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会員コラム

カエル(ニホンアカガエル)の戦略(Vol.44 No.1)
カエル(ニホンアカガエル)の戦略

カエル(ニホンアカガエル)の戦略

この会誌が皆様の手に届くのは21日の予定となっています。まだ冬眠しているだろう時期になんでカエルの話?と思う方もいらっしゃると思いますが、すでに活動を始めているカエルもいるので、そんなカエルの戦略を紹介したいと思います。

 そもそもカエルに関わることになったのは、カエルがどこを好んで活動しているかを、その鳴き声の大きさを測ることで解らないだろうかという話向きからです。大学で継続的に環境調査をしている棚田があるというので、4月の環境調査の時に騒音測定ならばと、私も騒音計を持ってついて行きました。ところが、地元のNPOでカエルの保護に取り組んでおられる方の説明を聞くと、「4月にカエルの声を聴こうなんて遅すぎるヨ!」ということでした。

 驚いて詳しく説明を聞くと、この千框の棚田は、貴重種のニホンアカガエルの生息地として有名な場所ですが、そのニホンアカガエルは2月が最盛期で、早い時には1月から鳴いている。というのです。受売りになりますが、実はこれはニホンアカガエルの生き残り戦略で、他のカエルが出現しない2月頃ならば、自分たちの仲間で水場を占領できるから……というものでした。なるほど、競争相手がいなければ広い水場を独占できるということで、さぞかし繁栄しているかと思いきや、年々数を減らして絶滅の危機に襲われているとのこと。

 その原因は、人間の都合や、天敵によるものということでした。人間の都合というのは、冬は水の管理が大変なので、冬季に田に水を入れていない田んぼがあり、結局この時期にカエルが使える水田が狭められているということのようです。ちなみに、ここでは「生き物のゆりかごプロジェクト」という取り組みがあり、田んぼの中に小さな池を残し、田んぼの水がなくなる冬場に生き物のすみかを提供するという取り組みが行われているそうです。ニホンアカガエルとしては、水場が占領できるということで生き残り戦略として2月を選択したのですが、水場は実は田んぼなので、水場(田んぼ)は人間の都合で水が入っていたり入っていなかったりで、戦略を間違えたと感じているかもしれません。

 もう一つの問題は、カエルは昔の表現でいうと変温動物なので、2月に活動する場合は4月のカエルのイメージのような「ピョン、ピョン」というような活発な行動ができないことだそうです。このため、山からノソノソと田んぼに出てきて繁殖、産卵し、またノソノソと山に戻るという行動をするのですが、動きが遅いために途中でカラスに襲われるということが多々あるそうです。でもこの天敵の問題は昔から変わらないでしょうから、カエルの生き残り戦略では人間の行動が問題と感じているかもしれません。

 蛇足になりますが、現代では変温動物という言葉は使わなくなってきています。これは、動物の体温制御が種によって多様であることが発見され、恒温動物と変温動物の2つに分けられるという考えは誤りであることが分かったためです。いわゆる変温動物だからと言って、呼吸により発熱しないわけではないし、筋肉や神経組織の活動などにより、周囲の温度よりは高い体温をもつ場合が普通です。つまり、種によって特有の体温制御を行っていて、すべての変温動物は気温が下がると活動できなくなるというわけではないことが明らかとなったのです。ここで話題としているニホンアカガエルは厳冬期に繁殖、産卵を行い、その活動を行うときの周囲の気温は、5℃程度かそれ以下といわれています。

 当初のカエルの音測定の話に戻りますが、4月に棚田を占領していたのはシューレゲルアオガエルでした。そこで、棚田の上流域、中流域、下流域でカエルの声を測りましたが、どうやらアオガエルは中流域が好きなようで、中流域でのカエルの声が一番活発でした。また、6月に平地における水田でカエルの声を測定してみましたが、この時はアマガエルが優勢で、場所の違いは特定できませんが、時間変化は夕方から日没にかけて徐々に声が大きくなり、夜間はほぼ同じ大きな声で鳴き続けるという状態でした。

 この調査の詳細に興味のある方は、騒音制御工学会2019年度秋季研究発表会の東京農業大学「生物音測定を利用した環境評価」をご覧ください。

(エヌエス環境 内田英夫)

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