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低周波音に関する外国での規制の状況について教えてほしい。(Vol.38 No.2)

(安衛研 高橋幸雄,元山梨大学 山田伸志)

最近,低周波音がマスコミで取り上げられる事例が増え,一般の方の関心も高まっているように思われます。

規制の状況を述べる前に,注意点を述べておきます。まず,「低周波音(英語では low-frequency sound,または low-frequency noise)」という用語についてですが,実は,これには標準的な定義がありません。国によって,対象とする「低周波音」の周波数範囲が異なるので,注意する必要があります。また,一般的に,それぞれの規制には適用条件(受音環境,音源,時間帯など)があり,そこから外れる場合には適用できません。この点にも留意してください。

以下では,低周波音によって生じる不快感などの感覚的な(心理的な)苦情に関する,住居内部での低周波音に対する外国の規制の状況について,筆者らが把握している範囲で紹介します。感覚的な苦情は,低周波音が知覚されれば生じる可能性があります。低周波音の音圧レベルがその人の感覚閾値(標準的な(若い人の平均的な)感覚閾値は,ISO 389-7(2005)に規定されています)を超えれば知覚されると考えられますが,測定方法によって閾値が多少異なること,閾値に個人差があること,低周波音に対する反応に個人差があることなどから,各国の規制値や推奨値は,標準的な感覚閾値とは異なる場合が多いようです。

台湾では,騒音規制法の一部として,低周波音を対象とした規制値が策定されています(噪音管制標準(2009 改正))。ここでは,20∼200 Hz の音を低周波音として扱い,その周波数範囲において A 特性で重み付けをした等価レベルを評価指標としています。基準値は,地域カテゴリー(4 区分),時間帯(3区分),低周波音の音源(3 区分)によって異なります。例えば,住居専用地域における娯楽・商業施設からの低周波音に対する基準値は,昼間で 35 dB,夜間で 30 dB となっており,同じ地域における工場・工業施設からの低周波音に対する基準値は,昼間で 42 dB,夜間で 39 dB(以上,すべて住宅内)となっています。これは法的な強制力を持つ規制値で,違反があり,その後の改善がなければ罰金が科されることになっています。

デンマークでは,10∼160 Hz の音を低周波音として,低周波音の推奨値が示されています(Informationfrom the Danish Environmental Protection Agency,no. 9/1997(1997))。ここでは,台湾の場合と同様に A 特性で重み付けをした等価レベルを求めて評価指標とします。基準値は,環境や時間帯によって何種類かありますが,例えば,日中の住宅内では25 dB,夕方・夜間の住宅内では 20 dB となっています。また,ISO 7196(1995)で規定された G 特性重み付けを利用して,超低周波音(1∼20 Hz)に対する推奨値も定められています。これは,例えば住宅内では,時間帯によらず 85 dB となっています。これらは推奨値であるため,強制力はありません。

スウェーデンでは,特定の周波数範囲で等価レベルを求めるのではなく,1/3 オクターブバンドごとに基準値を定め,各バンドレベルがそれらを超えないようにするという考え方で推奨値を定めています(SOSFS 2005.6(2005))。具体的には,31.5∼200 Hzを低周波音の範囲とし,31.5 Hz バンドの 56 dB から 40 Hz バンドの 49 dB,50 Hz バンドの 43 dB と漸減し,200 Hz バンドで 32 dB となる基準値(住宅内)が採用されています。この場合も推奨値ですが,運用上はその値を守るようにしているようです。

以上,3 カ国の状況を紹介しましたが,イギリス,オランダ,ドイツ,オーストリア,ポーランド,アメリカなどでも,低周波音の推奨値が策定または提案されています。しかし,国際的に広く使われている標準的な規制値はなく,各国が独自に策定・運用しているのが現状です。どのような評価指標を用いて,どのような基準値で評価すべきかについて,今後の研究・議論が求められています。

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