日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

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公害等調整委員会に寄せられる騒音や振動に関する苦情には,どのようなものが多いのでしょうか。 また,解決に結びつく方法にはどのようなものがあるのか教えてください。
(Vol.38 No.5)
Vol.38 No.5

(荒木真一)

公害紛争処理の流れは、公害問題で困った場合、一般的には、先ず、都道府県、市区町村の公害担当課等の窓口に対して「苦情相談」がなされ、公害苦情相談員により苦情処理がなされます。全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口で受け付けた公害苦情件数は年間8万件程度であり、その大部分はこの相談窓口で処理され終結しています。
これら公害問題で困った場合で、当事者間での話し合いがこじれる等して「公害紛争」になってしまい、都道府県の公害審査会等や国の公害等調整委員会に申請されてくるのは、各々年間数十件程度です。

さて、公害等調整委員会に係属している事件(平成24年度で74件)の中で5割以上を占めている騒音・低周波音・振動に係る事件としては、近隣施設からの騒音や低周波音による健康被害、近隣における工事に伴う騒音や振動による健康や建物被害等が多くなっています。

公害等調整委員会において、それらの原因や責任を裁定する場合には、不法行為の要件について、①被害の発生、②原因行為の特定、③原因行為と被害との因果関係の確認、④違法性(受忍限度論)、⑤故意・過失の検討、⑥損害の検討(①の金銭評価)の順番に検討が進められます。そして、その第一段階として、②原因行為の特定及び③原因行為と被害との因果関係の確認が重要となります(①被害の発生は申請の前提条件です)。この段階で証拠不十分のために棄却(申請人の主張は認められない)と判断せざるを得ないものがかなりあります。騒音・低周波音・振動に係る事件についても同じです。

そのため、例えば、近隣工事における振動による建物被害では、当該工事の前後における建物被害状況の把握(専門業者による調査)及び工事中における振動レベルの測定が必須となります。また、近隣施設からの騒音や低周波音による健康被害では、当該施設の稼働状況と被害者側での被害感との対応関係、当該施設から発生している騒音・低周波音と被害者側との間での周波数特性や音圧レベルの変動の対応関係が必須となります。もちろん、これら対応関係の調査に際しては、当該近隣施設以外の暗騒音/背景騒音の確認も重要です。公害等調整委員会では、これら情報がない場合で、今後の裁定の判断に必要があると認められ、現時点でも調査が可能である場合には、自ら職権により調査を実施することがあります。

原因や責任の裁定判断としては以上のとおりですが、公害問題への対応は、このような公害紛争に至ってしまう前の苦情相談の段階で、如何に問題をこじらせないように処理できるのかにかかっています。都道府県や市区町村の公害担当課等の窓口の公害苦情相談員の方々には、平素から大変なご苦労されているものも思われますが、上記でお示ししたような情報を適時適切に調査・把握していただき、それらデータ等に基づいて出来る限り当事者間の円滑な話合いの下で和解により解決が図られることが、今後の健全な近隣関係の維持においても大切であると考えます。

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特定工場等から発生する振動の苦情があり,敷地境界線で測定を行ったところ振動規制法の規制基準は満足していました。しかし,家屋内部では,その特定工場からの振動を感じます。家屋内部での測定も含めて,どのように対応すべきでしょうか。(Vol.37 No.1)
                                (地方公共団体職員)

(神奈川県 横島潤紀)

振動規制法(昭和 51 年 6 月 10 日法律第 64 号)では,指定地域内の特定工場等の設置者に対して,規制基準の遵守義務を規定しております。さらに,市町村長が,特定工場等から発生する振動が規制基準に適合しないことにより,周辺の生活環境が損なわれていると認めるときは,当該特定工場等の設置者に対して,振動防止対策等の改善を勧告および命令が可能です。今回の事例では,敷地境界線での測定結果は規制基準値内であったため,事業者に対して,振動規制法に基づく指導はできません。

しかし,地方公共団体職員の公害に関する苦情の処理に関しては,公害紛争処理法(昭和 45年6月1日法律第 108 号)の第 49 条に,「地方公共団体は,関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるものとする。」と規定されています。すなわち,法律等で規定されている規制基準等の超過の有無に関わらず,公害に関する苦情対応は地方公共団体の努力規定です。努力規定のため罰則等はありませんが,本事例では,家屋内部での体感調査から,暴露されている振動が住民の生活環境または健康に影響を及ぼしている可能性も考えられます。振動規制法の主旨等に照らしあわせると,生活環境を保全し,国民の健康を保護するために,振動規制法を施行している市町村が,都道府県の技術支援などを受けて対応する必要があると思います。

対応の第一歩としては,住民が感じている振動の把握,すなわち家屋内部での振動測定が必要になります。木造家屋の板の間と地表面との鉛直振動の関係については,環境庁(当時)が調査した結果があります。家屋内部での振動レベルは,地表面に比べて 5 dB 増幅(中央値)していましたが,これは 30年以上も前の結果であり,現在の木造家屋や工業化住宅に適用できるか不透明です。また,振動規制法は鉛直振動を対象としておりますが,家屋内部では建築物の共振周波数の関係もあり,水平振動の増幅事例が多く報告されています。例えば,平尾ら1)は,並進 3 方向の振動について,1/3 オクターブバンド中心周波数が 5 Hz または 6.3 Hz の帯域で,地表面に比べて家屋内部での振動加速度レベルが,水平方向で 20 dB 程度大きくなることを報告しています。

さらに,家屋内部での測定では,測定位置の選定が重要です。木造家屋における在来鉄道振動を対象とした測定事例2)から,同一の家屋内部でも,測定位置が床面の中央であるか,あるいは柱脚の付近であるかにより,1/3 オクターブバンド振動加速度レベルが大きく異なることが報告されています。

従来,家屋内部での測定は,公式の手法が規定されていなかったため,担当者個々の経験等に基づく独自の手法で行われてきました。このような現状を踏まえ,家屋内部での統一的な測定手法を構築するため,当学会の環境振動評価分科会が,平成 20 年度の環境省請負業務での検討結果を基に,振動測定マニュアル(案)(以下,「マニュアル案」と記す)を整備しました。マニュアル案は,全ての外部振動源を対象としております。また,環境振動評価分科会の HP(http://www.ince-j.or.jp/04/04_page/04_sh.html, 参照 2012 年 12 月)からダウンロード可能です。

以下にマニュアル案の概要を示します。

  • 1.適用範囲
  • 2.測定
    • 2.1 測定量
    • 2.2 測定機器
    • 2.3 測定位置(家屋振動特性の把握)
    • 2.4 測定位置(地盤振動の伝搬特性の把握)
    • 2.5 測定方向
    • 2.6 測定時間帯
    • 2.7 測定方法
  • 3.測定結果の算出方法

マニュアル案では「評価」の項目がなく,生活や健康への影響の有無を判断する基準も記載されていませんが,人間の振動に対する知覚閾値(概ね 55dB)も有用な判断基準の一つであると考えています。しかし近年の判例では,受忍限度の超過が判断基準となっていることから,振動の大きさだけではなく様々な要因を含めた総合的な判断が必要です。最後に,家屋内部での測定結果から,振動により住民の生活環境などが損なわれていると判断される場合でも,事業者の任意の協力によって実現できる行政指導での対応しかないと思います。この場合には,費用面および時間的な問題から,事業者の負担が大きいハード面での対策より,作業時間の短縮や変更などのソフト面での対策が有用であると考えます。

  • 1 )平尾他,振動測定マニュアル(案)に基づいた測定・分析事例,H24 春季騒音制御講論集(2012).
  • 2 )横島他,木造家屋内における鉄道走行時の振動実測結果について,建築学会技術報告集,vol. 24(2006).

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地下鉄と地下のホールとが隣接するような場合、 山止壁の騒音・振動効果について分かる範囲で教えて下さい。
                             (建築設計監理会社 社員)

(大成建設技研 平松友孝)

地下鉄に近接した建物では、列車走行時に発生した振動が地下鉄構築、地盤 を介して建物に入り込み、建物躯体を伝搬して居室の内装から放射する固体伝 搬音が影響を与えることがよく知られています。この低減方法として、軌道の 防振、居室内装への浮き構造の適用等が多く用いられていますが、近年図1に 示すような山止壁(地中連壁)と建物地下壁との間に防振材を挿入して地盤か ら建物に伝搬する振動を低減する方法(以降防振地下壁と記す)も散見される ようになりました。防振地下壁の防振効果は、本来防振地下壁を採用しない場 合に対して採用した場合に低減できる振動(固体伝搬音)の量(挿入損失)と して求めるべきでありますが、同じ建物でそのような量を測定によって得るこ とは現実的にはできないと言って良いと思います。これに対して、防振材を介 した地中連壁と防振地下壁との振動の差(伝達損失)は、実際の建物でも測定 可能です。

また、建物の最下部より下では図1に示すように防振地下壁が構成できず、地下鉄振動は建物の最下部から主に伝搬するので、防振地下壁の防振効果には 限度があります。

擬似的な挿入損失としては、地中連壁施工時と防振地下壁施工後の地下鉄固 体伝搬音の差を測定した事例がありますが、地下鉄固体伝搬音の卓越周波数の 63Hz帯域では40dB程度の低減効果が認められています。また、伝達損失として は、5~8dBという測定事例があります。

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