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公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

環境影響評価における騒音・振動専門家の役割 (Vol.37 No.2)
環境影響評価における騒音・振動専門家の役割

環境影響評価における騒音・振動専門家の役割

今社会でいろいろな問題が生じると、その問題に関するいわゆる専門家の先生が評論したり、コメントを述べていて、こんな事の専門家もいらっしゃるんだと驚くことがあります。

一方私たちは騒音・振動問題の専門家と言って良いでしょう。この専門家が活躍する場の一つに環境影響評価法があります。環境影響評価法(環境アセスメント)とは規模が大きい開発により環境に著しい影響が及ぼす恐れがある事業について、事前に環境影響について調査し評価し、環境に影響の少ない施設を建設することを目的としています。環境影響評価に関する問題には騒音、振動、低周波音問題があります。会員の中でも環境コンサルタントとして計画段階から事業者と一緒になって実態調査から予測評価を行って環境影響評価書を作成していると思います。またその結果を都道府県、市町村の首長の代わりに意見をまとめる審議会の委員として活躍している方も居ると思います。私も東京都、千葉県、横浜市で審議会(都、県、市等で会の呼称が異なるが以下審議会とする)などで専門家として委員を経験してきましたので、その役割、問題点などについて述べたいと思います。

環境影響評価法の対象事業は規模が大きく例えば、高速道路の新設または改築、ダム・放水路・河口堰、新幹線鉄道、飛行場、発電所その他全部で26事業ありますが、事業名を聞いただけで規模が大きそうなものです。これを「法アセス」と略称し必ずアセスを行わなければなりません。これより規模がやや小さめのものは第2種事業と位置付けられ、必要によって選択されたり、都道府県の条例でアセスを行っています。たとえば東京都では1000台以上路外駐車を有する施設を対象としているので大型のスーパーマーケットの計画でアセスの対象になることがありました。横浜市では100m以上の高層ビルはアセスの対象となるため、みなとみらいの高層ビルがアセスの対象になることがあり都道府県でも違っています。

騒音・振動以外に、環境影響評価とはどんな項目のものがあるでしょうか。予測評価の項目としては大気汚染、水質汚濁、悪臭、土壌汚染、地盤沈下、日照阻害、風害、電波障害、植物・動物、地形・地質、水文環境、史跡・文化財、景観、ふれあい活動の場、廃棄物、温室効果ガス等。環境問題は非常に多岐にわたります。したがってコンサルタント会社はこれだけの専門家を抱えなければなりません。また審議会の委員もこれだけの専門家をそろいなければなりません。審議会の会議では騒音・振動以外のチンプンカンな話も聞かなければならないので大変です。ただ私は大学の授業で環境工学、環境影響評価論などを担当していたので他の専門家の話が大変参考になり授業に反映でき非常に勉強になりました。

アセスで必要な専門的知識は①調査の方法です。騒音・振動レベルを工事中や完成をイメージしてどの場所で、いつ、どのような方法で調査しなければならないか、低周波音も調査しなければならないか、不要か等を決定する知識です。これが適切でないと、審議会の委員や、住民から指摘されます。②一番大変なのが予測です。専門家の出番です。工事中の影響も評価しなければならないので、建設機械の騒音のパワーレベルを予測し、距離減衰を計算し、それを合成するわけですが、ここまでは当たり前。専門家は建設機械が低騒音型か、超低騒音型か、データがある機械か、距離減衰は理論値だけでよいかなどの見解が必要です。③高速道路の計画では自動車走行時の騒音の予測が必要です。ほとんどの場合日本音響学会のASJ RTN-Modelが使われています。ただこの式が適切に使用されているかチェックします。駐車場の流入交通騒音の予測や、清掃工場のごみ搬入車の騒音の予測に使ったりしている場合があり、専門家から指摘を受けたりします。③また計画中の施設から低周波音が発生するかは騒音の専門家がそのプラントをよく知らないと見逃す場合があるので注意を要します。

私が担当して特に興味ぶかかった例を紹介しましょう。東京スカイツリーは昨年完成し毎日見物客でにぎわっていますが、あれも東京都のアセスの対象になったものです。審議会の専門家(小生)は「関東平野にこのようなタワー(円い棒)が立つと、風が吹いた場合カルマン渦が発生して異音が発生しないか」と質問した。検討していただき詳細には棒ではないのでカルマン渦は発生しないとの返事だったが今そのような苦情はないようです。東京国際空港再拡張事業では、千葉県上空での騒音の為滑走路の位置が変えられています。中央新幹線(超伝導リニア)は地下40mを通るので騒音・振動はほとんど問題ないと思われますが、トンネル出入り口の微気圧波の問題がありそうです。

騒音制御工学会としても音響学会式に相当する予測式の提案や工事騒音に関する低騒音機器の開発や、低騒音工事方法の開発、低周波音の評価方法、微気圧波の問題、新しくアセスの対象となる風車の測定、評価など実務に即した研究をしてもらいたいものです。

名誉会員 工藤信之

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