日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

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低周波空気振動について行政の取り組みについて教えてほしい。  
                                      (匿名)

(神奈川県環境科学センター 堀江侑史)

低周波音が原因と考えられる苦情は全国で毎年30件程度発生している(環境庁:騒音規制法施行状況調査より)。この件数は地方自治体の調査で原因が特定できたものの数で,これ以外にも潜在的な被害は多く存在すると考えられる。特に20Hz以下の超低周波音の場合には,苦情の原因が音にあることを見逃す場合もあることから実態は不明である。低周波音に起因する苦情件数は横這いの状況であったが,平成5年になって新幹線鉄道に起因する苦情が大幅に増えた。これに伴い,環境庁では平成6~7年度に低周波音の影響について調査を行った。この調査は,研究機関や自治体が行う低周波音に関する調査研究の進捗状況と発生源別の音圧レベルを把握し行政としての対応について検討するためのものであった。報告では,研究成果に関する文献調査結果を述べるとともに今後の課題として測定方法の確立,評価量,指針値などについて検討が必要であるとしている。最近,行政が対応した苦情事例としては次の様なものがある(公害等調整委員会報告より)。

  1. 染色工場からの低周波音による心理的感覚的被害
  2. 空調機用送風機からの感覚的・心理的騒音被害
  3. 料亭の高圧トランスから発生する騒音による感覚的・心理的被害
  4. ある老人が感じる原因不明の騒音について
  5. ヘリコプタの騒音振動について
  6. アルミ工場加熱乾燥炉から発生する低周波騒音による心理的感覚的被害

環境庁ではこれまで低周波空気振動と呼んでいた80Hz(1/3オクターブバンド中心周波数で)以下の音について最近では「低周波音」と称するようになっている。

低周波音の発生源として大型機械,燃焼機器,発破作業,長大橋,治水設備,新幹線トンネルや航空機のエンジンテストなどがあげられる。これらのうち,大型機械,燃焼機器やエンジンテストなどについては対策法の研究が進み成果をあげているが,一般的に低周波音の対策は大がかりになるため対策が進んでいない。

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世の中で人が心地よくないと感じる音や音色とはどういうものですか。それらの範囲はありますか。
                                      (匿名)

(千代田化工建設(株) 中村ひさお)

これは大変難しい質問です。ある音を心地よいと感じるか心地よくないと感じるかには、個人差ばかりでなく、その人の健康状態や気持ちの状況、その音を耳にするタイミング等、実に様々なものが影響してくるからです。このため、「人が心地よくないと感じる音や音色」に一般的な傾向はありますが、その範囲となると簡単に特定できるものではありません。

人が心地よくないと感じる音の一般的な特徴は、大きく次のように分類することができます。

  • 物理的な分類
    • ・大きな音
    • ・特定の周波数が強調された音(純音に近い音)
    • ・衝撃性の音/間欠的な音
  • 精神的(感情的)な分類
    • ・嫌なことを思い出させる音
    • ・嫌いな人(モノ)が出す音
    • ・あることに集中しようとしている時に、他のことを思い起こさせる音

大きな音というのは、それがどんなに美しい音色であっても、ある限度を超えてしまえば「心地よくない音」になってしまいます。特定の周波数が強調された音というのはジェット機の「キーン」という音やガラスを引っ掻いた時の音などのことです。衝撃性の音/間欠的な音は音のレベル変動が大きいため、聞いていて慣れにくいという特徴があります。

嫌なことを思い出させる音や嫌いな人(モノ)が出す音というのは、理由などなく「心地よくない」と感じてしまうようです。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということでしょう。あることに集中しようとしている時に他のことを思い起こさせる音には、眠ろうとしている時に聞こえてくる隣の部屋の物音や、仕事に集中しようとしている時に聞こえてくる大好きなジャンルの音楽などがあります。

このように「心地よくない音」というのはケースバイケースで変わってきます。また人が心地よくないと感じる時、一つの音のみから受ける印象が心地よくない場合も確かにありますが、様々な要因が絡み合っている場合が多く、原因を特定するのは困難なことが多いようです。さらに「心地よくない」と感じるような音が聞こえていても、他の環境的な要素がこの音を意識の下に隠してしまっているために、その時は「心地よくない」ことに気づかず、後になって妙に疲労感を覚えたりするということもあります。

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低周波音の健康に与える影響について教えて下さい。
                                 (建材メーカ社員)

((財)小林理学研究所 落合博明)

人が低周波音を感じることができる最低音圧レベルは20Hzでおよそ75dB、 10Hzでおよそ100dB、5Hzでおよそ110dBと言われています。 私たちが日常生活している住空間にも40dB~ 110dB程度の低周波音は存在しています。 人は低い周波数の音ほど大きい音圧レベルでないと感じないので、 低周波音の存在に気づかない場合が多いようです。しかし、 低周波音のレベルが大きかったり、戸や窓がガタガタしたりして 低周波音の存在を知り、それが苦情につながることがあります。 低周波音による苦情は、人への影響(心理的影響、生理的影響) と建具等への影響(物的影響)に分けられます。 我が国では低周波音の音圧レベルが70~80dBから苦情が発生していますが、 これは20Hz以下の超低周波音と呼ばれる領域では 人よりも建具の方が低周波音に敏感で、 人が感じるよりも低い音圧レベルで戸や窓が振動してガタガタ音を発生し、 それが苦情となるからです。

1984年に環境庁が行った低周波音苦情が発生している29 の地域におけるアンケート調査によると、物的訴えが最も多く、 気分のいらいら、不眠等といった心理的訴えや、頭痛、耳鳴り、 胸・腹の圧迫感等の生理的な訴えは全体のわずか10% 程度しかありませんでした。

海外では、異常な運転状況の大型機械や施設近傍などで120~130dB といった大きな音圧レベルの超低周波音がかつて問題となり、 1970年前後に140dBを超える強烈な超低周波音による影響についての 実験が行われています。Johnson は0.2Hz,140dBと20Hz,120dB を結ぶ線を生理的な影響を現さない限界として提案しています。 近年では、一般的な作業環境や生活環境における低周波音を想定して、 120dB以下の音圧レベルの低周波音の研究が主流となっています。 環境庁の一連の調査や国内の研究者による研究では、 最大で120dB程度までの低周波音を用いて低周波音による生理影響について 調べていますが、低周波音による影響は認められませんでした。 睡眠影響については、環境庁の調査によれば、 通常のレベルでは睡眠への影響はほとんどないが、 眠りが浅い場合に 10Hz;100dB、20Hz;95dB で目が覚める場合があるという結果が得られています。 低周波音の感覚的な影響では、低周波音特有の感覚として、 圧迫感・振動感があることが確認されています。 当所で行った実験結果によると、40Hz,78dBで半数の人が圧迫感・ 振動感を感ずるという結果が得られました。

しかし、低周波音の知覚メカニズムそのものの解明が進んでいないこと、 低周波音の長時間暴露の調査がほとんどないこと、 被験者の個人差が大きいことなどの理由により、 現状では低周波音の健康への影響は明らかになっていません。 低周波音による影響解明のため、今後の研究が望まれます。

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