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公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

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振動レベル計のピックアップの設置について注意すべき点などを教えてください。
(Vol.38 No.1)
Vol.38 No.1

(一般財団法人小林理学研究所 平尾善裕)

JIS C 1510 に準拠した振動レベル計のピックアップは,コンクリートやアスファルトなどの地面,フローリング床などの硬い面に設置することを前提に作られたものがほとんどである。そのような硬い面では,できるだけ凸凹の無い平らな面を選び,ピックアップにガタツキが無いか,傾いていないか,あるいはコードに引っ張られて浮きが生じていないかなど,計測対象面にしっかりと設置されていることを確認する必要がある。
一方,表面が土や砂利敷きなどの地面,畳や絨毯敷などの床面では,設置共振と呼ばれる現象が生じる。設置共振とは,柔らかい土や畳,絨毯がばねとなり,ピックアップが質量となるほぼ 1 自由度の共振系が形成されることによる共振現象(振動増幅および減衰)である。

まず初めに,土の表面にピックアップを設置した時の鉛直方向の共振現象を図−1 に示す。何もせず,直にピックアップを設置した場合(A : 直置き)では,約 55 Hz に共振のピーク(共振点 : 約 17 dB)が見られる。仮に,55 Hz の正弦振動を直置きで計測すると実際よりも 17 dB 大きな値となる。JIS Z8735「振動レベルの測定方法」では,表面を十分に踏み固めることとしているが,設置共振の影響を完全に取り除けるとは限らない(B : 踏み固め)。そこで,地中に打ち込んだ長さ 30 cm の杭で固定された金属板にピックアップを設置する方法(D : 3 本杭E : 1 本杭)が提案されている。図−1 の実験条件では,80 Hz 以下の周波数範囲において,設置共振の影響を 2 dB 以下に抑えることが出来ている。現時点では,土の地面への設置においては,最も実用的な方法であると考える。

次に,畳による鉛直方向の設置共振を図−2 に示す。畳床の厚さと材質が異なる 6 種類の畳(一寸八分わら床,一寸八分わら床(12 年使用),二寸わら床,一寸八分むぎ床,一寸八分スタイル床,一寸八分ダイケン床)では,30 Hz から 50 Hz の間に共振点が見られる。10 dB から 18 dB の設置共振による振動増幅が生じている。

最後に,図−3 に示した 3 種類の絨毯(合成ゴムベースは全て 3 mm,① : 3 mm ループパイル,② :7 mm ループパイル,③ : 12 mm カットパイル)では,パイルが長い絨毯ほど共振点が低い周波数にあり,設置共振の影響も大きくなる傾向にある。また,水平方向では,20 Hz 以上の周波数範囲で振動を減衰する現象がみられる。例えば,②の絨毯の上で 50 Hz の正弦振動を計測すると実際よりも約 9dB 小さな値となる。

このように,畳や絨毯敷きの床面では,精度よく振動を計測することは,現状において困難に近い。一時的に畳や絨毯を取り除き,座板やモルタルなどの硬い表面にピックアップを設置する必要がある。

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風車騒音を測定する時など,風が強い場所で騒音測定する際に留意すべきことにはどんなことがあるでしょうか?また風雑音の影響を避ける方法はあるのでしょうか?(Vol.38 No.4)

((株)ニューズ環境設計 太田達也)

マイクロホンに風が当たると,胴の部分を空気が迂回するときに渦ができ,渦による風雑音が発生します。そのため,マイクロホンにウインドスクリーン(以下,WS)をつけて測定します。風雑音の影響は,WS の大きさ,風速や乱れ具合によって異なりますが,マイクロホンに付属のウレタン製 WS(直径 6 cm 程度)や全天候型 WS(直径 20 cm 程度)を着けても,低周波音領域(特に超低周波音領域)を対象とした測定では,風雑音の影響を防ぐことはできません。また,より強風時には,WS 自体に風があたることにより広帯域に風雑音が発生することがあります。

一般的な環境騒音測定では,このような強風が見込まれる日を避け,風の弱い日を選びますが,質問にあるような風車騒音を対象とした測定の場合は,風車が定格回転しているような風が強い日に測定する必要があります。また,風車騒音は,低周波音成分を含む広帯域な騒音であるといわれており,広い周波数範囲にわたって風雑音を低減する手法が必要です。

よく使われる風雑音の低減方法として,マイクロホン自体を地表面付近まで下げて設置し測定を行います。筆者らが,草地において高さ別の風速を調査したところ,地表面付近では,高さ 1.2 m と比べて 7割程度まで風が弱くなることから,風雑音は低減します。風車騒音のパワーレベルの測定方法として,地表面上に設置した円板の中心に全天候型 WS を装着したマイクロホンを設置し測定する方法があります。IEC 61400-11(JIS C 1400-11)で規格化されています。また地上付近まで下げることで,風によるマイクロホンの転倒防止にも役立ちます。

地表面付近に設置しても風雑音の影響が避けられないくらい強風の場合は,マイクロホンに取り付けるウレタン製 WS を一次 WS とし,さらにそれを覆うように二次 WS を被せる方法が有用です。ただし二次 WS を作成する必要があります。

この二次 WS については,さまざまな検討が行われており,落合らは,低周波騒音測定の常時監視を目的として,ウレタン製シートや農業用ネットを二次 WS とする方法を報告1)しています。また,H23∼H25 年度に実施された環境省の風車騒音調査では,超低周波音領域から騒音領域までを一つのマイクロホンで測定するための二次 WS の開発2)を行っています。こちらは暴露側の調査であり,運用面を考慮しできるだけ小型になるように設計しています。雨天時の測定を考えて一次 WS には全天候型WS を用いています。また,二次 WS は一次 WS との間に 10 数 cm 程度の間隔を空けて取り付けることで,風をより低減する効果があります。二次 WSの素材や開口率,伸縮性により防風性能が多少変化します。測定対象とする騒音や低周波音の特性,設置場所,運用面などを考慮し,目的に応じた WS を作成する必要があります。なお,特に高周波数領域では WS による減衰が考えられるため,現地で測定する前に実験により WS の挿入損失を把握しておく必要があります。

  • 1 )
    落合他 : 低周波騒音計測用防風スクリーンの開発,騒音制御,vol. 30,no. 5,pp. 408-417(2006).
  • 2 )
    太田他 : 低周波音領域を含む環境騒音測定のための防風スクリーンの試作,音講論(春),pp. 1195-1196

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特定工場等から発生する振動の苦情があり,敷地境界線で測定を行ったところ振動規制法の規制基準は満足していました。しかし,家屋内部では,その特定工場からの振動を感じます。家屋内部での測定も含めて,どのように対応すべきでしょうか。(Vol.37 No.1)
                                (地方公共団体職員)

(神奈川県 横島潤紀)

振動規制法(昭和 51 年 6 月 10 日法律第 64 号)では,指定地域内の特定工場等の設置者に対して,規制基準の遵守義務を規定しております。さらに,市町村長が,特定工場等から発生する振動が規制基準に適合しないことにより,周辺の生活環境が損なわれていると認めるときは,当該特定工場等の設置者に対して,振動防止対策等の改善を勧告および命令が可能です。今回の事例では,敷地境界線での測定結果は規制基準値内であったため,事業者に対して,振動規制法に基づく指導はできません。

しかし,地方公共団体職員の公害に関する苦情の処理に関しては,公害紛争処理法(昭和 45年6月1日法律第 108 号)の第 49 条に,「地方公共団体は,関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるものとする。」と規定されています。すなわち,法律等で規定されている規制基準等の超過の有無に関わらず,公害に関する苦情対応は地方公共団体の努力規定です。努力規定のため罰則等はありませんが,本事例では,家屋内部での体感調査から,暴露されている振動が住民の生活環境または健康に影響を及ぼしている可能性も考えられます。振動規制法の主旨等に照らしあわせると,生活環境を保全し,国民の健康を保護するために,振動規制法を施行している市町村が,都道府県の技術支援などを受けて対応する必要があると思います。

対応の第一歩としては,住民が感じている振動の把握,すなわち家屋内部での振動測定が必要になります。木造家屋の板の間と地表面との鉛直振動の関係については,環境庁(当時)が調査した結果があります。家屋内部での振動レベルは,地表面に比べて 5 dB 増幅(中央値)していましたが,これは 30年以上も前の結果であり,現在の木造家屋や工業化住宅に適用できるか不透明です。また,振動規制法は鉛直振動を対象としておりますが,家屋内部では建築物の共振周波数の関係もあり,水平振動の増幅事例が多く報告されています。例えば,平尾ら1)は,並進 3 方向の振動について,1/3 オクターブバンド中心周波数が 5 Hz または 6.3 Hz の帯域で,地表面に比べて家屋内部での振動加速度レベルが,水平方向で 20 dB 程度大きくなることを報告しています。

さらに,家屋内部での測定では,測定位置の選定が重要です。木造家屋における在来鉄道振動を対象とした測定事例2)から,同一の家屋内部でも,測定位置が床面の中央であるか,あるいは柱脚の付近であるかにより,1/3 オクターブバンド振動加速度レベルが大きく異なることが報告されています。

従来,家屋内部での測定は,公式の手法が規定されていなかったため,担当者個々の経験等に基づく独自の手法で行われてきました。このような現状を踏まえ,家屋内部での統一的な測定手法を構築するため,当学会の環境振動評価分科会が,平成 20 年度の環境省請負業務での検討結果を基に,振動測定マニュアル(案)(以下,「マニュアル案」と記す)を整備しました。マニュアル案は,全ての外部振動源を対象としております。また,環境振動評価分科会の HP(http://www.ince-j.or.jp/04/04_page/04_sh.html, 参照 2012 年 12 月)からダウンロード可能です。

以下にマニュアル案の概要を示します。

  • 1.適用範囲
  • 2.測定
    • 2.1 測定量
    • 2.2 測定機器
    • 2.3 測定位置(家屋振動特性の把握)
    • 2.4 測定位置(地盤振動の伝搬特性の把握)
    • 2.5 測定方向
    • 2.6 測定時間帯
    • 2.7 測定方法
  • 3.測定結果の算出方法

マニュアル案では「評価」の項目がなく,生活や健康への影響の有無を判断する基準も記載されていませんが,人間の振動に対する知覚閾値(概ね 55dB)も有用な判断基準の一つであると考えています。しかし近年の判例では,受忍限度の超過が判断基準となっていることから,振動の大きさだけではなく様々な要因を含めた総合的な判断が必要です。最後に,家屋内部での測定結果から,振動により住民の生活環境などが損なわれていると判断される場合でも,事業者の任意の協力によって実現できる行政指導での対応しかないと思います。この場合には,費用面および時間的な問題から,事業者の負担が大きいハード面での対策より,作業時間の短縮や変更などのソフト面での対策が有用であると考えます。

  • 1 )平尾他,振動測定マニュアル(案)に基づいた測定・分析事例,H24 春季騒音制御講論集(2012).
  • 2 )横島他,木造家屋内における鉄道走行時の振動実測結果について,建築学会技術報告集,vol. 24(2006).

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戸建て住宅で床衝撃音を測定する場合、1階と2階が全て面していない場合、測定点や衝撃点などどのように測定するのでしょうか。
                                     (製造業)

(日本建築総合試験所 和木孝男)

床衝撃音はJIS A 1418-2000「建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法」に測定方法が規定されています。

JISにはご質問のような条件は想定していません。が、軽量衝撃源、重量衝撃源どちらも受音点を4点以上、打撃点は3~5点とすることになっていますので、JISに沿った測定をするために経験的に次のようにして測定しています。

戸建て住宅の居室面積はさほど広くない場合が多いので1階と2階の間取りが異なる戸建て住宅で床衝撃音レベルを測定する場合は、1階と2階の面する部分によって2パターンに分けます。

1階の大部分(1/2以上)が2階の床の投影面内にある場合は、受音室を1階全体とし図1のように打撃点および受音点を設定します。

また、1階における2階の投影面が小さい(1階の1/2以下)場合は1階の半分を受音面として図2のように打撃点および受音点を設定します。

なお、このことは戸建て住宅について言えるのであり、マンション等では梁の条件等によって異なりますので要注意です。

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