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公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

雪と音の関係を知る(Vol.42 No.2)
雪と音の関係を知る

雪と音の関係を知る

会員諸氏が本号を手にするのは春も盛んな新年度の始まりであるが、さすがの大雪も僅かに残る程、オレンジ色の太陽の光が反射して眩しい朝焼けに春の気配を暖かな部屋の中で感じるすぐその後は窓の外に雪が舞う頃に本稿を書いている。届いたばかりの環境省「平成28年度自動車交通騒音実態調査報告」や公調委「ちょうせい」での、環境基準の達成状況が穏やかに改善傾向にあることやエコを唱うヒートポンプ式給湯器や小さな現場さえ重機が使われる建設作業騒音が苦情対象との解説に執筆の関心が傾くも、ここは記録的大雪と報道されてまだ余韻の残る「雪」と音について研究の記憶を辿ってみよう。

. 積雪地での雪の実態

 多雪地域の雪は、陽光溢れる側から覗いたトンネル望遠鏡の先の美しい光景ではなく、「北越雪譜1)」にも描かれたとおり古くから今へも労苦として重くのしかかる。新雪では比重0.1程度も春先の十分湿った雪では0.5を越えて、屋根上の積雪加重で家屋倒壊の危険性があり、しばしば著者は乗用車を並べた木造の屋上駐車場との想像で伝える。建築分野では屋根雪処理は主要課題でもあり、屋根を支える柱や梁の歪みや軋み音に怯えて行っていた排雪作業を合理的に実施する目的で帯雪重量を音響的に検知できないかと研究を開始し、雪の音響特性や音の伝搬への積雪の影響の研究も続けて行ったわけである。

. 積雪中の音響減衰

 手始めは簡単に、積雪下の剛な面上にマイクロフォンを配置、上部のホワイトノイズ音源からの音圧の減衰量を観測し、さらに周囲の積雪も重ねながら実験を行った。その結果、雪の層高に比例してdB減衰値が増し、密度や周波数が増すほどその傾向が強まる特性が把握できた。これを主要な卒業研究テーマに掲げつつ、卒業間近な冬期のみ限定されるこの方法の他に、実験対象をグラスウールなどに替えて留年防止の通年研究とした成果とも対照比較して、積雪は多孔質音響材料と極めて類似の音響減衰特性を持つと把握した。その後、多雪地域でより深く密度も高い自然積雪層内にマイクロフォンを配して積雪中の音響減衰の観測を重ねた。それらのまとめた例を図1に再掲するが、積雪状態を音響特性が既知の多孔質材料に見立てることが可能と考えられた2)

. 積雪面上の音響伝搬3)

雪が降ると静かになると言われる。この真偽の確認の一環として、異なる深さの積雪面上に音源と騒音計(当時)を配置して音響伝搬特性を観測した。多孔質面上の理論伝搬計算とも比較して積雪は厚い多孔質材料と仮想すると良い対応が得られると判明した。僅かな積雪でも伝搬特性の中高音域に深いディップが複数現れ、音声や一般騒音の主要成分の周波数帯域で広く深い大きな減衰を生じ、より深い積雪ではやっかいな低音域にもディップが及ぶと分かり、降雪が騒音を発する活動自体を抑制することと併せて、雪による静穏化の言説の根拠と納得できた4)

. あとがき

 積雪と音に関する著者の研究を振り返ってみた。観測計画の実施に想像以上の雪対応が求められるが、一部紹介は文献に。若さ故に可能な細かな準備作業や柔軟な現場対応、キノコ工場稼働による低い音の騒音が積雪で一時的に消えるとの一住民の声に合点した記憶、そして多孔質材料の特性解明とそのために音響管計測を始めたことが思い出される。最後に、身近な問題や古い言説も新たな研究の源ですと若い人に伝えておきたい。  

 (新潟大学 岩瀬昭雄)

          図-1 積雪中の音響伝搬減衰特性2)

参 考 文 献

1) 鈴木牧之:北越雪譜, 岩波文庫 黄226-1 (岩波書店,1978).

2) T. Iwase, T. Sakuma and K. Yoshihisa: Measurements on Sound Propagation Characteristics in Snow Layer, Proceedings in CD-ROM , 17th ICA (2001, ROMA).

3)例えば岩瀬昭雄:積雪面上における音響伝搬特性, 日本騒音制御工学会誌, 21巻 3号, p148-151(1997).

4) 岩瀬昭雄:積雪地の音環境について– 雪が降ると静かになる?の解明,日本騒音制御工学会誌, 32巻6号, p378-384(2008).

 

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