日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

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騒音測定において観測対象外の騒音が記録されることがありますが,簡易的な騒音の分離方法としてどのような方法がありますか。(Vol.41 No.1)
Vol.41 No.1

(大林組技研 池上雅之)

案件により様々な観測対象があるため,オールマイティな分離方法はありませんが,建築音響分野を対象にいくつかの実施例を上げてみますので,質問者の観測対象に応じて適切な分離方法を探して頂きたいと思います。

騒音規制法等に関連した騒音測定:
騒音規制法では,通常,騒音計を敷地境界に設置して測定します。しかしながら騒音計は一般の騒音に対してほぼ全指向性(無指向性)なので,敷地外の騒音も合成して測定してしまい,敷地外の騒音の影響が大きいと測定結果と規制基準の比較が困難になるという課題があります。そのため以下のような方法で,敷地外の騒音の影響の分離が試みられています。
a)時間で分離する(その1): 騒音レベルの測定と同時に録音や録画を行い,それを視聴して敷地外の騒音の影響のある時間帯だけ分析から除外する方法です。敷地外に時々車が通過する場合などに使われますが,手間が掛かる点と車の往来が途切れないと使えない点が欠点です。建設工事の一部の作業など,敷地内の騒音の影響が卓越して大きい場合は,それらの作業がある時間帯だけ分析することもあります。
b)時間で分離する(その2): 例えば工場の場合,工場稼働中と工場停止中の両方の測定を行い,その差分を敷地内(工場)の騒音の影響とします。敷地内外の騒音の影響とも,ほぼ定常的と仮定できる場合に,間接的に敷地内の騒音の影響を推定する方法です。
c)方向と時間で分離する: 騒音計に到来する音の方向を判定する装置を使い,敷地外の騒音の影響のある時間帯だけ分析から除外する(もしくは敷地内の騒音の影響のある時間帯だけ分析する)方法です。a)の除外作業を自動化しようとする試みであり,複数の全指向性(無指向性)マイクの到達時間差を利用したもの1), 2),複数の指向性マイクの組合せによるインテンシティ計測を利用したもの3)などがあります。
環境騒音の測定:
屋外から室内に伝わる騒音を予測する場合など,屋外の騒音負荷(騒音影響)を確認する目的で騒音測定を行います。
d)周波数とレベルで分離する: 例えば分析対象から緊急車両を除外したいなら,サイレンの音(960Hz と770 Hz が交互に生じる音)を手がかりにできます。コンパレータ出力のある騒音計,ブレーク接点(コイルに電圧が印加されたときだけ切断される)のリレー,ゲートトリガ動作があるレコーダーを使い,コンパレータバンドを1 kHz 帯域に設定することで,サイレン(1kHz帯域)がある一定レベルを下回る間だけ,収録することができます(メーク
接点(コイルに電圧が印加されたときだけ接続される)のリレーに置き換えることで,コンパレータレベルがある一定レベルを上回る間だけ収録することもできます)。
建物で生じる異音の測定:
建物で生じる異音(きしみ音等)の大きさや頻度を確認する等の目的で騒音測定を行います。
e)場所で分離する: 固体音の場合は,建物内の広い範囲に伝わる性質を利用して,PS(パイプシャフト)や倉庫などにマイクロホンを設置して,建物利用者の発生音の影響を受けにくくします。
この他,航空機騒音のモニタリングの分野では,目的外騒音の除外の方法4)がいくつか実用化されており参考になると思われます。

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「特定工場に該当しない工場からの騒音や特定建設作業に該当しない建設作業からの騒音の苦情が増加しているとのことですが,規制の変更や特定施設や特定建設作業の追加を検討されていますでしょうか。もし,既に検討されているのであれば,今後の予定を教えて下さい。これらの工場や建設作業を規制の対象に加えることで行政指導がしやすくなると思います。また,このような場合にはどのように対応すればよろしいのでしょうか。」(地方公共団体職員)。(Vol.41 No.2)
Vol.41 No.2

(日本騒音制御工学会事務局 堀江侑史)

ご質問のように最近では,必ずしも騒音レベルが規制値を超えていない場合や騒音規制法の対象とならない施設や建設作業からの騒音についての苦情相談も増えています。このように法規制の対象となっていない工場等からの相談については,環境行政職員が発生源や苦情者への対応に苦慮している現状もあるようです。また環境省では現在,規制の変更や追加について具体的な作業は行われていないと聞いています。
この場合に対応する根拠の一つとして「公害紛争処理法」があります。「公害」は環境基本法により,事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる①大気の汚染,②水質の汚濁,③土壌の汚染,④騒音,⑤振動,⑥地盤の沈下及び⑦悪臭によって,人の健康又は生活環境に係る被害が生ずること,と定義されており,この①から⑦までの7種類は,“典型7 公害”と呼ばれています。これら典型7 公害に関係する紛争であれば,公害紛争処理法により発生源や苦情者に対して対応が可能と考えられます。また「相当範囲にわたる」については,ある程度の広がりがあれば,被害者が一人であっても対象となります。最近苦情が多くなってきた低周波音についても,騒音・振動に関係する事案としてとらえられる場合は,この制度の対象と考えられます。
苦情対応には,騒音,低周波音,振動などの測定が必要であり,先ずは当事者が自ら測定を行う事が求められますが,管轄の地方公共団体も,苦情が寄せられた場合には可能な限り騒音,低周波音,振動の測定を行う事が期待されています。事業活動に伴い機器から発生する継続的な騒音等についても同様に対応を行う必要があります。
建設工事等の際に発生する騒音や振動についての被害に伴う苦情は,その期間中に騒音や振動の測定を行う必要があります。一般的な建設工事等の際に発生する振動に伴う建物被害の場合には,一般的な建物の経年劣化によるものなのか,地震等による被害なのかを適切に評価/判断しなければならず,専門的な知識が必要となる事案も多々見られます。工事開始の前,工事後に双方で被害の状況を確認することが望ましいです。
以上のように騒音規制法(または振動規制法)で対応が難しい被害の苦情があった場合には,公害紛争処理法を適用して住民対応が可能であるので環境行政担当職員も,いろいろな面から住民の生活環境を守るための対応が求められています。

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行政は工場騒音の苦情に対して、どのように対応するのですか。工場が行政の指導に従わず、騒音対策の実施を拒否した場合、操業停止などの強制力はあるのでしょうか。(Vol.30 No.1)

(千葉市環境保全部 松島 貢)

ご質問の趣旨から、まず、騒音規制法に基づく工場騒音に関する規制の体系を説明してから、具体的な対処方法を説明いたします。

騒音規制法に基づく規制は、住民の生活環境を保全する必要がある地域を指定し(第3条)、その地域に適した規制基準を設定しています(第4条)。

そして、工場に対する規制は、特定施設の新設や増設時の事前規制と、操業時の事後規制に区別されます。事前規制は特定施設の設置前に届出書による書類審査を行い(第6条、第8条)、工場から発生する騒音が規制基準に適合せず、周辺の生活環境が損なわれると認めるときは、市町村長は騒音の防止の方法等を変更するよう勧告(計画変更勧告)することができます(第9条)。

事後規制は、工場から発生する騒音が規制基準に適合せず、生活環境を損なうと認められ時に、市町村長が騒音の防止の方法等を変更するよう勧告(改善勧告)を行うことができます(第12条)。そして、事前規制及び事後規制における両勧告に従わないときには、騒音の防止の方法等の変更を命ずる(改善命令)ことができます(第12条)。

そして、この命令に違反した場合には罰則が課せられる(第29条)こととなっています。

ここで、「周辺環境を損なうと認める時」とありますが、この判断基準は工場近傍に住民の居住実態があることや苦情の発生等があげられます。

具体的には、市町村は次のような手順で工場騒音に関する苦情に対処しています。

住民から苦情を受け付けると、現地調査を実施し、住民の申し立て内容の確認と、工場の立入り調査を実施し、必要であれば騒音測定を実施します。この調査により工場騒音が規制基準を超えていた場合(苦情が発生しているので、生活環境が損なわれていると判断する)、工場に対して規制基準を遵守するよう指導します。このときに、規制基準を超えているからといって、直ちに改善勧告を行うことは稀です。

工場騒音に関する苦情対応では、多くの場合、勧告や命令によらない行政指導で対応しております。平成16年度騒音規制法施行状況調査においても、特定工場等の苦情に関する行政指導は1189件ありましたが、このうち改善勧告を行ったのは4件、改善命令にいたっては0件という集計結果でありました。この背景には、工場が行政の指導に対して素直に対応していることと、騒音規制法に定めてある勧告や命令の適用に際しての、小規模事業者に対する配慮(第13条)が考えられます。小規模事業者とは常時使用する従業員が概ね10名以下の事業者を想定しています。

しかし、質問のように、仮に工場が市町村の指導に従わず、騒音低減対策の実施を拒否する場合には積極的に勧告を行うべきです。

また、騒音規制法においては、いかなる場合においても、工場の操業を停止させることはできません。

参考文献

  • 1)騒音法令研究会:騒音規制の手引き(技報堂出版,東京都,2002),p.79~84
  • 2)環境省水・大気環境局大気生活環境室:平成16年度騒音規制法施行状況調査(2005)

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騒工場騒音規制について教えてください。1) 規制基準とはどの位置での値でしょうか。2) 特定施設のない工場については、規制はないのでしょうか。3)既存工場で特定施設を新規に導入した場合、どのように考えるべきでしょうか。(Vol.29 No.7)
                                 (騒音防止管理者)

(東京都環境科学研究所 末岡伸一)

規制基準は、発生源側の基準値であることから、当該工場の最も外側である敷地境界で測定評価し、工場等が立地する区域ごとに定められた基準値が適用されます。この規制基準は工場等に対する規制であり、直接的には工場等の外側の騒音状況とは関係はありません。また、同一の工場等の敷地が2つの規制区域にまたがって立地している場合などは、敷地境界が含まれる規制区域ごとに判断されます。このような場合は、住居に最も近い敷地境界の地点が測定評価の対象とはならない場合も当然ありえます。なお、しばしば騒音対策が苦情からスタートすることから、苦情者宅の区域を考えがちですが、あくまでも規制基準は発生源側の基準であり、当該工場の敷地で考える必要があります。

特定施設の無い工場、すなわち届出の必要のない工場等について騒音対策が必要と認められる場合には、1)条例で規制対象を拡大する、2)工場等の規制とは別にたとえば一般騒音の規制基準を条例で定める、3)環境基準達成のために当該工場に協力を求める、4)苦情がでている場合は公害紛争処理法第49条に基づき調査・指導・助言等を行う、などで対処されています。

工場騒音の規制における特定施設とは、当該の工場が規制の対象になるかの判断に用いられており、規制の対象となる騒音は、特定施設を含む「工場からのすべての騒音」となります。たとえば、特定施設以外の運搬用の自動車や建物設備からの騒音も規制の対象となります。

なお、道路交通騒音など工場以外からの騒音が、規制基準よりも大きい場合については、当面の措置として、工場からの騒音が当該地域の騒音レベルを上昇させない範囲で騒音対策を求めるのが一般的です。

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工場を新設する場合、周囲に住居などが存在しない地域でも騒音規制値は適用されるのでしょうか。(Vol.29 No.9)
                                  (建設会社社員)

(東京都環境科学研究所 末岡伸一)

騒音規制法及び振動規制法の規制は、都道府県知事が指定する地域に適用されるものであり、そもそも規制する意味の無い地域は、指定されないものと理解されております。この適用の判断は、単に住居等が何件あるかということだけではなく、海や川のリクリエーション施設で人々が集うようになったとか、地域の状況を総合的に考慮する必要があります。従って、騒音規制法における規制は、全国一律に適用されるものではなく、都道府県知事が規制する地域を指定することにより初めて適用されます。この指定は、住居等が存在し騒音を減少させ環境基準を達成するために規制を行なうものであり、一般的には環境基準の類型指定と対で指定するものです。

御質問の点で考えるならば、第一に、住居等のまったくない荒野等の場合です。この場合は住居や人の集まる施設が存在しているか又は近々に建設されるかなど、地域の状況を総合的に判断して指定すべきものであり、まったく規制の必要のない地域を指定する必要はありません。

第二に考えられるのは、特定の方向などが荒野や水面となっており、住民などが立ち入らないなど騒音低減の必要性が乏しい場合です。この場合は、現実に照らして対処するのが合理的で、工場には一般的な意味で騒音対策を求めた上で、当該地域における住居の立地状況の変化にあわせて順次対策を求めていくことになります。いわば、継続的に指導するということになり、緊急に騒音対策を求める必要はないと思われます。

なお、規制地域の指定は、行政区画単位に行なわれますが、一般に市町村境界には地先水面が含まれておりますので、市町村単位の指定においては、特段の明記が無い限り地先水面が自動的に指定されることになります。一方、町丁目単位での指定においては、地先水面は含まれませんので、必要な場合は「地先水面を含む」という記述が必要となります。

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規制は苦情が出てから行う(うるさくても苦情が無ければそのまま) とのことですが、騒音問題が後手に回る理由の一つかと思います。 他の法規制やISO9000,同14000などにより、 工場設計時から防止を行う手段はないのでしょうか。具体例があれば教えて下さい。
                             (機械メーカ研究所 社員)

((株)荏原製作所 工藤信之 認定技士)

騒音規制法では届出制を、公害防止条例では多くが許可制を採って事前審査し、 問題が起きそうであれば計画変更を行う仕組みになっています。

ISO14000の環境マネジメントシステムモデルでは 「環境方針-計画-実施及び運用-点検及び是正措置-経営層による見直し」 を実施し継続的に改善していくものです。 従来の騒音規制法のように境界線で何dB(A) という規制値を示したものではありません。企業の事業内容で、 作業時や工事中の騒音が従業員や近隣に影響するようなら、 目的及び目標に取り入れられます。例えば作業環境騒音を80dBにするとか、 境界線における騒音を規制値以下にすることを目的とし、 いつまでに達成するかを目標とし、 この目標を期間内に達成するためにどういう対策を考えているか等を公表することで、 工場設計時から防止手段を施すことになります。

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