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会員コラム

接近通報音こぼれ話~国際基準の楽屋裏~ (Vol.41 No.1)
接近通報音こぼれ話~国際基準の楽屋裏~

接近通報音こぼれ話~国際基準の楽屋裏~

ハイブリッド車・電気自動車等の静音車に接近通報音が設置されることについては,本学会の皆さんのご興味も大きいところでしょう。この音の利用について,引き続き研究と検討が必要なことは言うまでもありません。ですが今回は,本題を横に置き,こぼれ話を幾つかご紹介したいと思います。(Inter-noiseでは”Perception of Electric and Hybrid Vehicles: From Alert Sound Design to Interior Noise”というセッションを継続的に設置していますので,本題はこちらで議論いたしましょう。)

◯テレビでも大きく報道されました

この音に世間の注目が大きく集まったのは,20098月でした。国交省主催の体験会の様子が,テレビ各局のプライムタイムのニュースでも,数分間の枠をとって紹介されていました。音の話題としては,異例の注目度だったと記憶しています。ただ,その多くのは「音が付いて,皆さん気付けばいいですね」という呑気なコメントで締められていて,騒音問題としての議論が欠落していることを危惧しました。(それが,私自身が本問題について具体的な実験研究を開始しようと思ったきっかけです。)

その後2010年には,国交省から対策ガイドラインが制定されました。同時期に,国連ではQRTV (Quiet Road Transport Vehicle)というワーキンググループが設置され,2012年には国際ガイドラインが公布されています。個人的な話題ですが,20108月に,QRTVの議長から,直前のInter-noiseで発表した私の研究を,翌月にベルリンで開催される次回会議で紹介してほしいとのメールが来ました。ちょうどミュンヘン工科大に客員として滞在中でしたので,出席することができましたが,議長からは「ミュンヘンにいたのか,それは奇遇だったね」とのコメント。はるか遠い日本からでも,数週間後の欧州での会議へ気軽に呼び出すというグローバル感覚(?)に触れ,驚嘆したものでした。

◯最近の法制化の動向は?

一方米国では,20111月に対策を検討する法案が可決され,36ヶ月以内に規制案が公布される予定となっていました。しかしその後,その交付は延期が続き(2012年の大統領選の影響もあったと言われています)ましたが,ようやく2016年末に正式な規制内容が交付されました。国連QRTVでは,前述のように米国の足並みが揃わないため,米国を含まないフレームワークでの基準立案が進められ,20163月に,国連規則R.138として正式に承認されました。国内でも,国連規則に準ずる規制を導入し,20183月以降に発売される新型車から,新たな基準による接近通報装置の搭載が自動車メーカーに義務付けられることが国交省から正式に発表されました。

◯その呼び名は?

この発音装置の呼び方には,接近報知音,近接警報音,接近音,車両接近音など幅があります。国交省のガイドラインでは「接近通報装置」と呼ばれていますので,私自身はこれに倣って,接近通報装置/接近通報音という言葉を使っています。国連基準では,AVASと呼ばれています。Acoustic Vehicle Alerting Systemの略です。英語的に「エーヴァス」と発音されるのが一般的なようです。ただ,個人的な経験の範囲ですと,ドイツ語圏,スペイン語圏などの関係者では「アーヴァス」と発音している人も多いようです。

このAVASという単語も,実は日本発祥なんです。2010年の日本のガイドラインを海外に紹介する国交省等の文書では,接近通報装置を”Approaching Vehicle Audible System”と訳し,その略称であるAVASが提案されていました。その後のQRTVでの議論で,この英語表現は不自然であるというネイティブのコメントから,そのままでの採用は見送られました。ただ,そのころまでに,AVAS(エーヴァス/アーヴァス)という語感に委員の多くが愛着を持っていて,このアクロニムを前提とした修正がなされたという経緯です。

ところで,国際基準会議での公用語は英語ですが,参加者の大半は英語ネイティブではありません。このような「英語表現」そのものが議題となると,会議は「英米人チームよろしく!」という雰囲気になるのが面白いところです。英語に手を焼いているのは,程度の差はあれ,日本人に限らないグローバルなことのようです。

平成29111日作成

山内勝也

 

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