会員コラム
- 千葉工業大学における音響研究の紹介(Vol.36 No.5)
-
千葉工業大学における音響研究の紹介
千葉工業大学における音響研究の紹介
1.はじめに
千葉工業大学では,音声,聴覚,音響心理,電気音響機器,超音波,建築音響,騒音・振動等ほとんど全ての音響分野で活躍する研究者が多数在籍し,外部研究機関とも密接に連携しており,これら人的資源を有機的に結合し,研究者間の協力・共同研究を推進することによって,有用な研究成果を効率的かつ継続的に生み出すために,音響工学フォーラムと称する研究組織を構成している。(表1) ここではこのグループの研究活動について概要を紹介する.
2.研究活動
この研究組織の前進は,音響情報フロンティアセンターとして文科省・学術フロンティア推進事業の研究プロジェクト「快適音環境の創生」(平成17年度から平成21年度)を遂行であった。この5ヵ年に亘る研究期間に,音の情報性・文化性・福祉性・安全性・快適性・社会性に着目し,各種環境における音響的快適性の向上と音響情報伝達の高精度化などを目的とする研究を進めてきた。本プロジェクトにより,音環境実験スタジオ(図1)および6ch.収音・再生方式による3次元音場シミュレーションシステムなどを整備した.また,研究成果を社会に発信するとともに,プロジェクト研究に対する評価・意見交換を積極的に行うために,「交通騒音問題への取り組み」,「音響計測技術に関する最新情報」,「快適音環境の創生・研究成果報告会」と題した3回のCIT音響フォーラムをシリーズ的に開催してきた。
平成22年度から,代表・分担・協力研究者計11名による研究グループを組織して,“公共性・安全性”に着目した大型プロジェクト「公共空間における安全確保のための音響情報伝達に関する研究」(科研基盤研究A・研究代表者:橘 秀樹)を開始した。さらに,この研究組織の目的として,各研究者の音響分野の知見を持ち寄り,様々な視点から意見交換や情報交換を重ねる場を設けることで,広い視点から個々の研究やプロジェクトについて相互に現況を理解し,多岐にわたる研究を有機的に結合した総合音響学としての社会の抱える課題の発掘と研究の促進を図ることを念頭に研究活動を行ってきた。この成果として,「超音波の応用―映像化技術」(平成23年2月),「音声の情報性」(平成23年10月)と題したCIT音響フォーラムをそれぞれ開催した。
また,平成22年度より環境省総合環境研究推進費「風力発電等による低周波音の人への影響評価に関する研究」(研究代表者:橘 秀樹,分担者:矢野博夫)を開始した.本研究では、風車騒音の生理・心理的影響等を明らかにし、環境影響評価に係る技術資料や影響の防止対策のための基本的な知見を得ることを目的として,風車騒音の実測調査および地域住民に対する影響調査,風車騒音に係る聴感実験,文献調査などの手法により3年間で目標を達成する計画である.このうち風車騒音の実測調査・社会調査については騒音制御工学会を中心に,風車騒音に係る聴感実験については東大生研・坂本研究室を中心として,現在,精力的に研究が進められている。