日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

騒音行政と本会の係わり (Vol.38 No.6)
騒音行政と本会の係わり

騒音行政と本会の係わり

昔(過去)

大学での教育・研究生活から、今後公害行政においても調査・研究が重要であると神戸市からの要請を受け、初めて公害行政の現場の姿を見たのは昭和4711月であった。

 当時は、五政令都市(横浜、名古屋、京都、大阪、神戸)と東京都が六大都市公害担当会議と称し、大気、水質、騒音などの情報交換会を年2回開催していた。

当初の騒音の主な議題は、昭和51年に制定された振動規制法、近隣騒音、規制・苦情処理の定常的業務、環境騒音の把握手法等そして騒音行政にも大気行政の様な学会(大気汚染協議会)の設立のことであった。

取り分け、学会の設立については、今後の騒音行政にも官・民・学の協働の必要性を認識して論議の末、環境庁に対して昭和47年に設立された騒音制御工学会を同庁所管の学会にと働きかけをすることになり、名古屋市の故柴田さんと神戸市の私がその任務を任された。

その後、六大都市公害担当会議は規制法毎に分かれ、政令指定都市騒音・振動担当者会議となった。

この間、担当者会議では、騒音・振動の規制業務の課題を環境庁(特殊公害課)に提起した。環境庁はそのつど「騒音防止技術マニュアル検討会」、「近隣騒音対策研究会」、「建設作業騒音規制基準改定調査検討会」等を立ち上げ、現場の声として担当者会議を含めた地方自治体がメンバーとして積極的に参加した。

同時に、環境庁は、環境騒音の把握について総合的・広域的観点から、担当者会議の幾つかの都市の先駆的試みを参考に「都市環境騒音の把握手法」をまとめた。

他方、騒音制御工学会では、騒音行政が今後の望ましい音環境の創造に向けて効果的且つ合理的な対策を推進していく担い手として、環境騒音振動行政分科会(主査 沖山文敏)を立ち上げた。

昭和61年(1986年)度の学会・技術発表会が始めて東京を離れて神戸市で開催することになった。

当時の時田保夫工学会会長、前川純一実行委員長の全面的なご賛同、ご支持を得て、大阪府の厚井さんと私が、学会で初めてシンポジウムを企画した。

公害基本法(昭和42年)が制定され20年目を迎えようとしている時であった。この間、工場事業場等の騒音・振動対策は、騒音及び振動規制法令の規制により改善が図られた。しかし、都市生活が豊かになり、人々の快適性に対する要求の変化、生活様式の多様化等に伴い、深夜のカラオケ、商業宣伝の拡声機、一般家庭のピアノ、クーラー騒音といった新しい多種多様の局地的騒音、加えて、交通騒音という広域的騒音が社会的に問題となり、都市の騒音環境をより一層複雑化、深刻化させていた。

このような背景を踏まえ、我々行政に携わる者が官・民・学の狭間にあって、“今、何をなすべきか”との視点で、「行政と騒音シンポジウム」を開催した。

その内容は、環境庁より「騒音振動公害行政の現状と展望」、地方自治体より「環境騒音調査」・札幌市、「在来鉄道騒音の目標値」・名古屋市、「航空機騒音予測」・千葉県、「公害防止条例と騒音規制」・八尾市、「地方自治体の騒音・振動行政-近畿圏の現状と課題-」・奈良県の報告、そしてコメンテータとして石井聖光先生、久野和宏先生にお願いし、実りある試みとなった。

このシンポジウムは、環境騒音振動行政分科会の手によりその後も精力的に続けられた。

やっと、平成3年(1991年)に、大都市の担当者会議及び環境騒音振動行政分科会の地道な努力の結果、本会は環境庁所管の社団法人として認められた。

今(現在)

が、誠に残念なことに、例えば、行政の本誌の購読会員数が激減したことを見ても、本会と行政との係わり合いが薄くなった。何故か? 本会が、必ずしも、行政のためだけに設立したわけではないが、その理由は多々あろう。

その後、本会は、平成23年に公益団体法人として主務官庁も環境省から総務省に移行した。

今、地方自治体の騒音行政を取り巻く環境は、地方分権に伴い厳しくなったが、騒音等に係る苦情は相変わらず多い。私が関与している、山田伸志、犬飼幸雄両先生と騒音行政OBの方々と運営している「NPO住環境の騒音、振動、低周波音を考える会」で取り扱う苦情相談も同様で、しかもその内容が行政の対応の拙さ、不十分さから生じた事例が多く苦慮している。

本会の活動の大きな柱は、調査研究、社会貢献の推進であるが、どちらの側面についても、地域住民(国民)の生活環境を保全し、健康の保護に資するためには、地域住民との接点をより多く持つ地方自治体の騒音行政の力が不可欠であるが、その騒音行政も組織の弱体化等に伴い多くの課題を抱えている。

例えば、詳しく記述できないが、環境基本計画や環境都市計画等の策定に苦慮している。単に、騒音等の実態と低減策だけでなく、今日的課題の「循環型社会」、「生物多様性社会」、「人口急減社会」等の視点にも考慮した地域に応じた音環境創造を提言できないか、など。これも学会に期待したい課題の一つでなかろうか。26・9

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