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公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

工事騒音リアルタイム評価・対応システムの開発(Vol.33 No.5)
工事騒音リアルタイム評価・対応システムの開発

工事騒音リアルタイム評価・対応システムの開発

1.はじめに

 平成215月に「工事騒音リアルタイム評価・対応システム」に対して平成20年度の環境デザイン賞を賜ったことは,開発者として誠に栄誉のあることであり,今後の研究開発への励みにもなるものである。ご指導いただいた関係各位に深く感謝申し上げる。

 当社は「利他利己」というお客様第一の精神で「お客様の満足」を目指した事業活動を進めている。その中で,建設工事が周辺環境にどれだけ優しくなれるかもキーワードとなっている。本システムはこの様な考えの中で開発され実用化された。ここでは,開発時の苦労話などを織り交ぜながら,本システムの開発概要を紹介させていただく。

2.開発の背景

 平成174月にAトンネル作業所から相談を受けた。同年の7月から開始されるトンネル掘削期間中の夜間作業時の騒音を,トンネル坑口に近接する民家で40dB以下(LAeq)で管理したい。40dBというレベルであるので,異常騒音発生時に迅速に対応を取りたい。そのための管理システムを導入したい。という内容であった。詳細な条件を聞くと約12ヶ月の夜間作業を対象とし,仮設備基地,工事用地境界,民家での騒音を自動計測し,管理値を遵守しなければならないとのことであった。

 手持ちでこれに対応するシステムも無く,3ヶ月で運用開始しなければならないことから,直ぐに某社の騒音監視システムを思いだし見積依頼したが,様々な要因があり自社でシステム開発することになった。

Aトンネル工事で開発されたのが,工事騒音リアルタイム評価・対応システムver.Ⅰとなった。このシステムは大きなトラブルもなく,工事も無事に竣工することができたが,一つだけ大きな課題を残した。

それは,民家での計測値に暗騒音の影響が含まれてしまうというものであった。本来であれば,システム構築時に考慮すべき事項であったが,多点で連続してLAeqを計測するシステムを作ることばかり考えてしまったことが敗因であった。そこで,ver.Ⅰシステムの改良版として,平成19年初頭から暗騒音の自動削除機能を有するver.Ⅱシステムの開発に着手した。これが環境デザイン賞を賜ったシステムである。

3.暗騒音の自動削除

 ver.Ⅱシステムの特徴は,暗騒音の自動削除と影響を与えた騒音源の寄与レベルを自動で求めるところにある。寄与レベルについては,現地で主要な騒音源と騒音監視地点間の騒音レベルの減衰量を求め,ソフト上で初期設定することで対応できたが,暗騒音の自動削除については,その方法と検証方法について頭を悩ませた。検証方法(実験)について簡単に紹介する。

 パラメータの詳細検討を主目的としたため,実験室での実験となった。そこで,まず,現場周辺で発生するであろう暗騒音を調査した。交通車輌,鳥類,犬,蛙,虫,川の流れ,人など様々な騒音を手当たり次第に収録して実験用の暗騒音源とした。これに,自前で保有していた工事騒音源を利用して,写真1に示す実験モデル(工事騒音用スピーカ7箇所,暗騒音用1箇所)を実験室内に用意し,工事騒音と暗騒音を発生させながら,暗騒音の自動判別パラメータを検証した。この時の騒音源の組合せは,騒音源と暗騒音の時間変動特性や周波数特性をベースとして作成し1000パターン以上となった。

4.現場での運用

 平成1910月頃にはだいたいの形がついたので現場検証を開始した。初めて使うものには不具合が付き物であり,システムを設置させて頂いた作業所の皆様と知恵を出し合いながら完成形にちかづけた。お陰様で,現在では当社の10以上の工事現場で騒音管理システムとして展開運用され,工事周辺地域への工事騒音軽減の一助となっている。

 

 本システムの改良改善は現在も継続している。今後の発展型として,騒音だけでなく,振動・粉塵・水質など,建設工事によって発生する環境負荷要因を総合的に管理するシステムの構築を考えている。

写真:弊社技研実験室に設置した実験モデル

(飛島建設 小林真人)

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