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公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

騒音計(サウンドレベルメータ)(Vol.34 No.3)
騒音計(サウンドレベルメータ)

騒音計(サウンドレベルメータ)

最近の各社の騒音計の仕様を見ると、ダイナミックレンジは100dB以上、周波数の重み特性や動特性は計算通りの特性が、また電池での作動時間も数十時間など、基本的な騒音測定に十分以上の性能を持っている。取り込む音が測定対象の音であることも確認出来れば完全な測定と言うことが出来る。当然通常用いられる各種騒音評価量の計算機能も内臓されている。またパソコンなどの外部機器と接続して更に高度な処理が可能である。私が騒音計に関する業務についた40年前から見ると、騒音計としてだけではなく万能な音の計測器として完成している。すなわち万能なサウンドレベルメータが生まれたと言うことが出来る。

古い文献を紐解いて見ると、1930年代に世界的に騒音測定に関する研究が盛んに行われている。1936年には米国で騒音計の規格の試案が公表されている。当時わが国でも、騒音問題が取り上げられており、幾つかの機関で調査研究が行われていた。また1930年代は現在用いられているほとんど全ての電気音響変換器が実用化された時代である。これらの状況については多くの先達の報告がある。特に騒音測定についての守田栄先生の「騒音測定の移り変わり」騒音制御、Vol.1,No.5(1977) p.1にかなり詳しい記述があるので参照されたい。またその中で人の判断は0.1dBになることはないであろうという記述は極めて示唆に富んでいる。私は今でも騒音の測定値は1dB刻みで、統計処理の結果必要な桁数で表すべきと考えている。

騒音評価では、変動する音の測定・評価という大問題を解決しなければならない。人間が変動する音(騒音)をどう感じるのかが問題なので、まず当時実用化されていたオージオメータが用いられた。いわゆる聴取式の騒音計である。その代表がBarkhausenGeraeuschmesserである。この騒音計は小林理研にあると聞いているが、確かめてはいない。私がこれを試すことが出来たのは30年ほど前にドイツの標準研究所PTBを訪問した時のことである。実際に動かした。聴取式の騒音計は検出器として人間を用いており、測定値が人間の主観評価に依存する。この方法では必要な定量的結果を得ることが困難である。

わが国では第二次世界大戦中、海軍の要望によって指針型騒音計の規格が審議されている。目的は、何処ででも誰にでも安定した一定の精度の得られる測定機の開発である。すなわち心理的量ラウドネスレベルの標準値を如何に物理的測定法に採用し、指示計器で表示できるかである。日本音響学会でもこのために、当時使用・試作されていた10機種ほどの指示型の騒音計が集められ、性能の比較を行っている。マイクロホン、ダイナミックレンジ、基準の音圧レベル、周波数特性、指示計器を含む動特性など多くの問題が述べられている。マイクロホンにはピエゾ型、カーボン型、ダイナミック型とコンデンサ型が用いられていた。ダイナミックレンジは20dBが目標であった。周波数特性と指示計器の動特性については他の機会に譲る。また当時は真空管の時代であり、数種類の電池が必要で、その大きさは騒音計の本体とほぼ同じ、50 x 50 x 25 cm位、重さは本体、電池それぞれ十数kgであった。

これらの成果は、昭和24年騒音計のJES規格の制定に繋がっている。さらに当時の騒音問題の高まりとともに、昭和26年騒音レベルが計量法に取り込まれた。このためにJES規格を基に、昭和27年JIS B7201-1952「指示騒音計」が制定されている。また検定の対象としては指示騒音計とし、聴覚騒音計は検定対象外となった。

前述のわが国における騒音計規格化は、1936年の米国の標準規格(ASA)や1940年のドイツの標準規格(DIN)なども参考に行っている。その後国際電気標準会議(IEC)の推奨規格普通騒音計(IEC R123:1961)と精密騒音計(IEC R179:1965)が作られた。JIS規格は検定制度とIEC規格との整合を図りながら改正を重ねてきている。現在ではIEC規格が国際標準となり、騒音計の規格はIEC 61672:2002 “Sound level meters”となった。この規格との整合が図られたJIS C 1509:2005「サウンドレベルメータ(騒音計)」が制定されている。

計量法による騒音計検定実施のための研究が昭和26年通商産業省電気試験所(現産業技術総合研究所)で開始された。まず、標準マイクロホン、MR103などのいわゆる1インチ型コンデンサーマイクロホンを用いた音圧標準が確立された。昭和35年から騒音基準器検査で供給されている。その後昭和40年頃の環境問題の高まりとともに、昭和46年環境庁が発足し、騒音レベルを取引証明に用いるために、騒音計の検定制度が求められた。当時騒音計検定に関する研究が電気試験所で服部昭三博士(三重大学名誉教授)を中心に進められていた。服部先生の騒音計検定に関する大変合理的な方法の確立によって、昭和48年機械電子検査検定協会(現日本品質保証機構)で騒音計の検定業務が開始された。この制度の運用は現在も順調に運用されており、技術などの進歩に合わせて改良が加えられているようである。

三浦 甫(静岡理工科大学名誉教授)

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