日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

不思議音とは? (Vol.41 No.2)
不思議音とは?

不思議音とは?

公益社団法人日本騒音制御工学会研究部会不思議音分科会(主査中澤真司)は、発生原因の特定が困難な音、また、特定が困難であった音を”不思議音”と定義し、この問題を学術的に捉え、正確な情報の提供と、原因特定のための調査に関する精度の向上、調査に要する時間の短縮等を主な目的として活動を進めています。不思議音分科会のホームページには、不思議音の事例が紹介されています。たとえば、共同住宅の居室で①サッシの熱伸縮に伴って「ドン、ゴン、コン、トン、ピシ、パキ」と聞こえる音、②排水横引き管の熱伸縮に伴う「チン、コン、カツン、ビン」と聞こえる音、③テレビアンテナの風励振による「ブオーン、ブオーン」と聞こえる音、④エアコン排水ドレーン管からの「ポコポコ」音、⑤外壁PC板の半固定ボルトの熱ずれによる「コン」という音等です。いずれも音の性質、発生時間帯等から音源を絞り込んで原因を特定できた事例です。

私が関係した不思議音の事例をいくつか紹介いたします。一つめは、共同住宅に住まわれている方から「ブーン、ブーン」という音が時々聞こえてきて気持ちが悪いというご指摘を頂いた事例です。入居されている人に音がする時間帯、継続時間と音がする方向の記録を1週間お願いしました。後日、音の記録用紙を回収して原因の分析を行いました。音の発生している時間帯にはある特定の方向から風が吹いていることが気象庁の風向風速データからわかりました。音は特定の方向から聞こえてくるのではなくどの居室にても聞こえるとのことから空気伝搬音ではなく固体伝搬音と判断しました。最初に、ベランダの縦格子手摺が発生原因ではないかと思い調査しましたが、発生部位ではありませんでした。次に、2層上のセットバック住戸の縦格子手摺が原因ではないかと推定しました。理由は、風が抜ける方向に縦格子手摺が設置されていることです。直下階の住戸から音の指摘がでていなかったので別のところに原因があるのではないかという意見も出ましたが、原因を特定するためにセットバック住戸に風の強い日に入らせて頂き、この縦格子手摺が振動していることを確認しました。対策として縦格子に直交する方向にフラットバーを取り付け、音がしなくなったことを確認いたしました。このことから、風が強い地域に立地する共同住宅においては風が抜けやすい建物のコーナー部やセットバック住戸の手摺は、縦格子ではなく振動し難いパネル手摺の採用を設計時に検討することをお勧めいたします。

二つめは、共同住宅の最上階にお住まいの方から「ブーン」という音が24時間微かにしているというご指摘です。自宅の電気ブレーカを落としても音がしているので自宅以外に音の原因があるから調べてほしいとの申し出です。屋上に設置されている24時間稼働の共用設備機器の防振不良を疑い、1台ずつ運転を止めて調査しましたが原因となる機器は特定できませんでした。次に、両隣と直下階の住宅に入らせて頂き、住宅全体の電気ブレーカを落とさせて頂きました。直下階の電気ブレーカを落としたところ音がしなくなったとの連絡がありました。24時間換気用のファンが軸ずれを起こして固体音として上階に伝わっていることが原因とわかりました。軸ずれは、非常に微小であったために直下階の方は異音と認識されていませんでした。この調査は、他の住戸の専有部に入って行う必要があるので解決までに時間がかかりお叱りを頂きました。

三つめは、共同住宅の中間階にお住まいの方から1日に数回「コン」という音がして気になる。音のする時間帯は不規則で、夜間にすることもあるとの御指摘です。風の強い日、天気が良い日等と関連がないかを質問しましたが、全く関連がないという回答でした。この住宅が立地する地域は、非常に閑静であり、サッシもT-2等級の性能のものを設置していたため、室内の暗騒音は時間平均A特性音圧レベルで昼間で25dB、夜間は20dB前後となっていました。このため、通常は気にならないような生活音が聞こえているのではないかと推測しました。直上の住戸に入らせて頂き音の発生する可能性がある室内の扉やふすまの開閉を行いましたが、音は直下階で聞こえませんでした。ベランダ側のサッシを開閉しても音は聞こえませんでしたが、クレセントを強めに開閉すると音がすることが確認できました。指摘を頂いた方に原因を説明し納得を頂いたので特に対策はしませんでした。閑静な住宅地に住宅を計画する場合には、居室の音環境性能の目標値をよく検討し、開口部仕様を決めることが重要となります。   

(㈱熊谷組 技術研究所 大脇雅直)

 

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