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会員コラム

風騒音の犯人は地震!? (Vol.43 No.1)
風騒音の犯人は地震!?

風騒音の犯人は地震!?

あるマンションの管理組合から「東日本大震災以降、冬の北風が吹いた時に音や振動が発生して眠れない。原因を調べてほしい。」という問い合わせが入った。地震と音との因果関係にいささか疑問を持ちながらも、現地調査に着手した。

この事例のように、風によって音が発生する現象は風騒音と呼ばれており、集合住宅のバルコニー手摺や設備用目隠しルーバー・ガラリ等の外装材に風が作用した際に、「ピー」「ブーン」と表現されるような騒音が発生することで知られている。近年、タワーマンションの増加や、意匠性・機能性等を考慮して複雑な断面形状を備える外装材が増加しているため、風騒音は建築物における一般的な騒音問題になりつつある(風騒音発生事例を図1に示す)。

 

               図1.風向別風騒音-暗騒音比較事例*1

そこで、外装材を事前に評価することを目的として、風洞実験室にモックアップを設置し、様々な風を作用させて音の測定を行う風騒音風洞実験を実施する事例が増えている。しかしながら、風騒音風洞実験における測定方法や評価方法に関する規基準(例えばJISや学会基準等)が存在しないため、風洞実験室稼働時の暗騒音や、モックアップ寸法および設置方法、風向再現方法、風向・風速ピッチの設定、そして風騒音の分析・評価方法等、各機関が独自の方法で進めているのが正直な所である。

ここでは例として、風騒音の分析・評価方法に着目してみる。これまでは実験者の聴感による判断をはじめとして、騒音レベル、1/1または1/3oct.band.分析そして周波数スペクトル分析等が採用されていた。一方、風騒音の特徴として、純音性成分が卓越することが挙げられる。同様に純音性成分が卓越する音源としては、風力発電施設や家庭用ヒートポンプ等が挙げられる。これらについては、純音性成分が与える不快感の評価手法に関する研究*2が進められており、周波数スペクトル分析による純音性成分とマスキングノイズ成分の差より算出される純音性可聴度(TATonal Audibility)による評価が検討されている。TAの詳細についてはIEC 61400-11:2012等を参照頂きたい。本工学会研究部会内には、201610月より「空力騒音分科会」が設立されており、このような客観的評価の導入も含めて、風騒音に関する標準的な測定・評価方法の確立に導いてくれることを風騒音実務担当者としては強く要望したい。

さて、冒頭でご紹介した物件である時、住民へのヒアリング中に偶然にも指摘通りの「ブーン」という音が発生しはじめた。すぐさまバルコニーや屋上の設備機器置場等をくまなく調査しまわり、ようやく発生箇所を見つけることができた。犯人は屋上付近にあったテレビアンテナ設置用のポールだった。風が作用した際に円柱状のポールの後流にいわゆるカルマン渦が周期的に形成され、その渦励振によってポールが振動し、固体伝搬音が発生していたことが判明した。そこで対策としてポールの撤去を提案し、無事解決に至った。ところで、地震と風騒音との因果関係はいったい何だったのだろうか?

東日本大震災が発生した2011年の7月、地上デジタル放送への完全移行化が行われた。それに伴いこのマンションでは、アナログ放送からケーブルテレビへ切り替え、ポールに設置されていたアンテナを撤去していた。これまでアンテナによって乱されていた風の流れが、アンテナ撤去後、ポールに対してきれいな風が作用するようになり、風騒音が発生するようになったのだ。アンテナ撤去のタイミングが、偶然、東日本大震災後と重なり、撤去後初めて迎えた冬に風騒音が発生したというオチであった。

参 考 文 献

1) 冨髙隆,増田潔,浜田由記子: 実験室における風騒音評価方法に関する検討, 日本音響学会春季研究発表会講演論文集, pp.899-900 (2018).

2) 平成30年度環境研究総合推進費 研究課題番号5-1710 「風力発電施設等の騒音に含まれる純音性成分による不快感の評価手法の研究」

(大成建設 冨髙 隆)

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