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公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

続編・「騒音制御29巻6号」匿名座談会の編集後記(Vol.30 No.2)

続編・「騒音制御29巻6号」匿名座談会の編集後記

「騒音制御」の編集委員としての主要な仕事の一つとして,特集の企画・編集があります。編集委員は総勢13名で,2名で1組になり各号の特集を担当しています。騒音制御29巻6号(2005.12)の特集を長倉委員(鉄道総研)と担当させて頂きました。この特集は,名前こそ違い前号の続編にあたります。基礎知識だけでなく,測定に本当に役立つ知識を前面に押し出す企画として,座談会を行う案が浮上しました。座談会の成否は出席者で決まると思いますが,その人選につきましては,毎月開かれる編集委員会で討議し決定しました。今回の座談会は匿名でありますので,出席者の選定の経緯は,ここでは触れることが出来ませんが,現場での騒音・振動測定に精通した15名の方にお集まりいただきました。座談会のスタートは,皆さん何を話せばよいのか戸惑っていました。しかし,司会者が動機付けをしたとたんに,堰を切ったように出て来た話題は我々が事前に想定していた,“現場測定においての実務者の立場として言っておきたいノウハウ・トラブル解消法”ではなく,つね日ごろ思っている“計測器に対する疑問・要望・不満”でした。この際,解明・発散しておこうという発言が相次ぎました。騒音測定に熟達した方々からの計測器を使う上での要望や不満は的を射ており,計測器メーカの方にとっては痛いところを突かれていると思いました。これらの生のやり取りを文字にしてしまっていいのだろうかという危惧の念を抱きながら聞き入っていました。この座談会には,計測器メーカの方が3名出席していましたが,質問の集中砲火をあびた計測器メーカの方から,普段は到底聞けない真のユーザからの意見を聞けたと逆に感謝され安堵しました。当初予定していた2時間半を過ぎても終わらず,4時間以上の長丁場になりましたが,中だるみもなく出席者にとっては非常に有意義な座談会であったと思います。

座談会での発言を文字にするテープ起こしが一苦労でした。出席者の皆さんは,一人一人の発言が文字になる座談会であることを承知しているにも関わらず,人の発言中に他の人がかぶって発言をしてきます。発言者が話したい内容と,似て非なる発言をかぶせてくるのでつながりのある文章にならないのです。とかく,日本人は人の話を全部聞かないとか,話の途中ですべてを理解したつもりでいる,話をさえぎるとか,いろいろなことを言われていますが,まさにそれでした。4時間分の発言内容を,雑談を含めて全て掲載しますと60頁を必要とします。会誌には,9頁にまとめましたので,かなりの部分はカットしたことになります。また,グレーな情報は採用しないことをまとめるにあたって念頭におきました。そのため,座談会の雰囲気が伝わりにくくなってしまったことも否めません。

この座談会で私が知り得た貴重な情報としては,騒音計で騒音レベルを測定する際の周波数範囲です。私は,仕様に記載のある測定周波数範囲内で騒音レベルを表示していると思っていました。ところが,最近のマイクロホンは性能が良くなり,基本的には仕様に記されている測定周波数範囲より広い周波数帯域が測定できますので広がった分も含めた騒音レベルが表示されます,とのことでした。従って,A特性補正曲線をそのまま低域あるいは高域まで延ばして補正を行い騒音レベルとしているそうです。常識的に考えれば,性能は良いに超したことはないのですが,仕様に記されていない測定範囲外の扱いについても明確に記載して頂くことを是非ともお願いしたいものです。この座談会で驚いたもう一つのことは,ピストンホンの取り扱い方についての件です。詳細に関しましては,「騒音制御29巻6号,匿名座談会-現場測定で役立つ知識・知恵-」を深くなお且つ行間を読んで頂ければと思います。

今回の座談会は,日ごろの委員会・研究発表会とは異なり,積極的に出席者が発言しなくては成立しないことが心地よい緊張感となり,手持ちの情報を通り一遍に披露するだけでなく,情報を収集する場として積極的に活用しようとする姿勢を明確に感じました。情報が欲しい側(計測器使用者側),情報を提供する側(計測器メーカ)がお互いに充実した時間を共有出来たことに対しては,この企画は成功したものと自負しています。ただ,特集号として内容的に読み応えのあるものになったかについては不安が残ります。テープ起こしの担当が言うのも変ですが,座談会は読むより参加する方が何百倍か役に立つことが分かりました。次回の座談会はいつになるか判りませんが,事前に出席したい旨,お近くの編集委員に予約をしておいた方が良いと考えます。

(財団法人 小林理学研究所 木村和則)

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