日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

失敗の経験知をアーカイブに!(Vol.27 No.2)

失敗の経験知をアーカイブに!

現場における問題解決は,なにより現場での経験がものをいいます。問題が発生している現場の状況は,様々な条件のinputと,その結果であるoutputが多元的に絡み合っていますが,経験豊富なエンジニアは,過去の経験知がシナジー的に作用して,その系の中にいくつかの解を見出すことができます。 個人の頭に保存されている無意識に体系化された問題解決の知恵を検索し適用しているわけです。こうした暗黙知を形式化すること,言い換えれば他人が利用可能な知のデータにすることは大変な作業です。 自ずと若手エンジニアは,先人の知恵を擬似体験的にショートカットする機会に恵まれないまま,現場で学ぶアプローチを繰り返すことが求められます。 確かに,現場を経験することでしか獲得できない知恵もあるでしょう。しかし,騒音・振動の発生のしかたも多様化し,問題の質が複雑化する一方で,過去と同じアプローチでは,結果としてオーバーフローし,疲弊に繋がりはしないか心配です。 では,若手エンジニアに何か支援できるものがあるでしょうか。現場の状況をインプットすれば,いくつかの回答が得られる優れもののソフトウェアでしょうか。 それは,便利なツールには違いないでしょうが,重要なプロセスを省くことで,エンジニアとしての個人のスキルを向上する機会を失わせることになるでしょう。 問題解決の要諦は,原因と結果を繋ぐ系の分析力に尽きると思います。個人の能力向上の弊害にならずに,ベテランのシナジー戦法に対抗できる若手エンジニア支援システムがあるとすれば, 私は,失敗事例データベースではないかと思います。学会の研究発表会などでは,トラブルシューティング的な発表も多く,事例として有効に活用されているエンジニアもいることでしょう。 しかし,問題解決事例の情報は,前提となる条件が同一の場合など,むしろ特殊なケースです。逆に,その多くが公表されていない失敗事例は,成功を収めようとして,結果として失敗した実例ですので,そこにいくつかのヒントが得られるはずです。 1つの答えを知るより,いくつかの問いを持つことが有益なことがあるのではないでしょうか。

さて,本学会会員の高齢化が話題になっていますが,むしろ,今後多くの熟練エンジニアや研究者の知恵が,個人に埋もれたまま引退されることの損失に焦点をあてるべきではないでしょうか。 ベテランが,現場で活かしていた暗黙知を,形式化する道具・仕組みとして,失敗の経験知を蓄えるアーカイブを本学会が提供することにより,若手エンジニアが積極的に学会に関われる土壌を築くことが,望まれていると思います。

((株)小野測器 技術本部 石田康二)

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