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水中音響の測定事例及び評価方法について,またできたら参考文献を教えて下さい。
                               (建設コンサルタント)

(アイ・エヌ・シー・エンジニアリング 藤井圭次)

水中音響の調査,測定は,漁業環境影響に関連するものがほとんどですが,海中作業者,水族館等に対する影響調査も行われています。 今回は水中音の基礎,測定事例,評価方法についてまとめました。

1.水中音の基礎

水中音の基準値は,私たちが使用している空気中の音の基準値と異なります。水中音と空中音(騒音)の基準値等を比較して下記に示します。空中音の一般的な暗騒音は20~40dB程度ですが,水中音の背景雑音は静かな湾内で100~120dB程度です。水中音圧計の周波数範囲は10Hz~100kHz程度ですが,漁業環境関係では,10Hz~10kHzの周波数範囲で測定しています。

項 目 基準値 測定範囲
空中音 20μPa 30~130dB
水中音 1μPa 100~180dB

2.調査測定事例

弊社では,水中音,海底振動の漁業環境関連の調査,測定を1975年頃より,測定方法の基礎研究を含め,現在まで数多く行っています。主な測定事例を紹介します

  1. 航空機:海上空港建設に伴い,航空機の離着陸時の音が,水中へ透過,伝搬するため,空港島周辺の漁業環境に及ぼす影響を調査しました。測定は,空港周辺海域に調査船を配置して,航空機離着陸時の空中音,水中音,航空機の高度等を測定しました。測定結果から,空中音,水中音の音圧レベルコンタを作成し,滑走路直下周辺海域の影響範囲を予測しました。水深,機種等により異なりますが,滑走路直下の空中音圧レベルは90~110dB程度,水中音圧レベルは120~130dB程度です。
  2. 海洋土木工事:空港島,橋梁等の大型海洋建設工事に伴う,杭打ち,サンドコンパクション等から発生する水中音,海底振動について,測定しました。サンドコンパクションの水中音圧レベルは,距離100mで140~150dB,海底振動加速度レベルは距離100mで50~60dB程度でした。
  3. ロケット発射時:種子島宇宙センター周辺,海域で,ロケット打ち上げ時の水中音,海底振動を測定し,漁業影響範囲を予測しました。ロケット打ち上げ時の空中音圧レベルは130dB,水中音圧レベルは150dB程度でした。
  4. 海中作業者への影響:海岸の岩を砕く作業時,周辺の海中作業者(海女さん)への影響を確認するため,作業時の水中音を測定し,ダイバーの感覚等より影響範囲を予測しました。海外の文献では,水中音の人に対する実験報告も発表されていますが,今回の調査結果では海中の作業者が感じる水中音圧レベルは130dB程度と推定されました。
  5. 水族館:水族館周辺の地下駐車場の建設に伴い,事前に工事機械稼動時の振動,水槽の水中音を測定し,イルカ,ラッコ等への影響を予測しました。イルカの鳴声,複雑な伝搬経路等で苦戦しましたが,水中音,振動のレベル上昇は考えられるが,影響は非常に少ないと評価しました。
  6. 橋梁,海底トンネル:連絡橋列車通過時に橋脚及び地盤より発生する,水中音,海底振動を測定し,影響範囲を予測しました。列車通過時の水中音圧レベルは150~160dB,海底振動加速度レベルは60dB程度でした。海底トンネル調査では,車輌通過時にトンネル上部の水中音圧レベルが若干上昇する程度でした。

3.評価方法

魚類の聴感覚閾値等の生物的な基礎実験は数多く行われていますが,漁業環境影響に関する基準等は現在確立されていません。魚類に関する影響調査は,例えばイケスの魚類に水中スピーカから放音し,水中ビデオ等で行動を観察し,その行動を起こす水中音圧レベルを評価値としています。魚の種類,水中音の周波数,実験状況等により影響レベルは大きく異なりますが,最新の実験結果から得られた,魚類行動に影響を与える水中音レベル145~150dB,比較的敏感な周波数200Hz前後では140dBの値が良く使われています。魚種別の影響レベルの一例。

サケ,サバ,マダイ,スズキ 150 dB
アジ,マイワシ 145 dB
カタクチイワシ 135 dB

参考文献

  • ・R・J・ユーリック「水中音響の原理」共立出版
  • ・添田秀男,畠山良己,川村軍蔵「魚類の聴覚生理」恒星社厚生閣

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