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公益社団法人 日本騒音制御工学会

会員コラム

日本の鉄道の低騒音技術は世界一?(Vol.27 No.4)

日本の鉄道の低騒音技術は世界一?

騒音の環境基準と聞いて、たいがいの方は道路交通騒音を連想し、鉄道騒音を思い浮かべる方は、恐らく少数だと思う。私はこの研究所に来て15年以上にわたり鉄道騒音の研究に携わり、鉄道騒音について日頃感じていることを述べさせて戴こうと思う。

新幹線鉄道では、四半世紀以上前の昭和50年に新幹線鉄道騒音に係る環境基準が告示された。環境基準は、線路区分ごとに達成目標期間等が設定されたが、達成状況が芳しくなかったので、地域を限定し当面の対策により75dB以下とするいわゆる「75ホン対策」が進められている。この環境基準を遵守するために、25年以上にわたり、低騒音車両の開発、防音壁の設置や嵩上げ、新しい形状の防音壁の開発、レールや車輪の研磨などありとあらゆる騒音対策が行われてきた。その結果として現在では、日本の新幹線は世界で一番静かな高速鉄道になったと思う。例えば、いま中国の上海の空港アクセスとして導入された常電導磁気浮上式鉄道のTransrapidは低騒音を売り物にしているが、このTransrapidの時速300kmでの騒音値は、84dB(A)(線路中心から25m離れた地点)である。日本の新幹線が時速300kmで75dB(A)以下であることは、いかに低騒音であることか分かって戴けると思う。これは、主にJR各社、鉄道建設公団、(財)鉄道総合技術研究所を中心として関連する各社が、新幹線の騒音対策のために知恵を出し合い研究開発を行ってきた成果の賜であることは言うまでもない。

新幹線の75ホン対策は順次進められ、現在は平成14年度末を目途とした第3次対策が終えたところである。平成12年度に沿線の地方公共団体が測定した結果では、22都府県の321地点のうち132地点(軌道中心から25m離れた位置)で環境基準を達成している状況で、その達成率から言うと、芳しくないのが実情のようである。環境基準は100%達成されるのが理想であろう。しかし現実には、環境対策と利便性の相反するものを両立する必要があり、資金的にも国民の合意が得られる線には限界があるものと思われる。この環境基準達成率の低さが報じられるので、日本の新幹線はうるさいのではないかと感じている方が多いように思う。

現在、鉄道の分野では、新幹線の騒音対策技術は、順次、在来鉄道にも活かされつつあり、新たに導入される新型の車両には新幹線車両で培われた多くの低騒音技術が使われ、さらに静かな鉄道を目指して研究開発が行われている。世界に誇れる日本の鉄道の低騒音技術である。このことを騒音制御に携わる他の分野の方々にも知って戴きたいと願う次第である。

(独立行政法人 交通安全環境研究所 緒方 正剛)

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