日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

CASE時代の騒音問題(Vol.44 No.3)
CASE時代の騒音問題

CASE時代の騒音問題

CASEというキーワードをご存知でしょうか。自動車業界は,現在「100年に一度の変革期」にあると言われており,その変革の要点を端的に示すものとしてコネクテッドConnected,自動運転Autonomous,シェアリング・サービスSharing & service,電動化Electricの頭文字をとったものです。また,現在猛威を振るっている新型コロナウィルスの感染拡大は,本稿を執筆中の4月末の時点ではまったく先が見えませんが,その影響によって今後,公共交通機関に変わるパーソナルモビリティにも注目が集まると思われます。パーソナルモビリティには,CASEの各技術との親和性が高いと言われています。外出を避けるため,ネット販売や宅配サービスの利用増大が見られていますが,都市間輸送の大型トラックの電動化にはまだバッテリー技術などの課題が多いものの,ラストワンマイルのデリバリーには電動化や自動化の可能性が大いにあります。

さらに,超高齢化という社会環境も自動車に関わる音の問題に無関係ではありません。高齢化の進行に伴って,既に,人口集積が少ない地域での公共交通インフラの維持が困難になり,移動の自由が奪われる住民の問題(いわゆる買い物難民)が健在化しつつあります。個人の自由な移動の確保や,物流の課題も勘案した自動運転技術によるラストワンマイルのモビリティサービスが求められています。また,高齢ドライバーによる運転操作過誤による重大な交通事故などに見られるように,加齢による運動能力・認知能力の低下を補償する運転支援技術や自動運転車両の技術実現が望まれています。

そのような近い将来,自動車に関わる音の問題はどう変わっていくでしょうか。

電動化(E)による音響的な変化は想像しやすいものです。自動車の電動化によって,自動車騒音の主要因の一つである駆動系騒音が大幅に低減し,道路交通騒音の低減効果が期待されます。そして,一方で,歩行者にとっては車両の接近に気づきにくくなることが懸念されてもいます。電動化による騒音低減の予測や,車両接近通報音については,様々な研究が取り組まれていますので,ここでは多くは触れずにおきます。

しかし,自動車の変革は駆動系の電動化に限りません。コネクテッド(C),自動運転(A),シェアリング・サービス(S)も,自動車からの発生騒音や要求される音デザインに大きな変化をもたらすと考えられます。

自動運転や他車との協調運転の技術普及によって衝突の危険性が軽減していけば,制動機構に求められる性能も変わってきます。タイヤや路面舗装に要求される制動性能が緩和され,音響性能の向上(低騒音化や音質改善)に割り当てられるリソースが増加する可能性もあります。いままでコスト面で虐げられてきた低騒音技術が,やっと日の目を見るかもしれません。自動運転などによって不要な加減速や渋滞が抑制され,道路交通騒音が低減される可能性も期待されます。

自動運転の技術がどれだけ進展しても,自動車が人を運ぶ仕組みである限りは人とシステムの接合面は必ず存在します。そして,システムが複雑かするほどに,情報は増加し複雑化します。そのための適切なインターフェースデザインが求められます。その中では,高齢者の知覚特性,特に高齢難聴の傾向を考慮したデザインも求められ,当然,音のデザインも重要になってくるでしょう。

自動運転は,再び,新たな騒音源を生む可能性もあると懸念しています。以前,インターネットのジョークサイト「虚構新聞」(kyoko-np.net)に,<「人影あって安心」自動運転専用ダミードライバー開発>というネタが掲載されました。運転席に誰もいないのに車がひとりでに動くのが不気味だというクレームを受けて,運転席に設置するマネキンを開発したというのです。オチは更なる開発で「運転もできるダミーロボットを開発する」というものなのですが,そこはさておき。このような自動運転を不気味がるクレームから,車が自動運転中であることを歩行者わかるようにしてほしいという要求に発展し,そのために自動運転中を示す音を車外に鳴らせ,などということにならないでしょうか。そんな空想が,笑い話で終わればいいのですが。

山内勝也

閉じる

PAGE TOP