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公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

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最近の騒音計は低周波音も計測でき,また周波数分析も行えるなど便利になっていると伺っています。関連する規格等の変遷も含め騒音計の歴史について教えていただけますでしょうか。(Vol.43No.2)
Vol.43 No.2

(株式会社エーアール,瀋陽薬科大学 福原博篤)

騒音計の始まりは自分の耳で周囲の音の強さと電話器のようなスピーカーからの発生音を聞き, その出力を調整, 周囲の音とほぼ同じ強さになった時の値をデシベルで示すものであった。 この方式の騒音計は聴取式騒音計といい, 1930年以前にドイツ,シーメンス社のバルクハウゼンが発明したものである。 同時期に米国のウエスタン社はベル電話研究所で開発されたオージオメータを使用したバルクハウゼンと同等のものを開発した。 また, 英国物理研究所のデーヴィスは音叉式騒音計を米国音響学会誌に紹介している。その後,音の測定にマイクロホンを使用し指示計で音量を表示する騒音計がベル電話研究所で開発された。 これが現在の騒音計の出発点といえる。
1923年の米国音響学会誌にはNoise Meterと呼ばれる電気式の騒音計がウェスチングハウス社で開発されたことが紹介されていることから, 当時は聴取式と電気式の2通りの騒音計が使用されていたことが推察される。この当時,音量の表示はデシベル,あるいはフォン,いずれかの単位を用いており,基準値もそれぞれ異なるものであった。

1934年には日本においてシーメンスの電気式騒音計が発売されており, それ以降沖電気や東芝(当時マツダ) など国産の騒音計が開発された。 しかしこれらの騒音計は非常に大きく,重く,機種によってはバッテリー箱と別の筐体になっているものもあった。

1940年前に米国のGeneral Radio社は電気式手持型騒音計を発売しており, その数年後にはデンマークのBruel&Kjaer社がそれに続き発売したことが当時の出版物でわかる。

1949年当時東大大学院の学生であった石井聖光先生(元東大生研教授)の発案で小型騒音計を製作するため日本電子測器(JEIC)が発足し,幅300 mm奥行200mm高さ150mm重量約4kgの騒音計を2万4千円(当時)で発売した。マイクロホンには小林理研製作所(後のリオン)のクリスタル型を用いていた。

1952年には柴田化学が指示騒音計を発売した。1954年には小林理研製作所が米国GR社の騒音計を参考に簡易騒音計を完成させた。 同時期に複数の会社が騒音計を開発したものの現在まで継続しているのはリオンと日本電子測器(現ソーテック),それに日本電子工業 (ベガ→ノード→ナガノ計装) である。

1970年代B&Kと同じようにリオン, 日本電子測器, ノード, オンソクが手持型騒音計を開発し, その後騒音計後部に接続できる周波数分析ユニットを開発し,続いて,等価騒音レベルや時間率騒音レベル演算ユニットを発売した。

1989年小野測器が騒音計市場に進出し,積分型の精密騒音計と普通騒音計の販売を始めた。

2000年代初頭にはリオンを始め各社が積分型騒音計にソフトカードを挿入することで, より簡便に周波数分析や各種演算波形記録な どの多機能化を果たし,現在では騒音計とそのオプションソフトにより, ほとんど必要な情報を精度良く集めることが出来るようになっている。

2011年にはコンデンサマイクロホンを使用して低周波音から測定可能な騒音計がアコーから発売され, 翌年にはリオンが低周波音測定機能付精密騒音計が型式番号を取得している。

日本において騒音計の規格 (指示騒音計) が JIS として定められたのは1952年で, 当時騒音計の表示は「ホン」とされていた。1956年の改正で指示騒音計と簡易騒音計に分かれ, 測った値を 「騒音レベル」とし,取引証明の目的には指示騒音計を使用しなければならなくなった。また,騒音計の聴感補正特性(現在の周波数重み付け特性)A,B,Cを定め,60ホン未満はA,60ホン以上∼85ホン未満をB,85ホン以上をCで測定するとしていた。1977年に普通騒音計と精密騒音計の規定が定められ, 計量単位は「ホン」その記号は「dB」を用いることが明記されている。

その後何度か規格は改訂され,2005年に騒音計は「サウンドレベルメータ」と規定され,2014年に取引又は証明用の騒音計が JISに追加された。 2017 年には2005年の規定の見直しがなされ, 現在騒音計の規格は2種類あるものの不確かさについて製品の不確かさと検査等の不確かさに分けられた。 騒音計を使用する立場からは性能, 精度の面ではいずれの規格のものも相違はない。
2019年2月経産省は計量法施工規則別表の環境計量証明事業所において使用する計量器と しての周波数分析器, レベルレコーダ, データレコーダは騒音計内に挿入可能なソフトカードを該当可能とした。
以上のよ う に騒音計やその周辺機器の歴史は大雑把に説明しても長い歴史がある。 より詳細について興味のある読者は拙著 「騒音計と騒音測定・評価の変遷」(環境新聞社)を参照されたい。

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最近,ディジタル信号処理の分野でウェーブレット解析という言葉を耳にしますが,これは従来のフーリエ解析に基づく信号処理方法と比べてどのような特徴があり,また現在どの程度研究が進んでいるのでしょうか。
                                      (匿名)

(大阪大学大学院 青野正二)

ディジタル信号処理の分野においては近年様々な進歩が見られ,1980年代後半にはDaubechiesらによってウェーブレット解析の基礎が固められました。それは,画像やオーディオデータの圧縮の分野では応用が進んでいます。しかしその他には,現在まで音響分野におけるウェーブレットの応用例は少なく,その有効利用への示唆も十分には与えられていないようです。

なかでも,時間-周波数平面上に直交系を構成する直交ウェーブレットは,他では得られない卓越した特徴をもっています。直交ウェーブレットでは,得られる情報の定量性や完全再構成が保証されるだけでなく,本来直交関係にある時間と周波数の2つの次元によって張られる領域上で全ての係数が互いに独立しています。そのため,そこには原信号の情報が過不足なく保持されており,また任意の変形に対して実波形と1対1の対応が保たれます。

このような特徴を活かして,最近では例えば,直交ウェーブレットを用いた音響系の計測や処理についての研究も行われています。つまり,フーリエ解析に基づくインパルス応答の概念を時間-周波数平面上に拡張し,周波数ごとに得られる単一応答をそのまま周波数ごとの伝達関数として扱おうとするものです。これにより,各周波数対の応答をまとめて1本のインパルス応答としたり,既存のインパルス応答を部分的に修正することも可能となります。また,非線形系に対して,単一ウェーブレット応答に含まれるある種の非線形特性は,それを伝達関数とした系の出力の計算において失われずに出力結果に反映させることができます。そこで,高次の非線形歪の特性をもつスピーカシステムに対して,単一ウェーブレット応答によりその高調波歪の特性を捉え,低減処理を行おうという研究も見られます。

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周波数分析の結果,ある中心周波数で1/3オクターブとオクターブの結果の差異がバンド幅の違いによるのは理解できますが,それらとFFT分析結果で得たその周波数での音圧とはどのように比較すれば良いのですか。
                                   (自治体職員)

((株)小野測器 今泉八郎)

騒音振動関係の周波数分析の一般的手法は1/1,1/3などのオクターブ分析とFFT分析があります。主な違いは、分析バンド幅にて前者が定比型であるのに対して、後者が定幅型であることです。すなわち中心周波数列が、前者が等比級数で、後者が等差級数です。

オクターブフィルタの中心周波数とバンド幅などのフィルタ特性は、IEC規格(IEC61260)やJIS規格(JIS C 1513)で規定されますので、規格を参照して下さい。それに対して、FFTアナライザのバンド幅は、定幅分析なので、解析周波数レンジをFmax、分解能ライン数をLとすると、バンド幅=Fmax/Lとなります。例えば10kHzレンジで800ライン分解能だとすると、12.5Hzとなります。(厳密にはウィンドウ関数の影響でこれより大きめになります。)

ここで、注意するべきは、このようにFFT分析のバンド幅は一般的にオクターブ分析のそれと比較して非常に小さい(狭帯域分析とも呼ばれるゆえんです)ので、中心周波数のラインだけの分析と勘違いされそうですが、FFT分析といえどもある有限幅で分析していることです。

誤解を恐れずに言えば、FFT分析も、バンド幅が比較して小さい、中心周波数によらず幅が一定という違いを除けば、オクターブ分析とそれほど違いはありません。例えば、1kHzの顕著な離散音(1kHzのラインスペクトルの周りにランダムな信号成分のパワーが小さい場合)を分析すると、1/3オクターブ分析もFFT分析もほぼ同じような結果になります。実際の騒音はランダム成分が多いので、バンド幅に比例して音圧レベルは変わります。

ファンの羽根の枚数に依存した離散的な音の分析などには、FFTアナライザがよく利用され、全体の騒音レベルの評価にはオクターブ分析が利用されます。

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FFT分析ではアベレージングと時間窓関数に数タイプがありますが、 どのような音にどんなタイプを選択すればよいのでしょうか。
                                      (匿名)

((株)荏原総合研究所 丸田芳幸)

一般的なFFT分析器にはアベレージング(平均化)機能として、 「時間領域での平均」「周波数領域での平均」「MAX(またはピーク)平均」 「トリガ平均」「指数平均」があります。また、 時間窓関数としては「レクタンギュラー(方形)」「ハニング」 「ハミング」が一般的です。

まず窓関数に関して、例えば城戸著「FFTアナライザ活用マニュアル」 (日本プラントメンテナンス協会発行)から説明図を引用します。 正弦波及び第10高調波までを含む複合波信号を方形窓で分析すると、 信号の基本周期の整数倍が時間窓と等しければ正確に分析でき、 図1の(a)を得ます。しかし非整数倍の時間窓では(b)のように、 各成分の周波数とそのピーク値は(a)と等しいのですが、 本来存在しない周波数成分が大きな値として分析結果に現れます。 時間窓が基本周期の非整数倍であることが騒音分析の一般的な条件ですから、 ピーク成分以外に存在する成分もFFT分析で理解しようとすると、 方形窓では不十分になります。

そこで非整数倍の時間窓でも正確な分析を期待して、 信号を周期関数に近づけるハニング関数やハミング関数の時間窓を用います。 上記複合波信号をハニング窓とハミング窓で分析すると、各々(c)、 (d)となります。どちらもピーク周波数は方形窓による分析と同じですが、 ピーク成分の値は方形窓の結果より小さくなります。 ハニング窓とハミング窓の違いはピークの形状とピーク以外成分の値に現れます。 ピーク成分以外の成分を重視するならハニング窓が、 ピーク成分の尖鋭度を重視するならハミング窓が適しています。

しかし、これらの機能を使いこなすためには経験によるノウハウが必要です。 回答者は上記のような解説書に基づいて次のように使い分けています。

時系列波形を観察したり伝達関数や相関関数解析を行う場合は、 方形窓で時間領域平均かトリガ平均を用います。

スペクトル分析では周波数領域の平均を用いますが、 騒音波形は一般的に周期関数ではありませんので、 適当な時間窓を次のように選定しています。

  • 方形窓支配的な周波数成分が明確であって、そのピークレベルの正確さを希望する分析。設定した周波数範囲内で高周波数成分が多い騒音を分析する場合。
  • ハニング窓空調設備の音のように低周波音が支配的だが高周波数成分まで分析する場合。 また風切り音のようにピーク成分が不明で広帯域周波数の場合。
  • ハミング窓エンジン音のように複数のピーク成分が予想され、 スペクトルの裾の部分の形状よりもピークの値に精度を求める場合。

以上のような騒音では連続的な平均化を行いますが、 プレス機械のような間欠騒音ではトリガ平均で方形窓を、 また噴流音のように広帯域周波数音が支配的でその周波数の変化を 観察する場合にはハニング窓と指数平均を、 さらにある時間内の最大値成分を知りたい場合や瞬時現象の分析には MAX平均を用いています。

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