日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

騒音制御の使命と限界(Vol.42 No.6)
騒音制御の使命と限界

騒音制御の使命と限界

1.まえがき

「学会誌の会員コラムを書かないか」と昔の友人からの電話。90歳を超えて自分でも耄碌自覚で、「無理だよ」と言ったが,「昔の話をできる人が居ないんだ」と言われて引き受けてしまった。本工学会当初の昔話は、本誌vol.30&40(2006&16)に詳細な回顧記事があるので,ここでは認定技士の事を書こう。

2.「騒音制御」の社会的要求

第二次世界大戦後、日本は廃墟から復興の為に無我夢中に働き出した。目標はまず経済復興、夜遅くまで工場を動かす。材料を集め,製品を出荷するのにトラックを走らす。直ぐに「工場騒音」と「交通騒音」の公害が発生。効率よく物を運ぶのには 鉄道がある。それも新幹線が代表で、在来線特急が時速100 km位であったものが目標200 km を超え,さらに300 km を目指す。現在は遂に300 km 以上の速度で走る事が出来る。それで増大した騒音問題の処理には建設計画より前に、環境アセスメントで正しい影響予測をする事。法制は1993年の環境基本法によるが、現場では1970年代から導入され、工場団地や鉄道・高速道路等の公共的開発プロジェクトでは、事前のアセスメントが必須となった。各地方のお役所でそれぞれ委員会を組織して委託業者のアセス報告書を審査するのだが、dB(デシベル)の計算値を小数点以下3桁も4桁も出して来る。それだけで音響技術者の不在が解る。此れが全国一般であった。

3.認定技士のこと(騒音制御工学会の存在意義)

当時の石井聖光会長から副会長の中野有朋氏と筆者の2人に課題が出た。「この期に『騒音制御工学会』の存在意義を周知させるにはどう対応すれば良いか」。答えは「音響技術者此処に在り」と「言える『資格制度』を創る」。建築士の様な国家資格は急には無理だから、我らの『工学会』で創ろうと言う事に成った。1983 (昭和58) 年のこと、規程や事務手続が決まり初回登録は1985年5月、26名で発足。その後の成長ぶりが図-1である。これまでの30年で110名。此の数で社会的に一勢力と言えるか言えないかは、周辺の状況によるが、認定技士その人達が親・学会とは別に、先日は146回目の研究会を開き1人が「地熱発電に係わる環境問題」を話したと聞く。(図-2)写真でも新しい問題に真剣に取り組んでいる雰囲気を感じる。この様な活動こそ、認定技士の本領と思う。その資格がどれ程役に立つか立たないか、認定技士本人が良くわかる。役に立たぬ資格は存在意義がない。役に立てる努力がない、これがぜひ必要なのだ。

-1認定技士登録数の推移  (制作:丸川)              

-2 第146回、認定技士の会、スナップ(制作:丸川)

今年から又新しく准認定技士制度が施行された。これを有機的にリンクする必要がある。それが無ければ、新しい制度は生きられない。又、それを認定技士制度をさらに充実する方向に活用する事が可能だ。創った我々の責任であり、使命であると思う。ぜひ、頑張ってほしい。その為の活動費は認定技士の登録料を特別会計とすれば充分である。上記の「認定技士の会」のメンバーの活躍に大いに期待したい。

初めは実績が出来たら環境庁(現環境省)に国家資格として、取り上げて貰えば良いと考えた。然し、今の政府の国営のものを民営化する流れに逆行する。これは、ほぼ不可能であろうと思う。

 4.「騒音制御」の限界

騒音の無い静寂を「シーン」と文字で表すのは漫画だけに限らないが、実際にその音が聞こえるか?と言う問題で、先日お茶の間のTVが音を出していた。耳に入る音が無くなると、内耳の有毛細胞は近くの血流の音を拾って脳に送る。液体の流れの音だから山の中の小川のせせらぎの音に似ている。電気的に増幅すると「白色雑音」である。強くすれば滝壺に落ちる大滝の重い図太い音で「シーン」とは程遠い。これで言える事は、制御には限界があり、ゼロにすることではなく、その時その場に相応しい必要な騒音を残すことが重要である。残す騒音が無ければ人工的に出すことが正しい制御と言えるだろう。()

 前川 純一

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