日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

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道路交通騒音の低減のために遮音壁を設置したときに、事前に予測により求めた対策効果よりも遮音壁設置前後の測定値から求めた対策効果の方が小さいことが多いのですが、どのような理由が考えられるのでしょうか。また、予測精度を上げるための方法があれば、教えていただきたい。
                          (建設コンサルタント 技術者)

(ニューズ環境設計 福島昭則)

大きく分けて3つのことに注意する必要があります。まず第1点は対策効果の測定方法です。 通常は遮音壁を設置する前後において遮音壁背後で騒音測定を行い、 設置前後の測定値(LAeq)の差を遮音壁の挿入損失(効果)とすることが多いでしょう。 そのときに対象道路以外の騒音(例えば側道車等)の影響は除外する必要があります。 通常は測定中のLA95や最小値を暗騒音と考えてLAeqを補正します.このときに設定した 暗騒音の音源を確認しておく必要があります.交通量が多い道路ではLA95や最小値もそ の道路からの騒音で決まっている場合もあります.そのような場合には道路から離れた 地点に暗騒音把握用の測定点を設置する方法もあります.

第2点目は,設置前後の交通量等の違いを補正する必要があります. 調査時の交通量・大型車類混入率・走行速度等は調査毎に異なるわけですから、 発生騒音は遮音壁の設置前後で異なります。このため、遮音壁の設置区間の前後で遮音 壁設置の影響を受けず、かつ遮音壁設置区間と同じ交通状況と考えられる地点に測定点 (基準点)を配置し遮音壁背後での騒音測定と同期させて測定します。遮音壁設置前後 の基準点での測定値の差を発生騒音の違いと考え、遮音壁背後での測定値の差に補正して 効果を算出します。基準点が設置できない場合には、LAeqと小型車換算交通量 (ASJ Model 1998では大型車1台の発生騒音は小型車4.47台に相当しますので大型車1台を 小型車4.47台として換算します)との対応を設置前後で整理し、設置前後の回帰式の差 から対策効果を把握することもあります。 なお、この場合には回帰式の信頼区間をできるだけ小さくするために交通量が最小となる 時間と最大となる時間を含むような測定が必要になります.通常は毎正時から10分間の測定 を24回することが多いです。また、スピーカを用いた伝搬実験で対策効果を把握することもあります。 いずれにしても、遮音壁設置前後の発生騒音の違いをいかにキャンセルするかが重要です。 また、遮音壁の遮蔽効果は一般には高い周波数ほど大きいため,設置前後の周波数特性を比較し、 その差が物理的に意味のあるものかを検討するのも良いでしょう。

第3点目としては、現実の騒音伝搬や発生騒音がどの程度まで予測に反映されているかです。一例としてあげれば、

  • 建物や地面等での反射音はどのように考慮されているか。
  • 遮音壁の透過音は問題とならない程度に小さいと考えられるか。
  • 高架道路であれば高架構造物音を考慮しているか。

などが考えられます。透過音や高架構造物音の影響があれば、当然のことながら見かけの対策効果は小さくなります。問い合わせのなかで「予測により求めた対策効果よりも測定で求めた対策効果の方が小さいことが多い」とありますが、実際の伝搬経路等が予測において充分反映されているでしょうか。また「予測精度を上げるための方法」についてですが、対策箇所が具体的に決まっていれば、最低限その場所の現在(遮音壁設置前)の騒音レベルと予測値の対応を検討しておく必要があります。また遮音壁設置後とよく似た場所があれば、その場所で測定値と予測値の対応を整理し、予測に用いたモデルが妥当であるかを検討するのも良いと思います。マニュアル的には片付かない問題点が浮かび上がってくることもあるでしょう。もちろん何もかも予測にとり込めば良いというものではありませんし、またどう予測してよいのかわからないものもあるでしょう。しかし騒音に影響を与えそうな項目があれば、何らかの方法で検討すべきです。下手をすると「多額の対策費を講じたにも係わらず、ほとんど効果がなかった」なんてことにもなりかねません。  最後に、問い合わせのような経験をお持ちの方は多数いらっしゃると思います。成功例・失敗例共に大変貴重なデータです。遮音壁を設置するにあたり検討したこと、あるいは実際に設置したときの効果等を本工学会の技術発表会等で発表されることで、今後の遮音壁の設計に役立つはずです。ぜひ発表してください。

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