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公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

マニュアル考(Vol.33 No.1)
マニュアル考

マニュアル考

 昨年、オール電化の家を新築した。エコキュート、システムバス、蓄熱暖房器、IHクッキングヒーター、テレビドアホン等を初めて使うことになったが、新築にあわせて数点の電化製品も慎重した。各種の取扱説明書はダンボール一杯になっている。さて、その内容の理解のしやすさは千差万別ではあるが、おおむね絵入りで読みやすく心がけてはいるようだ。しかし、今のところほとんどそれらの取説を読む必要はない。機器についている液晶画面に出てくる手順通りにすれば事は済んでいるのである。

 ところで一方、諸兄も携帯電話をお持ちと思うが、それにはどれだけ多くの機能がありのだろうか、あの分厚い取説を読む気がしないので自慢ではないが、私はいまだにまだ2~3の機能した使っていない。

 そんなこんなを考えている中、昨年、栄えある研究功績をいただいた。非常にありがたく、これまでご指導いただいた方々、また研究に協力していただいた方々に深く感謝する次第である。それを機に。少し昔のことにはなるが、測定器等のマニュアルについて思い出、そしてそれにまつわる現状について考えて見ようと思う。

〇騒音測定をめぐって

 昭和40年代初頭、二村忠元教授、曽根敏夫助教授の下に、各地の都市から依頼されて市街地の騒音測定することが多かった。中央値を求めるため5秒おきの騒音レベルを記録するのに3人一組(読取り、時計、記録)で行っていた時代である。日本製の騒音計も使ったが、B&Kの計測器を標準として使っていた。そのマニュアルはもちろん英語ではあるが、回路図まで掲載されていたのは、日本製のマニュアルと比べて驚きであった。それが私にとって実用英語と電子回路の本当の勉強の始まりであったような気がする。

 またその頃、ディーゼルエンジを使った火力発電所(45,000kW)からの低周波数を城戸健一教授の指導のしたで計測したことがある。当時、低周波音の測定は市販されておらず、B&Kのマイクロホンアンプを改造(コンデンサーを挿入し、ゲインを犠牲にして低域まで延ばした)して使用し、1000Hzを運搬波とする振幅変調器を自作して民生用テープレコーダーを組み立てた。これで、2~30Hzの低周波は十分記録することが出来たのである。
 さて、低周波音の対策としては、直径及び長さがそれぞれ6mの円筒型消火器や直径10m、高さ12mの消火器を取り付けて問題は解決した。しかし、自作測定器のマニュアルを書かなかったためか、その後誰にも使ってもらえなったのは残念である。

ところで、昭和43年に私が初めて買った車は「スバル100」であった。車いじりが好きで、故障した折りにはディーラーの修理工場で部品を買いながら、修理手順を開いて、ウォーターポンプの交換をしたりしていた。そんな時に、やはり車好きの友人からアメリカで市販しているスバル車の分厚い英語版修理マニュアルを土産にもらった。自分で修理するのが当たり前のアメリカではあるが、すなおに驚いたものである。その後国内でも各社の車の日本版のマニュアルが市販されるようになった。

 されいまは?と言えば、自動車エンジンは完全にブラックボックスの中に納まってしまっていて、とても素人だ手をだせるものではない。しかし。購入後6年経つ私の今の車は、これまで何の故障も起きていない。それだけ技術が進歩したものと思うが、修理マニュアルを見なくて済むのに一抹の寂しさと不安を覚えるときがある。

〇マニュアル通りの危うさ

 私は現在、県や市の環境審議会や廃棄物処理施設委員会、大規模小売店舗立地専門委員会等の委員をしている。そこでは各種の報告書や届出書について審議するのであるが、騒音レベルの予測ではそれぞれが何がしかのマニュアルにしたがって計算しているものと思いうのであるが、その適用が正しくなされていないものをまま見ることがある。機器の大きさを考慮せずに計算式を適用したり、騒音の音響パワーレベルを音圧レベルを小数点以下の4桁まで表示しているものがあった。マニュアルには計算結果の桁数についての記述がなかったものと思われる。

〇まとめとして

 15年ほど前、インドネシアのバリを旅したことがある。大きなほ凧がビュンビュンと音を立てて舞っている大空の下で、3人ほどの若者が神妙に老人になにやら教えを請うているようである。老人は凧に張る糸の張り具合を調節して音を調律しているようであった。まさにこれぞ口伝であると思ったものである。ついでに言えば、マエストロ工人が持つ技の極意はマニュアルでは示せないそうである。

 さて、これから開発される機器の使用マニュアルはどんどん必要なくなっていくであろうが、故障時等での対応マニュアルの充実にはまだまだ改善の余地があると思われる。

 話はそれるが、話題を出された学生は、本で調べることなく、ネットで検索して課題を仕上げる風潮にある。さて、これからの世の中は、何処?

(東北文化学園大学 香野俊一)

 

 

 

 

 

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