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公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

名神高速道路建設の頃の思い出(Vol.28 No.2)

名神高速道路建設の頃の思い出

わが国最初の高速道路は名神高速道路であるが、それまでの日本の道路は自動車が通行するには全く適していなかった。以下は昭和30年代前半頃の話である。高速道路を建設すると周辺地域にどれ程の騒音を及ぼすのか全く分っていなかった。そこで日本道路公団により当時筆者が在籍していた大阪大学産業科学研究所音響部、北村音一先生(故人)に騒音予測の研究依頼があった。まずは実験車としてワゴン型乗用車と4tトラック各1台を用意し、大阪と奈良を結ぶ通称「阪奈道路」で走行実験を行った。数人の警察官をお願いして5分間づつ約200mにわたって交通を遮断して実験車を走らせた。路肩にポ-ルを立て、防風ガ-ゼを張った金網篭にマイクロホンを入れて種々な高さで吊し、騒音レベルを測定した。道路建設の担当の方はとても張り切っておられて「高速道路での制限速度は100km/hとし、それ以下で走る車はスピ-ド違反として厳しく取り締まる!」という威勢の良いお話であった。

実験の結果、周辺の住民が通常の生活ができる程に騒音を抑えるにはどの位の高さの塀が必要かを更に研究する事となり、大阪市内と郊外で様々な高さの塀について測定したところ、高さ5m程の塀が必要であることが分かった。当時はまだ前川チャ-ト(現・神戸大学名誉教授、前川純一先生のご研究による、塀による減音量の計算グラフ)が無かったので、実際に5mの塀で実験する事となり、各所を探したところ唯一大阪刑務所にあることが分かり、お願いして実験をさせて頂く事となった。北村先生と私は刑務官さんの立合いのもと、服役者ではないという腕章をつけて入り、塀の外にスピ-カを置いて測定を行った。予想通りの結果が得られたが、実際に高さ5mの塀は高過ぎて運転者と近傍の住民に圧迫感を与えかねないと思われた。その後防音塀を低くする研究が行われ、例えば先端を少し内側に曲げた「しのび返し型」、また九州大学大学院芸術工学研究院藤原恭司教授が研究を進めてこられた、吸音性筒状物体が先端に設置されたタイプの塀、または先端を複数に分岐させた「トナカイ型」、そしてもっと効果的な「半地下構造」にする等、多くの工夫がなされた。

何れにしても現在の高速道路網に比べ、名神高速道路しか無かった時代を思うと昔日の感がある。このことは道路網の拡大につれて発生交通量とそれに伴う騒音レベルの予測が益々重要になってくることを意味するであろう。

(九州芸術工科大学名誉教授 音環境システム研究所 佐々木 實)

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