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洋上風力発電所の環境影響評価項目における水中音の国内外実施状況等(発生源データ,伝搬予測手法,影響評価方法等)について教えてください。(Vol.42No.6)
Vol.42 No.6

(SCCRI 静穏創造研究所 塩田正純)

ISO1683-1983によれば,空気中の音圧基準値:20 μPa に対して,水中の音圧基準値: 1 μPa であり,音圧レベルで水中の方が26 dB 大きくなる。更に,空気中の音速は,約15℃/340 m/sに対し,水中は約4.4 倍速い。陸上と洋上では,基本的な要因が異なっている。洋上風力関係には,海中音,水中音,水中音響,水中騒音等の用語が,使用されている。が,ここでは,水中音を用いることとする。

(1)国内の実施状況: 環境省1) では,「洋上風力発電所に係る環境影響評価の基本的な考え方に関する検討会」において,本発電所(着床式/浮体式)を「沖合と沿岸」に区分し,工事の実施(建設機械の稼働)及び土地又は工作物の存在及び供用(施設の稼働)では,水中音の影響を勘案して選定することになっている。

1)発生源データは,陸上風車の音響パワーレベルとほとんど同様であるが,洋上風車の出力は,年々大きくかつ大型化してきている。

2)伝搬予測手法は,国際的には数多く発表されているが,国内では,陸上風車で利用している「NEDO の式」や「ISO2631-2 : 1996」が代表的であり,超過減衰の要因に差異がある。また,ソフトウエアとして「サウンドプラン」が活用されている。が,水中音の伝搬予測モデル2)が利用されているかどうかは定かでない。

3)水中音の環境影響評価は,海域に生息する動物,海域に生息する植物が対象となっている。その環境要因は,建設機械の稼働,地形改変および施設の稼働などがあげられる。特に,基礎における杭工事から発生する水中音が海洋哺乳類,魚類3),等々に影響があるとされている。水中音が,魚類に対してどの程度の音圧レベルであれば,影響反応を示すかを反応段階で評価している4)。

(2)海外の実施状況: ウインドヨーロッパ2017によれば,洋上風力の総出力は15.8GW に達し,この1 年間で25% 増加したと報告されている。特に,英国,ドイツ,デンマーク,オランダ,ベルギーが貢献している。オランダでは,2015年に新法として「洋上風力エネルギー法」が施行され,環境影響評価,住民参加と必要であればEIA の補正が行われるとされている。

1)1基当たりの音響パワーレベルは,大型化・大出力になってきているが,110 dB前後の風車が一般的である。例として,総出力108MW(3MW×36 基から9MW×12基)のウインドファームが離岸距離10∼18 km,水深15∼18mに設置されている1)。

2)伝搬予測手法には,「ISO2631-2 : 1996」,スウェーデン方式,オランダ方式,CONCAWE方式,NORD2000 方式,ハーモノイズP2P 方式,偏微分方程式による基本方式(CNPE,GFPE,FFP)が提案されている。水中音の要因が含まれているのは,オランダ方式である。その他は含まれていないので,独立的に資料5),6)を利用しているようである。また,これらの予測式を包含したソフトウエアとして,キャドナA,サウンドプラン,ウインドプロ,エックスサウンド2000,SPL2000等6),7)が紹介されている。

3)建設段階の杭工事や建設用船舶の往来による水中音が,海洋哺乳類(イルカ,アザラシ等),魚類の逃避や繁殖サイトへの影響があるとされているが限定的といわれている8)。また,ブレードの回転による空力音の水面入射の屈折や反射による水中音は風車の最高高さ2倍程度で,ほとんど伝搬減衰し,その影響範囲外であれば,海洋生物等には影響が及ばないとしている8)。

参考資料

1)環境省: 洋上風力発電所等に係る環境影響評価の基本的な考え方に関する検討会報告書(平成27 年3 月,
平成28 年3月).
2 )X. Lurton : An introduction to underwater acoustics─Principles and application/2. underwater acoustic
wave propagation (Spriger, 2010).
3 )赤坂友成: 小特集─音響に関する国際規格審議の動向─ TC43/ SC3(水中音響)の規格審議の進展につい
て,日本音響学会誌,vol. 74,no. 1,pp. 44-49(2018).
4 )畠山良己他: 水中音の魚類に及ぼす影響,水産研究叢書47((社)日本水産資源保護協会,1997).
5 )L. Mylonas, B. Uzunoglu : Assessment of noise prediction models for long-range sound propagation of wind
turbines over water, Uppsala University (2014).
6 )J. Doran, et al. : Sound propagation modelling for offshore wind farms, Ministry of the Environment and
Climate Change (2016).
7 )塩田正純:(公社)日本騒音制御工学会低周波音分科会 第100回記念「洋上風力発電所から発生する騒音の伝
搬予測に関する国際比較」(平成30 年7月23日).
8 )片山洋一: ヨーロッパの洋上風力ファームにおける海
生生物への環境影響評価事例の紹介(1),(2),海生研ニュース,no. 120,pp. 5-6(2013.10),no. 121,pp.
6-7(2014.1).

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