日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

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「特定工場に該当しない工場からの騒音や特定建設作業に該当しない建設作業からの騒音の苦情が増加しているとのことですが,規制の変更や特定施設や特定建設作業の追加を検討されていますでしょうか。もし,既に検討されているのであれば,今後の予定を教えて下さい。これらの工場や建設作業を規制の対象に加えることで行政指導がしやすくなると思います。また,このような場合にはどのように対応すればよろしいのでしょうか。」(地方公共団体職員)。(Vol.41 No.2)
Vol.41 No.2

(日本騒音制御工学会事務局 堀江侑史)

ご質問のように最近では,必ずしも騒音レベルが規制値を超えていない場合や騒音規制法の対象とならない施設や建設作業からの騒音についての苦情相談も増えています。このように法規制の対象となっていない工場等からの相談については,環境行政職員が発生源や苦情者への対応に苦慮している現状もあるようです。また環境省では現在,規制の変更や追加について具体的な作業は行われていないと聞いています。
この場合に対応する根拠の一つとして「公害紛争処理法」があります。「公害」は環境基本法により,事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる①大気の汚染,②水質の汚濁,③土壌の汚染,④騒音,⑤振動,⑥地盤の沈下及び⑦悪臭によって,人の健康又は生活環境に係る被害が生ずること,と定義されており,この①から⑦までの7種類は,“典型7 公害”と呼ばれています。これら典型7 公害に関係する紛争であれば,公害紛争処理法により発生源や苦情者に対して対応が可能と考えられます。また「相当範囲にわたる」については,ある程度の広がりがあれば,被害者が一人であっても対象となります。最近苦情が多くなってきた低周波音についても,騒音・振動に関係する事案としてとらえられる場合は,この制度の対象と考えられます。
苦情対応には,騒音,低周波音,振動などの測定が必要であり,先ずは当事者が自ら測定を行う事が求められますが,管轄の地方公共団体も,苦情が寄せられた場合には可能な限り騒音,低周波音,振動の測定を行う事が期待されています。事業活動に伴い機器から発生する継続的な騒音等についても同様に対応を行う必要があります。
建設工事等の際に発生する騒音や振動についての被害に伴う苦情は,その期間中に騒音や振動の測定を行う必要があります。一般的な建設工事等の際に発生する振動に伴う建物被害の場合には,一般的な建物の経年劣化によるものなのか,地震等による被害なのかを適切に評価/判断しなければならず,専門的な知識が必要となる事案も多々見られます。工事開始の前,工事後に双方で被害の状況を確認することが望ましいです。
以上のように騒音規制法(または振動規制法)で対応が難しい被害の苦情があった場合には,公害紛争処理法を適用して住民対応が可能であるので環境行政担当職員も,いろいろな面から住民の生活環境を守るための対応が求められています。

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行政は工場騒音の苦情に対して、どのように対応するのですか。工場が行政の指導に従わず、騒音対策の実施を拒否した場合、操業停止などの強制力はあるのでしょうか。(Vol.30 No.1)

(千葉市環境保全部 松島 貢)

ご質問の趣旨から、まず、騒音規制法に基づく工場騒音に関する規制の体系を説明してから、具体的な対処方法を説明いたします。

騒音規制法に基づく規制は、住民の生活環境を保全する必要がある地域を指定し(第3条)、その地域に適した規制基準を設定しています(第4条)。

そして、工場に対する規制は、特定施設の新設や増設時の事前規制と、操業時の事後規制に区別されます。事前規制は特定施設の設置前に届出書による書類審査を行い(第6条、第8条)、工場から発生する騒音が規制基準に適合せず、周辺の生活環境が損なわれると認めるときは、市町村長は騒音の防止の方法等を変更するよう勧告(計画変更勧告)することができます(第9条)。

事後規制は、工場から発生する騒音が規制基準に適合せず、生活環境を損なうと認められ時に、市町村長が騒音の防止の方法等を変更するよう勧告(改善勧告)を行うことができます(第12条)。そして、事前規制及び事後規制における両勧告に従わないときには、騒音の防止の方法等の変更を命ずる(改善命令)ことができます(第12条)。

そして、この命令に違反した場合には罰則が課せられる(第29条)こととなっています。

ここで、「周辺環境を損なうと認める時」とありますが、この判断基準は工場近傍に住民の居住実態があることや苦情の発生等があげられます。

具体的には、市町村は次のような手順で工場騒音に関する苦情に対処しています。

住民から苦情を受け付けると、現地調査を実施し、住民の申し立て内容の確認と、工場の立入り調査を実施し、必要であれば騒音測定を実施します。この調査により工場騒音が規制基準を超えていた場合(苦情が発生しているので、生活環境が損なわれていると判断する)、工場に対して規制基準を遵守するよう指導します。このときに、規制基準を超えているからといって、直ちに改善勧告を行うことは稀です。

工場騒音に関する苦情対応では、多くの場合、勧告や命令によらない行政指導で対応しております。平成16年度騒音規制法施行状況調査においても、特定工場等の苦情に関する行政指導は1189件ありましたが、このうち改善勧告を行ったのは4件、改善命令にいたっては0件という集計結果でありました。この背景には、工場が行政の指導に対して素直に対応していることと、騒音規制法に定めてある勧告や命令の適用に際しての、小規模事業者に対する配慮(第13条)が考えられます。小規模事業者とは常時使用する従業員が概ね10名以下の事業者を想定しています。

しかし、質問のように、仮に工場が市町村の指導に従わず、騒音低減対策の実施を拒否する場合には積極的に勧告を行うべきです。

また、騒音規制法においては、いかなる場合においても、工場の操業を停止させることはできません。

参考文献

  • 1)騒音法令研究会:騒音規制の手引き(技報堂出版,東京都,2002),p.79~84
  • 2)環境省水・大気環境局大気生活環境室:平成16年度騒音規制法施行状況調査(2005)

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