日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

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最近アクティブノイズコントロール(ANC)という言葉をよく聞きますが、どのような仕組みで音が小さくなっているのでしょうか? また、これを使って道路や鉄道などの騒音は制御できないのでしょうか。(Vol.36 No.1)
                                     (会社員)

(東海大学 森下達哉)

騒音の能動制御あるいは Active Noise Control(ANC)については,1930 年代にアメリカ合衆国で特許申請された記録が残っています。特許申請時の図には,元々存在している騒音に対して,同振幅・逆位相の波形をもつ音波を重ね合わせることによって,騒音を消去するという基本的考え方が示されています。その後,1980 年代以降のディジタル信号処理技術の発展に伴って,数多くの ANC システムが考案されてきました。最近では,ノイズキャンセリングヘッドホンや自動車キャビンの静穏化などで,ANC の実用システムに接することができます。

ANC は,騒音源(Primary Noise Source)が作る音場と同一の音場を騒音源周囲に配置した二次的な音源(Secondary Noise Source)で作ることができるという原理に基づいています。したがって,空間全体を静かにしなければならいような場合には,静かにしようとしている音の周波数にもよりますが,比較的多くの音源が必要になるとされています。

一方,細長い管状の空間を伝わる音波については,管の断面寸法よりも波長が十分に長ければ,管の長さ方向への波の伝わり方だけを考えれば良いので,制御方法も簡単になります。そのため,ANCの研究が盛んになり始めた 1980 年代には,ダクト内を伝わる騒音を対象とした研究が盛んに行われていました。詳しくは文献 1)をご参照下さい。

ANC の制御方法としては,フィードフォワード(FF)制御とフィードバック(FB)制御に大別できます。説明を簡単にするため,ダクト内 ANC を例にとります。図−1(a)に示す FF 制御では,まず参照用センサで事前に騒音の情報を検出します。その騒音が音の重ね合わせ点に到達するまでに制御器で処理を行い二次音源から制御用音波を生成させ重ね合わせ点に到達させます。図−1(b)はブロック図と呼ばれますが,制御器を通る信号が信号 x と同様前向きに送られているため,FF 制御と呼ばれます。

一方図−2(a)に示す FB 制御では,参照用信号を使わずに,制御結果(誤差信号)を制御器で処理し,二次音源によって制御用音波を生成させます。図−2(b)のブロック図において,制御器を通る信号が信号 x と反対の後ろ向きに送られているため,FB 制御と呼ばれます。前述のノイズキャンセリングヘッドホンでは,基本的に FB 制御が用いられますが,FF と FB の両者を組み合わせた制御システムも存在します。

ANC の道路騒音や鉄道騒音への適用については,受動的デバイスとの協調動作という意味では,遮音壁と ANC の組み合わせがあります。このシステムは,遮音壁エッジ部の音場を適切に制御することで遮音壁の騒音抑制効果を向上させることを目的としたシステムです。国道 43 号線での試験運用の報告があります2)。

移動する音源に対する ANC の検討としては,広い空間における制御システムの構成法の検討3)や適応アルゴリズムの動作特性の検討4)などが行われています。当然海外でも研究例があります。原理から考えると,移動する音源に対して広い空間に渡って減音領域を生成することは大変難しい問題であることは間違いないでしょう。しかし,騒音制御のために大きな構造物を付加できない場合には,上記のような ANC システムが唯一の騒音対策手段になると考えられるため,移動音源に対する ANC のさらなる検討が望まれます。

  • 1 )西村他,アクティブノイズコントロール(コロナ社,東京都,2006).
  • 2 )ASE 試験導入に関わる騒音調査結果,兵庫県国道事務所,http://www.kkr.mlit.go.jp/hyogo/oshirase/2006/2006-10-30-01.html
  • 3 )大西他,日本音響学会誌,vol. 64, no. 3, pp. 131-141(2008).
  • 4 )A. Omoto et al, Acoust. Sci.&Tech., vol. 23, no. 2, pp.84-89 (2002).

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等価回路に基づいた消音器の性能予測法とはどのような方法ですか。また管路内での気流や温度変化をどのように扱えばよいでしょうか。(Vol.36 No.2)
                                  (消音器設計者)

(日本騒音制御工学会認定技士 森 卓支)

音響等価回路は音源やそれに接続される管路等を音響素子として電気回路の様に示したもので、参考図書1)に示すようにかなり以前から使われてきました。

通常の音響式では系固有のインピーダンスや複雑な管路系は計算できませんが、各音響素子を四端子マトリクスで表すことにより複雑な系でも計算することが可能です。図-1は音源と管路系の等価回路で粒子速度を電流、音圧を電圧に置き換えて考えることができます。内部抵抗Riが負荷抵抗により十分大きければ流れる粒子速度は負荷抵抗Rsによらず一定となります。(定速度音源)。またRiが十分に小さければ負荷にかかる音圧は負荷抵抗の大きさにかかわらず一定の音圧となります。(定音圧音源)。

様々に組み合わされた管路系の特性は四端子マトリクスにより計算が可能です。

図-2は音源からの管路出口までの音響等価回路を表し、管路系の出入り口の音圧と体積速度の関係は四端子マトリックスで表されます。

この四端子マトリクス法では管路系は平面波理論を適用し、管路系各構成要素を音響要素で表現できます。図-3は拡張型消音器での音波の伝播経路と気流の様子を示し、音波が管内を進行する際に進行波と反射波は気流の影響を受けることとなります。

式(1)、式(2)は管路の四端子マトリクスと定数を示し、気流による音速の変化を進行波と反射波の位相定数で表現し、また管路での摩擦損失や吸音材により音波の減衰が生じる場合はこの損失を減衰定数δにより考慮することもできます。温度条件については音速cで式に反映されています。

各構成要素をこの音波の流れに従って組み合わせることにより、減音量計算に必要な消音器出口の体積速度U2を求め消音器の特性が計算できます。しかしながら、自動車の排気消音系などの管内を高速で期待が流れる場合は管内や出口端で発生する気流騒音などの考慮が必要です。

これまで示した音響等価回路による管路系の特性計算は平面波領域で成り立つ1次元モデルです。近年ではコンピュータの進歩による計算器能力の大幅な向上で、3次元での予測計算が可能となり、境界要素法や時間領域差分法(FDTD)等、予測範囲拡大と精度向上が図られつつあります。

参考図書

  • 1)福田基一、奥田 襄介:騒音対策と消音設計(共立出版、1974)
  • 2)(社)日本騒音制御工学会編:騒音制御工学ハンドブック基礎編・応用編(技報堂出版、2001)

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室間音圧レベル差の測定に63Hzが含まれていないのは、どのような理由なのでしょうか。(Vol.36 No.4)
                                (音響測定会社 社員)

(日本騒音制御工学会認定技士 安岡博人)

日本工業規格 JIS A 1417 における周波数範囲について,“63 Hz が入ってないのはなぜか?”という質問は良く聞きます。“床衝撃音の方には含まれているのに”ということだと思われます。私の聞き伝えの回答でよろしければ,以下のように考えられます。

集合住宅,ホテルなどは一般に居室が小さく,相対的に波長の長い周波数に関しては定在波が大きく寄与して,音圧レベルの偏差が各測定点間で大きくなり,平均音圧レベルで扱うのには問題が多いということだと思います。つまり,室のどの点が受音点になるか分からない状況で平均値を当てはめると,受音点の取り方によっては平均音圧レベル差の測定結果に 1 ランク以上の違いが生じる場合もあるということではないでしょうか。

このため,特定場所間音圧レベル差が規定されていますので,それで 63 Hz を測定して,当てはめるのは,その点の固有の値ですので,一つの考え方としては妥当と思われます。また,参考として 63 Hzの室間音圧レベル差を測定する場合もありますが,当然データの妥当性はその旨明記して自己責任で行うことになります。

そして,床衝撃音の重量衝撃音の場合は,低音を測定するために行いますから偏差を承知で決めてあり,打点も多くなっていますし,測定値の空間的ばらつきは今まで多く検証されながら運用されています。

関連 JIS

  • ・JIS A 1416 実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法.
  • ・JIS A 1417 建築物の空気音遮断性能の測定方法.
  • ・JIS A 1418-1 建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法─第一部 : 標準軽量衝撃源による方法.
  • ・JIS A 1418-2 建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法─第二部 : 標準重量衝撃源による方法.
  • ・JIS A 1419-1 建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法─第一部 : 空気音遮断性能.
  • ・JIS A 1419-2 建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法─第二部 : 床衝撃音遮断性能.

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