日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

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外部騒音の大きな場所でのマンションのサッシ選定について留意点を教えて下さい。(Vol.29 No.1)
                             (建築設計事務所 技術者)

(ゼット音響設計事務所 北川 保)

機遮音設計、すなわち室内騒音を評価・予測をすることですが、これには1)室内騒音の目標値設定、2)外部騒音予測、3)室内外レベル差の予測があります。

設計方法には簡単な方法から複雑精緻な方法まであり各社いろいろ工夫されています。一般的には参考文献[1]に示された方法が用いられることが多いようですが、ここでは私が現在行っている方法を中心にその留意点について紹介いたします。

1)費用対効果の考慮

遮音設計の目的には、a)窓サッシ・換気口の仕様を決める、b)住宅購入者への騒音環境に対する説明資料にする、の両方があります。遮音設計の調査費用は最終的には住宅購入者が負担されるわけですから必要でありかつ十分な設計を心がける必要があります。

2)室内騒音の目標値の設定

室内騒音の目標値は表1のように昼間(6時~22時)・夜間(22時~翌6時)の時間帯別に等価騒音レベルLAeq及び騒音レベルの最大値LAmaxの目標値を設け、全ての目標値を満足するようにしています。但し、工場騒音が対象の場合はLAeq,1hが目標値を超えないように設計しています。

昼間の目標値は会話妨害の防止、夜間の目標値は睡眠妨害の防止を対象にしています。

表1 室内騒音の目標値

評 価 値 昼 間 夜 間
等価騒音レベルLAeq 45dB以下 40dB以下
最大値LAmax 60dB以下 55dB以下

LAeqの目標値の根拠は騒音に係る環境基準です。

LAmaxの目標値の根拠は加来[2]がWHOのガイドラインを参考にしてまとめた文献を参考に外部騒音が大きい地域での目標値ということで決めています。時間重み特性はWHOの指針に従ってFを使用しています。鉄道騒音・航空機騒音等の騒音の最大値が対象となる地域での遮音設計もしていますが上記の目標値の設定には問題はないように思われます。

列車の警笛音、自動車のクラクションのように“継続時間は短いがLAmaxは高い”という音の取り扱いが問題になることがあります。実際にはこれらの単発騒音レベル LAEが同じ場所で観測される列車騒音等のLAEに比べずいぶん小さい場合は問題ないようです。

3)外部騒音の予測方法

クレーン車等を用いて敷地全体の高さ方向も含めた外部騒音の実測調査ができれば確実です。

騒音伝播予測式にはいろいろありますが道路交通騒音の場合には日本音響学会式ASJ RTN-Model2003を用いて計算する方法が便利です。

列車騒音の最大値の予測には注意が必要です。線路の継ぎ目などで音響パワーレベルLwが時々刻々変化していますので、Lw測定地点での騒音が建設予定地の騒音レベルの最大値を決定しているのかを検討する必要があります。

外部騒音の予測結果は計画地が更地の場合の結果がまず算出されます。マンション建設後にはマンション自体の反射によってレベルが上がります。またマンション自体の遮蔽効果も考慮する場合もあります。

4)室内外レベル差の予測

サッシ・換気口の透過損失、天井・床・壁などの吸音率、そしてこれらの面積を考慮して室内外レベル差を計算します。室内外レベル差の計算式には考え方の違いによりいくつかあります。どれが良いとはいえません。ただ、施工後の室内外レベル差は施工の問題等により計算値より悪くなるのが一般的です。これを補正する必要があります。

透過損失の値は実際に使用するサッシ等の値を用いる方が良いでしょう。一般にT-1(TS-25等級)とT-2(TS-30等級)の差は小さく遮音性能の改善効果は2dB程度です。

5)施工後の遮音性能の改善

実際の現場では残念なことに設計値より騒音レベルが大きいことがたびたびあります。サッシの調整によってT-3のサッシ(腰窓)の遮音性能が3~6dB改善された例があります。

具体的な計算式・補正値などについては文献[3]~[5]等を参考にして下さい。

参考文献

  • 1)日本建築学会編,“建築物の遮音性能基準と設計指針(第二版)”,技報堂出版,音響技術,(1997 )
  • 2)加来治郎,“住宅の屋内騒音基準と設計目標値”,音響技術,113巻,pp15-18(2000 )
  • 3)騒音防止設計マニュアル 集合住宅における外部騒音の遮断手法に関する調査研究報告書,(1985)
  • 4)“外周壁の遮音設計の現状と留意点”,建築音響研究会資料AA2000-36~AA2000-40(2000)
  • 5)“集合住宅の外周壁遮音設計の現状”、建築音響研究会資料AA2005-38(2005)

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工場の設備機器への外気導入のために壁に開口部を設けています。開口部の騒音対策について、考え方と方法を教えて下さい。(Vol.29 No.4)
                                 (公害防止管理者)

((株)荏原製作所 松田 道昭)

対策の詳細は専門書に譲るとして、ここでは考え方の基本を述べますので参考にして下さい。

1) 開口部の位置と面積の最適化

開口部から放射する騒音のパワーレベルに対して、開口面積Sは10log10 S [dB]として影響します。例えば、Sが1/2になれば、騒音は3dB低減します。面積は必要最小限にして下さい。

開口部が矩形(長辺a×短辺b)の場合、開口部からの距離rをr1からr2にしたときの減衰は、r≧a/πの領域では点音源と同様に20log10(r2/r1) [dB]です。そのため、境界線が近ければ、少し遠ざけるだけでも減衰効果が上がります。例えば、3mから4mに離したときの減衰量は、20Log(4/3)=2.5dB です。但し開口部寸法と距離の関係が、b/π≦r<a/πの領域になると、減衰量は線音源と同様に10log10(r2/r1) [dB]に半減し、r<b/πの領域では減衰しないので注意が必要です。ただ余程大きな開口部でない限り減衰が見込める場合が多いので、開口部は敷地境界線からできるだけ遠ざけて下さい。

建物角部の開口部は、敷地境界線に面していない側の壁面に設置すれば、建物による回折減衰や開口部の指向性(大体の場合正面方向の音が大きい)によって低減が期待できます。簡易的にフードを取り付けて、下や横に向きを変える方法もあります。開口部と敷地境界線は向き合わせないで下さい。

2) 開口部での消音

開口部での消音対策には様々な種類がありますので、減音効果、設置スペース、圧力損失等を考慮して選択して下さい。

  • ・消音エルボ(直角やラウンドエルボに吸音材内貼)
  • ・吸音材内貼ダクト
  • ・消音器(セル型やスプリッタ型から選定)
  • ・吸音ルーバ(吸音材付きのルーバ)
  • ・遮蔽板(開口部屋内側で機械の直接音を遮る)

3) 室内騒音の低減

屋内の機器配置を変更できるなら、騒音の大きい機器は開口部から遠ざけ、ファンの吸込口などは開口部と反対に向けて直接音が到達しないように工夫します。室内の反響が大きい場合、グラスウール等の吸音材を壁や天井に内貼りすれば、対策効果が上がりますし、室内作業環境もあわせて改善できます。また機器の改修時期であれば、低騒音型への変更なども検討しては如何でしょうか。

開口部の対策を十分に行っても騒音が低減しない場合、固体伝搬音の影響も疑われますので、壁面に振動が伝わっていないか確認してみて下さい。

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防音ダクトの設計や施工についての留意点について教えて下さい。(Vol.28 No.3)
                                (建築会社 技術者)

((株)ササクラ 音・冷熱事業部 黒部能幸)

防音ダクト(以降、消音器と言います)の目的は、強制気流があるダクト内部を空気伝播する騒音を減音することです。この消音器を設計あるいは選定する際、下記のことに注意する必要があります。

1. 圧力損失

消音器の減音効果のみを考えていると、消音器の圧力損失が高くなる。これは例えば低周波域での減音量を大きくしようとすると、同減音構造部が大きくなり、減音構造部の気流速度が上がり、圧力損失が増加するからです。

次に消音器が設置される直近上下流のダクト形状(エルボ等)により、気流が変化して、ダクト消音器と直近のダクト系での総合圧力損失を増加させますので、このような設置をする場合、圧力損失は直管ダクト設置時の2倍を見込む必要があります。これらは消音器メーカーの技術データ等に示されているので、参照されると良いでしょう。

2. セルフノイズ

コンパクトな消音器を追求すると、同消音器の断面積が小さくなり、内部流速が増えて、圧力損失と共に、消音器の内部減音構造が発生する気流音(これをセルフノイズと言います‐パワーレベルで示す)が増えて、下流の騒音値を増加させることになりかねません。消音器の各気流速度におけるセルフノイズを掴んでおくことが必要です。基本的にはダクト内気流速度を出来るだけ遅くすることが必要ですが、コスト上ダクトサイズを大きくすることが出来ないのが現状です。セルフノイズデータについては、ダクト消音器メーカーカタログに記載されていますので参照できます。通常、消音器設計、選定の際、低周波音が下流のダクト系を加振して、新たな振動音を発生することがあるので、上流で低周波音を必要なだけ減音することが必要です。低周波音用消音器の構造上、気流速度が速くなり、セルフノイズを多く出す結果となります。場合によっては、その下流に気流音の主体である中・高周波を取るための消音器を考慮する必要があるでしょう。

3. ブレークイン・ブレークアウト

これは消音器で上流からの騒音を消音しても、下流でダクト外部の騒音が同ダクト内に透過して同ダクト内部騒音を増加させることがあるので注意する必要があります(ブレークイン)。その反対にダクト内部の騒音が同ダクトを透過して、その回りの空間、室内に侵入して同空間、或いは室内の騒音値を増加させることがありますので、その注意が必要でしょう。

4. 正流、逆流での消音器性能

消音器性能を詳細に見ますと、気流と騒音が同方向に流れる場合(正流)とそれぞれが反対方向に流れる場合(逆流)の同じ消音器性能が低周波域において1~3dB異なる(逆流の場合の方が性能が高く現れる)場合があるので注意が必要でしょう。これも消音器メーカーカタログ等に出ているので参照されるとよいでしょう。

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既存道路の騒音対策を遮音壁、吸音処理によって行おうとする場合、費用はどのくらいかかりますか。また費用以外に注意すべき点はどのようなことでしょうか。(Vol.27 No.4)
                               (建設コンサルタント)

(日東紡績 三神 貴)

このようなご質問に「マイナス1dBあたり単価」のようなものが簡単に提示できれば便利だろうなあといつも思います。しかし、伝播経路対策である遮音壁では、そのように表現することには無理があります。

また、一口に道路といっても、土工部・高架部・掘割部など様々な道路構造が存在する事や、遮音壁であれば高さや形状(柱のサイズ、「忍び返し」、R付きなど)でも費用は左右されます。更に近年では、遮音壁や吸音板も音響的な機能以外に、意匠性、耐久性、リサイクル性などに付加価値を求めるなど、製品も多様化してきており、費用の面でも様々です。

前置きが(言い訳が)長くなりましたが、これでは回答になりませんので、具体的に条件を絞ってお話ししてみます。

  • ・遮音壁「JH統一板*1)を用いて、遮音壁を高さ3mで土工部に施工した場合」を例にとると、大凡で¥30,000/㎡(材工共、以下全て)程度です。これよりも単価が上昇する要素としては、「塗装を施す」、「支柱を隠すなど意匠に工夫する」、「勾配がある」、「透光性にする」、「防汚仕上げを施す」、「工事が夜間に限られるなど作業効率が悪い」などが挙げられるでしょう。因みに透光性(反射性)にした場合、同様の施工条件で、¥60,000~70,000/㎡程度(枠つきポリカーボネート透光板)、¥65,000~75,000/㎡(枠なしアクリル透光板)程度です。また、近年遮音壁頂部に「新型遮音壁」を施工する例も増加してきております。凡そ¥59,000~62,000/m程度と考えられますが、こちらも様々な製品がありますので、各メーカーに問い合わせたほうがよいでしょう。
  • ・吸音処理トンネルの内壁や掘割などの反射面に、後から吸音処理を施す場合、吸音材としてグラスウールを用いた一般的なタイプでは、¥35,000~40,000/㎡程度と思われます。耐候性に優れたセラミック吸音板を用いた場合は、¥50,000~55,000/㎡程度です。また、比較的特殊な施工箇所ですが、近年対策事例の多い高架道路の裏面に対する吸音板は大凡¥45,000~55,000/㎡程度です。

これら全ては、誠に大雑把な概算です。計画に際しては、必ず各々見積もりをとる事をお勧め致します。

また、費用以外に注意すべき点との事ですが、

様々多くの点があると思います。材料メーカーの立場から申し上げられる事は限られていますが、既存構造ならではの点であれば、現状耐力の照査、供用中道路の工事規制の問題等が具体的に挙げられると思います。何事においても新品を作るより修理の方が難しいという事があると思いますが、手を加えるための、現状の調査・把握・診断の重要性に集約されるのではないでしょうか。

  • *1)竹本恒行,”日本道路公団における金属製統一型吸音壁,”音響技術vol.6 no.3 53-60(1977)など

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