課から自動車騒音の常時監視における面的評価の現状について、当学会の春季研究発表会等について討議いたしました。

討議内容は、まず環境省大気生活環境室振動騒音係長高尾氏から低周波音対策の現状について説明がありました。現在環境省で低周波音対策は、低周波に関する苦情を減らすことを目標にしている。13年度中に、昨年度低周波音測定マニュアルに従い測定した調査結果をもとにした、低周波音防止対策事例集を提示する予定である。今後の事業方針としては、低周波音の検討会を設置し、低周波音の実情や低周波音対策の在り方について検討し、将来においては低周波音苦情対処のための防止対策マニュアルを作成する予定であるとのことでした。

次に、同省自動車環境対策課野田氏に、自動車騒音常時監視の面的評価実施状況について、平成13年8月に都道府県、政令市及び中核市を対象にアンケート調査した結果をお話いただきました。これによると、平成12年度における面的評価実施状況は対象自治体で28%であったが、13年度以降の実施計画では年毎に増加し、平成15年度には90%に達するとのことでした。しかし、面的評価の実施計画延長と調査対象延長の比をみると50%に満たない自治体があり、調査対象延長を実施計画の対象と考えていないのではとのことでした。このため、近く環境省より、全ての自治体に対し、対象範囲全域を対象とした面的評価の実施を依頼する計画があるそうです。

なお、自動車環境対策課島村課長補佐からは、面的評価を実施するに当たり各自治体から多くの問題点が寄せられているが、今年度、環境省で直接コンサルタント若しくは自治体に委託して測定・評価を行い、その結果などを十分検討し、問題点に対する環境省としての見解を示していきたいとの説明がありました。

そして今後の取り組みとしては、自動車騒音対策において具体的に如何なる対策が必要であり可能であるか検討を進めていくそうです。

最後に当会主査である川崎市の沖山さんから、平成14年4月23日に第1回春季研究発表会が開催されるとのお知らせがありました。この発表会では、活発な討議をしてもらうために、初めての試みとして、オーガナイズドセッションによる発表会形式としました。今回の発表会では、床衝撃音分科会、低周波音分科会、環境騒音振動行政分科会、不思議音分科会がオーガナイザーを努めます。これらに関連する一般講演も積極的に募集しています。

今例会はこのような活発な討議を重ね、さらに会員の皆様から多くの研究発表申し込みがあることを期待して閉会となりました。

(千葉市大気保全課 松島貢)

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出版事業委員会の新刊計画のお知らせ(Vol.26 No.1)

出版事業委員会の新刊計画のお知らせ

出版事業委員会では現在、次の2つの新刊書を2002年に出版できるよう企画編集を行っております。

1.「建物における騒音対策のための測定と評価」

出版予定時期 2002年6月,B5版,約300ページ,価格約7000円。

出版趣旨 騒音制御の実務において最初に行うことは,何から,どのような騒音・振動が,どんなメカニズムで発生して,建物等をどのように伝搬し,騒音・振動となって被害を与えているのかを定量的に明らかにすることです。本書はこのような要請に応えるための,「測定」「解析」「評価」のノウハウを,わかり易く具体的な事例に沿って示すことを意図しています。何時,何処で,どんな条件で,という騒音・振動のT.P.Oを特定して定量化するのは至難の技です。測定器に使われることなく測定器を使いきり,対策をイメージしながら自分の耳で聞き肌で感じることの重要性を訴求し,人間感性測定法を解説したのが本書の特徴です。(安岡正人主査の出版趣意書より)

2.「騒音規制法の解説(仮称)」

出版予定時期 2002年5月,A5版,約600ページ,価格約4000円。

出版趣旨 最近は騒音規制法や関係法令の改定が頻繁に行われており,それらについての統一的な解説が求められています。また,騒音規制法も昭和43年以来長い年月を経ており,騒音関係技術の進展や環境法令の整備に伴い法令解釈や技術指導においても従前と異なる点が多々あります。そのため,適切な法の運用を図り,騒音規制への国民の理解を得るために,広く騒音規制法に係る情報を提供することが必要となっています(末岡伸一主査の出版企画趣旨より)。本書は本工学会がこのような要請に応え,騒音対策関係者の必携の書として企画するものです。

なお,以上に続く出版企画としては,「騒音制御用語事典(仮称)」がその具体化に向けて検討されています。

(出版事業委員会委員長 寺尾道仁)

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騒音・振動講習会への期待(Vol.26 No.2)

騒音・振動講習会への期待

事業部会では,年に2回,騒音・振動講習会を開催しています。寄せられたアンケートから,講習会への意見,本学会への要望などをまとめてみました。

講習会は,通常一日目が講義,二日目が測定器等を使っての実習およびQ&Aセッションという構成で行われます。昨年6月には例年通り初心者向の基礎講座を,11月には騒音に係る環境基準の評価マニュアルの解説と測定方法の実習を行いました。

受講者の多くは,実際に測定器を使って実習ができることをとても有意義に感じているようです。実習では,測定データをレベルレコーダに記録し,値を読み取ってから手計算でLeqを算出するといった,最近の測定器が自動で行う計算を,あえて自分の手でやっていただく機会を設けていますが,これについても「やってみて初めて測定値の意味がわかった」といった声が聞かれます。講義・実習終了後に講師や事業部会委員が答えていくQ&Aセッションも好評で,講義に関する質問ばかりでなく,日常業務で困っていることなど,大変多くの質問が寄せられます。

アンケート中の「今後開催してほしい講習会のテーマは?」という設問に対して,常に希望が多いことを受けて企画されたのが,2月15日に行われた第47回騒音・振動講習会「低周波音の基礎と測定方法」です。この講習会は講義だけの講習会となりましたが,今年度3回目の開催にも拘わらず,70名近くの受講者が大変熱心に受講され,関心の高さが窺えました。

感想として多いのは「実例を聞くことができて参考になった」といったもので,受講者のみなさんが実務に直接役立つ情報を求めていることがわかります。またアンケート全体から窺えるのは,受講者のみなさんの多くが,住民やユーザーといった,実際に問題を抱える人たちに非常に近い「現場」にいるということです。これでいいのだろうかと不安に思いつつも,確認する術がなく実務を進めている方が,講習会でみんなと一緒にやってみて自信をつけたり,ちょっとした疑問でも長いこと引きずってしまっていたものが,講習会を通じて解消されたといった,明るくほっとしたニュアンスを感じるアンケートが多くありました。また東京で開催される講習会に,九州,沖縄,北海道等遠方の方々もたくさん参加されていることにも,受講者の熱意が感じられます。

このようなことから,私は騒音制御工学会には「より身近に感じることのできる学会」という役割が求められているのではないかと思っています。あまりおすましをせずに,気軽に参加できる学会。そういった存在であってほしいということを百数十枚のアンケートから感じました。

(事業部会委員 千代田化工建設(株) 中村ひさお)

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近畿府県主要都市の騒音・振動行政担当者会議(Vol.26 No.2)

近畿府県主要都市の騒音・振動行政担当者会議

先に,本会員コラムで関西における騒音・振動行政の取り組みについて, 第53回近畿府県主要都市騒音振動連絡会(13.7.11神戸市)及び環境省騒音 振動係長高尾氏のご出席を得て多数の自治体が参加した低周波音の情報交 換会(13.8.10大阪府)について紹介し,多くの行政担当者に関心を持ってい ただきました(本誌Vol24,No5)。今回,新年を迎えた関西における騒音・ 振動行政の動きを紹介します。

第54回近畿府県主要都市騒音振動連絡会は,本年2月5日に京都市の主 催で開催されました。

議題は,

・環境影響評価における低周波音の取扱 (ほとんどの自治体は低周波空気振動として認識しており,G特性を利用し ていない。)

・自動車騒音の面的評価の実施方法(ほとんどの自治体は検討中。)

・自動車騒音測定結果が要請限度を超過した場合の対応及び反射音補正の取扱

・特定施設等の届出に係る技術審査(ほとんどの自治体ではマニュアル無し。)

・苦情の未然防止

・騒音の規制基準

・鉄軌道騒音・振動への対応等

でした。

議題により,府県と市との間で認識の差がみられました。

また,兵庫県内では,第19回騒音・振動連絡会が1月16日に明石市の主催で 開催されました。

議題は,

・警報音による苦情対応

・特定建設作業以外の作業による騒音苦情対応

・県条例「一般工場等に対する命令等」の運用

・連棟でのカラオケ騒音による苦情対応

・環境騒音「道路に面する地域」の評価

・移動販売車の拡声器騒音苦情対応

・道路騒音・振動の苦情対応

・低周波音の測定方法に関するマニュアル」解説

でした。

議題によっては以前から課題になっているものもあり, 環境省が作成したマニュアルが自治体に十分浸透していないなどの問題について 指摘がありました。
地方分権の推進に伴い指定都市(現12),中核市(34),特例市(30), 騒音規制法施行令で指定する市(15)が増えている現状から,騒音・振動行政の 実務を行う自治体担当者のための研修,講習会の必要性,重要性が高まっています。 このようなニーズに本学会は,応えるべく役割を担っていると考えています。

(騒音振動行政分科会 神戸市 瀬林 伝)

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環境騒音振動行政分科会020529開催(Vol.26 No4)

環境騒音振動行政分科会020529開催

平成14年度第1回環境騒音振動行政分科会定例会が,5月29日環境省において開催されました。出席者は委員と環境省の方々を含めて16名でした。

会議冒頭に,本年2月に大気生活環境室に着任された上河原室長から挨拶を戴きました。この中で,大気生活環境室では今後,低周波音と交通関係の騒音・振動問題に取り組むとの方針を明らかにされました。

討議内容は,まず,大気生活環境室の佐野氏から,騒音振動行政における最近の動向に関する解説がありました。昭和55年から平成12年までの全国の騒音に関する苦情件数は,減少傾向を示している。 しかし,地域別に見ると大都市では騒音苦情件数が増加傾向を示している。 発生種類別では,工場に係る苦情件数は減少しているが,建設作業は横ばい状況を示している。 この減少理由としては,規制行政の効果と推測できる。発生源別の内訳は,工場及び建設作業とも指定地域内の未規制施設の苦情件数が多い解析結果であった。

次に,低周波音に関しては,平成12年度から平成13年度にかけては苦情件数が大幅に増加していた。この要因としては,マスメディアに取り上げられたり,低周波音に対する誤解があると考えている。この対応としては,測定マニュアルの周知を図り,精度の高いデータを収集し、原因究明及び対策手法の確立を図って行く。環境省から低周波音に関する資料として, 平成14年3月に低周波音防止対策事例集を発表し,今年度中に全国状況調査結果の発表を予定している。 振動規制に関しては,振動規制法制定以来改訂を行っていないため,諸外国の規制と差が見られるので是正を検討中である。 本年度の音風景保全全国大会が,10月24日から25日に松山市で開催されるので,広く参加をお願いいたしますとのことでした。

次に,自動車環境対策課島村課長補佐から,平成12年度自動車交通騒音の状況について解説していただきました。平成12年度に面的評価を実施した自治体は,義務付けられた95自治体のうち27自治体で,全国的に面的評価が進んでいない状況であった。今後2~3年のうちには全国で実施していただきたい。全国の面的評価が得られた段階で,自動車騒音対策の具体的な施策を策定する考えである。環境省としても,現在のところ,自治体への支援は測定器整備だけであるが,今後別の形での支援を検討しているとのことでした。

最後の討議で,本分科会の主査を長期にわたり務めた沖山氏が本学会副会長に就任するため後任の主査選出を行い,千葉県環境研究センターの石井晧氏を満場一致で選出して閉会といたしました。

(千葉市大気保全課 松島貢)

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施設見学会報告地上150mから聴く東京の音環境 ~東京タワー展望台リニューアル(Vol.26 No.4)

施設見学会報告地上150mから聴く東京の音環境 ~東京タワー展望台リニューアル

地上150mから聴く東京の音環境
~東京タワー展望台リニューアル

事業部会では、5/28午後、開業以来初めて大規模改修が行われた東京タワー展望台において施設見学会を開催しました。

地上施設内会議室にて、今回のリニューアルプロジェクトのリーダーを務められた日本電波塔(株)の相沢氏から東京タワーの歴史・役割やリニューアルの経緯を、設計/施工を担当した千代田化工の斎藤氏から全体的なデザインコンセプト、中村から音による環境演出の概要の説明を受けた後、地上150mの大展望台および地上250mの特別展望台を見学しました。

特別展望台ではガラスやアルミといった硬い印象の素材を使った意匠デザインに合わせたパブリックアート的な演出音、大展望台2階ではゆっくりと展望を楽しむために周囲の人々の出す音を包み込み、方角によって印象の変化する演出音、カフェと下り用エレベーターの待合いエリアのある1階では少しポップに馴染みやすい演出音がそれぞれに流されています。いずれもあくまでも主役である「眺望」を引き立て、目立つことなく気にならない音環境を創り出すことを目標にしています。

東京タワーは毎日のように目にはするけれど、登ったのは初めて、あるいは数十年ぶりという参加者が多く、純粋に楽しんでいただける見学会となりました。

リニューアル以後、来場者が3割アップしたということで、見学会当日も平日にも拘わらずかなり混雑した状態でしたが、天候に恵まれ、最高の眺望を体験することができました。

今回のリニューアルのきっかけとなった地上波デジタル放送対応の送信システム工事が続いていたため、屋外での東京上空の環境騒音体験は十分にできませんでしたが、全ての工事が終了すれば、地上250mの環境騒音体験も可能なため、またあらためて見学会を企画したいと思います。

(元事業部会委員 千代田化工建設(株)中村ひさお)

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出版事業委員会からのお知らせ(Vol.26 No.5)

出版事業委員会からのお知らせ

この度,日本騒音制御工学会出版事業委員会を寺尾道仁先生から引き継ぎました。

工学会の果たすべき役割も,会員による研究活動や研究発表などを中心に多岐に渡っていますが,これに加えて会員や会員外へのサービスも工学会が果たすべき大事な社会的貢献活動です。そのような活動の一環として,工学会のアクティビティを示すために本委員会の役割がある。そう考えています。

本委員会が工学会の活動を担う有力な組織として存在いたしますことは,創立20周年記念「騒音制御工学ハンドブック」刊行を始めとした出版で象徴されるように,会員各位の知るところです。微力ながら,その名に恥じない活動をと気が引き締まりますが,成果ばかりを追うことはやめようとも考えています。

さて,あらためて本委員会の活動方針を申し上げますと,これまでの継続案件の遂行と新たな企画の提案となります。これについて第1回目の委員会で議論した結果を披瀝して,皆様方のご意見を頂ければ幸いと思います。

継続企画で具体的な刊行が間近なものは以下の2件です。

「建物における騒音対策のための測定と評価」は執筆段階も佳境に入り,来年2~3月の刊行を目指して担当委員を中心に奮闘中です。次いで「騒音規制法解説(仮題)」は,約470ページで行政関係者を中心購読者と考えた企画で,執筆者数も限られているためか,年内刊行が期待されています。

この他,何点か継続的に議論している案件があり,なかには長年の検討にも関わらず進展が見られないものあり,「用語事典」や「振動規制法解説」等の気合いの入った企画として期待されているものありの状態ですが,企画の見直しを含めた今後の活発な議論が必要と考えています。

最後は,やはり新委員会のオリジナル企画の提案もしていきたいというのが一致した考えです。まだ議論が開始されたばかりですが,騒音の計測や予測の実務担当者が,できるだけ速く知識を吸収できる,同僚や新任者,一般の方にわかりやすく解説するのに役立つ,さらに一般の方向けの啓蒙書のような比較的柔らかい内容の出版計画で,まずは議論が盛り上がりました。会員各位の経験とお知恵を拝借したいと考えています。ご希望などは大歓迎です。

最後になりますが,工学会会員が総力を挙げて出版したともいえる「騒音制御工学ハンドブック」の購入と紹介をあらためてお願い申し上げます。

(出版事業委員会委員長 岩瀬昭雄)

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橘教授の2001レイリーメダル授賞,および平成14年度環境保全功労者表彰(Vol.26 No.5)

橘教授の2001レイリーメダル授賞,および平成14年度環境保全功労者表彰

および平成14年度環境保全功労者表彰

橘秀樹先生(東大生研教授,現騒音制御工学会会長)が今年3月末に,イギリス音響学会より2001 Rayleigh Medal を授賞されました。この賞は音響理論の原点ともいえる”Theory of sound”の著者であり,著明な物理学者でもあるLord Rayleighにちなんで贈られるものです。日本人としては初めての授賞であり,工学会会員にとっても大変名誉なことです。授賞理由は,

「建築音響・騒音に関する一連の研究」

「音響インテンシティ法をはじめとする音響計測法に関する一連の研究」

「音響関連国際規格の制定における功績」

で,先生の長年の研究成果およびICA, I-INCE, ISO,など数々の対外活動が国際的にも高く評価された証といえます。

さらに,今年6月5日,橘先生は環境大臣より平成14年度環境保全功労者表彰を受けられました。この表彰は環境保全、地域環境保全及び地域環境美化に関し特に顕著な功績があった者(団体を含む)に対して,その功績を讃えるために毎年行われるものです。先生の場合は、環境保全の推進のため,多年にわたり顕著な功績のあった者・団体に与えられる「環境保全功労者表彰」に該当し,全部で11件のうちのお一人です。具体的には、以下の2つの功績に対するものと伺っています。

中央環境審議会騒音振動部会騒音評価手法等専門委員会委員長として「騒音評価等の在り方について」を答申(平成10年5月22日)及び「騒音評価手法等の在り方について(自動車騒音の要請限度)」の答申(平成11年10月6日)のとりまとめに尽力した。

大気・水・環境負荷分野の環境評価技術検討会検討員及び同検討会騒音WG座長として報告書のとりまとめに尽力するなど、騒音分野の環境影響評価において多大な貢献をした。

騒音制御工学会の大きな目標でもある環境保全に関し特に顕著な功績があった者として認められたことは,大変喜ばしいことです。

橘先生の2つの授賞を祝うため,7月29日には200人近い関係者が東京に参集し,先生を囲んで和やかな一時を過ごしました。

(小林理研 山本貢平)

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研究部会紹介(Vol.26 No.6)

研究部会紹介

2002年6月から,研究部会の部会長を務めております。研究部会は,「騒音及び振動の制御に関する学術・研究の発展と普及を図り,もって生活環境の保全と向上に寄与する」ことを目的とした本学会にあって,(1)技術的調査・研究の推進,(2)ISO,IEC,JIS等の規格の立案と審議,(3)その他,学会の技術的,学術的問題を担当する部会と位置づけられています。

この研究部会の特徴は,その傘下に,多くの分科会を持っていることです。現在,遮音,床衝撃音,環境騒音振動行政,騒音伝搬,不思議音,低周波音,作業環境騒音,アクティブコントロール,サウンド・アメニティ,騒音ラベリング,環境振動評価,道路交通騒音等,家庭用設備機器発生音測定法,道路交通振動予測式作成の計14分科会を擁しております。これら個々の分科会活動の様子は,折に触れてこの会員コラム欄で紹介されてきましたし,また,今号には簡単ですが,研究部会報告として,各分科会の昨年の活動が掲載されています。研究部会自体は,年に4回程度の会合を持ってきていますが,各分科会は,それぞれ自由な活動を行っています。本部会は,このように,分科会活動を基礎としたボトムアップ型の運営を特徴としてきました。

しかし工学会発足から四半世紀以上が経過し,ボトムアップ型の運営だけでは,必ずしも十分ではないとの認識から,2002年春からは,これらのうちのいくつかの分科会を担当分科会としつつも,研究部会が企画に責任を持つ形で春期研究発表会が発足しました。つまり,秋がいわばなんでもありの,自由な研究発表討議の場とすれば,春は研究部会がコーディネートするスペシャルセッション形式の研究発表会ということです。現在,研究部会では,更に秋の研究発表会をより魅力あるものとするためには,どのような運営形態をとればよいのか,真剣な討議を行っております。

更に,橘会長(研究部会員でもあります)の提案により,騒音に関する問題を自由に討議できる「懇談会」発足に向けた準備を行っています。これは,研究発表会よりも自由な雰囲気で意見交換が行え,結論を出すと言うよりも,継続して活発な議論ができる場を持ちたいという問題意識によるものです。

このように,研究部会は,徹底した実学の視点から騒音制御をとらえてゆく本学会にあって,技術的・学術的な基礎・基盤を形作るための重要な責務を負った部会です。部会員一同,この自負を持って部会の運営に当たっておりますので,会員各位の更なるご理解・ご協力をお願いいたします。

(東北大学電気通信研究所 鈴木陽一)

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環境騒音振動行政分科会021030開催(Vol.26 No.6)

環境騒音振動行政分科会021030開催

平成14年度第2回環境騒音振動行政分科会定例会が、10月30日環境省において開催されました。出席者は委員と環境省の方々を含め14名でした。

会議冒頭に、大気生活環境室の上河原室長から、平成15年度における環境省の事業方針概要について解説して戴きました。

討議に入りますと、まず、大気生活環境室石井補佐から、平成15年度における騒音振動事業計画の説明がありました。事業内容は継続事業が中心で、騒音規制法施行事務、近隣騒音等対策推進、騒音低減新技術状況検討調査、低周波音の影響に関する調査、騒音による影響の評価に関する総合的研究でした。しかし、新規事業として、建設作業騒音、航空機騒音、新幹線騒音及び自動車騒音の単体規制見直しで交換用マフラーについての規制手法等の在りかたの検討を来年度から5年間かけて実施する予定である。評価方法はエネルギーベース評価を念頭におき、規制基準はアノイアンスを考慮して設定したい。来年度は、騒音特性の把握とアノイアンス等に関する調査を計画しているとのことでした。

続いて、大気生活環境室大野係長から、低周波音に関する最近の動向について解説がありました。自治体に寄せられた低周波音の苦情件数は、平成12年度115件、平成13年度110件程度で、苦情件数の増減については今後も監視をしなければならないと考えている。本年8月末に全国保健医団体連合会から陳情があり、住民からの低周波音に関する苦情が申し入れられた時には、門前払いせずに測定をして現況把握をして欲しいとの要望があったそうです。低周波音に関しては、正確な情報が伝わっておらず、行政と住民の間で意見のくい違いが起こっているケースがある。このような状況を踏まえ、住民を納得させられるような対応ができる体制を作りたいとのことでした。

大気生活環境室大河原室長から、一般環境騒音調査に関しても、全国規模で測定方法や環境騒音適合状況を把握する必要があるので、一般環境騒音調査を5年間隔くらいに実施できないだろうかとの提案があました。これを受けて、最初から全国レベルの調査は困難だと思うので、実現可能な自治体で実施し、本分科会でデータの取りまとめを行ってはどうかとの意見が出ました。

最後に、これからの本分科会の事業計画として、一般地域における環境騒音と低周波音に関するWGの設置、ミニシンポジウムの開催と本分科会関西例会について協議して、閉会となりました。

(千葉市大気保全課 松島 貢)

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(Vol.25, 2001)

環境騒音振動行政分科会(Vol.25 No.1)

環境騒音振動行政分科会

平成12年度第1回環境騒音振動行政分科会定例会が,11月16日環境庁において開催されました。出席者は委員と環境庁の方々を含めて23名で,現在話題の「低周波音の測定方法に関するマニュアル」,「道路交通騒音沿道対策の充実強化について」及び行政分科会で取りまとめた「環境騒音調査の手引」について討議しました。

会議に先立ち環境庁大気生活環境室の藤田室長から次のお話がありました。低周波音測定マニュアル策定とこれに基づく実態調査計画について。OECDの「環境に配慮した持続可能な交通に関する国際会議」において,2030年を目途に騒音レベルの目標値を屋外で最大、昼間55dB(A),夜間45dB(A)以下とすることが,来年の閣僚会議に報告され了承される見通しである。2000インターノイズでは,各国の騒音に係る基準法制度等を比較出来る機会を作るプロジェクトが動き出したとのことでした。

討議ではまず,低周波音の測定方法に関するマニュアルについて,環境庁大気生活環境室高尾係長から,マニュアル策定の背景と,これからの低周波音に関する事業計画について解説を頂きました。低周波音の実態把握のために,都道府県政令市中核市を中心とした自治体は,本年度の補正予算が認められた低周波音実態調査に積極的に協力して頂きたいとのことでした。特に低周波音の人体影響については,この調査結果をもとに来年度から調査研究を手がけ,5年後を目途に有効な低周波音対策の立案を行う予定とのことでした。

次に,環境庁自動車環境対策第1課島村課長補佐から,道路交通騒音対策検討会中間報告の道路交通騒音対策充実強化案のうち「沿道対策の充実強化の方向について」解説を頂きました。その主な内容は,沿道法積極的活用と沿道耐騒音化対策を推進するために,次の4点について検討するとのことでした①沿道の騒音レベルに関する情報提供,②住居等の防音性能の表示・説明,③幹線道路沿道に立地する住居等の防音性能の確保,④沿道における住居等の立地抑制等。

最後に,末岡委員から行政分科会でまとめた「環境騒音調査の手引」について解説がありました。本手引きは,環境騒音調査に関する詳細事項を定め,この手引き書があれば測定から評価まで出来る,をコンセプトにして本会委員が執筆したものであります。なお本書につきましては,学会事務局に問い合わせて頂ければ入手出来ます。そして今後の行政分科会の活動として,騒音振動関係法令・技術的指導関係の解説書を作成することを取り決めて,本日の定例会が閉会となりました。

(千葉市環境保健研究所 松島 貢)

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講習会報告(Vol.25 No.1)

講習会報告

去る11月9~10日に新宿太平会館にて、第44回技術講習会を開催した。テーマは”騒音に係る環境基準の評価マニュアルの解説と測定法の実習”である。第一日目は東京都の末岡さんと小林理研の山本さんに講師を依頼し、評価マニュアルを主体に講義をしていただいた。環境庁の藤田室長のお話が、国会との関係で夕方になるという突然の予定変更もあったが、一応予定通りであった。2日目はそれに基づいた実習主体の講習会であり、千葉市の松島さんと長野県の内田さんにそれぞれ講師をお願いした。講師陣の説明がとても上手なためか、両日とも皆熱心に受講しており、講師の先生方の休憩時間もとれないほどであった。最後にQ&Aということで、参加者の方々からたくさんの質問をいただいた。回答者に東京都の末岡さんをお願いし、懇切丁寧に回答していただいた。時間の関係ですべての質問にお答え出来なかった事はお詫びしたい。今後、本誌のQ&Aコーナーにも取り上げて順に回答していきたいと考えている。

テーマが今日的であったためか、定員を60名で募集したにもかかわらず好評であり、早々の締め切りとなってしまった。内容に実習がある関係で、どうしても大幅な増員ができず、10名程度の増員が限界であった。申し込みに遅れ、断られた方々には大変申し訳ないと思っている。本会の講習会はまた本年も継続的に開催されるので、またの機会にということでお許しいただきたい。また、今回の会場が若干横に広い関係で、受講者の位置によってはスクリーンが見にくい場所もあり、その点に関してもお詫びしたい。

今後の講習会の予定は春に基礎編、秋に応用編という方針は守りながら、その時々に合致したテーマを選定して企画していくつもりである。また、会場に関しても、もう少し柔軟な対応の取れる場所を選定して、受講者の方々にご迷惑をかけないように心がけたいと思っている。

(事業部会長 安藤 啓)

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神奈川県生活環境保全条例の一部改正(Vol.25 No.2)

神奈川県生活環境保全条例の一部改正

「神奈川県生活環境の保全等に関する条例」が一部改正され、平成13年4月1日から施行されます。

最近、人々のライフスタイルの変化に伴い、夜間営業の大型小売店では、来店者の使用する自動車の発着音、ドアの開閉音及び人声等による騒音が、駐車場など店舗周辺から発生し、近隣の住民の安眠を妨げる状況が出てきています。

神奈川県では、このような夜間の騒音に対して、静穏を保持し、生活環境を保全するため、神奈川県生活環境の保全等に関する条例を改正し騒音規制の強化を図ることとしました。

改正の主な内容は、

    • ・大型小売店(店舗面積500㎡を超える店舗)において夜間(午後11時から翌日6時)に小売業を営む者は、店舗の駐車場及びその周辺において騒音による公害が生じないように努める。

騒音による公害を未然に防止するため、夜間に小売業を営もうとする事業者に対し、小売業を開始する30日前までに事前届出を義務付けています。

・公害が生じていると認められる場合は、営業時間の変更等必要な措置を講ずるよう勧告や命令をする事ができる。

・公害と認める判断基準については、検討会を設け、数値を取入れた客観的な基準を新たに策定し、等価騒音レベルの考え方を基本とする評価を取入れました。その判断基準は、苦情者の居住する建物の外部で、1時間あたり騒音レベル60dB相当の音が、360秒を超えて発生している場合となります。

・営業開始の届出、変更の届出に違反した場合又は営業時間の命令に違反した場合は、罰則規定が適用されます。

夜間騒音の評価尺度としては、「1時間当たり60dB以上の騒音の加重総暴露量」を採用することとしましたが、これは衝撃音については最大値及びその暴露回数から算出される暴露量、連続音については騒音レベルとその継続時間から算出される暴露量のそれぞれの和とします。ここでいう衝撃音とは自動車のドアの開閉音等、連続音とは自動車エンジン音、人の話し声、歩行音、荷さばき作業音等が含まれます。

騒音の発生を判断する場所(測定場所)は被害を訴える者の住居で騒音を受けやすい面の外側とします。

これらの音が計算により60dB相当で1時間当たり360秒を超えて発生している場合を数値的判断基準とし、他の要件も考慮して公害と認めることになります。

(神奈川県環境農政部大気水質課 鈴木有美)

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「大都市騒音振動主管担当者会議」の報告(Vol.25 No.2)

「大都市騒音振動主管担当者会議」の報告

平成12年度の標記会議が12月4日~5日に大阪市において開催された。この会議は東京都と12の政令指定都市の騒音担当課長職で構成されており毎年1回持ち回りで開催し,今回は30回目である。

議題は,「騒音に係る環境基準の評価方法について」を主体として討議された。

特に,平成11年4月1日からLAeqの評価による新環境基準が施行され,これを受けて平成12年4月1日から自動車騒音の要請限度も改正し施行されたが,これと合わせて同日から自動車騒音の常時監視が政令指定都市等の法定受託事務に位置付けられたことから各都市ともそれぞれの実情にあった測定を計画し,実施している。このため,当会議では,これまでの定点観測点の見直しの予定や面的評価を行う区間の選定方法等を共通の課題として取り上げ,これらを主体に意見交換が行われた。多くの都市から面的評価については相当な事務量の増加になることから,将来はGISを利用した評価支援システムの導入を計画しているとの報告がされた。また,先駆的な都市では,国の緊急雇用対策費を活用して市内の交通センサス対象道路を対象に今年度中に自動車騒音マップを作成するとの報告もされるなど各都市の報告に対し活発な意見交換や討議が行われた。

なお,時間の関係で当日意見交換や議論ができない項目については,「承り事項」として紙上での意見交換を行っているが,主な項目としては,大規模小売店舗立地法関係が最も多く,次ぎに一般地域における環境騒音に関する問題,深夜営業店に付設する駐車場の騒音問題,建設作業問題など13項目が各都市から提出されていた。大規模小売店舗立地法関係については今日的な課題であり,これも議題に準じて活発な意見交換が行われた。

また,環境庁から来賓として大気保全局大気生活環境室から高尾智満振動騒音係長,自動車環境対策第一課から滝澤 晶主査,自動車環境対策第二課から瀬戸加奈子専門官にご出席を頂き,各議論に講評を頂いた後,滝澤主査から「道路交通騒音対策の充実強化について」,高尾係長から「低周波音について」の講演があり盛況の内に閉会した。

(川崎市環境局公害部騒音振動課 小倉 隆)

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環境省における低周波音の取組について(Vol.25 No.3)

環境省における低周波音の取組について

環境省では,有効な低周波音対策を講じるため,低周波音の実態の把握・人体に対する影響の調査に取り組んでいます。

平成12年10月に,「低周波音の測定方法に関するマニュアル」を策定し,地方公共団体に送付しました。このマニュアルは,主に苦情が発生した場合における測定方法を示したもので,G特性音圧レベル及び1/3オクターブバンド音圧レベルの測定を基本としています。このマニュアルは,統一的な測定方法を示したものであり,今後,精度の高いデータが集積できるものと考えています。

さらに,データを集積するために,43の都道府県・市に低周波音の測定を委託しました。この測定に関しては,測定方法の詳細を委員会で検討し,委託先の自治体に対し説明会を行いました。測定対象の音源は,(1)低周波音に関係すると思われる苦情が発生している地点,(2)低周波音の問題が生じる可能性がある地点とし,原則として,音源側・生活環境側各1地点以上で測定を行いました。具体的には,工場・事業場,橋梁,新幹線のトンネル付近で行われました。また,測定者からは,風の影響・測定対象以外の発生源の影響に苦慮したこと,苦情者が最も低周波音を感じる場所と測定値が最大になる場所にずれが生じる場合があったことなどの感想が聞かれました。この測定により得られたデータは,平成13年度に解析を行う予定です。なお,測定機器の一部を環境省から測定を実施した都道府県・市に無償貸与していましたが,これらの機器は,今後も当該自治体で利用され,測定データを提出していただく予定です。

また,平成13年度から低周波音が人体に及ぼす影響の調査を行う予定です。今回の調査では,生理的影響や心理的影響について調査します。特に,心理的側面も含めた苦情の実態を把握し,最小感覚閾値等との比較検討を行います。この他にも人体影響に関する調査を4~5年程度実施する予定です。

環境省としては,これらの測定,調査から得られた知見をもとに,有効な低周波音対策を講じて参る所存です。

(環境省環境管理局大気生活環境室 高尾智満)

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「大店法」,低周波音測定,自動車騒音測定法をテーマに意見交換 —– 全国環境研協議会関東甲信静支部騒音振動専門部会・研究連絡会 —– (Vol.25 No.3)

「大店法」,低周波音測定,自動車騒音測定法をテーマに意見交換 —– 全国環境研協議会関東甲信静支部騒音振動専門部会・研究連絡会 —–

標記の研究連絡会が,3月9日に千葉県廃棄物情報技術センター会議室(市原市五井)で開催された。今回の担当は千葉県環境研究所である。この会議は,夏季の専門部会のほかに,それを補う意味で年に1回行われており,目的はその時々の課題の検討や意見・情報交換をすることである.参加したのは,関東甲信静の1都8県2市(1県3市が欠席)の主に研究機関担当者である(行政から千葉県3名,川崎市1名が参加)。

以下,プログラムに沿って紹介する。

・「大店法」騒音予測ソフトについて

千葉県では,行政が審査業務を行っているため研究所では実務がないが,静岡県(研究機関),神奈川県(研究機関),千葉県(行政)の各担当者の具体的な苦労話が聞け,予測方法を始め審査業務そのものの実態を理解でき参考になった。

・低周波音測定について

新型低周波音レベル計について,各都県市の機器導入状況や測定器操作時の留意事項(バッテリーの消耗が早い)等について情報を入手できた。また,具体的な苦情事例をもとに測定方法や対応上の問題点について有意義な情報交換をした。

・騒音及びその測定について

自動車騒音測定の課題各都県市の自動車交通騒音の測定状況を把握できた。測定評価方法については,今後検討しなければならない課題が多いと認識した。国における騒音に関する検討会の現況について国における騒音関係の最新の動向を知ることができ,ためになった。

全体として,各都県市の研究機関の騒音振動関係担当者が一同に会して,情報交換あるいは,共有した情報をもとに検討することができ,非常に有意義であった。

(千葉県環境研究所 樋口茂生・石橋雅之)

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工学会ホームページのリニューアル(Vol.25 No.4)

工学会ホームページのリニューアル

本工学会のホームページは、工学会の諸活動で得られた成果や情報を広く公開し、会員の情報共有化を促進することを目的に、1998年3月に開設されました。以来、会員の皆様からいただいたご助言やご協力により、音の豆知識、用語解説、サウンドライブラリ、工学会通信、会員コラム、Q&A等の内容を追加・更新し、ホームページの独自情報と学会誌情報のより早い提供を継続的に行うことができています。

ホームページの運営を担当する広報委員会では、開設以来2万数千件の多数のご利用を踏まえ、より親しみ易く、より利用し易いホームページとなるよう、本年4月1日よりリニューアルを実施すると共に新アドレス(https://www.ince-j.or.jp/)へ移行しました。

このリニューアルにより情報項目の一覧や更新履歴を加え、掲載内容が一目でわかり、見たい情報に簡単にアクセスできるようになりました。さらに、研究発表会への講演申込をホームページ上で行えるようにするとともに、既刊の学会誌の目次集を整備し、書籍資料コーナーを新設するなど、内容の充実と利便性の向上に努めています。また、ホームページ上に問合せ先として工学会事務局のメールアドレス(office@ince-j.or.jp)を示したことから、非会員の方々からの質問も増えてまいりました。

当ホームページは、会員・非会員を問わず相互の情報交換を促進することができる場として、工学会の活性化に繋がるものです。広報委員会では、今回のリニューアルにとどまらず、更なる使用性の改善、新たな情報・データベースの追加などを検討し、ホームページを進化させてまいります。今後とも多くの方々にご利用していただき、皆様の変わらぬご指導・ご助言を賜りたくお願い申し上げます。

(広報委員会 三宅龍雄)

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環境騒音振動行政分科会(Vol.25 No.4)

環境騒音振動行政分科会

平成13年度第1回環境騒音振動行政分科会定例会が5月30日環境省において開催されました。出席者は委員と環境省の方々を含めて17名で,環境省大気生活環境室と自動車環境対策課から平成13年度事業についての説明と、行政分科会の平成13年度活動計画について討議いたしました。

会議に先立ち環境省大気生活環境室の森本室長から着任のご挨拶と、本年度の大気生活環境室の事業計画概要についてお話戴きました。

討議内容は、まず環境省大気生活環境室石井補佐から,大気生活環境室の事業「騒音による影響の評価に関する総合研究」と「低周波音対策に関する調査」に関する説明がありました。

前者は騒音の人体影響に関する基礎資料蓄積を目的とした平成16年度までの継続事業で、本年度は騒音の睡眠影響と住民反応に関するアンケート調査手法の確立に関する研究です。後者は昨年度実施した調査の結果解析を取りまとめ、低周波音の人体影響に関する検討会の立ち上げを計画しているとのことでした。

次に、自動車環境対策課野田主査より、「道路交通騒音モニタリング推計手法確立調査」、「道路交通騒音強化対策検討調査」、「道路交通騒音・振動対策調査」について説明がありました。

この中で、モニタリング推計手法確立調査は、道路交通騒音の面的評価を効率的に行うための推計手法を開発することが目的とのことでした。そして、道路交通騒音・振動対策調査につおきましては、道路交通振動の要請限度などの見直しを含めた対策のあり方を再検討するものであるとのことでした。

最後に、当分科会の13年度事業について討議いたしまして、市民と行政、研究者との意見交流を行い、静かな環境を取り戻すことを目的としたシンポジウムを開催する方向性が見出され、具体案については今後の協議事項とし閉会いたしました。

(千葉市大気保全課 松島貢)

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認定技士の会(Vol.25 No.5)

認定技士の会

現在,本会の会員数は47名で,ほぼ隔月に例会を開催し,そこで主に会員から近況報告,最近の話題等について講演がある。最近では2月に増本 清氏,4月に岡田 健氏,7月に城戸健一氏が講演された。

増本 清氏は,騒音・振動を含めて労働安全コンサルタントで活躍されていて,今回の講演は,ここ数年に発生している社会的な事故あるいは我々の身近に起こり得る事故に関連して,職場に発生する災害を防止するリスクアセスメントについて講演された。なお,続いて本会事務局をお願いしている雨宮明生氏が永年にわたるリスクアセスメントの体験談について興味深い内容で話された。

岡田 健氏は,騒音・振動防止のコンサルタントとして国内外で活躍されているが,1999年から2年間,日本政府から騒音・振動に関するJAICA Expertとしてタイ・バンコックの環境研究・トレーニングセンター(ERTC)に派遣され,この3月に帰国された。今回は,タイの騒音事情について講演された。タイは公害に対する厳しい規制は整備されているが,現状は公害対策が遅れ,市内には古い車が走り,また観光名物のツクツクという三輪車や市民の足であるロングテールボートは日本製中古エンジンを消音器なしで搭載してうるさい音をたてて走り回っている。岡田氏は,途上国で環境対策を行うことは経済面や社会構造から非常に難しい状況であるとともに,公害対策や環境改善の考え方を指導することさえも国民性が絡んだ難しい問題であると話された。

城戸氏は,今も教鞭をとられているが,今回は音響学と情報科学について話された。音響学はわれわれの生活のために古くから非常に重要であるが,その重要なのは,音が情報を運ぶためで,情報科学の考え方と手法は音響学にとって非常に有用であり,それらが音響学の将来の発展の方向を示していることを力説された。

次回は,石井聖光氏のホールの音響設計と建築コンサルタントについて話される予定である。

(世話人 大熊恒靖,藤井圭次)

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第53回近畿府県主要都市騒音振動連絡会報告(Vol.25 No.5)

第53回近畿府県主要都市騒音振動連絡会報告

去る7月11日(水),標記連絡会(本会は,近畿2府,4県,3指定都市,3中核市で構成され,昭和48年の開催以来,我が国で最も長く継続している騒音振動行政担当者の会とされる。)が各自治体の騒音振動担当者約30名の参加のもと神戸市において開催された。主たる議題は,①地方分権推進に係る各自治体の騒音振動条例のあり方,②騒音に係る環境基準の面的評価の公表について,③低周波音について(全国状況調査,苦情対応,対策等)等であった。全般的にみて,地方分権に伴う各自治体間の事務の執行の差,人的組織の低下,会議運営のマンネリ化等の理由により,より活発な論議が見られなかった。

今後,地方分権の推進による中核市,特例市,政令市の指定に伴い,このような騒音振動行政の的確な運用のための担当者連絡会,研究会,情報交換会等の必要性は高まるであろう。しかし,その運営のあり方等について検討する必要があろう。

特に行政分科会は勿論のこと本工学会では,地方の騒音振動行政の動き,要望等を迅速,率直に受け入れ,的確な対応を行わなければならない。そのためには,昭和59年から継続している行政分科会を,例えば行政分科部等に組織改正して,より現実的・弾力的かつ効率的な活動が出来るように知恵をだし,具体化-(一例として行政分科会が平成11年3月(神戸市)及び平成12年9月(大阪)で行った研究会等を全国的に開催し,本工学会の活動状況等について啓発を行い,会員を増やすなど。)-すべき時にきているのではなかろうか。

また,標記連絡会では川原崎(京都府),山下(大阪府),辻本(兵庫県),瀬林(神戸市)が世話人となり,本連絡会メンバー以外の自治体にも呼びかけて,8月10日(金)に環境省騒音振動係長高尾氏の出席を得て,ホットな話題の低周波音についての情報交換会を約50名の参加のもと,活発に行った。

(神戸市 瀬林 伝)

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全環研協議会騒音振動担当者会議開催(Vol.25 No.6)

全環研協議会騒音振動担当者会議開催

平成13年度全国環境研協議会騒音振動担当者会議が,福岡県春日市で平成13年9月12日に,福岡県保健環境研究所の主催で開催された。この会議は,地方公共団体環境研究所の騒音振動担当者の全国会議として昨年度に発足したもので,本年度は全国の試験研究所等から58名の参加を得て盛大に開催された。

会議は,福岡県保健環境研究所加藤所長の開会の辞により始まり,主催県の木本さんの司会により,一般発表として,
騒音規制法令における課題(東京都:現行の騒音規制法令や測定方法の問題点と改正の方向についての考え方の報告),
現行の道路交通騒音振動評価の問題点と改善方向(千葉県:間欠的である道路振動については大型車の振動に着目した評価に妥当性があるとの報告),
道路に面する地域における環境騒音測定方法に関する検討(宮城県:道路に面する地域における環境騒音の測定時期及び測定時間の考察についての報告)が発表された。また,特別発表として,平成12年度低周波音全国状況調査について(環境省大気生活環境室:平成12年度に43自治体に低周波音計を貸 与して実施した低周波音全国状況調査の平成12年度分集計についての報告)自動車騒音の常時監視の実施状況(環境省自動車環境対策課:全環研に加盟している都道府県市65団体に対する自動車騒音の常時監視に係る実績等のアンケートについての集約結果)
が報告された。

全環研協議会では,毎年大気,水質,騒音の各分野で,全国レベルの専門部会を開催しており,その他にも各支部単位で同様の会議が開催されており,地方環境研究所相互の情報交換と研修の場として活用されている。今後も,騒音振動担当者会議を充実させて騒音振動部門として連携していくことを確認し,会議終了後の懇親会を含め,盛会のうちに本年度の会議を終了した。

なお,平成14年度の騒音振動担当者会議は,神奈川県環境科学センターの主催で,騒音制御工学会研究発表会の時期に合わせて開催される予定である。

(東京都環境科学研究所 末岡伸一)

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平成13年度大都市騒音振動主管担当者会議開催(Vol.25 No.6)

平成13年度大都市騒音振動主管担当者会議開催

平成13年10月 4日~ 5日,札幌市において標記の会議が,札幌市,仙台市,千葉市,東京都,川崎市,横浜市,名古屋市,京都市,大阪市,神戸市,広島市,北九州市,福岡市の各政令指定都市の全構成機関が参加し,来賓として環境省の関係職員のご出席を得て開催されました。

当該会議は,昭和49年10月に第 1回の会議が開催され今回は第31回になりますが,毎年その時代の課題となっている騒音振動問題について行政現場の立場から活発な議論や意見交換がされております。

今回は,平成12年 4月から騒音規制法により都道府県知事,政令指定都市の長等に自動車騒音の常時監視が義務付けられ面的評価を行うことになりましたが,これをテーマに第1の議題を「道路騒音面的評価の取組み状況と市民公開のあり方」として各都市より自動車騒音の調査実績や今後の調査計画,GISを活用した面的評価システムの構築の進行状況,パンフレットの作成やホームページなどによる市民公表等について報告があり,それぞれの問題点を抽出するなどして真剣な討議,意見交換が活発に行われました。

第2の議題は,各都市において従来の公害防止の観点のみならず,より良好な生活環境の確保を図る観点から現行の騒音規制法等では対応が困難な騒音発生源について現況の条例を改正して新たな規制を行おうとする動きがあることから,「条例改正に係る騒音防止対策に対する検討について」をテーマとして深夜営業飲食店,拡声機放送,開放型事業場の騒音規制について各都市から現況報告の後,今後の規制方法等について討議,意見交換が行われました。 また,時間の関係で当日討議ができない課題については「承り事項」として紙上で意見交換をしますが,主な項目としましては道路交通騒音関係が最も多く,次に低周波音関係で,続いて大規模小売店舗立地法など12項目が各都市から提出されていました。 なお,低周波音関係については今日的課題であり,これも議題に準じて活発な意見交換が行われました。 また,環境省から来賓として環境管理局自動車環境対策課から野田主査,大気生活環境室から佐野環境事務官にご出席を頂き,各議論に講評を頂いた後,野田主査から「自動車騒音に係る常時監視の現状について」,佐野環境事務官から「低周波音問題について」の講演があり,盛況の内に会を閉会しました。

(行政分科会主査 沖山文敏)

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(Vol.24, 2000)

環境騒音振動行政分科会(Vol.24 No.1)

環境騒音振動行政分科会

平成11年度第2回環境騒音振動行政分科会定例会が11月10日環境庁において開催されました。出席者は委員と環境庁の方々の20名でした。

特に今回は、お忙しい中、環境庁大気生活環境室の藤田室長に出席いただき、ご挨拶と大気生活環境室の現状についてお話しいただきました。その内容は、平成11年度第2次補正予算で、「地方公共団体における騒音モニタリング機器の緊急整備」として、地方公共団体への環境騒音モニタリング機器に対する補助事業を要求した。また、低周波空気振動の測定マニュアルの自治体等への提示、建設作業騒音規制の見直しを検討しているとのことでした。

今回の議題は、自動車騒音の要請限度に関する中環審の答申の説明、本年度のシンポジウム、騒音測定の手引き書作成についての3件でありました。 要請限度に関する答申は、環境庁大気保全局自動車環境対策第1課滝沢氏に解説していただきました。概要は、騒音の評価手法にLeqを採用し、環境基準との整合性を明確にした。測定日数は連続する7日間を代表する3日間。測定方法、区域区分は環境基準に合わせた。限度値は、環境基準に+10dBと近接空間については+5dBで設定した。今回新たに「要請限度は環境基準達成のための施策のひとつで、発生源側の騒音レベルを把握するためのもの」が明記された。告示は平成11年中に、施行は平成12年4月1日を目途に考えているとのことでした。

シンポジウムについては、事業部会長塩田氏より、3月に事業部会が九州でシンポジウムを兼ねた、環境全体の中の音環境をテーマにした講習会を計画しているので、行政分科会と共催にしてはどうかとの提案があり、これを承諾しました。 騒音測定の手引き書作成については、委員の末岡氏から説明がありました。 行政分科会の活動として、騒音全般についてわかりやすく解説した、手引き書の作成を計画している。測定から評価まで一連の流れを示し、この手引き書でとりあえず測定評価ができるものとしたい。環境騒音を主に考え、騒音測定方法以外の留意点について特に明記したいとのことでした。

今例会では自動車騒音の要請限度の答申により、環境基準との関係が明らかになり、これからの自動車騒音について活発な討議が繰り広げられ、さらに当分科会事業としての手引き書作成の提案もあり盛況のうちに閉会となりました。

(千葉市環境保健研究所 松島貢)

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新東京国際空港の見学会(Vol.24 No.1)

新東京国際空港の見学会

平成11年11月12日、事業部会主催の見学会が新東京国際空港にて開催されました。新国際空港公団地域共生部環境管理室の辻さんと斉藤さんに空港内の施設を案内していただき、約30名の参加者がバスに乗って空港施設を見学してまわりました。案内していだいたのは飛行機の消音施設や防音提、情報公開センターなどです。

初めに見学をした消音施設は今年3月に完成したばかりの新しいもので、デュッセルドルフの空港にある消音施設と同様の技術を用いています。建物のような囲いの中に飛行機が1機入ってしまえる大きさで、エンジンなどの試験ができます。このようなタイプはハンガータイプと呼ばれ、国内には唯一のものということでした。この新しい消音施設は、従来から空港で使用している消音施設のとなりに設けられています。従来のものよりも新しい施設の方がエンジン試験時の音を約20dBも下げることができるため、夜中にも使用できるということでした。

防音堤は周辺の地域への騒音の低減を目的とし、滑走路に沿って空港敷地の端に設けられた施設で、約100メートルの幅で盛土をし、植栽をほどこした堤です。騒音低減効果は防音堤の背後で約10dBの効果があると考えられています。作られてから28年が経過した防音堤の植栽は大きく成長し、林のようになっていました。作られた当時まだ木が成長していなかった頃と比較して、現在の防音堤の騒音低減効果はあまり差がないとのことですが、心理的には木が茂ったことで音がより多く遮られるような気分になり、心理面を含めた防音効果は大きいとのことでした。

次に見学をした情報公開センターは地域の住民に空港の様々な情報を提供する施設です。興味深かったのは空港や空港周辺の騒音、水質、大気質などの観測データをリアルタイムで見られることでした。空港が周辺の環境に大変気を配っていることが感じられました。

最後に、以前管制塔として使用していたタワーに案内していただきました。このタワーは新しい空港ターミナルができるまで活躍していたもので、現在はこのタワーのとなりに新しい管制塔が建設され、使用されています。タワーの元管制室に昇る頃には日も暮れ、眼下に美しい空港の夜景を見ながら無事見学会を終了しました。

((株)小野測器 向井ひかり)

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平成11年度大都市騒音振動主管担当者会議開催される(Vol.24 No2)

平成11年度大都市騒音振動主管担当者会議開催される

平成11年11月18日~19日、横浜市において標記の会議が、札幌市、仙台市、千葉市、東京都、川崎市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、北九州市、福岡市の各政令指定都市の全機関が参加して開催されました。

当該会議は、昭和49年10月に第1回の会議が開催され今回は第29回になりますが、毎年その時代の課題となっている騒音問題について行政現場の立場から活発な議論や意見交換がされております。

今回は、平成11年4月に施行された新「騒音に係る環境基準」をテーマに、環境庁から大気保全局大気生活環境室長をはじめ自動車環境第一課、自動車環境第二課の課長補佐、係長などの6名の方々の出席を得て、次の議題について環境騒音低減化に向け国、自治体それぞれの立場から真剣な討議、意見交換が活発に行われました。

議題

・新環境基準の施行に伴う測定計画について

・騒音に係る環境基準」の改正に伴う今後の測定体制等について

・道路交通騒音の測定について

また、時間の関係で当日討議ができない課題については「承り事項」として紙上で意見交換をしますが、その内容は次のとおりです。

・生活騒音相談について

・大規模小売店舗立地法の対応について

・音環境に係る施策の取り組みと今後の予定について

・一般地域の環境基準の評価に係る除外すべき音の処理方法について

・騒音振動関係特定施設の届出に係る電子化の状況について

・球技場から発生する騒音の規制について

・近隣騒音防止対策としての広報活動について

・マンションの地下駐車場に設置される特定施設に相当する送風機の取扱いについて

・新環境基準による自動車騒音の測定(沿道地域評価)について

なお、11月19日は、横浜国際総合競技場の音環境デザイン、競技場周辺の音環境について視察し、盛況の内に会議を閉会しました。

(行政分科会 主査 沖山文敏)

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低騒音タイプの家庭用精米器開発への取り組み(Vol.24 No.2)

低騒音タイプの家庭用精米器開発への取り組み

平成7年に新食糧法が施行されて以降、自主流通米が認められたこと、お米の販売が届け出制になったことから、お米が様々な形で流通、販売されるようになりました。

そのような中で、家庭で手軽に玄米を精米できる家庭用精米器が注目を浴びています。流通の変化によって、米作農家が贈答として親戚にお米を送るようになったり、スーパーなどでも玄米が販売されるようになったことから、私たちのまわりは、案外玄米を入手しやすい環境になっています。お米は精米後1週間で、酸化の進行により風味が落ちてくるため、できるだけ精米したてのお米を食べることがおいしくお米を食べる秘訣といえます。家庭用精米器を使うことで玄米の状態で保存をし、毎日食べる分だけ精米することができるので、家庭で常につきたてのおいしいお米を食べることができます。

しかし、従来の家庭用精米器は精米の発生音が非常に大きく、その大きさは精米器から1mの位置で69dBAもありました。精米中は電話のベルもテレビの音も聞こえなくなるほどでした。家庭用精米器は夜間の使用が多いことやマンションなどでの利用を考えると、隣人に対する音の配慮から、発生音の対策が強く望まれていました。

今後精米器の需要がさらに見込まれることから、長野県工業試験場は、20年前から家庭用精米器の開発生産を行っている(株)柳沢精機製作所と共同で、低騒音化の課題解決に取り組んできました。

発生音の原因は、精米中に精米機構部で米がこすれあうことによって発生する非常に大きな振動で、この振動が各構成部品に伝わり、精米器全体を振動させ、振動音を発生させていました。振動発生源である精米機構部は、精米のノウハウや能力維持の問題があり、構造の変更は困難でした。そこで、精米機構部をモーターも含めて一体と考え、発生した振動が他の部分に伝達しないよう、周囲と振動絶縁することにしました。この対策によって、新しい家庭用精米器の発生音は1mの距離で57dBAと、12dBA低減させることに成功しました。

(長野県工業試験場 芳川美代子)

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平成12年度の環境庁事業(Vol.24 No.3)

平成12年度の環境庁事業

平成12年度に環境庁が行う事業のうち、騒音振動関連を中心として以下に挙げました。数字は予算(単位は百万円)、カッコ内は前年度の数字です。

1.大都市地域の自動車環境対策等の拡充 2,072(2,042)

大都市地域の自動車交通等に起因する大気汚染の改善を図るため、大型ディーゼ ル自動車の代替に重点を置いて、低公害車の普及を推進するとともに、自動車から排 出される窒素酸化物(NOx)の総量削減のための新たな施策の検討や新たな騒音環境 基準に対応した道路交通騒音対策の充実を進める。

浮遊粒子状物質(SPM)について、規制を含め総合的な対策を検討するとともに 、浮遊粒子状物質の中でも微小な粒子状物質(PM2.5)についても、対策の検討に向け て測定・評価手法の確立を目指す。

・低公害車の普及。

・自動車NOx対策の推進

・道路騒音対策等の充実・強化 918(911)

・騒音の総曝露量(人間の耳に伝達される騒音の総量)を正確に反映し、国際 的にも広く採用されている評価手法を採用した新たな騒音環境基準の達成に向け て、現場での対策立案の基礎となる騒音の推計方法を開発する。さらに、騒音に よる睡眠への影響等に関する我が国独自の知見を充実させるための総合的研究を 開始する。また、悪臭、振動等の感覚公害対策を推進する。

    • 平成13年(2001年)1月に環境省が設置されることに伴い、廃棄物行政の一元化 、化学物質対策をはじめとする幅広い事務の共管化、地球環境問題への取組の強化等 に対応した組織・定員を確保し、体制の充実強化を図る。

顔の見える環境省を目指して、環境行政への国民の理解と参画を進めるため、環 境に関する調査の情報を分かりやすい方法で国民に提供する。

環境省設置に向けた体制整備 環境庁の現在の機構、1官房4局2部2審議官24課を、1官房4局3部4審議官27課1参事官に変える

環境省の組織・体制のポイント

・地球環境対策の強化

・総合環境政策の強化

・共管事務等による事務増への対応

・国立公園等現地管理体制の充実

・国立環境研究所の廃棄物研究体制の確立

・環境国勢調査情報の提供

・(新)新環境基準に対応した沿道騒音の面的推計方法の開発 18(0)

・(新)騒音による影響の評価に関する総合的研究 16(0)

2.21世紀にふさわしい環境行政を的確に進め得る「環境省」を実現するための体制整備

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東海地区公害試験研究機関会議(Vol.24 No.3)

東海地区公害試験研究機関会議

平成11年度東海地区公害試験研究機関会議騒音振動分科会が11月26日、新築されたばかりの三重県科学技術振興センター保健環境研究所で開催されました。出席した機関名と人数は愛知県環境調査センター(3名)、三重県保健環境研究所(3名)、静岡県環境衛生科学研究所(1名)、名古屋市環境科学研究所(3名)及び岐阜県保健環境研究所(2名)の計12名でした。

今回の会議は挨拶(三重県保健環境研究所)、自己紹介の後以下の式次第で進められました。

1.議 題

LAeqによる環境騒音測定について(岐阜県)

新幹線鉄道騒音の評価手法の検討(静岡県)

アルミ鋳物製品製造工場から発生する低周波音について(三重県)

道路背後地騒音の測定例について(名古屋市)

道路交通騒音におけるLAeqとLANについて(愛知県)

2.施設見学

三重県保健環境研究所及び三重県環境学習情報センター

この分科会は昭和48年頃から開催されており、最初の10年ほどはメンバーがほとんど変わらなかったので、自己紹介の必要はありませんでした。最近は名古屋市を除く他の機関のメンバーの異動が激しく、自己紹介無しではすまされません。

議題では上記のとおり、環境騒音の評価方法の変更に伴う測定の実施方法などに関する話題が3題を占めています。実際に測定する側からするといろいろ疑問が出てくるようです。

三重県はこれまで騒音振動担当者がなく、この分科会も情報解析部門の方が出席されていましたが、移転改組に伴い無響室等の施設と最新鋭の機器を揃え担当が出来ました。非常に喜ばしいことです。

次回は静岡県が幹事県で名古屋市で開催されることに決まりました。

(岐阜県保健環境研究所 奥平文雄)

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「あなたに伝えたい私の好きな音風景」キャンペーンについて(Vol.24 No.4)

「あなたに伝えたい私の好きな音風景」キャンペーンについて

このキャンペーンは民放ラジオ局が身の回りの貴重な音風景、音文化をリスナーとともに発掘・制作し、音の魅力を再認識することをねらいとして行うものです。

誰もが「音」からイメージされる風景や季節感・領域感を持っています。例えば、蝉の鳴き声を聞いてはじめて「ああ、夏なんだ」と再認識したり、「音」から自分のノスタルジーの中での風景をイメージすることがあります。まるで聴覚からフラッシュバックするかのごとく、季節を感じたり、風景を思い出したり、連想することです。それは人と音の間に存在する一つの「音文化」といえます。時として視覚よりも心の奥深く、そして永く残るものであり、心の中で大きく広がりながら、さらには音によって優しさや温かさ、そして安らぎまでをも感じさせてくれます。そのような「音風景」は誰もが漠然と持ち、どこの土地にも存在しています。

放送の世界でも「IT革命」と呼ばれる技術革新が進行中ですが、ラジオの強みは今まで培ってきた「音」「音声」のみが持ちうる力であり、リスナーひとりひとりの想像力がそれぞれの独自の世界を築いていく力です。

21世紀を目前に控え、ラジオ局自身の武器となる「音」を今一度捉え直すことは意義あることと考え、当キャンペーンを企画しました。

実施期間は平成12年5月22日~12月上旬、主催は社団法人日本民間放送連盟・音声放送委員会です。

実施内容は、「音風景」のアイデア・エピソードを募集、参加99社で1社1作品を制作し、その中で選考した優秀20作品をミニ番組として各社で放送する事を骨子とします。

当キャンペーン実施に際しては、独自のホームページを開設し、各社のホームページからリンクできるようにするとともに、募集告知・募集要項を掲載し、音風景の応募も可能なものとする予定です。また、最優秀作品の一般公開投票、作品紹介等にも活用したいと考えています。

((社)日本民間放送連盟)

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騒音による影響の評価に関する総合的研究について(Vol.24 No.4)

騒音による影響の評価に関する総合的研究について

環境庁大気保全局大気生活環境室では、平成10年5月22日の中央環境審議会答申に基づく新たな「騒音に係る環境基準」が平成11年4月に施行された事を受けて、「騒音による影響の評価に関する総合的研究」事業を実施する。

新環境基準は、当時において最大限得られる科学的知見に基づいて設定されたものであるが、中環審答申において「騒音の睡眠への影響、騒音に対する住民反応等に関し、特に我が国の実態に基づく知見の充実に努めることが必要である」旨指摘されている。

本研究は、騒音による影響が国民の生活実態、社会的環境の変化、対策の進展等により変化していくものであることを踏まえ、新環境基準のもとで国民の生活に応じたきめ細かい行政対応をとっていくために、騒音の性状、居住実態等に応じた騒音影響に関する知見を充実していくことを目的とする。

事業費は1,600万円で、騒音による睡眠への影響に関する調査や、住民反応に関するアンケート調査についての統一的手法の確立等を目指し、統一的調査方法に基づき、我が国の様々な居住実態等の下で騒音による睡眠影響と住民反応に関する研究を実施する予定である。事業は平成12年度に開始し、平成16年度に取りまとめを行う予定である。

大気生活環境室では、この他に悪臭防止対策の推進事業や、低周波音問題についても取り組みをしている。

(環境庁大気保全局大気生活環境室)

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環境騒音振動行政分科会定例会開催(Vol.24 No.4)

環境騒音振動行政分科会定例会開催

平成11年度第3回環境騒音振動行政分科会定例会が,5月12日環境庁において開催されました。出席者は委員と環境庁の方々を含めて22名で,2件の議題について討議しました。

最初の議題は,環境庁大気生活環境室の藤田室長から,平成12年度における大気生活環境室の事業計画についてお話しいただきました。主な計画は2件あり,1件目は本コラムに記載されている「騒音による影響の評価に関する総合研究」,2件目は低周波音問題への取り組みでした。特に低周波音は,平成9年度から調査を開始し,調査結果を取りまとめ,測定方法等に関するマニュアルを作成し,本年度中に地方自治体等に配布予定とのことでした。

次の議題は,末岡委員から,行政分科会で作成中の「騒音調査の手引」の内容と進捗状況の説明がありました。この「騒音調査の手引」は,自治体担当者を対象としており,これを読めばとりあえず環境騒音の測定が出来るという程度に仕上げ,汎用性の高い手引書を目指しました。この手引書は出来上がりしだい,自治体を中心に配布いたしたいと考えております。

(千葉市環境保健研究所 松島 貢)

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環境騒音調査の手引(Vol.24 No.5)

環境騒音調査の手引

騒音に係る環境基準のLAeqへの改訂、あわせて騒音規制法改正や地方分権などに より、かつて無い規模での環境騒音のモニタリングが開始されようとしている。これ に対応して都道府県等において、モニタリングの体制作りが検討されているが、騒音 施策の検討、経費の捻出、区市町村の指導、など検討事項が山積している。言うまで もなく、このような新たな情況のなかでは、各都道府県等における「継続的なモニタ リングの仕組み作り」が最も重要な課題である。

この環境騒音の技術的な測定方法については、環境庁より「技術的助言」として 測定マニアルが作成されているが、法的な位置づけや計画の管理などについての情報 が不足している。そこで、環境騒音振動行政分科会では、各委員の協力のもと、適切 なモニタリング体制を構築するために必要な事項について、法的な経緯を含めて解説 した手引きを作成することにした。

本手引きにおいては、法的な位置づけからはじまり具体的な機器管理の注意点ま で、例示的に記述してあり、都道府県等が具体的な仕組み作りにおいて参考となる資 料としてある。内容としては、(1)環境基準と騒音行政、(2)環境基準の測定評価、(3)騒 音測定の留意点、(4)騒音測定の関連事項、に整理して記述した。都道府県等において は、この手引きにより具体的な仕組み作りを検討され、測定技術面については環境庁 マニアルを参考にされたい。なお、本手引きについては、今後のモニタリングの積み 重ねに合わせて順次改訂を行い、この大規模なモニタリング業務が適切に遂行される ように援助していきたい。

なお、本資料については、環境騒音振動行政分科会の資料として作成したもので あり、入手については、各委員まで問い合わせ頂きたい。

(東京都 末岡伸一)

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全国公害研協議会関東甲信静支部騒音振動専門部会会議(Vol.24 No.5)

全国公害研協議会関東甲信静支部騒音振動専門部会会議

平成12年度全国公害研協議会関東甲信静支部騒音振動専門部会が7月6日(木)~7日(金)、プラザ菜の花(千葉市)において開催されました。出席した機関は静岡県、神奈川県、横浜市(資料参加)、川崎市、山梨県、長野県、東京都、千葉市、埼玉県、栃木県、群馬県、千葉県(開催県)の各環境・公害関連試験研究機関であり、オブザーバーも含め参加者は20名でした。

議 題

排水性舗装と光触媒塗布排水性舗装の騒音比較(千葉県環境研究所)千葉県が市川市において、実験的に行っている光触媒塗布排水性舗装の音響特性 を調査。 道路交通騒音の異常音の除外例の検討(静岡県環境衛生科学研究所)静岡県で提案しているLxからLAeqを算出する簡便式の有効性を検証。
道路交通騒音の鉛直方向のレベル分布(千葉市環境保健研究所)千葉の県市合同で中高層集合住宅における騒音の垂直分布を調査。
「騒音に係る環境基準」の測定・評価-問題点とその対応について-(横浜 市環境科学研究所)

騒音制御工学会の騒音調査の手引きについて(東京都環境科学研究所)

苦情データ・苦情処理事例の利用について(神奈川県環境科学センター)苦情処理データの有効活用について今後の方策を検討。
道路交通振動における大型車に起因する振動レベルの実測(千葉県環境研究 所)道路交通振動対策に関して、大型Ⅰ種対策と車線構成に着目して考慮することの 重要性を指摘。その他(1)次期開催都県として東京都が紹介されました。なお、全公研騒音振動担当者会の 全国集会に関するアンケート調査の趣旨説明がありました。(2)専門部会と当部会が行う情報連絡会の内容と情報交換の促進について意見交換が ありました。

2日目は現地視察として、千葉県内の自治体合同調査である自動車交通騒音の高 層階建物への影響調査の現地調査地点を確認後、国道14号上り車線(千葉市美浜区真 砂)の騒音対策現場を視察しました。

今回の部会では関係都県市から発表があり、また翌日は遮音対策の現場を視察 し、意見交換がなされました。この部会は都県市の担当者の会議として、自由な意見 交換が行われるところに意義があり、それぞれの参加機関の調査研究の向上に貢献し ています。

(千葉県環境研究所 石井 晧)

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認定技士の会報告(Vol.24 No.6)

認定技士の会報告

第58回認定技士の会が4月19日(水)グランドヒル市ヶ谷で開催されました。出席者は17名でした。

中野環境クリニックの中野有朋氏をお招きして、「最近の超低周波音、低周波音対策事例」という題で講演していただきました。

低周波音・超低周波音の影響によると思われる苦情とその実態について、多くの調査事例を挙げて、具体的に分かりやすくご説明していただきました。

低周波音で普通耳から聞こえる音としては①遠方からの自動車走行音や工場操業音、②集合住宅ではかすかに聞こえる隣戸の物音やドアの開閉音、③戸建住宅では換気扇の音、エアコンの室外機の音などで、一般的にレベルは低く特定の周波数成分が卓越した音である。なお、20Hz以下の超低周波音は真空ポンプ、空気圧縮機等の大型機械や高速道路のような構造物によって発生するもので、作業環境やダムの放水路等の自然現象で生じて問題になることはあるが、一般家庭においては人体に感じられるような超低周波音の発生源はほとんどないと考えてよい。また、低周波音の問題はほとんどが静かな住宅地で起こっているのが特徴で、低周波騒音計などの測定機器で測定はできるが、評価方法や基準値は騒音のように定められたものは現在のところない。最近、基準がないことから訴訟も増えており、対策においては周辺環境が非常に静かな場合、その音が感知されるか否かによって評価が行われているが、防止技術は現在充分確立されていると考えてよい。

このような現状において、低周波音に類する音の問題の取り扱いにおける評価方法、対策としての防止技術についても事例を通じて説明され、質問も活発に行われ大変参考になる講演でした。

第59回認定技士の会は7月12日(水)同じくグランドヒル市ヶ谷で開催され、出席者は13名でした。講演は「続・梵鐘の音」という演題でリオン(株)の大熊恒靖氏にお願いしました。

環境庁が選んだ「残したい日本の音風景100選」の中でも、12の梵鐘の音が選ばれています。鐘の音はNHKテレビ「ゆく年くる年」の除夜の鐘の音をイメージすることが一般的で、鐘の音をゆっくり聞く機会も昨今では少なくなりました。今回、長年にわたる鐘の音の収集活動の中で得た貴重な資料等からなる研究の概要を、パソコンを使用した映像と音によるプレゼンテーションによりご説明していただきました。鐘の音は、鐘が鳴っているとき、その鐘の表面の一部だけを詳細に調べても全体像はとらえられないそうで、鐘全体を見る必要があるそうです。鐘の音はいつまでも残る最も低い周波数の音(基音)をベースとして、たくさんの倍音が複雑に混ざった音になっています。基音の減衰時間が鐘の音の印象を決める重要な要因の一つであることに着目して、鐘の年代と減衰時間の関係から梵鐘の音の減衰時間に時代的な変遷があるという研究成果を様々な角度からご説明されました。寺の鐘にまつわる話など興味の引かれる講演でした。

その他、認定技士の会の今後の活動、見学会、ニュースの発行等について討議して会を終了しました。

(認定技士世話人 石橋正義)

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認定技士の会報告(Vol.24 No.6)

認定技士の会報告

この度、全公研協議会(全国の公設環境研究所68機関で構成)に騒音振動担当者会議が設けられ、その記念すべき第一回が東京都北区の北トピアで9月4日(月)に開催された。大気汚染や水環境については、全公研で同様の会議が開催されており、これらに合わせて騒音振動部門においても全国規模の会議を毎年開催することにしたものである。

今回は、東京都環境科学研究所が事務局となったが、環境基準や要請限度の改正、常時監視規定の追加など、一連の騒音に係る基準等の改正があり、各機関とも関心が高く北海道から沖縄県まで、69名の多数の参加により盛大に開催された。

当日は、東京都環境科学研究所土屋所長から事務局挨拶、環境庁大気保全局大気生活環境室藤田室長から来賓挨拶があり、一般演題5件、特別演題2件の報告があり熱心に質疑討論が行われた。発表は、神奈川県環境科学センターの大塚氏を座長に、(1)一般道路用低防音壁の道路騒音低減効果測定(神奈川県 石井貢)、(2)環境騒音評価において除外すベき音の取り扱いについて(長野県 内田英夫)、(3)住民の反応を基にした環境騒音の分析と評価(名古屋市 大宮正昭)、(4)大型車に起因する振動の実態とL10評価(千葉県 樋口茂生)、(5)地方の研究所における騒音振動部門の現況と課題(福岡県 木本行雄)、(6)低周波音の測定マ二アルについて(環境庁 高尾智満)、(7)道路交通騒音対策中間報告について(環境庁 島村喜一)の報告が各氏よりあった。

騒音振動については、専管部門を有する機関が少ないにもかかわらず、行政部門を含め多数の参加者があり、最近の騒音問題への関心の高さがうかがわれる。なお、来年度については、福岡県を事務局として9月ごろ開催される予定である。

(東京都環境科学研究所 末岡伸一)

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第1回全公研騒音振動担当者会議開催される(Vol.24 No.6)

第1回全公研騒音振動担当者会議開催される

この度、全公研協議会(全国の公設環境研究所68機関で構成)に騒音振動担当者会議が設けられ、その記念すべき第一回が東京都北区の北トピアで9月4日(月)に開催された。大気汚染や水環境については、全公研で同様の会議が開催されており、これらに合わせて騒音振動部門においても全国規模の会議を毎年開催することにしたものである。

今回は、東京都環境科学研究所が事務局となったが、環境基準や要請限度の改正、常時監視規定の追加など、一連の騒音に係る基準等の改正があり、各機関とも関心が高く北海道から沖縄県まで、69名の多数の参加により盛大に開催された。

当日は、東京都環境科学研究所土屋所長から事務局挨拶、環境庁大気保全局大気生活環境室藤田室長から来賓挨拶があり、一般演題5件、特別演題2件の報告があり熱心に質疑討論が行われた。発表は、神奈川県環境科学センターの大塚氏を座長に、(1)一般道路用低防音壁の道路騒音低減効果測定(神奈川県 石井貢)、(2)環境騒音評価において除外すベき音の取り扱いについて(長野県 内田英夫)、(3)住民の反応を基にした環境騒音の分析と評価(名古屋市 大宮正昭)、(4)大型車に起因する振動の実態とL10評価(千葉県 樋口茂生)、(5)地方の研究所における騒音振動部門の現況と課題(福岡県 木本行雄)、(6)低周波音の測定マ二アルについて(環境庁 高尾智満)、(7)道路交通騒音対策中間報告について(環境庁 島村喜一)の報告が各氏よりあった。

騒音振動については、専管部門を有する機関が少ないにもかかわらず、行政部門を含め多数の参加者があり、最近の騒音問題への関心の高さがうかがわれる。なお、来年度については、福岡県を事務局として9月ごろ開催される予定である。

(東京都環境科学研究所 末岡伸一)

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(Vol.23, 1999)

「大都市騒音・振動主管担当者会議」の報告(Vol.23 No.1)

「大都市騒音・振動主管担当者会議」の報告

平成10年度の標記会議が11月1O~11日に千葉市において開催された。この会議は12の政令指定都市と東京都の課長相当職で構成されており毎年1回持ち回りで開催し,今回は28回目である。騒音に係る環境基準が9月3O日に告示され,27年ぶりに改正されたことに伴い,大都市の騒音担当者においても測定方法や評価について戸惑いがみられる中,今回の会議では環境庁大気保全局自動車環境対策第1課の鈴木課長より「改正後の騒音に係る環境基準について」,続いて目動車環境対策第2課の山田主査より「道路に面する地域の測定方法について」ご説明があり,その後に活発な質疑応答がなされた。質問事項は,近接空間の後背地に関するもの、昼間と夜間の2分類にした理由、自動車騒音の監視について都道府県と市町村の役割分担に関するものなどがあった。

その他の議題として,騒音の環境基準の評価方法の見直しに伴う測定体制等について取り上げたが,測定方法等の詳細が明らかになった時点で,その内容に沿った方向で検討することになった。もう一つの議題として複合型娯楽施設への対処方針について議論し,日頃苦労されている苦情処理の考え方を意見交換した。

また,承り事項は屈出に関する事項3題,自動車騒音対策等への取組状況について2題およぴ鉄道騒音調査の実施状況について1題であり,各市持ち婦りのうえ問題点・疑問点については直接問い合わせをすることとした。

最後に,来年の会議開催市となる横浜市よりご挨拶があり会議を閉会した。

(千葉市環境局 川島高嗣)

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平成10年度秋期講習会の開催結果について(Vol.23 No.1)

平成10年度秋期講習会の開催結果について

平成10年度2回目の騒音振動技術講習会が11月5、6日の両日に渡り東京飯田橋のレインボービルで開催されました。秋期講習のテーマはLeqが新環境基準の評価値となったことから「新たな騒音の評価手法の解説と測定法の実習」として企画いたしました。事業部会では春と秋の2回技術講習会を開催しています。春期講習会は、新たに騒音振動を担当することになった初心者を対象に、秋期講習会は騒音振動測定に関し多少の経験を持つ人を対象にカリキュラムを作成しています。第1日目は騒音に係る新環境基準をテーマに環境庁大気生活環境室の山崎室長補佐、千葉工大の矢野先生、小林理研の山田所長をはじめ道路交通騒音、鉄道騒音に関する研究の専門家に講師を依頼いたしました。第2日目は測定・分析実習を主にした講座とし、道路交通騒音、鉄道騒音、航空機騒音等をスピーカーから流し、また、加振器を使って公害振動をテーブルに再現し、騒音計や振動計の操作法、データの整理・評価計算法、周波数分析法などを経験してもらいました。実習に使う機器等は、(財)小林理研、リオン(株)及び(株)小野測器のご厚意により各社のものを借用させていただきました。測定、分析の実習に際しては、事業部会のメンバーが各グループに張り付き助言に当たりました。講習会参加者は、60名で講習中にあった質問等は本誌のQ&Aコーナーで紹介する予定です。

(神奈川県環境科学センター 堀江裕一)

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環境騒音振動行政分科会(Vol.23 No.1)

環境騒音振動行政分科会

平成10年度第2回環境騒音振動行政分科会定例会が、8月28日環境庁において開催されました。出席者は委員と環境庁の方々14名でした。議題は告示間近の環境基準の状況と、本年度の見学会・シンポジウムの内容について討議しました。

環境基準について、環境庁自動車環境対策第一課奥山康博氏より環境基準の現状説明を頂きました。その内容は、現在環境基準告示に向けて最終的な調整を行っており、平成11年4月1日に施行したい。測定マニュアルも告示と同時に示したい。騒音測定マニュアルについて、東京都環境科学研究所の末岡伸一委員から、基本的な概要並びに方向性について説明がありました。

平成10年度第3回環境騒音振動行政分科会定例会が、11月17日神奈川県環境科学センターで開催されました。出席者は委員7名と台湾考察団6名の13名でした。今回は「日本における騒音・振動改善対策」を研修目的に来日された台湾考察団と騒音振動行政に関する意見交換を行いました。台湾考察団の来日目的は、近年台湾では騒音に係る苦情が年間2万件程あり(苦情全体の30%)、ここ10年で2倍に増加しており、これを改善するために法改正を1998年中におこなう計画があるため、日本の法体系や改善対策の現状を視察するために来日されました。意見交換会では、日本の法体系や改善対策について事細かな質問が飛び出し、短時間でしたが活発な討議が繰り広げられました。

また、事業部会と共催する明石大橋見学会と道路騒音・振動のアセスメントに関するシンポジウムは、平成11年3月12日と13日の両日に決定いたしました。

(千葉市環境保健研究所 松島 貢)

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平成9年度騒音規制法・振動規制法施行状況調査について(Vol.23 No.2)

平成9年度騒音規制法・振動規制法施行状況調査について

環境庁では、騒音振動行政の一層の推進を図るため、毎年度、全国の都道府県、指定都市及び中核市を通じ、騒音振動苦情の状況、騒音規制法及び振動規制法に基づく各種措置の施行状況等について調査を行い、その結果を取りまとめている。平成9年度の騒音及び振動に係る苦情の状況、騒音規制法及び振動規制法の施行状況の概要は次のとおりである。

(1)苦情の状況

騒音苦情の件数は、平成9年度は14,011件で、前年度に比べ7.0%減少した。苦情の発生源別内訳をみると、工場・事業場騒音が最も多く38.7%、次いで建設作業騒音20.8%、営業騒音13.2%、家庭生活騒音8.3%等であった。

発生源別の増減状況としては、苦情の総数の約4割を占める工場等(前年度比533件の減)に係る苦情が減少するなど全体として減少した。

また、騒音苦情件数の都道府県別増減状況をみると、減少件数が大きいのは埼玉県、兵庫県等であり、増加件数の大きいのは神奈川県、東京都等であった。

振動苦情の件数は、平成9年度は2,257件で、前年度に比べ15.2%減少した。苦情の発生源別内訳をみると、建設作業が45.9%、工場・事業場が33.1%、道路交通が12.5%等であった。

発生源別の増減状況としては、建設作業(前年度比181件の減)に係る苦情、工場・事業場(前年度比135件の減)に係る苦情など全体として減少した。

また、振動苦情件数の都道府県別増減状況をみると、減少件数が大きいのは東京都、兵庫県等であり、増加件数の大きいのは滋賀県、京都府等であった。

(2)法の施行状況

騒音規制法に基づく規制対象地域は、全国の65.0%に当たる2,111市区町村(前年度比4市町の増)で指定が行われている。同地域において規制対象となる工場・事業場及び建設作業に対する苦情については、立入検査が1,671件、行政指導が1,773件行われた。法に基づく改善勧告は7件(前年度5件)行われ、改善命令は行われなかった(前年度0件)。

振動規制法に基づく規制対象地域は、全国の50.8%に当たる1,653市区町村(前年度比4市町村の増)で指定が行われている。同地域において規制対象となる工場・事業場及び建設作業に対する苦情については立入検査が475件、行政指導が498件行われた。法に基づく改善勧告は1件(前年度0件)行われ、改善命令は行われなかった(前年度0件)。

環境庁としては、今後とも騒音規制法及び振動規制法に基づく対策の推進を図っていく。

(環境庁大気保全局大気生活環境室)

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平成9年度自動車交通騒音の現況について(Vol.23 No.2)

平成9年度自動車交通騒音の現況について

環境庁においては、自動車交通騒音の実態を把握するため、全国の自治体「当該地域の騒音を代表すると思われる地点又は騒音に係る問題を生じやすい地点」(全国5,286地点)において平成9年度に実施した自動車交通騒音レベルの測定結果について以下のとおり取りまとめた。

1.環境基準

全国の測定地点(環境基本法に基づく環境基準の類型指定地域内4,713地点)のうち、4時間帯(朝・昼間・夕・夜間)すべてで環境基準が達成されたのは625地点(13.3%)、4時間帯すべてで達成されなかったのは2,573地点(54.6%)で、一部測定地点は異なるものの平成8年度の調査結果(4時間帯すべてで達成599地点(12.9%)、4時間帯すべてで非達成2,558 地点(55.1%))と同程度の水準であった。また、5年間継続測定地点(2,890地点)でみると、4時間帯すべてで環境基準が達成されたのは354地点(12.2%)で、過去5年間と比較すると同様な傾向であり、依然として低い達成率となっている。

2.要請限度

全国の測定地点(騒音規制法に基づく指定地域内4,908地点)のうち、4時間帯すべて又は4時間帯のいずれかで要請限度を超過したのは1,481地点 (30.2%)で一部測定地点は異なるものの平成8年度の調査結果(1,573地点(32.1%))と同程度であった。

また、5年間継続測定地点(3,036地点)でみると、4時間帯すべて又は4時間帯のいずれかで要請限度を超過したのは983地点(32.4%)で、過去5年間と比較すると同様な傾向であり、依然として厳しい状況である。

環境庁としては、以上のような状況を踏まえ、今後とも、道路交通騒音対策を総合的かつ一層強力に推進することとしている。

なお、平成10年9月30日付けで騒音に係る新環境基準が告示され、平成11年4月1日から施行される。

(環境庁大気保全局自動車環境対策第二課)

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新「環境基準に係る環境基準」に関する研究会報告(Vol.23 No.3)

新「環境基準に係る環境基準」に関する研究会報告

環境騒音振動行政分科会、道路交通騒音分科会及び事業部会の共催の新「騒音に係る環境基準」に関する研究会が平成11年3月12~13日に兵庫県立生活科学研究所で開催されました。騒音に係る新環境基準の施行が4月にせまっているが、環境騒音の測定、アセスメントなど実務を担当する自治体やコンサルタント会社関係者にとって環境庁の騒音測定マニュアル(暫定版)によるLAeqの測定、評価にまだ疑問や不確定な個所があると感じ,研究会に多くの関心が集まった。当日は自治体関係が約70人、コンサルタント関係が約40人など満席の状態であり、当初の予想を大幅に越えた申し込みのため一部お断りをしたと聞いている。

1)「現場からの報告」司会 住友聰一氏(兵庫県立公害研究所)

騒音評価マニュアルに基づいて道路交通騒音を測定した千葉市と兵庫県から24時間の道路騒音及び交通量等の測定体制、測定場所選定、異常音除去方法、マニュアルに基づいた測定と連続測定とのレベル比較などの発表があった。

コンサルタント関係からは道路交通騒音のアセスメントにおける現況調査や「面的」評価について、

    • ・現況調査では夜間には連続測定が必要なこと、建物反射、遮音壁の影響などの注意点、

・道路交通騒音の推計では、道路に直接面する地点のLAeqは推定可能であるが背後地の騒音は予測のみではまだ精度上問題があり、実測と予測の組み合せが効果的であることなどの報告があった。

 

2)「問題解決に向けて」 司会 瀬林伝氏(神戸市)

自治体、コンサルタント、測定マニュアル検討委員ら4名のパネリストによるディスカッションと質疑は以下のようであった。

    • ・新マニュアルに基づく騒音測定は多大な経費と労力が必要とされるため、測定データの一層の活用と行政施策へ反映求められる。

・細街路を走行する自動車音は異常音として処理してよいか。

・騒音測定の目的を区別、明確化し、目的にあった測定をする。例えばアセスメントでは基本評価編に基づく調査、地域編の簡略化による自治体の調査、予測手法の開発、検証のための調査、防止対策調査などが考えられる。

・背後地の測定目的や道路に面する地域と一般地域の識別方法など。

新環境基準の測定・評価にはまだ多くの課題が含まれているが道路騒音防止対策の施策が前進しそうな雰囲気が感じられた。なお13日は春霞の明石海峡大橋を見学した。

(名古屋市環境科学研究所 大宮正昭)

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環境騒音振動行政分科会とインターネット(Vol.23 No.3)

環境騒音振動行政分科会とインターネット

環境基準がL50からLAeqに変更されたのを機会に、環境騒音振動行政分科会で環境基準に対する意見交換が活発になされるようになりました。しかし、年に3回程度の例会では十分な意見交換が出来ないということで、メンバーの中からもっと自由に意見交換が出来ないかという声があがりました。そこで、インターネットのホームページを運営している長野県衛生公害研究所で、分科会の情報交換をお手伝いすることが出来るか検討しました。この検討のなかには、電子メールによる情報交換と画像情報等が見られる掲示板の作成が含まれています。その結果、機能の制限でメーリングリストを立ち上げるには難しい面があるため、それに類似した機能を使って電子メールによる情報交換を行い、必要に応じて掲示板風に画像情報を閲覧できるようにしました。

試験を開始してみたところ、最初は順調だったのですが、途中でハッカーによりメールサーバーが悪用されたことが判明したため、ハッカー対策をしました。すると、一部のメンバーからのメールに限って返信ができなくなるという、トラブルが発生しました。あれやこれやととまどいましたが、一部に機能制限をしてどうやら試験運用できる体制になりました。

さて肝心な情報交換は、現在試験をしている状態にもかかわらず、熱心なメンバーに引きずられるようにして、環境基準の議論にとどまらず幅広い話題で活発な討論が進めらています。情報交換については、ハードの部分(コンピューターの能力やメーリングリストの機能)よりもソフトの部分(どんな情報がどのように交換されるか)が大切ですから、活発な討論が続くことはまさにメールの管理人冥利に尽きる心持ちです。この紙面を借りて活発な討論を推進していただいているメンバーに感謝したいと思います。今後ともよろしくお願いするとともに、これを機会に本格的に運用をしてみようと考えていますので、騒音行政担当者の参加をお待ちしています。

(長野県衛生公害研究所 内田英夫)

Email: uchida@nagano-eikouken.or.jp

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「自動車騒音低減技術に関する第4次報告書」(Vol.23 No.4)

「自動車騒音低減技術に関する第4次報告書」

1.経緯等

環境庁では、従来より自動車騒音低減に係る対策の1つとして、自動車構造の改善で1台ごとの運行に伴い発生する騒音の大きさを減らす自動車騒音規制(単体規制)を実施しております。最近では、自動車の交通量の増加等により、幹線道路の沿道地域を中心に、依然として環境基準の達成状況が厳しい状況にあることから、平成4年11月の中央公害対策審議会中間答申及び7年2月の中央環境審議会答申にて更なる規制強化の内容を提言いただいたところです。

これを受け、同答申で設定された目標値の達成見通しを早期に明らかにすること、また自動車メーカー等における技術開発を促進することを目的として、平成7年6月に学識経験者からなる「自動車騒音低減技術評価検討会」を設置し、同検討会で目標値達成の見通しが立ったと評価された車種から逐次規制強化を図っております。

2.第4次報告書の概要

「自動車騒音低減技術評価検討会」ではこれまで、3次にわたる報告書をまとめてきました。今回、第3次までの報告書で目標値達成の具体的な達成の見通しが立たなかった車種(大型トラック、小型二輪自動車等)について、引き続き自動車メーカー等の開発状況に対する技術的検討を進めた結果、平成11年4月に第4次報告書をとりまとめることとなりました。

同報告書では、平成4年の中間答申から10年以内(平成14年頃まで)に目標値を達成すべきとされた車種のうち、中型車(車両総重量が3.5トンを超え、原動機の最高出力が150キロワット以下のもの)の全輪駆動車及びトラック並びに第二種原動機付自転車(排気量0.050リットルを超え、0.125リットル以下のもの)については平成13年頃に、また、大型車(車両総重量が3.5トンを超え、原動機の最高出力が 150キロワットを超えるもの)の全輪駆動車、トラクタ、クレーン車及びトラック並びに小型二輪自動車(排気量が 0.250リットルを超える二輪車)については、平成13年又は14年頃に目標値を達成できる見通しが立ったと評価されております。

これにより、すべての車種について、中間答申から6年以内又は10年以内とされた期間内に目標値を達成できる見通しが立ったことになります。

今後、本報告書を踏まえ、今回目標値達成の見通しが立った車種について、規制強化のための所要の手続きを行うこととしております。

(環境庁大気保全局自動車環境対策第二課 中谷育夫)

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認定技士の会報告(Vol.23No.4)

認定技士の会報告

認定技士の会では4月19日(日)、鹿島建設(株)の長友宗重氏を講師に招き、第53回講演会を催した。参加者は認定技士21名であった。

我が国は21世紀に未曾有の高齢者社会を迎える。高齢者の身体能力の衰えや、視力の衰え、聴覚の衰えなど日常生活上、個人を取り巻く物理環境の障害が問題点として挙げられている中で、長友氏には「高齢者の聴覚と騒音」という演題で、聴覚の問題についてお話をしていただいた。

特に、人間は生きている限り誰しも年をとり、それに伴って様々な不具合が生じる加齢現象というものがあり、加齢による感覚の鈍化が起きる。65歳以上の高齢者になると、視覚の面では視界が暗くなり視野が狭くなる。聴覚の面では聴力の低下により、1kHz以上の高音域の音が聞こえにくくなるなどの高齢者特有の視覚聴覚特性や、言語理解速度が若年者に比較して遅くなる言語認識能力の感覚特性上の問題点等、人間の全体的な情報処理能力の衰えを指摘された。

こうした聴覚上の不具合にもかかわらず、今まで同様の生活を送り、高齢者と共に生きる社会の実現を目指すという考え方が最近提唱されており、高齢者を含む全ての人が利用できる都市空間、建築空間の構築が求められており、今後、公共施設等における拡声装置のデザイン(明瞭度・了解度)を最初から考える必要性があることを指摘されていた。

また、この分野の研究において、情報を聴取する側の高齢者の実態が十分把握されていないことが今後の課題ということで、参加者の中からもモニター参加協力のお話や補聴器の問題など活発な質問・意見が交わされ、非常に興味深い講演だった。

(認定技士の会世話人 石橋正義)

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道路交通騒音対策検討会の設置について(Vol.23.No.5)

道路交通騒音対策検討会の設置について

環境庁では、学識経験者からなる「道路交通騒音対策検討会」を設置し、4月16日に第1回検討会を開催する。同検討会では、4月1日に施行された新騒音環境基準を達成するために、今後の道路交通騒音対策の充実・強化について検討を行い、本年秋を目途に取りまとめを行う予定である。

        1. 昨年5月に中央環境審議会より、「騒音の評価手法の在り方について」答申が 出され、これに基づいて平成11年4月1日に新環境騒音基準が施行されたところである。この答申においては、道路に面する地域について環境基準達成に向けて今後展開するべき施策について提言が行われている。
        このため、環境庁においては大気保全局に学識経験者からなる「道路交通騒音対策検討会」を設置し、新環境基準の達成に向けて道路交通騒音対策の充実・強化について検討を行うものである。

1.設立の趣旨

2.検討内容
新騒音環境基準の達成に向けて、制度的枠組みの拡充を含め、総合的な対策の推進を 図る必要があるが、本検討会においては、答申において早急に展開するべきとされた、総合的かつ計画的な対策推進を図るための枠組みの強化、沿道対策の推進、強化等について検討を行う。

3.スケジュール

第1回検討会を4月16日に開催し、本年秋を目途にとりまとめを行う予定である。

4.道路交通騒音対策検討会

委員名簿(敬称略)

浅野 直人 福岡大学法学部長
大西 博文 建設省土木研究所環境部交通環境研究室長
大森 文彦 東洋大学法学部教授
押野 康夫 (財)日本自動車研究所ダイナミックス研究部部長
岸井 隆幸 日本大学理工学部教授
斎藤  威 警察庁科学警察研究所交通部交通規制研究室長
末岡 伸一 東京都環境科学研究所応用研究部主任研究員
原田  昇 東京大学新領域研究科教授
森口 祐一 国立環境研究所社会環境システム部資源管理研究室長
山内 弘隆 一橋大学商学部教授
山本 貢平 (財)小林理学研究所所長

(環境庁大気保全局自動車環境対策第一課)

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中村ひさおさんが個展を開きました(Vol.23 No.5)

中村ひさおさんが個展を開きました

当学会の会員で、音環境デザインをライフワークとして実践されている中村ひさおさんが横浜・港の見える丘公園近くにある、岩崎ミュージアムで個展を開きました。中村ひさお展・夏のささやき<音の原風景を見つめて>と題したもので、7~8m四方の部屋の床や天井にスピーカーを設置し、中村さんの子供のころの印象に残っている音をソースに音風景が創作されていました。部屋の中央部にはファインアート作家で、中村さんの友人でもある赤岩保元さんが作成した紙粘土の夕顔が100個ほどつるしてあり、音風景を際だたせる演出となっていました。

個展を開くにあたり、中村さんは次のように述べておられます。「人は誰しも原点となる音風景を持っています。それは自分の中に眠っているやさしい記憶なのかもしれません。夏のひととき、私の音の原風景を体験して下さい。耳慣れた音たちを、集めたり、並べたり、広げたり、切り取ったりしながら岩崎ミュージアムという空間に私の心の中の風景を表現します。」

聞こえてくる音は、小川と小さな土手で聞こえる音といったところでしょうか。せせらぎの音、小鳥の声、汽車の音、犬の声、カエルの声等がきこえます。多チャンネルで再生されているので、部屋の中を移動すると川面の近くのイメージ、土手に上った時のイメージなど工夫が凝らされていました。

個展は、1999年7月20日から8月1日まで開催されました。

(神奈川県央行政センター 堀江侑史)

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環境庁人事異動(Vol.23 No.5)

環境庁人事異動

( )内は前任者。敬称略

平成11年4月1日付

自動車環境対策第一課主査 滝澤 晶(清水厚宏)
自動車環境対策第二課 瀬戸加奈子(山田正人)
大気生活環境室 阿部友喜(原崎正幸)

4月27日付

大気保全局企画課課長 桜井康好(冨岡 悟)
大気生活環境室室長 藤田八暉(柏木順二)
同室長補佐 戸田英作(大気規制課課長補佐併任)

前大気生活環境室山崎邦彦室長補佐は米国へ研修出張

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環境騒音振動行政分科会(Vol.23 No.6)

環境騒音振動行政分科会

平成11年度第1回環境騒音振動行政分科会定例会が、8月10日、環境庁会議室において開催されました。出席者は委員と環境庁の方々16名でした。

議題は、自動車騒音の要請限度に関する中環審(中央環境審議会)からの素案の説明と、規制基準と環境基準の関係についての解説でした。

要請限度の審議状況については、環境庁大気保全局自動車環境対策第1課奥村氏より、8月3日に中環審騒音振動部会より報告のあった、騒音評価手法の在り方の素案について説明を頂きました。

主な内容は、今回の要請限度における審議内容は、騒音の評価手法等のみを検討し、制度については検討しない。環境基準と要請限度の整合性をはかるため、要請限度についても騒音の評価手法にLeqを採用する検討を行っている。測定評価方法については、要請限度は自動車騒音の発生源側の騒音レベルを把握するものであるため、測定点は原則として道路端、測定日数は連続する7日間を代表する3日間とし、時間区分ごとに全時間を通じてエネルギー平均した値によって評価すること。そして具体的には、測定方法は環境基準における方法、区域の区分は環境基準の類型区分、時間帯の区分は環境基準の区分に、それぞれ合わせる方向に検討されたそうです。要請限度値は、現行の限度値がそうであるように、環境基準値に一定の値を加えたものとし、新たに環境基準で採用された近接空間の特例についても検討されたとのことでした。

つぎに、末岡委員から、今までともすれば正確に理解していなかった環境基準、規制基準、及び要請限度の定義や意義や相互関係を、詳細な資料(法制時の国会答弁等)を基にして的確な解説をしていただきました。素晴らしい内容の資料で、すべてお知らせ出来ないのが残念ですが、一部を紹介しますと、環境基準は行政の目標値で、複合した騒音に対する基準、クライテリアに実現可能性利便性等を考慮したものである。規制基準、要請限度は、環境基準を達成するために個々の発生源が守る基準である。また、今回の要請限度における区域区分の検討が、環境基準の区分を前提に行われていること等から、規制基準の地域指定と環境基準の類型指定の関係も適切な適用関係を保つ必要性があるのではないかとのことでした。

今回の例会は、中環審から示された自動車騒音の要請限度の素案及び、規制基準と環境基準の関係とホットな議題であったため、活発な討議が繰り広げられ盛況のうちに閉会となりました。

(千葉市環境保健研究所 松島貢)

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認定技士の会報告(Vol.23 No.6)

認定技士の会報告

認定技士の会では7月13日(火)、第54回の定例会を開催した。会合には東和大学の佐々木實氏を講師に招き、講演会を催した。参加者は認定技士21名であった。

人間の声は一人で出す場合は、実に様々で人の数だけ異なった声があり、同じ声を持った二人というのはないそうである。しかし、二人以上の声が重なり合うと各人の持つ個性が後退し、新たな個性を持つようになるという。この現象は普段、無意識に使っている音声、話し声、歌声など、聴覚的に溶け合って日常生活にも深く関わっている。この現象は音響学的、特に音響心理学的には未だに解明されていない領域だそうで、聴覚的には物理的重ね合わせ以外の新しい音感覚が生じる。歌の場合には、特にこの現象を「コーラス効果」と呼んでいるそうで、新しい音感覚が生じるコーラスは、この「音声の重なりによる聴覚現象」、略して「音声重なり現象」と呼ばれるこの現象を利用しているそうである。

今回の講演では「声のハーモニーの楽しみ」と題して、コーラスの声のハーモニーのすばらしさ、声を合わせて歌うことの楽しさを講演者自ら音響機器を会場に持ち込み、実演付きの講演をしていただいた。

「良くハーモニーする」ということの同意語である「協和する」という言葉の意味について、その定義、形成要因、及び合唱音楽の起源を、合唱例やそのフレーズをアカペラで歌い、合唱音楽の種類についてわかりやすく解説していただき、合唱音楽の素晴らしさを堪能させていただいた。当日の豪雨の中での講演時間はあっという間に過ぎ去り、清涼感漂うNHKの「音楽の泉」を彷彿させる楽しいミニ音楽会となった。

(認定技士の会世話人 石橋正義)

環境庁人事異動( )内は前任者。敬称略
平成11年9月1日付
自動車環境対策第一課物流専門官
奥山 広(今田滋彦)
※物流専門官は鉄道・航空機騒音担当

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