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公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

東北大学マルチメディアホールについて(Vol.33 No.3)
東北大学マルチメディアホールについて

東北大学マルチメディアホールについて

 JR 仙台駅の西約2 km に位置する東北大学川内キャンパスは, 伊達政宗が築城した青葉山丘陵のふもとの段丘地帯「川内」地区にあり 北から南東方向に流下する広瀬川によってまれていることからその名由来が固地したとされているようである。

 マルチメディア総合研究棟の建つ北キャンパス周辺は ,古くは仙台(青葉)城時代の大身侍屋敷地一戊辰戦争後の接収, 旧陸軍用地―第2次大戦後のGHQ 司令部駐屯地(川内キャンプ)という歴史を経て, 東北大学川内キャンパスとして下現在に至っている。

 私が教養部年代を過した 1960年代初めは,広大な芝地の中に点在する緑と白で統一された木造建物や,かまぼこ型の米軍関係の建物が教室,講義室であり, 当時の学生運動全盛の騒々しい時期にあって,ゆったりとした異国情緒を感じさせる風景のキャンパスであった。中層建物の建ち並ぶ現在のキャンパスと隔世の感がある。そして今度は,このキャンパス北側に主要幹線道路と仙台市地下鉄東西線の整備が計画され,平成27年の(仮称)川内駅開業に向け始動しており,またひとつ新しい顔を見せようとしている。

マルチメディア総合研究棟

平成15年度環境デザイン賞の対象となった東北大学マルチメディア総合研究棟は,マルチメディアの機器の開発普及を背景とした研究や学習・教育形態の変化に対応し,教養教育(総合科目,芸術関連科目)及びマルチメディア環境教育の全学教育充実を目的としている。

  地上6階,延面積6954㎡規模本施設は,前記地下鉄東西線(仮称)川内駅に隣接し,中心広場へと展開する北キャンパスの玄関に位置しており,地域住民や学生にとっての「開かれた施設」として,「キャンパスの顔」 ,「キャンパスの新しいシンボル」として計画 ,デザインされた。施設構成は,多様なニーズに対応できる環境づくりを目指し,計画諸室を学生のためのパブリックスペースを中心に,不特定多数の学生を対象とした実習室等のフレキシブルゾーンと ,研究室を中心としたフィックスゾーンの二つのゾーンに設定し空間構成している。

 本物建は 前述のように主要幹線道路 ,地下鉄に平行に近接して建つため,将来の騒音・振動の影響に対し, 高品位のマルチメディア教育施設としての適切 ,良好な音環境確を確保することが重要な技術テーマであった。対応にあたっては,東北大電通信研究所音響情報システム部門の指導,協力によって設計を行った。

 構造は,フレキシビリティの高い空間構成実現のため,梁間方向15.0mの1スパン構造とし,大スパン架構の梁は鉄骨造としたが高軸力の柱は,剛性確保の考え鉄骨鉄筋コンクリート造とした。基礎は,将来の地下鉄駅舎建設時及び地下鉄運行時の騒音・振動に対するために,剛性の高い場所打ち杭(オールケーシング工法)を採用し,杭先端位置を駅舎基礎下端より深くした。

マルチメディアホール(多目的大教室)

マルチメディアホールは,総合科目,芸術関連科目(音楽・美術・演劇)の授業や講演会等を主要目的とし,音楽演奏や伝統芸能の発表などへの対応も要求される多目的教室で, 建物東側低層部の2~3回に吹き抜けで配置している。収容人員約470名のホールは,その両側面に廊下を配した約31.15×15.0の長方形平面で,ステージ平土間一段床(客席の約3/5)の花壇教室となっており,その室要量は約2200㎥,約4.7㎥/人となっている。音響設計はあくまで講義を主体的に考え,音楽等への対応は付加的対応としている。

 地下鉄騒音・振動に対し,リニアモーター採用の場合の受音側騒音NC 値を55程度,音源側対策後の予想NC 値を35程度と想定,ホールの騒音許容水準をNC25として対策が立てられた。その結果,地下鉄の卓越周波数63Hz帯域に最も効果のある浮き床構造の防振仕様(共振周波数10Hz)採用となった。

 床は, 躯体スラブの上に丸型防振ゴムを挟んで厚150mm のコンクリート浮き床を載せる防振構造とし,段床部分は浮き床に鉄骨束立てでコンクリート段床を支持する構造とした。壁・天井は防振床と切り離し,壁と天井を支持する鉄骨架構を専用の防振ゴムで受ける構造とし,石膏ボード二重張りの防振遮音層とフラッターエコーに配慮した拡散仕様の表面仕上げ層の二重構造とした。

 採用浮き構造の音響測定後の性能評価は,振動絶縁については廊下での加震対して地下鉄周波数帯域である63Hzで所定の減衰効果を,空間音圧レベル差や床衝撃音についても浮き構造の十分な防振・遮音効果が報告されている。また,室内音響測定により,残響時間,エコータイムパターン,明瞭度等についても,良好な結果が確認されている。

 「高断熱高気密」,「次世代省エネルギー仕様」,「免震構造」…最近は,住環境目標の恒常に伴い,増大する環境負荷や自然変動への対応に関する言葉が日常生活の中で氾濫している感があり,自然に開け放され一体となった日本古来の住まいが懐かしく感じられるこの頃である。

(建築工事実施設計担当 株会社式 関・空間 設計 若松 洋)

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