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公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

ひとの音感覚を数値化するー工夫とその変遷ー(Vol.42 No.4)
ひとの音感覚を数値化するー工夫とその変遷ー

ひとの音感覚を数値化するー工夫とその変遷ー

はじめに

 当研究室では従前よりプリンタ動作音を中心に機械から発生する音(機械動作音)に対する印象や感覚を評価(数値化)し、それを既存の物理評価量(LAeq, ラウドネス、シャープネス、ラフネス、変動強度etc.)から予測する研究を行ってきました。その流れもあってか、地元企業から製品音の評価や対策の相談を受ける機会が最近増えてきました。そこでの課題の多くは騒音レベルを下げるとか、異音の発生原因を明らかにして対策を考えるというような、いわゆる静音化の話です。しかし、打ち合わせの際に音質評価や快音化の話をしますと、みなさん一様に興味を持たれます。静音化の対策の次には是非考えてみたいと言われますので、この手の研究の潜在的な需要はかなりあるのではないかと思っています。

 印象評価実験

対象音の種類、製品の用途、印象や感覚をどのような観点から評価するのかによって、数値化すると言っても値は当然変わります。まずは、その辺りを整理して印象評価実験の分析を通して数値化を行うことから研究を始めなければなりません。研究室では一対比較法やSD法による評価実験を実施することが多いのですが、いずれの場合も問題となるのが被験者の確保と実験をいかに確実に実施するかです。

大学の研究室の場合、被験者として大学生を確保することは難しくないのですが、どうしても年齢層や性別が偏ってしまいます。広い年齢層、嗜好の多様性を反映した結果を求めるのであれば、学生以外の一般人、社会人に対象を広げる必要が出てきます。企業からの依頼の場合、従業員の方に協力してもらう場合もあります。ただ、そうなると実験環境を揃えて実験を行うことの難しさが出てきます。

 実験環境の変遷

そこで、我々は実験環境や実施方法に少しずつ工夫や改良を加えてきました。当初は紙ベースのアンケート用紙を使っていたのですが、最初にやったことはそれをマークシート化してスキャナで読み取るということでした。一方、評価音の提示については無響室で収録した音にダミーヘッドを使って測定した部屋のインパルス応答等を畳み込んでバイノーラル再生音とし、ヘッドホンを含めた再生機器を統一することで、研究室内外で実施する実験の条件を揃えました。

つぎに、実験担当者にとっての最大の課題は被験者のスケジュール調整でした。被験者の協力を得やすいよう拘束時間の短縮を目的に、試験音の提示や回答の回収の作業をプログラムを自作してアプリ化することにも取り組みました。試験音や回答選択肢の順序効果を低減するための組み合わせの変更も自動化でき回答用紙や読み取りデータの点検作業からも解放されました。

そうした工夫を重ねるうち、e-ラーニングシステム上のアンケートのように、ネットワークを介してWeb上で試験音の提示、回答の回収などを行えば実験実施場所や時間の制約をかなり低減できるのではないかと考えるようになり、昨年は学内で試験的に実施してみました(-1)。 実験機器の統一と事前調整が必要ですが、協力的な被験者を確保し十分な事前説明すれば遠隔値での実験も可能であるとの感触を得ました。これが、今後の実験の一つの方向性かなと感じています。

-1 e-ラーニングシステムを利用したWebベースのSD法による試聴実験の実行画面の一例

野呂雄一(三重大学工学研究科)

 

 

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